第17章 虹色の店と絵のような出会い
靴屋の店とは違い、塗料屋に着くと外観がとても丁寧に作られているのが一目でわかった。なんと、壁の至るところに色とりどりの虹が描かれているのだ。さらに、ショーウィンドウにはさまざまな色の塗料缶が美しく陳列されていた。
中に入ると、思っていたほど混んではいなかった。店内を見回していると、ふと床に目が留まる。普通なら壁に飾られているはずの絵が、ここでは床に敷かれているのだ。
とはいえ、絵の上を直接踏むことはできない。絵と床の間に一層の透明な板が敷かれている。描かれている絵は、どれも絵を描いている人々の姿を写したものだ。
そして、店の中央にある外壁を塗っている人物の彫像に目が留まる。その像に近づいてみると、足元に古い木の板が置いてあることに気づいた。
「一つの色は家を変える。一人の塗装職人は世界を変える」
その木板に刻まれた言葉を見て、私はこの店の店主が本当に塗装の仕事を愛しているのだと理解した。
さらに店内を見てまわりたくなる。まるで「塗料の楽園」にいるようだ。どこを見ても塗料に関するものばかりである。
「えっと、何かお探しでしたら、お手伝いできますよ」
私は塗料の美しさに心を奪われていたが、カウンターの方から女性の声が聞こえ、ハッと我に返る。
声の主を見ると、トーマス師匠や革屋のアルバートとは違い、とても若い女性だった。
彼女は赤みがかったウェーブのかかった髪と、大きな黒い瞳を持っていた。白いTシャツとジーンズというラフな格好をしている。
「PentroWia」
彼女の頭上に浮かんでいる名前に目をやると──なに? プレイヤーだって!?
初めて店で働くプレイヤーに出会った。もしかして彼女も私と同じような学生か、それともこの店のオーナーなのか?
「すみません、靴に使うピンク色の塗料を探しているんです」
「靴に? もしかして靴職人さんですか?」
「はい、一応。まだトーマス師匠の弟子なんですけどね」
「なんと! このゲームで初めて靴職人のプレイヤーに会ったわ!」
「ははは、掲示板での靴職人に関する評価を見たら、それも納得ですね」
「本当にね。でもその勇気、尊敬するわ。それに、あなたの名前が「Shoemaker」っていうのも、靴職人への愛が伝わってくる!」
「ありがとうございます。ところで、あなたはこの店のオーナーですか? それとも見習い中?」
「残念ながら、まだ見習いよ。でも師匠のおかげで、塗料に関する知識はたくさん学んでるわ。いつか自分の素敵な店を持つのが夢なの」
PentroWiaの目は、その夢を語るたびにまるで星のように輝いていた。彼女もまた、自分の職業を心から愛していることが伝わってくる。
そうして私たちが話していると、もう一人の人物が別の部屋から現れて、PentroWiaの隣に立った。
現れたのは中年の女性だったが、その髪がとても印象的だった。まるで虹のように様々な色が混ざっていたのだ。
「やっぱりこの人が店のオーナーだ」と私は直感する。名前が表示されていないためNPCなのだろう。
「師匠、靴用の塗料を販売しようとしているんです」
「あなたが、トーマスの弟子なのね」
NPCの彼女──どうやら名前はドロレスというらしい──は私の方を見て、微笑みながら手で私の足を指差した。ああ、この感覚……デジャヴだ。
素足──。
素足を見れば、トーマス師匠の弟子であることがNPCたちにすぐに伝わる。このゲームの謎ルールには未だに慣れない。
その間に、PentroWiaが棚から大きなボトルを取り出す。中にはピンクの塗料が入っていた。NPCのドロレスと一緒に手際よく梱包してくれた。
「はい、欲しかった塗料がこれよ。それと、トーマスに伝えて。今度みんなで食事でもしようって」
二人とも、優しい笑顔を私に向けてくれた。
「ありがとうございます」
私も笑顔でお礼を言ったが、NPCドロレスの名前が依然として表示されていない。このままでは、彼女との親密度をもっと上げる必要があるのだと悟る。
【プレイヤー[PentroWia]がフレンド申請を送りました。
▷承認する
▷拒否する】
店を出ようとした瞬間、フレンド申請の通知が届いた。初めてプレイヤーとのフレンドになるチャンス。しかも彼女は塗装職人だ。
【おめでとうございます! プレイヤー[PentroWia]とフレンドになりました】
迷わず「承認する」をタップした私は、Pentrowiaのプロフィールをすぐに確認する。
【[PentroWia]
レベル:29
職業:塗装職人
世界市場ランキング:113位
評価平均:★8.25】
なに!? レベル29!?
しかも店のオーナーでもないのに、世界市場ランキングで113位!?
さらに、平均評価もかなり高い。きっとPentroWiaはとても優秀な職人に違いない──!




