オルペウス、星となる — リラ座伝説
愛するエウリュディケを二度と取り戻せなかったオルペウスは、もはや音楽も、陽の光も、世界の美しさすら感じることなく、彷徨うように生きていました。
人々の前にも姿を現さず、森の奥でひっそりと暮らし続けた彼は、ただ空を見上げていたといいます。あの時、ほんの少しだけ信じる心が強ければ、彼女とまた笑えたのだろうか……そんな後悔を胸に。
ある日、バッカス(ディオニュソス)に仕える狂気の女たち「マイナデス(メナデス)」が酒宴の最中、静寂と孤独を貫くオルペウスに腹を立てます。
「何よその目は! 誰の音にも酔わず、何にも身を委ねず……!
芸術の神ですって? そんなの偽物よ!」
怒りに駆られた彼女たちはオルペウスを襲い、体を引き裂きました。彼の首と竪琴だけがかろうじて森を抜け出し、河を流れてゆきます。
その竪琴は、静かに水面を漂いながら、まるで彼の想いそのままに、静かに静かに音を奏で続けていたと伝えられています。
その音色に、天空の神ゼウスも耳を傾けます。
かつて神々をも魅了した芸術家オルペウスの最期を見届けたゼウスは、彼の魂が永遠に消えてしまうことを惜しみました。
「人の心をこれほど震わせた竪琴が、この世から消えてはならぬ。
彼の想いとともに、空へと昇らせよう。」
そうして、**竪琴**は天空に置かれ、「リラ座(Lyra)」として輝く星となりました。
リラ座に込められた意味
小さな星座ながらも強い輝きを持つ
まるで静かなオルペウスの音楽のように。
最も明るい星「ベガ(織姫星)」を擁する
ベガは今でも夏の夜空に輝き、「七夕伝説」でも登場する星。
天の川の近くに位置する
オルペウスの竪琴が、愛する者を追って渡ろうとした冥界と現世の境=天の川とも結びつけられることがあります。




