第18章 はじめてのメッセージと未来への誘い
ペントロウィアの店を出たばかりだというのに、彼女のプロフィールを何度も見返してしまう。
彼女は、ゲーム内で出会った初めての友達であり、そして、あの「世界市場ランキング」で百十三位に入っているほどの実力派の画家だ。
本当は、さっき直接いくつか質問したかったけど、トーマス師匠の課題を急いで終わらせたかったから、仕方なく靴屋に戻ることにした。
でも、どうしても気になるから、初めてのメッセージを送ってみることにした。
うん、他のプレイヤーにとってはただのメッセージ送信かもしれない。でも、初心者の自分にとってはすごく特別な体験なんだ。
歩きながら、画面でメッセージ機能を探してみる。ペントロウィアの名前をクリックしてみるけど……ん?またプロフィールが開かれるだけ?
もう一度クリック。……またプロフィール。
何度やっても同じ。
えっ、なにこれ……。
顔がどんどん熱くなる。恥ずかしさで顔が真っ赤になってるのが自分でも分かる。手で頬を触ると、やっぱり熱い。
【警告!
システムはあなたに同情しはじめました。
メッセージウィンドウすら開けないことに、システムは理解に苦しんでいます。
システムはあなたが本当に初心者であることを心配していますが、それでも全力でサポートし続けます。】
【以下の手順に従って、友達にメッセージを送りましょう。
▷ペントロウィアの名前をダブルクリックしてください。
▷開かれたウィンドウに「メッセージを送る」ボタンがあります。
▷それを一度クリックすれば、メッセージを送信できます。
※左側の「フレンド」タブで相手がオンラインかどうか確認できます。】
システムにまでバカにされた気がして、さらに恥ずかしくなる……。
ていうか、他のプレイヤーもこんな扱いされてるの?それとも、これは自分だけ?
最近、システムが自分にやたら親身になってる気がする。
でも、案内通りにやってみたら──
ついに!できた!メッセージが送れる!!
【ペントロウィアへ
こんにちは。
本当は直接聞きたかったけど、急いでたからメッセージで質問させてください。
まず、あなたのプロフィールを見て、店舗を持っていないのに世界市場ランキング113位って本当にすごいと思いました。
そんなあなたが、どうして自分にフレンド申請を送ってくれたのか気になってます。
それと、世界市場の仕組みについても全然知らなくて……。
実はこのゲーム、何も分かってなくて、本当にすべてが初めてなんです。
もしよければ、市場のことを少し教えてくれませんか?
それと……初めての友達になってくれてありがとう!】
送信ボタンを押す。……やった!できた!
思ったより簡単じゃん!
でも、ちょっと真面目すぎたかな……?いや、すぐには返信こないだろうし、明日には返事もらえたらいいかなって思ってた。
そのまま靴屋に戻ると、いつも通り誰もいない。
いずれはこの店で作った靴を世界市場で売って、稼げたら店の外観とか内装とか変えられるかも……。
プレイヤーにもNPCにも愛される場所にできたら、すごく素敵だ。
……まあ、トーマス師匠がそれを許してくれれば、だけど。
でも、やっぱりあの絵具屋の店構えに影響されたかもしれない。
今の自分の店が、少しだけ味気なく感じるようになった。
そんなことを考えていたら──
「ピコン」という通知音が画面の左から響く。メッセージアイコンが光ってる。
えっ、早っ!?まさか、ペントロウィアから!?
こんなすぐ返ってくるなんて……!
【ペントロウィアより:
こんにちは、Shoemaker。
まず、正直に話してくれてありがとう。自分も正直に話すね。
先に質問の二つ目から答えるよ。
世界市場のシステムでは、自分が作ったアイテムを自動で出品して、買ってくれる相手を探すことができるんだ。
つまり、自分の作ったものを全世界のプレイヤーやNPCに販売できるってこと。
でも……あなたにとって一番の壁は「職業」だと思う。
靴職人って、プレイヤーからあまり重要視されてないのが現状だから。
だからこそ、できるだけ高品質な靴を作って、それを売っていくことが大切。
仮に品質が少し落ちても、トーマス師匠のコネを使えば他の店に卸せると思うよ。
(私も同じで、師匠のドロレスさんのおかげで色んなお店に繋がってる)
それと一番大事なこと。
それは「★評価」!
この星の評価が低いと、どれだけ商品が良くても市場の下の方に埋もれちゃう。
だから、常に品質と評価を意識してね!
次に、なんでフレンド申請を送ったか──
これはすごくシンプル。
たとえ靴職人でも、他の職業でも、どんな人でも、ちゃんと努力すればトップを目指せるって思ってる。
そして、私は将来的に「このゲーム内で最強の職人ギルド(パーティ)」を作るのが夢なんだ。
そのときには、ぜひあなたを仲間に迎えたいと思ってる。
つまり、フレンド申請はその未来への投資──って感じかな!
あ、最後に一つだけ気になってること。
どうして自分で靴を作ってるのに、自分の足はまだ裸足なの?】
す、すごい……。
この情報量、どうやったらこんな早く打てるんだ……。
世界市場の仕組みもすごく分かりやすかったし、なにより──
“将来の仲間に迎えたい”
なんて、思ってもみなかった言葉だった。
次は、自分がこの期待にどう応えるか──だ。