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ヘスティア — 炉と家庭の女神
ヘスティアはゼウスの姉妹で、オリンポスの十二柱神の一柱。彼女は「炉の火」「家庭の火」を守る女神で、家の中心で絶やさず燃える炎そのものを象徴している。
古代ギリシャの家庭では、炉の火が生活の生命線だった。料理をし、暖を取り、家族の団欒がそこで生まれる。ヘスティアは家族の安全と平和、安らぎを守り、共同体の基盤を支えている存在とされていた。
神話上のエピソードは少ないが、争いや激しい出来事を嫌い、常に平穏と調和を求める性格だった。彼女は争いごとに巻き込まれることを避け、オリンポスの神々の中でも特に「平和の守護者」として尊ばれた。
ヘスティアは、古代の神殿では火を絶やさず守ることが最も大事な役割で、市民生活や国家儀式の中心にいた。家の炉の火も、都市国家の公的な火も、ヘスティアの聖火として崇拝された。