カヤ
まだだよ。
まだダメだよ。
お兄ちゃんは来ちゃダメだよ。
だって、カヤまだお兄ちゃんのこと赦してないんだからね。
お兄ちゃんがカヤの分まで年老いたら、ちゃんとカヤのとこ謝りに来てね。
白髪の御爺さんぐらい年老いたらね。
それまで待ってるからね。
あっ、でもね。
お兄ちゃんを責めてるわけじゃないからね。
お兄ちゃんがカヤにしたこと。ホントに怖かったけど。
責めてるわけじゃないからね。
でも、カヤ辛かったよ。
川の中で。濁ってたもんね。雨上がりで水の量も多くてね。
それなのに。カヤがよその家の子だってわかったら。
突き落としたもんね。
でもね。
カヤはね。
ホントはね。
お兄ちゃんと一緒に居たかったんだよ。
手を繋いで。
また、お祭りに行きたいね。
リンゴ飴美味しかったね。
綿菓子も。
べっこう飴も。
また食べたいな。
無理だよね。
でもね。
嬉しいことがあるからいいんだ。
カヤがお兄ちゃんと兄妹だって、胸張って言えるような嬉しいことがあるから。
聞きたい?
お兄ちゃんが過ちを犯さなかったら、教えてあげてもいいけど。
約束出来る?
カヤ見てるんだよ。
ずっと見てるんだよ。
首吊ったり。
飛び降りようとしたり。
死のうとしないでね。
ずっと見てるんだよ。
止められる?
そしたらいいよ。
それ止めないと、嬉しいこと無くなっちゃうからね。
お兄ちゃんが苦しんでる姿が、もっと見たいからね。
それがカヤの嬉しいことだからね。
お兄ちゃんの心臓、粘土みたいにして遊んであげるからね。
脳ミソも縄跳びみたいにして遊んであげるからね。
心臓も脳ミソも痛くなっちゃうけど。
カヤは嬉しい。
ホント嬉しい。
お兄ちゃんの人生はカヤがちゃんと見ていてあげるからね。
ただじゃ生かさないから。
苦しめて、苦しめて。
お兄ちゃんの人生はカヤの人生でもあるのだからね。
だって、カヤまだお兄ちゃんのこと赦してないんだからね。
過去の作品ですが、投稿してみました。