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【2期】Baby Tune 〜謎の少女に人生を破壊されながら頭痛だけは治る件〜  作者: 末紀世(まつきよ)


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知っていた人



次の週。


平日。


ユウは休みを取っていた。


「……なんか嫌な感じだな」


スマホを見つめながらつぶやく。


桜木医院からの呼び出し。


ただの検診。


そう思えばいい。


でも。


胸の奥に、小さな引っかかりがあった。


---


その横で。


チェリは元気だった。


「ねえねえねえ!!!みてみて!!!」


道路脇。


小さな猫。


白と黒のまだら。


チェリはしゃがみこんでいた。


「ほれほれ〜」


指をひらひらさせている。


猫。


じっと見ている。


完全に。


目が合っている。


---


ユウ。


足を止めた。


「……おい」


チェリ。


気づかない。


「かわいい!!!」


猫。


しっぽを立てる。


一歩。


近づく。


さらに。


前足を出した。


チェリの手を。


---


ちょん。


---


触れた。


ユウ。


固まる。


「……マジか」


---


その時。


後ろから声。


「おや?」


ユウ。


振り返る。


そこには。


竹ぼうきを持った老人。


道路を掃いていた。


目を丸くしている。


猫の方を見ている。


そして。


宙を。


---


「……?」


---


ユウ。


一瞬で理解した。


見えていない。


でも。


何かが起きているのは。


わかっている。


---


ユウ。


慌てて猫を抱き上げた。


「す、すみません!」


老人。


驚いた顔。


「いや……その……」


ユウ。


苦しい笑顔。


「人懐っこくて」


老人。


まだ不思議そう。


でも。


小さく頷いた。


「そうかい」


---


ユウ。


歩き出す。


早足。


背中に汗。


「……お前な」


小声。


チェリ。


振り向く。


「なに?」


「外では

 あんまり触るな」


「なんで?」


「……説明が面倒なんだよ」


チェリ。


少し考える。


そして。


にかっと笑った。


「わかった!!!」


全然わかってない顔だった。


---


数分後。


桜木医院。


古い看板。


静かな入口。


ガラスの扉。


---


中。


空いていた。


待合室。


人は一人もいない。


時計の音。


カチ。


カチ。


---


受付。


そこに。


いた。


---


桜木智絵里。


---


白衣。


柔らかい笑顔。


でも。


どこか。


懐かしい。


「あ、おっはよぉ御座いますぅ」


その声。


優しい。


でも。


胸の奥に。


小さな波が立つ。


---


ユウ。


少しだけ戸惑う。


「……どうも」


智絵里。


にこっと笑う。


「今日はお休み取ってくださったんですね」


「ええ」


自然な会話。


でも。


妙に落ち着く。


---


チェリ。


じっと見ている。


智絵里を。


黙って。


珍しく。


騒がない。


---


小さく。


つぶやいた。


「……似てる」


---


ユウ。


聞き返す。


「なにが?」


チェリ。


首を振る。


「なんでもない」


---


その時。


奥のドアが開いた。


カチャ。


---


院長。


桜木。


現れた。


白衣。


静かな目。


そして。


ユウを見る。


まっすぐ。


---


「朝霧くん」


低い声。


穏やか。


でも。


逃げ場のない響き。


---


「どうぞ」


---


診察室。


椅子。


机。


消毒の匂い。


古い時計。


カチ。


カチ。


---


院長は座った。


カルテを開く。


静かに。


ページをめくる。


---


「最近、頭痛はどうかね」


「……減りました」


院長。


小さく。


頷く。


そして。


ほんの一瞬。


---


安堵した顔


---


ユウは気づかない。


でも。


チェリは見ていた。


---


沈黙。


数秒。


時計の音。


---


院長は。


ペンを置いた。


そして。


ゆっくり。


顔を上げた。


---


ユウを見る。


まっすぐ。


---


そして。


静かに。


言った。


---


「君は、今」


---


間。


---


「そこにいる子が見えているよね」


---


時間が止まった。


ユウの呼吸が浅くなる。


背中に。


じわりと汗。


言葉が出ない。


喉が乾く。


頭の中が真っ白。


---


チェリ。


きょとんとしていた。


「……?」


ユウを見て。


次に。


院長を見る。


そして。


少しだけ。


首をかしげた。


---


その瞬間。


院長の視線が。


ゆっくりと。


動いた。


---


ユウではない。


---


その横。


少しだけ空いた空間。


そこに。


ぴたりと止まる。


---


チェリと。


---


目が合った。


---


数秒。


沈黙。


完全な沈黙。


時計の音だけが響く。


カチ。


カチ。


---


チェリ。


目を丸くする。


そして。


口がゆっくり開いた。


---


「……え?」


---


院長。


小さく。


うなずいた。


まるで。


昔から。


そこにいた存在を。


確認するように。


---


そして。


静かに言った。


---


「久しぶりだね」


---


チェリ。


完全に固まる。


数秒。


そして。


次の瞬間。


---


「へぇえええええ!?!?」


---


両手をぶんぶん振り回す。


「なになになに!?!?」


「見えてる!?!」


「見えてるの!?!?」


「なんで!?!」


「誰!?!」


「おじいちゃん誰!?!?」


---


ユウ。


頭を抱える。


「……マジかよ」


---


院長は。


ほんの少しだけ。


笑った。


---


優しく。


でも。


どこか。


寂しそうに。


---


「やっと」


小さく。


言った。


---


「会えたね」


---


沈黙。


---


時間が。


再び。


動き出した。


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