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【2期】Baby Tune 〜謎の少女に人生を破壊されながら頭痛だけは治る件〜  作者: 末紀世(まつきよ)


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時間がないの!?




診察室は静かだった。

時計の音だけが響く。


カチ。

カチ。


---


院長は、ユウを見ていた。

まっすぐに。逃げずに。


「それが」


小さく息を吐く。


「私の二つ目の失敗だ」


---


沈黙。


ユウの胸の奥で、

何かがゆっくり熱くなる。


怒りなのか。

不安なのか。

まだわからない。


---


「……俺に」


声が少しかすれる。


それでも、はっきり言った。


「何したんですか」


---


院長は、目をそらさなかった。


「小さな装置だ」


少し間。


「君の脳に」


---


空気が止まる。


ユウの手が、

無意識にこめかみへ触れる。


---


「……勝手に?」


---


短い言葉。

でも、重かった。


---


院長は、ゆっくり頷いた。


「ああ」


---


言い訳はない。

謝罪もない。


ただ、事実だけ。


---


ユウの拳が、わずかに震えた。


「俺の人生ですよ」


静かだった。

でも、確かに怒っていた。


「勝手に触っていいもんじゃない」


---


院長は、その言葉を真正面から受け止めた。


「その通りだ」


短く。はっきりと。


「私は」


小さく息を吐く。


「間違えた」


---


その言葉に、嘘はなかった。


---


その時。


チェリが口を開いた。


「でも」


二人を見る。順番に。


「アチキは」


少しだけ、声が震える。


「ここにいる」


---


診察室の空気が、少し揺れた。


院長は静かに頷いた。


「そうだ」


そして、ゆっくり続けた。


「だが」


少し間。


「このままでは」


時計の音が、やけに大きく聞こえる。


「彼女は」


ほんの一瞬、目を閉じる。


「消える」


---


沈黙。


言葉が落ちた。


重く。静かに。


---


チェリ。


きょとんとする。


「え?」


理解が追いつかない。


「……アチキ?」


自分を指さす。


---


ユウの背中に、冷たい汗が流れる。


「どういう意味ですか」


---


院長は、迷わず答えた。


「拒絶反応だ」


「君の脳が」


「存在を維持できなくなっている」


---


ユウの呼吸が、少し速くなる。


院長は続けた。


「以前」


静かに言った。


「君が倒れたことがあったね」


---


ユウの眉が動く。


思い出していた。


あの日。

突然、意識が遠のいた。


気づいたら。

大きな病院にいた。


病院のベッド。

白い天井。


ぼんやりした記憶。


---


院長は続ける。


「あの時」


「私は一度」


「装置を調整している」


---


沈黙。


ユウ。


目を見開く。


「……調整?」


---


院長は、静かに頷いた。


「ここ一年ほどの間」


「彼女が見えなかったはずだ」


---


ユウの呼吸が止まる。


思い出す。


あの違和感。


静かすぎた日常。


チェリが。


いなかった時間。


---


院長は続ける。


「一時的に」


「接続を弱めた」


「暴走を防ぐためだ」


少し間。


「そして」


「その間」


「経過を観察していた」


---


視線が、ゆっくりドアの方へ向く。


「別の場所から」


---


診察室の外。


かすかな気配。


誰かが。


そこにいる。


---


院長は、再びユウを見た。


「最近」


静かに言った。


「頭痛は増えていないか」


---


ユウ。


何も言えない。


思い出していた。


ズキン。

ズキン。


あの痛み。


---


院長は言った。


「それは」


「警告だ」


---


チェリは、じっとユウを見ていた。


初めて。


不安そうな顔で。


「……じゃあ」


小さな声。


「どうすればいいの」


---


院長は、ほんの少しだけ間を置いた。


「方法はある」


---


ユウ。


即座に反応する。


「治せるんですよね」


迷いはなかった。


---


院長は、ゆっくり頷いた。


「ああ」


そして。


続けた。


「だが」


その一言で、空気が再び張り詰める。


「完全に安定させるには」


院長は、チェリを見た。


まっすぐに。


「器が必要だ」


---


沈黙。


ユウの眉が、わずかに動く。


「……器?」


---


院長は、静かに言った。


「彼女が」


「存在し続けるための」


「体だ」


---


時計の音。


カチ。

カチ。


---


院長は最後に。


ゆっくり言った。


「そして」


ほんの一瞬。


視線がドアの方へ向く。


「その器は」


少し間。


「すでに存在している」


---


沈黙。


---


ドアの向こう。


---


そこに。


誰かがいる。


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