アレスとアフロディテ──禁じられた美と情熱の恋
アレスが最も有名な恋愛関係を持ったのは、愛と美の女神・アフロディテ。
彼女は本来、火と鍛冶の神・ヘーパイストスの妻でした。が──
その結婚生活は、まるで冷めきった鉄板のように愛の温もりがなかったのです。
そこに現れたのが、野性味と情熱にあふれたアレス。
「彼女は美しさの権化だ。愛を知っていながら、愛を与えられないだなんて、神々の世界はなんと皮肉な……」
アフロディテもまた、アレスの男らしい魅力に抗えず、二人はこっそりと愛し合うようになります。
二人の逢瀬、そして罠
二人は夜な夜な密会を重ねていました。
あるときはオリュンポスの神殿で、あるときはキプロス島の秘密の庭園で。
だが――神々の世界に完全な秘密など存在しない。
彼らの関係に気づいたヘーパイストスは、愛と裏切りに憤慨。
鍛冶の神である彼は、見えないほどの極細の金属の罠を作り、アフロディテの寝台に仕掛けました。
そしてある晩、罠は作動。
アレスとアフロディテはベッドごと絡めとられ、裸のままオリュンポスの神々の前にさらされてしまいます。
笑いと恥と、それでも変わらぬ想い
神々は爆笑し、アレスとアフロディテは赤面。
特にアポロンとヘルメスは「羨ましい」と茶化したとか。
その後、ゼウスの命で二人は解放され、アレスはしばらくトラキア(北の地)へと追放されることになります。
でも、面白いのはここから。
この事件のあとも、アレスとアフロディテの関係は終わりませんでした。
二人の間に生まれた子どもたち
アレスとアフロディテの間には、複数の子どもたちがいます。
有名な子どもたち:
エロス(キューピッド):愛を司る小さな神。矢を放って人の心を恋に落とす。
ハルモニア:調和と結婚の女神。テーバイ王国の王子カドモスと結婚する。
デイモスとポボス:それぞれ「恐怖」と「戦慄」を意味する双子。アレスが戦に赴くとき、彼らも一緒に戦場を駆け巡る。
つまり、愛と戦の間に生まれた子どもたちは、「恋」と「恐怖」だったという皮肉……深いですよね。




