依存
秋風が吹く中庭。
放課後の空は、早くも暗くなっていた。
「静って、前より話さなくなったよね」
突然、同じ委員会の男子に言われた。
「玲さんと一緒にいることが多いけど……なんか、無理してない?」
静はその言葉に、どう返せばいいかわからなかった。
(無理、なんてしてない。わたしは……選んで、ここにいる)
ただ、口から出たのは短い否定だけだった。
「違います」
「……そっか。でも、もし辛くなったら……話してよ」
彼の言葉に、静は何も返さなかった。
――その翌日、彼は委員会に来なくなった。
理由は「風邪」とだけ言われた。だが、誰も彼を見かけなかった。
静の心の奥で、かすかに何かが引っかかった。
(まさか、そんなはず……)
その夜、玲からメッセージが届いた。
「静のこと、邪魔する人は、いない方がいいでしょ」
言葉に棘はない。淡々とした文字列。
だが、それはまるで静自身の感情が玲に伝染したかのようだった。
玲は何もしていない。けれど――
(わたしが、拒絶したから……?)
彼を遠ざけたのは、わたしの意志だった。
それ以来、静はますます玲とだけ過ごすようになった。
放課後の屋上。無人の図書室。寄り道した地下道。
二人だけの場所が増えていくたび、静は確かに満たされていった。
「ねえ、静」
玲が言った。
「もし世界がふたりだけになったら、怖い?」
静は少し考えて、答えた。
「怖くない。……むしろ、ほっとするかも」
「じゃあ、あともう少しだね」
その“もう少し”が何を意味するのか、静は聞き返さなかった。
けれど、胸の奥で何かが確実に変わっていくのを感じていた。
それが希望か、破滅か――もう、判断できなかった。
それに、する必要も感じないよ、