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異世界のアサシン~歴代最高の暗殺者は転生後も暗殺する~  作者: シュカ
ChapterⅠ:デリック王国
1/3

Prologue:生と死

『こちら、制御班。ターゲット宅のセキュリティを解除』


暗闇の中で一つの機械音がこだまする。


「了解、突入する」


その声と共に暗闇から一人の男が現れた。


男は全身を黒コートにつつみ夜の闇に溶け込んでいる。

大地を颯爽と駆け抜け、家の塀から侵入した。


「こちら、ヴァイン。ターゲット宅に侵入完了」


男はヴァインと言った。

彼は歴代最高の暗殺者だ。

与えられた仕事の成功率は100%、どんな相手がターゲットでも必ず殺して見せる。


『こちら、監視班。ターゲットは2階にいる模様』


ヴァインはそれを聞いて家の上の方を見る。

直ぐに、窓が空いている場所を発見した。


「了解」


そう言って、彼は二階のテラスまで跳躍する。


ヴァインがこっそり部屋の中を覗くも中には誰もいない。


『こちら、監視班。ターゲットはその扉の先にいる』


それを聞いて、ヴァインは部屋の奥にある扉を見る。


「これより作戦βを実行する」


ヴァインは扉を静かに開いた。

が、そこには誰もいなかった。


「ターゲットが見当たらない」


『……』


ヴァインがそう問いかけても誰も応答はしない。


「監視班、ターゲットはどこだ」


もう一度問いかける。


『……ターゲットはお前だ…』


それを聞いてヴァインは察した。

窓の外を見ると、眩く光る一つの物体がこちらに向かっていた。


「ふっ……、これまでか…」


裏切られたのだ。

長年仕えてきた者たちに。


一直線に向かってくる物体はアメリカ軍が開発した空対地ミサイルAGM - 12 ブルパップだろう。

あれが着弾すればここ一体は吹き飛ぶ。

逃げようにも手遅れだ。

もうミサイルはここまで数十㎞の位置まで迫ってきている。


「暗殺者として生きた人生も捨てたものではなかったな…」


ヴァインはぼそっと呟き、赫々(かくかく)たる光に消えていった。


***


目を開くと、そこには何もなかった。

あたり一面、銀世界のように真っ白だった。


いや、そんなことはどうでも良い。

確かに、俺は先刻殺されたはず…。

あのミサイルにあたって無事で済むとは思えない。


『はい、貴方は確かに暗殺されました』


俺が状況分析をしていると、一つの声が脳に響いた。

その声は極めて優しく、調子は温かで、目を瞑って聞いていると、あたかもそっと柔らかに抱かれるような心持ちがした。


「誰だ?どこにいる?」


俺が問うと優しい声の主は答えた。


『私は女神。女神”アテナ”です。訳あって今は貴方の前に現れることは出来ませんがご了承ください』


女神アテナ…。

この界隈の人間でも神の名ぐらいは熟知している。

こいつは戦いと知恵の女神だ。


「そうか、だが話すことは色々とある。そうだろ?」


神といってもそこまで暇な訳ではないはずだ。

だから、俺のように死んだ者にいちいち声をかけるようなことはしない。

つまり、俺への特別な関心があるのだろう。


『お察しの通り、貴方は特別です。ここに呼んだのには理由があります』


「ほう?その理由とやらを聞かせてもらおうか」


俺がそう聞くと女神は淡々と答えた。


『貴方にある人物を殺してほしいのです』


やはりか。

俺をわざわざここに呼ぶということから暗殺関係ということは薄々感づいてはいた。


『もし、この依頼を受けてくださるというのならば、私の特権で貴方に力と知恵を授け、転生してもらいます』


ふむ、なるほど。興味深い提案だ。

前世では人を殺める道具としてこき使われ最終的に雇い主に裏切られて死んでしまった。

そのミスを糧にして次の人生を歩めるのならば悪くはないな。


「それで、ターゲットは?」


『暗殺対象は”魔王神タルタロス”です』


また、神か。

なぜか神を殺すことに恐怖心を持っていない自分が怖い。


「神を殺すというのはそんなに簡単なことなのか?タルタロスは確か奈落の神だ。真っ向から向かって勝てないから、俺に依頼をしたのだろう?」


俺がそう言うと女神が笑った気がした。


『流石、私の見込んだ人ですね。その通りです。正面からタルタロスに向かっても普通の人間なら彼の領域に侵入した瞬間、高濃度の魔素により肉体が蝕まれ死に至ります。もちろん、勇者や一部の人間は魔素への対抗力がついておりますので死に至ることはありません。ですが、タルタロスの力は彼らの力を大きく凌駕します。その為、貴方をこちらに呼んだのです』


俺はその話を聞いて眉をひそめた。


「すまない、魔素やら勇者やら聞きなれない言葉が出てきたが俺の転生先はどんなところなんだ?」


『そうでしたね。今からあなたの脳へ直接情報を送ります』


女神がそう言った瞬間、俺の頭の中にその世界の常識や(ことわり)が流れ込んできているのを感じた。

脳が焼かれるような痛みに耐えながら俺は情報分析を行う。

そのおかげか分析の過程で分かったがことが幾つかある。


勇者という、他のものより優れたステータスを持ち合わせた存在がいること。

転生先の世界はタルタロスによって掌握されているということ。

だが、タルタロスは今は眠っており、次に目覚めるのは15年後ということ。


「ほう?なるほど。面白いな、魔法が存在するのか」


『はい、あなたの転生先では魔法が日常的に使われています。その為、あなたにはスキルを幾つか授けたいと思います』


スキル…。

誰もが生まれた時に女神に授かるといわれている恩恵のことだ。

凡人は普通Eランクのスキルを数個授かるが、勇者レベルにもなるとSランクやAランクのスキルを授かる。


「それはありがたい。どういうスキルだ?もちろん、ランクは高いんだろうな?」


そう、スキルは生きていく上で一番重要なものと言っても過言ではない。

等級が低いスキルならば、将来の選択肢は農業経営か牧場を営むかしかないらしい。

後になっても新しいスキルは手に入るが、モンスターを倒さなければいけないので等級が低ければどちらにせよ不可能だ。


そういった意味でスキルはとても重要だ。

ましてや、俺は魔王神の暗殺を依頼されている。

これでEランクからBランクのスキルならば話にもならないだろう。


『はい、魔王神の討伐を受けてくださるのならばA級スキルとS級スキル、加えてSS級スキルを貴方に授けます』


「SS級スキルだと?先刻もらった情報にも、そんな等級は存在しないが?」


『SS級スキルはS級スキルの上の等級で、御伽話の中にしか出てこないような伝説のスキルです。魔王神を倒すならば、これくらいは無いといけないということです』


これは好都合だ。

SS級スキルならば魔王神を倒すのにかなり役立つはずだ。

それに魔王神を倒す前に名声も手に入る。


『依頼を受けてくれますか?』


俺は即答した。


「ああ」


こんなにおいしい話を逃すバカはいない。

俺の暗殺者としての血が(たぎ)る。


『ありがとうございます。それでは今からスキルを授けます』


「頼む」


俺が答えると、体がほんのりと熱くなった。

それに不思議と力が漲ってくる。


数分後には俺の体は前世とは比べ物にならない位に強くなっていた。


「これは……、すごいな…!」


『貴方にぴったりのSS級スキルを授けました。後で確認してみてください。ああ、それと言い忘れていましたが、魔王神タルタロスが世界を征服できたのには大きな理由があります』


女神が俺に語りかけるように言った。


「だろうな、お前がタルタロスのことを良くなく思っているのだから、他にも面白くないと思っている神がいても不思議ではない。その逆も然り、タルタロスに協力する者もいるのだろう。確か、お前は神の中でも高位な者だったはずだ。そのお前が手出しできないということはお前と同等の地位を持つ者、もしくはそれより上位の者がタルタロスのバックについている。そうだろ?」


女神アテナと言えばオリュンポス十二神の一柱だったはずだ。

これより上の位など存在しない。

つまり、女神アテナと同じオリュンポス十二神の過半数が魔王神タルタロスを支持しているのだろう。


『その通りです。オリュンポス十二神の内十人が彼を認め、支持しています』


「十人もか?!」


12人中10人か……。

大分劣勢だな。

女神が自分でタルタロスを倒しにいけないのも納得だ。


「反対したもう一人の神は誰なんだ?」


そいつ最高神ゼウスなら話は早いのだがそうではないのだろう。


『月と狩猟の女神”アルテミス”です』


やはりか。

アテナとアルテミスはお互いに永遠の純潔を約束しあっている。

こういう場面で絆の強さが際立つのだろう。


「そうか。頭に入れておく」


『はい、お願いします。15年後、タルタロスを討伐すべく力をお貸しください』


「力を借りてるのは俺の方だがな…」


俺がそう言うと女神は少し笑った。


『それでは転生させます。それなりに裕福な家に転生させるつもりですが、赤ん坊なので色々と不自由もあるでしょう。くれぐれも訓練を怠らず頑張ってください』


女神がそう言うと、俺の体が(ほの)かな光に包まれ光の粒子となった。


俺は今から新たな体に生まれ変わる。

次の人生は後悔のないように生きたいものだ。

魔王神の討伐にオリュンポス十二神との対立。色々と考えることが多い人生になりそうだ。

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