第1章 秘密の始まり
家族に内緒で、今日ついにゲームを購入した。バレないように、夜中だけプレイするつもりだ。
「高校生の部屋を深夜にチェックしたりしないだろう……たぶん」
そう思いながら、『VRMMO: DREAM of WORLD』を起動した。
このゲームはリリースされて数ヶ月しか経っていないが、世界中で数百万人がプレイする最強VRMMOだ。
でも俺の目的は冒険でも、レベル上げでも、ギルド活動でもない。ただ、靴を作りたい――現実で許されなかった夢を、ここで叶えるんだ。
作った靴が誰かに気に入られて、喜んでもらえたら……それだけで最高に幸せだ。
だが、ゲームの説明書を読んで気づいたことが一つ。NPCの知能が異常に高いらしい。彼らと取引するには、まず信頼を勝ち取る必要があるようだ。
「よし、始めよう」
【キャラクター作成】
「ようこそ、『DREAM of WORLD』へ!
外見をカスタマイズするか、AIに任せますか?」
「自分で作るか……まあ、髪と瞳だけ変えれば十分だ」
金色の髪、青い瞳――現実の黒髪とは正反対のキャラクターにした。何だかワクワクする。
「次に、名前を入力してください。既存の名前は使用できません」
「名前か……よし、『Shoemaker』にしよう」
クールな名前も考えたが、職業そのままの名前の方がやる気が出る。
【職業選択】
画面に無数の職業がズラリ……。スクロールし続け、ようやくたどり着いたのが――『靴職人』。
「おめでとうございます! 準備が完了しました。ランダムな場所へ転送されます!」
「ああ、やっとだ……!」
【ゲームスタート】
目を覚ますと、簡素な部屋のベッドの上だった。すぐ横には鏡が置いてある。
「これが初期装備か……?」
映ったのは、自分が設定した通りの姿。だが服は質素なシャツとズボン、足は裸だ。
部屋には鏡とベッドしかない。
その時、突然通知が浮かんだ。
【管理者『ショウ』からのメッセージ】
「おめでとう、『Shoemaker』君!
君はこのゲームで3人目の靴職人だ。だが、前の2人はすぐに辞めてしまった。
フォーラムでは『靴職人はクソ職業』『時間の無駄』と叩かれ、誰も選ばなくなった。
――だから、君が選んでくれて嬉しい。
どうか、諦めないでほしい。応援しているよ」
「……へえ、俺が唯一の靴職人か」
むしろチャンスだ。この世界で靴職人の価値を証明してやる。
【最初のクエスト】
「親方トーマスに会い、弟子入りせよ」
「よし、まずはこの『トーマス』を探すところからだな」
通知が突然出るのはゲームの仕様か? それとも……?
疑問を抱えながら、俺は部屋を出た。