ゼウス — 天空の王、神々の頂点
生い立ちと誕生のドラマ
ゼウスはクロノスとレアの息子。父クロノスは、自分の子供たちに王位を奪われるという予言を恐れて、生まれた子を次々に飲み込んでしまう。ゼウスも飲み込まれそうになるが、母レアはこれを阻止し、密かに赤ん坊のゼウスをクレタ島の洞窟に隠す。そこでニンフたちがゼウスを育て、乳を与えたのが、伝説のカリュドーンの雌ヤギ「アマルテイア」。
この隠れ育ての時期は、ゼウスにとって大切な力の源であり、神としての力を蓄える時間だった。
父クロノスへの反逆とタイタン戦争
成長したゼウスは、他の兄弟姉妹をクロノスの胃の中から救い出す。彼らと共に、タイタン(古代の神々)との壮絶な戦争、ティタノマキアを始める。
この戦いは10年にも及び、ゼウスは雷霆を武器に、知略と力を合わせて勝利。タイタンたちはタルタロス(冥界の深い地下牢)に封じ込められ、ゼウスは天空の支配者となった。
ゼウスの性格と人間界への関与
ゼウスは、絶大な力を持つものの、時に人間的で弱さもある神だ。自由奔放で、恋多き神として知られ、多くの女性と関係を持ち、英雄たちの父となる。
有名な逸話にはこんなものがある。
白鳥に変身してレダに近づく話
ゼウスは白鳥に変身し、スパルタの王妃レダに近づく。彼女との間に、英雄カストルとポリュデウケース、さらには美しいヘレネー(後のトロイ戦争のきっかけとなる)をもうけた。
黄金の雨となってダナエに降り注ぐ話
ダナエの父親が子供を持てないように閉じ込めたが、ゼウスは黄金の雨となって彼女のもとに訪れ、英雄ペルセウスを授けた。
これらのエピソードは、ゼウスの多面的な姿を示す。力強い王でありながら、人間の愛憎にも深く関わる神。
神々と人間の秩序の守護者として
ゼウスは正義の裁判者でもあり、神々や人間の世界の秩序を守る。人間の祈りに耳を傾け、神々の争いも仲裁する。ただし、彼の判断は絶対で、時に厳しく、また自分の気まぐれで裁きを下すことも。
例えば、プロメテウスの罰では、火を人間に与えたプロメテウスに激怒し、彼を山に鎖で縛り付け、毎日ワシに肝臓をつつかせる罰を与えた。