プロローグ
俺はただ、命令に従っただけだ。
「村の人間を殺せ」——それはあまりにも容易だった。
抵抗する者もいたが、力は乏しく、どうしてこの世界で生き延びてこられたのか不思議に思うほどだった。
……彼らさえいなければ、私がこんな感情を抱くこともなかった。
彼らさえいなければ。
火の海と化した村の中で、俺はそう繰り返し考えていた。
ギャアアアアアッ! ギィィィィィィアアアアアッ!!
どこからだろうか、赤子の泣く声が聞こえた。
もうじき死ぬというのに、必死に生きようとしている――そんなふうに泣いていた。
もし俺が、あの赤子の立場だったら。無力で、何もできなくて、
ただ泣き叫ぶしかない。 そんな絶望が、胸をえぐるようだった。
気がつくと、俺の足は自然と泣き声のする方へ向かっていた。
血を流し、もがき苦しむ――おそらくは母親と思われる女の傍ら。
その腕の中で、一つの光が揺れていた。
どれほどの思いで、この子は生きようとしているのだろうか。
その灯を消させてはならない。 そう感じた瞬間、俺の中にわずかな「意味」が生まれていた。
この行動がどのような結果を招いたとしてもこの意味を否定したくないただそんな感情と共に俺は赤子を抱え焼け落ちた村をあとにした。どこか遠い場所誰にも見つからずこの子を育て上げる。
俺は軍に、種族にいや、もしかしたらこの世界に反逆した。