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第45章 呪われた森の入り口で

旅の二日目。

空は灰色で、風が鋭く吹きつける。


「近づいたわ…」

メアリーが地図を確認しながら呟く。


目の前にはうねるように曲がった木々が立ち並んでいる。

根が上に向かって反り返り、何かから逃げるようにも見える。


「呪われた森」

ベアトリクスが顔を上げ、身震いした。

重い静寂が押し寄せる。

聞こえるのは私たちの足音だけ。


森の境界で立ち止まる。

肌に奇妙なピリピリ感が走る。


「靴職人、準備はいい?」

メアリーが私の目を見つめる。

「できてる」

きっぱりと頷く。


「私も準備万端」

ベアトリクスが軽く剣に手をかける。


森の中へ最初の一歩を踏み入れる。

影が私たちに覆い被さってくる。

鳥の声もない。

風さえも中に入ってこられないようだ。


「木々が…私たちを見ているみたい」

ベアトリクスが周囲を警戒する。


「道の北側に古いキャンプサイトがある。あそこから始めよう」

メアリーは声を潜めて言った。


進んでいく。

乾いた葉が音もなく砕ける。

この静けさは…

自然ではない。


しばらくすると、古い石の祭壇が見えてきた。

苔に覆われているが…その一部が生気を帯びている。


「魔法耐性の革はここにあるかも」

メアリーが興奮気味に囁く。


「ここに通路があるわ」

ベアトリクスが身をかがめ、石の下を覗き込む。

下から冷たい風が吹き上げてくる。


慎重に階段を降り始める。

床は苔で覆われている。

足は滑らないが、警戒を怠らない。


「あった!」

メアリーが立ち止まり、洞窟の壁を指差す。

そこには黒みがかった革が棚に吊るされていた。

誰かがまだここにいるかのように整然と並んでいる。


「これが…魔法耐性の革」

ベアトリクスの声がかすれる。


周囲を確認する。

危険はなさそうだ。


「集めよう」

メアリーがすぐに袋を取り出す。

材料を丁寧に包み込む。

一つ一つが貴重な品だ。


【貴重な材料を入手:呪いカースレザー

革を手にした瞬間、システム通知が表示された。


「成功だ」

ベアトリクスがほほ笑む。


しかし突然…

地面が微かに震えるのを感じた。


「なに…?」

メアリーが驚く。

石の祭壇にひびが入り始める。

光の輪が浮かび上がった。


「罠だったわ!」

ベアトリクスが剣を抜く。


光の中から一個人影が現れた。

真っ黒な魂。


「異邦人よ…森の均衡を乱すな」

声が反響し、不気味に響く。


「私たちはただ革を少し持っていくだけです」

声は震えていないが、背筋が寒くなる。


「それだけでは足りん。均衡が必要だ」

魂の声が重くなる。


「何が欲しいの?」

メアリーが前に出る。


「我を鎮める品を。静寂の石だ」

魂は輝く目で私たちを見下ろした。


「どうする?」

ベアトリクスが私を振り返る。


「静寂の石…枯れ地峡谷で見つかるかもしれない」

「元々そこを通る予定だったわ」

メアリーが頷く。


「持って来い。さもなくば再び現れる」

魂はゆっくりと後退し、

光と共に消えていった。


地面の震えが止まる。

短い沈黙が流れた。


「いったい何だったの?」

ベアトリクスがため息をつく。顔には恐怖と畏敬の念が混ざっている。


「新しいクエストね」

メアリーが手帳にメモを取る。


「そして新たなチャンス」

私は静かに微笑む。


このゲームでは、全ての問題が…

新たな職人としての飛躍を意味するのだから。

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