第20章 小さなハート、大きな達成感
塗料が完全に乾くまで一日かかったが、ついに準備が整った。だが、前にも言ったように、まだやるべき工程が残っている。
まずはトーマス師匠がナイフの先を使って、靴の表面に丁寧に8つの穴を開けていく。それぞれの穴の大きさと間隔はまったく同じでなければならない。これらの穴は、靴ひもを通してしっかりと足にフィットさせるために必要不可欠なのだ。
その間、俺は靴ひも用の長い紐をハサミで適切な長さに切っていく。そして、作った穴に一本ずつ通し、最後に結んでみる。うん、完璧に結べた。だが、すぐにまた解いて、次の工程に進む。
師匠は次に、靴の中敷き用のフェルトを切り出している。普通、大手ブランドの工場では足のサイズに合わせて自動でカットされる部分だが、トーマス師匠はすべて手作業で行っている。
右足用と左足用を慎重に合わせて、定規とメジャーで何度も測り直しながら、綺麗にカットしていく。さらに滑らかにするためにヤスリをかけ、快適さを増すためにフェルトの中に少量の綿も詰め込んでいく。
靴の中敷きに綿を加えることで、履き心地は格段に良くなる。もし綿がなければ、履いた瞬間から不快感があるかもしれない。
用意した中敷きを左右の靴の中に順に入れて、トーマス師匠が手でしっかりと押し込む。その目的は、ちゃんとフィットしているか確認するためだ。
――問題なし、完了だ。
牛革の使用:成功
ヤスリがけ:成功
ピンクの塗装:成功
フェルト中敷きの挿入:成功
そして残るは、ベアトリクスがリクエストしたハートの模様だけだ。
「お前の描く力を信じてる。模様はお前が描いてくれ」
トーマス師匠が背中をポンと叩き、まっすぐな視線で俺を見つめてくれる。
さっそくスキル欄を確認すると――お、よかった!ペイントの乾燥を待っている間に「絵描き職人」スキルのクールタイムが終わっている!
でもふと考える。小さなハート模様のためだけにこのスキルを使う必要があるだろうか?
このスキルは長いクールタイムがある。もっと重要な時のために取っておくべきかもしれない。
うん、決めた。スキルに頼らず、自分の手で描く!
ペンを手に取り、心臓の鼓動が耳まで響いてくるのを感じながら、靴の片方から描き始める。
落ち着け、自分。深く息を吸って吐いて、まずはハートの左半分を描く。次に右側――
よし!最初のハート完成!
そしてもう片方の靴も同じように、丁寧に描いていく。額から滴る汗が床に落ちるが、集中は切らさない。
「やった!小さなハートだけど、ちゃんと描けた!」
両手を上に掲げて、天を仰ぎながら叫ぶ。
「描けると信じてたよ。おめでとう」
トーマス師匠が誇らしげに微笑んでくれる。
こうして、ついにベアトリクスの特注シューズが完成したのだ!
【おめでとうございます、[Shoemaker]様
トーマス師匠と共にベアトリクスの特注シューズを完成させました!
あなたはレベル2に到達しました!
新スキルが解放されました:
《早期納品の匠(レベル1)》
▼現在のステータス
名前:[Shoemaker]
レベル:2
[スキル一覧]
・NPCの友達(?)
・絵描き職人(レベル1)
・早期納品の匠(レベル1)】
すごい……新しいスキルまで手に入った!