表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/50

第25章 託された遺志と新たな決意

 トーマス師匠は、俺の腕の中で苦しそうに咳をし続けていた。身体の上には、小さな黄色い光の球がどんどん増えていく。


 ……もう、希望はない。


 このままだと、数秒のうちにトーマス師匠は完全に消えてしまうだろう。


 


「……弟子になってくれて、ありがとう」


「もう、しゃべらないでください……無理しないでください、師匠……」


「君はきっと、素晴らしい靴職人になると信じているよ」


「トーマス師匠……」


「消えるのはわかってる。だから……靴屋は君に任せる。人々を笑顔にする靴を作り続けてくれ……」


 


 そう言い終えた瞬間、トーマス師匠は静かに笑い――俺の腕の中から、光となって消えた。


 


 涙がぽたぽたと、空っぽになった手のひらに落ちていく。


 長い時間を一緒に過ごしたわけじゃない。だけど、NPCが消えていくのに、こんなに胸が痛むなんて……。


 


 ありがとう、トーマス師匠――。


 


【警告!】


【アップデート通知】


【アップデート通知】


【アップデート通知】


《靴職人トーマスの店》は、あなたに引き継がれました。


トーマス師匠の意志を継ぎ、素晴らしい靴職人を目指してください。


 


 ――引き継いだこの店、必ず守る。


 絶対に、立派な靴職人になると約束する!


 


「行こう。街の人たちを助けなきゃ。まずは、回復職を探そう」


「……うん、そうだね」


 


 目元をぬぐい、俺はメアリーと共に再び街の混乱の中へと走り出した。


 


 町は、地獄のようだった。


 泣き叫ぶ人々。瓦礫と化した建物。負傷したNPCたちが、あちこちで倒れていた。


 しかもその瓦礫のせいで移動すら困難で、回復職を探すのも簡単ではない。


 


【メッセージ:PentroWia】


「突然の街への襲撃について連絡します。君が初心者なのは知っているから、いくつか助言をしておく。今のパロウニア市は安全ではない。全体チャットを見れているかは分からないが、皆混乱している。だから、すぐにログアウトして逃げるんだ」


 


 は? PentroWiaから突然のメッセージ……?


 パロウニア市って、今いるこの街のこと……?


 ていうか、全体チャットってどこで見れるの? そしてログアウトしろって……。


 


 ――ドオオオオン!!


 


 返事を打とうとした瞬間、すぐ隣で大爆発が起き、俺の体は宙を舞った。


 がれきが全身に降りかかり、耳鳴りが響く。


 体が……動かない。


 全身が、しびれるように感覚を失っていく……。


 まぶたが、重い……。


 


 ――メアリー、無事でいてくれ……


 


【警告!】


【あなたは死亡しました】


【6時間、ゲームにログインできません】


 


「な……なんだって……」


 


 ……VRゴーグルを静かに外す。


 考えるまでもない。もう、このゲームを本気で調べて、理解しなきゃいけない。


 


 俺はベッドから立ち上がり、PCの前に座った。


 俺にとっての本当の始まりは――ここからだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ