カッサンドラの呪い 〜未来が見えても信じてもらえない女預言者〜
トロイの王宮には、カッサンドラという名の美しい王女がいました。彼女は聡明で、誰もがその知性と美しさに惹かれていました。
ある日、神アポロンがカッサンドラに心を奪われます。アポロンは「お前に未来を予知する力を与えよう。その代わりに私を愛してほしい」と告げました。
カッサンドラは神の求愛を拒みました。自由な心を持つ彼女は、たとえ神であっても、自分の意思に反することは受け入れられなかったのです。
アポロンは激怒し、呪いをかけます。
「お前には真実の未来が見えるだろう。しかし、誰もお前の言葉を信じはしない。」
こうしてカッサンドラは、戦争や破滅、裏切りといった恐ろしい未来を次々に予言し続けました。
例えば、ギリシャ軍がトロイを襲い、木馬の策略で城が陥落すること。
トロイの王妃ヘレネが、ギリシャ側に寝返って争いを激化させること。
これらすべてを彼女は繰り返し警告しましたが、王族も市民も誰も耳を貸しませんでした。
「またカッサンドラの妄言か」と、嘲笑と無視が返ってくるだけでした。
彼女は孤独に、未来を知る悲しみと戦いながらも、真実を伝える使命に耐え続けました。
そして、予言通りにトロイは滅びました。
ギリシャ軍が城壁を破り、炎が街を包み、愛する人々が次々に倒れていく中、カッサンドラの言葉は真実だったことを誰もが知ります。
しかし、彼女が警告した時にはもう遅かった。
この呪いは、「真実を知ることの辛さ」と、「それを伝えても誰にも理解されない悲劇」を象徴しています。
カッサンドラは、未来を見通す力を持ちながら、それを生かせず、孤独な運命を背負った女預言者として、ギリシャ神話の中でも特に哀しい存在として語り継がれています。




