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第9章 癒し手グレースと靴ひもを結ぶ絆

グレースはどうして動いているんだ?しかも、どんどん俺のいる場所に近づいてきてる…

すぐに会えるように、俺も彼女の方へ向かって歩き始めた。どんな展開になるのか気になって仕方がない。

人混みの中、彼女を見逃さないように、歩きながら何度もマップを確認する。


時間が経つにつれて、俺たちはどんどん距離を縮めていった。

――あっ、グレースが急に立ち止まった!


あの本屋の前で周囲をキョロキョロと見回しているあの女の子か?

いや、違う…彼女はプレイヤーのようだ。

他の誰かだろう。そう思いながら辺りを注意深く見渡すと、レストランの前で転んで起き上がろうとしている眼鏡をかけた女の子が目に入った。


まさか、あれがNPCグレース…?


いや、たとえ違ったとしても、転んだ人を放っておくわけにはいかない。怪我していないといいけど。


「ねえ、大丈夫か?」


「ちょっと膝が痛いの…」


ピンク色の髪に、緑色の瞳。それに大きな眼鏡をかけて、背中にはリュックを背負った女の子が、今にも泣きそうな表情でこちらを見ている。

俺は手を差し伸べて、彼女を立たせた。


膝を見ると血がにじんでいた。だが、俺にはお金がない。回復ポーションも買えないし、回復魔法も使えない。

それでも、シャツを破って包帯代わりにするしかないか…そう思った矢先、


彼女は背中のリュックを前に回し、中を開けた。


中にはたくさんのポーションと薬草が詰まっていた。


――えっ、この子、まさかヒーラー?


まったくそうは見えなかったので驚いた。

彼女は薬草を口に入れて噛み砕き、それを優しく膝に塗りつけた。


すると、傷口はたちまち癒えていく――

これが…回復の力か!


ふと彼女の靴に目をやると、靴紐がほどけているのに気がついた。


「靴紐、ほどけてるよ。ちゃんと結んでおかないと」


「……結び方、知らないの」


きっぱりとした口調で、彼女はまっすぐ俺を見つめた。

さっきまで泣きそうだった子が…一体何があったんだ?


「よかったら、俺が結んであげようか?」


「ほんとに!?」


今度は目を輝かせて、俺をうっとりと見つめてきた。

この子、反応がいちいち極端すぎる…NPC特有の挙動だろうか?


俺はしゃがみ込み、彼女の靴紐を結ぶために手を動かした。

――なぜか、この場面に見覚えがあるような気がする…。


右足の靴紐を丁寧に穴に通し、しっかりと結ぶ。

左足も同様にして、作業は完了した。


彼女はリュックを背負い直し、地面を軽く踏み鳴らして靴の具合を確かめた。


「すごい!ちゃんと結べてる!靴紐を結べなかったせいで、何度も転んでたの。ありがとう!」


「どういたしまして」


俺はにっこりと微笑んで返した。


……と、その時、ようやく気づいた――

しまった!グレースのことをすっかり忘れてた!

すぐにマップを開いて確認する。


【おめでとうございます!

NPC『グレース』との交流に成功しました!

靴職人としての道を進み続けてください!】


……よかった!どうやらこの子がグレースだったようだ。

彼女の頭上を見ると、【ヒーラーNPC グレース】と表示されている。


いったい、あとどれだけのNPCと関わっていくのか…。

そして、この突発的な通知は一体何を意味しているのだろう?







***






【ダークギルド チャットルーム】


【No Name 1】

攻撃の準備は整ったか?


【No Name 3】

ああ、すべての準備は完了している。


【No Name 2】

彼らに奇襲を仕掛けた時、どんな反応を見せるか……今から楽しみで仕方がないよ。


【No Name 9】

いや、まだはしゃぐな。今は冷静になって、一つひとつ確実に動くべきだ。


【No Name 10】

一番大事なのは、我々以外にこの作戦を知っている者がいないということだ。


【No Name 1】

ああ、完璧に秘密を守りきった。数日以内に攻撃を開始する。


【No Name 7】

最高だな……もうすぐ、この《VRMMO:DREAM of WORLD》の世界は大きく変わるぞ!

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