打ち上げろ!爆誕生日!?
京都。
夜。
暖簾が揺れる。
「いらっしゃいませー!」
店の中は。
にぎやかだった。
焼き鳥の匂い。
油のはじける音。
人の笑い声。
そして。
テーブル席。
四人が座っていた。
「かんぱーい!」
グラスがぶつかる。
カチン。
チェリは。
目を輝かせていた。
「なにこれ!!泡!!泡!!!」
ビールの泡に。
指を突っ込もうとしている。
「やめろ!」
ユウが慌てて止める。
安田。
もう半分笑っている。
「朝霧」
「はい」
「お前の人生、急に騒がしくなったな」
「本当ですよ……」
ミナは。
焼き鳥を一口食べて。
ふと。
考える顔をした。
「……でも」
間。
「さっきから思ってたんですけど」
三人が見る。
ミナは。
カバンを開けた。
取り出したのは。
少し古い。
スマートフォン。
「これ」
テーブルに置く。
「ゲーム用のサブスマホなんですけど、ほら!ノケモンGOやってて!」
チェリ。
身を乗り出す。
「それなに!?」
ミナ。
静かに言う。
「チェリさん」
真顔。
「これ、触れますよね?」
チェリ。
ドヤ顔。
「触れるよ!」
ユウ。
首をかしげる。
「いや、だから?」
ミナ。
少しだけ。
前のめりになる。
「つまり」
間。
「これで、私たちとも」
ゆっくり言う。
「会話できるかもしれません」
沈黙。
安田。
グラスを置く。
「……なるほど」
興味津々。
完全に。
乗ってきている。
「やってみよう」
ユウ。
まだピンと来ていない。
「いや、普通に喋れるだろ」
ミナ。
きっぱり言う。
「私たちには見えないんです」
その言葉で。
ユウは。
少しだけ。
止まった。
チェリは。
スマホを。
そっと触る。
画面が。
光る。
全員。
息を止める。
チェリ。
真剣な顔。
指で。
ポチ。
ポチ。
ポチ。
数秒。
静寂。
そして。
ポン。
通知音。
ミナのスマホが震えた。
画面に。
表示された。
---
『はじめまして!!!』
---
たくさんのさくらんぼの絵文字。
安田。
固まる。
ミナ。
口を手で押さえる。
ユウ。
ぽかん。
「……マジか」
チェリ。
満面の笑み。
「できた!!!」
---
そのあと。
しばらく。
三人は。
スマホを見つめていた。
まるで。
本当に。
そこに。
もう一人。
いるみたいに。
---
安田。
ふと。
言う。
「……で」
真顔。
「どんな姿なんだ?」
チェリ。
胸を張る。
「かわいいよ!」
ユウ。
即答。
「いや、普通だよ」
ミナ。
身を乗り出す。
「特徴、教えてください」
メモを取り出す。
「髪型は?」
「水色」
「身長?」
「これくらい」
手で示す。
「服装は?」
「赤いマント」
「さくらんぼ?」
「ある」
ミナ。
頷く。
スマホを操作する。
「ちょっと待ってください」
画面を見つめる。
数秒。
そして。
言った。
「生成します」
画面が。
読み込みを始める。
くるくる。
くるくる。
全員。
見守る。
そして。
表示された。
一枚のイラスト。
そこには。
水色の髪。
小さな体。
さくらんぼのワンポイント。
元気いっぱいの。
少女。
チェリ。
完全一致。
沈黙。
ユウ。
目を見開く。
「……いる」
安田。
思わず。
立ち上がる。
「これだ」
ミナ。
小さく。
笑う。
「アイコンにしましょう」
数秒後。
グループチャットができていた。
名前:
チームチェリ
アイコン:
チェリ。
本人。
大満足。
「かわいい!!」
ユウ。
ため息。
でも。
少しだけ。
嬉しそう。
---
そのあと。
料理が運ばれる。
串。
唐揚げ。
だし巻き。
チェリ。
爆食い。
「うまっ!!!」
「食いすぎだろ!」
笑い声。
止まらない。
時間が。
ゆっくり流れる。
---
やがて。
店の外。
夜風。
少しだけ。
静か。
安田。
急に。
黙る。
そして。
言った。
「……よかったな」
ユウを見る。
真っ直ぐ。
「お前」
間。
「一人じゃなくなったな」
沈黙。
「今日は、誕生日だ…」
その瞬間。
安田の目から。
ぽろっ。
涙が落ちた。
ユウ。
固まる。
「……え?」
ミナ。
びっくり。
「なんで泣いてるんですか!?」
チェリ。
困惑。
「え!?なに!?誰か死んだ!?」
安田。
鼻をすすりながら。
言う。
「いや……」
間。
少し笑う。
「なんか、嬉しくてな」
ユウ。
呆れながら。
でも。
少しだけ。
優しく言った。
「……泣きパイソン」
安田。
涙を拭きながら。
答える。
「おまっ!誰がパイソンだ」
一瞬。
沈黙。
そして。
四人。
同時に。
笑った。




