新幹線?いや震撼
新幹線は静かだった。
静かすぎるほど静かでそれがうるさい。
は?w
規則正しい走行音。
落ち着いた車内。
整然と並ぶ座席。
そして。
その静けさを、
一瞬で破壊する存在がいた。
「すげぇえええええ!!!」
チェリだった。
「ねえねえねえ!!速い!!!これ速い!!!」
「静かにしてくれ…ちょっと寝かせて…」
ユウは小声で言った。
「なんで?」
「寝てないからだよっ!誰のせーだよw」
「♪しんかんせん!!!♪頑張ってドゥン!!ぴゃ!」
(…楽しそうだなぁ。まあ俺にしか聞こえないから)
チェリは窓に顔を近づける。
「うわぁあああ!!!景色が流れてる!!!」
「寝かせてえぇええ」
その時。
前の席のテーブルの上。
お弁当。
チェリの目が輝いた。
「これなに!!!」
嫌な予感がした。
「やめろ」
遅かった。
ふわっ。
唐揚げが。
浮いた。
完全に。
宙に。
「ちょっ!」
ユウが手を伸ばす。かき集める様な腕のリアクションが空を切る
その瞬間。
唐揚げが。
ゆっくり。
くるくる。
回りながら。
前の乗客の膝の上に。
ぽとっ。
落ちた。
静寂。
乗客がゆっくり振り返る。
ユウは全力で頭を下げた。
「すみませんっ!!!」
チェリは爆笑していた。
「からーげwww飛んだ!!!揚げられてもフライはーーーい!!」
「飛ばすな!!!」
次の瞬間。
隣の席のイヤホン。
チェリが引っ張った。(ブッ
「何聴いてるのー!?」
イヤホンが外れる。(ポロッ
音が漏れる。
乗客が驚いて振り返る。(えっ?何してんだよ
ユウ。
即座に。
頭を下げる。
「すみませんっ!!!」
「…チェリ、触んな!!!」
チェリは楽しそうだった。
「音楽だ!!!音楽だったーー!!なんか?凄いヤツw」
「…ちょっと気になる!!!!」
その時。
車内販売のワゴンが近づく。
「お飲み物いかがですか〜」
チェリ。
目が。
ギラリ。
「それなに!!!」
「触るな」
「ミドリできれい!!!」
ペットボトル。
ふわっ。
浮く。
完全に。
空中。
販売員。(あっ… 浮いてる
固まる。
乗客。(マジックショー的な?
固まる。
ユウ。
凍る。
「やめろぉおおおお!!!」
手を伸ばした。
間に合わない。
---
バシャッ
---
お茶が。
一直線に。
ユウの胸元へ。
直撃。
シャツ。
ネクタイ。
ズボン。
資料。
全部。
びしょ濡れ
完全沈黙。
数秒。
誰も動かない。
ユウ。
ゆっくり。
頭を下げる。
「……すみません」
さらに。
「すみません……」
そして。
「本当に……すみません」
声が小さく震えていた。
安田が立ち上がる。
慌てない。
怒らない。
ただ。
静かに言った。
「タオル、貸していただけますか」
近くの乗務員が差し出す。
「ありがとうございます」
安田はユウの肩を軽く叩いた。
「朝霧」
「はい……」
「事故だ、大丈夫だ。」
短い言葉。
それだけ。
でも。
ユウの呼吸が少し戻った。
その横で。
チェリが小さく言った。
「……ごめーん」
ユウは濡れたシャツを見て。
少しだけ。
笑った。
「いや、…側から見りゃ自爆変人だから…」
「自爆変人!!!!!www」
…3秒後。
「ねえねえ!これ押していい?」
『非常ボタン』
「ぜっっったいにやめろ!!」
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数時間後。
京都駅。
ホーム。
ユウは。
ベンチに。
崩れ落ちていた。
完全に。
ぐったり
髪は乱れ。
シャツはまだ湿っている。
ネクタイは曲がっている。
魂が抜けていた。
(あぁー帰りたいもうむりここに骨を埋めます)
チェリは元気だった。
「京都!!京都でありんすかぁああああ!!」
ジャンプしている。
「寺!!!」
「行かない」
「舞妓!!!マイコーー!!ッポーーゥ!!」
「…ジャクソンじゃねえw」
その時。
背後から声。
「朝霧先輩!」
ユウが振り返る。
そこにいたのは。
小柄な女性。
スーツ姿。
少し息を切らしている。
満面の笑み。
ユウの後輩、新人の水野ミナだった。
ユウ固まる。
「……なんで、ここに!?」
ミナはカバンを持ち上げた。
「資料の補足分、作ってみました!」
誇らしげに言う。
「もしよければ、使ってください!」
ユウさらに固まる。
「……え?」
ミナは少しだけ照れた風で小声で言った。
「実は」
間。
「後ろの席に、ずっといました」
沈黙。
ユウの背中に冷たい汗。
ミナは首を傾げる。
「先輩……」
少し不思議そうに。
「さっきから」
「…誰と話してたんですか?」
「あぁ?いやぁあー」ユウは手を頭に空を見上げた。
その横で。
チェリが満面の笑みで手を振っていた。
「ねえねえねえ!!この人、面白そう!!!ちーさいなぁー??アチキと同じくらーい??」
ユウは小さくつぶやいた。
「……終わった」
京都に着いて3分で終わった朝霧ユウ。
プレゼン…どうなるのw




