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第27章 崩壊した街で再会、そして決意

 ログインが完了し、再び目を覚ました場所は、自分の〈靴屋〉だった。

 辺りを見渡すと、思っていたよりも店は無事だった。壁には小さなひびが数本走っているが、建物自体はしっかりと立っている。


 気を取り直して、先ほど公式サイトで読んだ説明通りに〈全体チャット〉を開く。

「うわっ……!」


 メッセージの流れが速すぎて、目で追うのも一苦労だ。これが何百万人ものプレイヤーが同時にチャットしているということか。


 チャット画面の上にある「低速モードで表示」をタップして、ようやく文字が読めるようになった。


 話題はやはり《パロウニア市》の襲撃についてで持ちきりだ。

 この街全体に同時に爆発が起きたのは、どうやらこのゲーム史上初のことらしい。


 多くのプレイヤーは、襲撃が始まった直後にすぐログアウトしたため、難を逃れたらしい。

 ――そうか。だから〈ペントロウィア〉のあのメッセージはあんなに重要だったのか。今なら、彼がどれほど親切にしてくれたか、よくわかる。


(本当にありがとう、ペントロウィア……)


 全体チャットを読み進めると、今はもう襲撃自体は収束したようだが、犯人はいまだに不明。

 怒るプレイヤーも多く、運営に何の対応もないことに苛立つ声も多い。


 一方で、すでにこの街は「安全ではない」と判断されているようで、事実上機能を停止した街とみなされていた。

 建築職を選んだ一部のプレイヤーが街の再建を申し出ていたが、システムから依頼は届いていないとのこと。そのため、多くの者は他の都市へと移っていったらしい。


 チャットを閉じ、気持ちを切り替えて自分の行動に集中することにした。

 まずは、外の様子をもう一度確認しよう。メアリー、グレイス、ベアトリクス……みんな無事だろうか。


「やっと来たのね!」


 店から一歩出たところで、聞き慣れた少女の声が耳に届いた。

 右を見ると、メアリーが手を振っていた。彼女の隣には、グレイスとベアトリクスの姿もある。


(あれ……? 三人とも知り合い? まあ、全員NPCだから不思議じゃないか)


 ともあれ、三人が無事でいてくれたことが何よりもうれしい。すぐに彼女たちの元へと歩み寄る。


「みんな無事で本当に良かった……よかった……」


「わたしたちは大丈夫。でも、街のほうが……」


 グレイスが不安そうに、手で街の方を指し示す。

 近くで見ると、街の惨状は想像以上だった。建物はほとんどが崩壊していて、運よく残っているのはわずか。

 その中の一つが、あの〈靴屋〉だったのだ。


 しかも、通りにはプレイヤーの姿がまったくない。見かけるのは、警備兵NPCや市民NPCばかりだった。


(やっぱり全体チャットの言う通り、この街に見切りをつけたプレイヤーが多いんだな……。それも、仕方のないことかもしれない)


「見てよ、あの城も崩れてるのよ。しかも、王様まで……。これからどうするの?」


 少し震えた声で尋ねてみる。三人は沈黙した。


「正直、わからないわ……」


「本当は私も街を離れようと思ってたの。でも、負傷した人たちを見たら、まずは彼らを助けたくなって……。幸い、治癒屋はまだ無事だったの」


「わたしも……。でも、もしみんなで一緒に何かを決められるなら、それがきっと一番正しい道なんだと思う」


 三人ともまだ震えているが、メアリーの言葉に自分も頷いた。


「とにかく、一度靴屋に戻ろう。これからどうするか、そこで話し合おう」


 三人は静かに頷いた。

(そういえば……彼女たちを招いたけど、お茶ひとつ出せないじゃないか……)

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