また、騒ごうっ!
医者から帰ってきて、薬を飲んで、布団に潜り込んだ。
そのまま、ぐっすり寝た。
そして。
目が覚めた。
真っ暗だった。
ユウはゆっくりと起き上がり、スマホを手に取る。
画面が光る。
23:48
沈黙。
「……やっちまった」
昼間に寝すぎた。完全に。
「詰んだ……」
布団の中で天井を見上げる。眠れない。まったく。
その時、ふと思い出した。
「……明日」
京都。
出張。
プレゼン。
「うわぁああああ……」
頭を抱える。
「安田先輩と2人で京都……」
プレゼン資料。説明。質問。失敗。沈黙。
「考えれば考えるほど眠れねぇええええ……」
ユウは布団の中でゴロゴロ転がる。右。左。右。左。
眠れない。
「……どうする俺」
沈黙。
そして。
「……そうだ」
思いついた。
「羊でも数えるか」
小さく頷く。
「羊が1匹……」
少し間。
「……こんなんで寝たやつ、聞いたことねえぞ」
それでも続ける。
ユウは天井の模様を見つめた。
「羊が1匹……」
「羊が2匹……」
少しずつ、目が重くなる。
「羊が……」
一呼吸。
「3匹ぃいいいいいいい!!!!!!!」
「どわぁあああああ!!!!」
ユウは飛び起きた。
顔のすぐ前。
そこに。
いた。
小さくて。
元気で。
うるさくて。
「きゃぁああああああ!!!!」
「ねえねえねえ!!!みてみてみて!!!」
「うぉおおおおおお!!!!」
ユウは完全に固まった。
数秒。
沈黙。
そして。
「……チェリ」
喉が乾く。
「チェリ!!!??」
少女は満面の笑みで両手を広げた。
「久しぶりぃいいいいいいい!!!!」
ベッドの上でぴょんぴょん跳ねる。
「すげぇえええ!!!ここ!!!相変わらず男子の部屋!!!」
「うるせえ!!!」
ユウは頭を抱えた。
「なんで夜中なんだよ!!!」
「だって会いたかったんだもん!!!」
「時間考えろ!!!」
「今何時!?」
「知らねえよ!!!」
チェリはカーテンを勢いよく開けた。
「わぁああああ!!!真っ暗!!!夜だ!!!」
「そうだよ夜だよ!!!」
「夜って楽しいね!!!」
「楽しくねえ!!!」
チェリは部屋中を走り回る。
本棚。
机。
ベッド。
「うわぁあああ!!!懐かしい!!!」
「静かにしろ!!!」
ドン!
何かが落ちた。
「やべえ!!!」
次の瞬間。
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ドンドンドン!!
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壁の向こうから、重い音。
沈黙。
ユウとチェリが同時に固まる。
そして。
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「うるさいぞぉおおお!!!」
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低い怒鳴り声。
隣人だった。
完全に。
「……すみません!!!」
ユウは慌てて壁に向かって頭を下げた。
チェリは小声で囁く。
「怒られた?」
「怒られたよ!!!」
「すごいね!!!」
「すごくねえ!!!」
しばらくして、部屋は静かになった。
ユウは深くため息をついた。
ベッドに腰を下ろす。
心臓がまだ速い。
チェリはその横でニコニコしている。
「楽しいね」
「……楽しくねえ」
少し間。
でも。
ユウの口元が、少しだけ緩んだ。
その時。
ふと、時計を見る。
デジタル表示。
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4:36
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沈黙。
ゆっくりと、顔を上げる。
天井を見る。
そして。
小さく呟いた。
「……電車」
少し間。
「5:30だぞ……」
チェリは目を輝かせた。
「旅行!?」
「出張だよ!!!」




