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 その日、私がどうやって家までたどり着いたのか分からない。


 気がついたら朝で、私は自室のベッドの上で目覚めた。制服を着替えてさえいなかった。しわだらけになった制服を見て私は微笑んだ。何かが変わり始めていた。心のどこかが「ストップ!」と叫んでいた。それでも、私は自分の足をとめるつもりはなかった。今までの私よ、さらば。

 熱いシャワーを浴びながら、鼻歌を歌いたい気分だ。出来るだけ早く学校に行かなければ。強力な磁石に引き寄せられる鉄くずのように、即行で準備して学校へと急いだ。


 学校に着くと、またなんだかよく知らないけど、漢字がだらだらと並んだ名誉らしいコンクールの特選に選ばれていた。いつの間に美術の先生に出品されたのかも分からない。っていうかいい加減ただの授業の課題を勝手にむやみやたらに色々出品するのをやめて欲しい。その賞が欲しくて懸命に描いたコがいるはずなのだから。不公平すぎる。


「…坂巻ぃ、お前、いい加減せめて美術部に入った方がよくないか?これ以上周りを拒絶する事もないだろう。お前の才能は確かだよ。何で芸術クラスの推薦をけったのかは聞かん。でも、うちの高校に入ったって事は絵を諦める気はないって事だろう?」

 担任に言われて初めて私は「芸術クラスの推薦をけった女なのにうちの高校に進学した変り種」として有名だった事を知った。冷静に考えればそういう話がどこからかもれそうなのは簡単に理解できる事なんだけど今まで考えた事もなかった。口の軽い先生と、先生と仲の良い生徒ってのはどこにだっているのだ。


 やっぱり普通はばれるよねぇ。公に私を非難する人は誰もいなかったけど、私は入学式の時から悪目立ちをしていたらしい。私から周りに声をかけないから友達が出来ないのではなくて、周りも私を避けていたのか。びっくりだ。目からウロコ。

 でも、そんな私に金子先輩は話し掛けてきた。勇気のいることだったろう。彼女は見た目よりも繊細だから。金子先輩も注目をあびて、結果的に檜山くんは先輩に気がついた。それはきっとヴィオリータがやった事。私が檜山くんに恋する前から魔法は始まっていたんだ。


 絵を書く事はヴィオリータの範囲。これからも私の右手は魔法を使い続ける。私は修行を続け、本当の魔女へと近づいていくだろう。いつか「私」も魔女になる。その時ヴィオリータが私の中で目覚めるかもしれない。


 魔女になるという事は自分の中の眠っている魔女に気がつくという事かもしれない。修行をしていて良かった。私はこのまま気がつかなかったかもしれないから。

 檜山くんに会えて、好きになれて良かった。私が自分の恋にどういった決着をつけるかはまだ分からないし、もしかしたら家に帰ってすぐまた家中の掃除をしたりする生活に逆戻りするかもしれなかった。


 ノートは机の引出しの中に戻ってきているだろうか。ヒルースが私にしてくれた事。それは彼女にとってはただの暇つぶしで、意味なんかなかったかもしれない。それでも、私は彼女がいなければ今でもただ悶々とデニングの「やがてめざめる魔女」を図書館から借り出しながら有効な魔法の本を探し続けるだけの生活だったかもしれないのだ。どれが一番よかったのかは分からない。本当はまだ答えは出てないのかもしれない。うん、きっとそうだ。だってまだ私は15歳なんだもん。



 これから無限に未来はあるんだ。魔女として、人として。




自分に出来ないような事をさらっと出来ちゃうヒトは魔法を使っているのではないだろうか、と昔から考えています。

マジシャンはタネもシカケもあるフリをした魔法使いが大勢紛れているに決まってます。すごいもん。

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