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【2期】Baby Tune 〜謎の少女に人生を破壊されながら頭痛だけは治る件〜  作者: 末紀世(まつきよ)


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11/12

失敗作?



診察室は静かだった。

時計の音だけが響く。


カチ。

カチ。


---


チェリは、まだ両手を上げたまま固まっていた。

目を丸くしている。口も開いたまま。


「……見えてる?」


小さな声。

さっきまでの勢いはない。

確認するように、恐る恐る。


---


院長は、ゆっくり頷いた。


「もちろんだ」


短い言葉。

でも、はっきりしていた。


---


チェリは一歩、後ずさる。


「……なんで?」


ユウは何も言えない。

ただ、二人を交互に見ていた。


---


院長は少しだけ遠くを見るような目をした。


「どこから話そうか」


小さくつぶやく。

そして、ゆっくりチェリを見た。まっすぐに。


「まず――」


ほんの少し、声が揺れた。


「君は、私が作った存在だ」


---


沈黙。


完全な沈黙。


---


ユウは理解が追いつかない。


「……は?」


チェリも瞬きを忘れていた。


「……アチキ?」


院長は小さく頷く。


「そうだ」


しかし、すぐに首を横に振った。


「だが――最初の失敗作でもある」


空気が変わった。


---


チェリの顔から、一瞬笑顔が消えた。


ユウは思わず身を乗り出す。


「失敗作って……」


院長は静かに言った。


「違う」


そして、はっきりと。


「失敗したのは、私だ」


---


沈黙。


院長の手が、ほんの少しだけ震えていた。


---


「私はね」


言葉を選ぶ。慎重に。


「脳と機械をつなぐ研究をしていた。

 人の意識を――消さないために」


---


チェリが小さくつぶやく。


「……消す?」


院長は、ゆっくり頷いた。


そして、初めて本当に静かな声で言った。


「私は――娘を失った」


---


診察室の空気が重くなる。


ユウは言葉を失う。

チェリの目が揺れる。


院長は続けた。


「まだ幼かった。

 受け入れられなかった」


そこにあったのは狂気でも野望でもない。


ただ――


後悔だった。


---


院長は再び、チェリを見た。


「だから、作った」


---


沈黙。


チェリの声は震えていた。


「……アチキ、人じゃないの?」


院長は迷わなかった。


「違う」


短い言葉。


しかし、すぐに続けた。


「だが――君はここにいる」


---


沈黙。


チェリは何も言えない。


---


ユウがゆっくり口を開いた。


「……じゃあ」


少し間を置く。


「なんで――俺に見えるんですか」


震える声だった。


---


院長は視線を向ける。まっすぐに。


そして、静かに言った。


「それが――私の二つ目の失敗だ」


---


時計の音だけが、静かに時を刻んでいた。


カチ。

カチ。

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