魔界救済
元魔王城
もう何もかも吹き飛んでしまい、丘の上に立っていた魔王城跡は、窪地で土砂まで持って行かれて、一部高熱でガラス化していて酷いことになっていた。
グツグツ煮えている所もあり、大半は物理法則が違う宇宙の彼方に放逐されていたが、膨大なエネルギーの塊が通過した現実は隠せない。
しかし上空に光点が出来ると、それは次第に海魔の形を取り始め、大きなクジラ型になり、ぼんやり光りながら実体を伴い始めた。
「ヤベエ、こいつ、この星が存在する限り、強制で復活させられるタイプの魔王じゃねえか」
これで完全復活でもして、襲い掛かってくるようなら、亀仙人かフリーザみたいにかめはめ波でこの星ごと砕いてやらないといけない。
『…… し……』
再生がほぼ終わった魔王は、ピクピクしながらも何かホザき始めた。
『シテ…… コロシテ…… コロシテ……』
断末魔の望みを言っていたようで、余りの回数ぶっ殺されたので、心は圧し折ってSAN値も削り倒していたようで勝った。
死にかけのオッサンの口に耳を持って行ったので、デギンザビごっこをするノルマが発生したので実行した。
「は? わたくしなどを後継者にと?」
俺の職業は「大魔王」に変更された。
これでも数百回前魔王殺してミッションコンプリーツだったが、最初に起こった災害か何かと、人間領域にゲートを開いた理由を聴取しなければならない。
悪天候の中から、会話できる程度の所に魔王をしょっ引いて行って、ストーンゴーレムのまま正座でもしながら、膝を着き合わせて会話。
四畳半でちゃぶ台座布団付きならメトロン星人だが、敵対した状態なのでザラブ星人ぐらい。
『まず、勝敗は決したと思う。最初に人間世界にゲートを開いて侵略した理由を教えてくれ』
『あ、あれは数十年前、天から魔石が落ちて来た。それも浄化の炎をまとった大聖石ともいえる物が……』
まだ青息吐息のオッサンは経緯を語って行った。最近流行のロリババア魔王でも、ょぅじょ魔王でもないらしい。
『魔界の瘴気を全て浄化してしまえるほどの魔石、我らは何かに利用できないか、封印できないかと考えたが、どんどん星を浄化して行き、近寄った者は死に果て、気付いた時には星の正反対に出口と言うか、ゲートが開いておったのだ』
こいつらは自力で転移ゲートを開けない?
どうやら悪趣味な奴がいて、駅舎の汚水ピットに殺虫剤か何かを放り込んで、汚水の排出口からゴキブリがうじゃうじゃと出てくるのを観察して、客がキャーキャ泣き叫んで逃げる所を楽しみ、スマホで録画してSNSに投稿した馬鹿がいたらしい。
『住めなくなった場所を捨てて、我らは救いを求めるように出口を出てみた。多少気候は違うが、瘴気を送り込んで農作業をして、そこに住んでいる者達も食料として、どうにか生き延びて来た。しかしそれも終わり、こうして討たれたからにはもう生きて行くこともできまい。殺せ、我ら魔族ことごとく討ち果たして首級を上げよ、それが魔石を撃ち込んできた者達の望み、魔族の存続を断とうとして来た奴らの望み』
ん? こいつらも被害者じゃねえかよっ。
『待て、お前達は自力で転移ゲートを開いたんじゃないんだな?』
『そうだ、追い立てられるように住処を捨てさせられ、唯一生き延びられる場所へと出て行った。巨大な者は生きることを諦め、後に続く者達の礎となり、暦砂として死ぬことに決めた』
魔族を追い立て、人間世界に入り込むように仕向けて、魔界と人間世界両方を滅ぼそうと画策した奴がいた。そいつは誰だ?
『そういうことは早く言えっ』
『は?』
『俺はレベルを上げ過ぎて転移ゲートを開けるようになった。お前達が移住可能な星をやろう、まずはそこに移住してくれ』
『ひ?』
『その大聖石とかも取り除けるなら持って行ってやろう、少々大きくてもレベルだけは上げて来たから、沼の大きさには自信がある』
星サイズとか月サイズなら困るが、ジャイアントインパクトみたいに火星サイズの惑星が、重爆撃期の熱い地球の上をかすめて、両方ともドロドロに溶けるほど合体して、コアが無い月が残って、両方のコアは地球の下に沈んだりしない程度の被害だから、運搬可能なサイズ、と思いたい。
意味が分かったようで、魔王はエルフの長老みたいにドバアアアアアッ! と泣き始めた。
『キュウセイシュ~~~ッ! 我らを滅ぼそうと来たとばかり思っていた人間共が、我らに居住可能な星を~~~っ!』
サイズがデカいから声も五月蠅い、ここでも俺は救世主扱いされた。
こっちの世界は昼か夜か分からない状態だが、魔王が通れるぐらいの転移ゲートを開いてやると、昼間の恐竜世界が広がった。
『こ、これが新天地……』
魔王は涙と涎と鼻水でグチャグチャのまま、ヨロヨロと恐竜世界にダイブして、地面にキス、でもしたように見えた。
瘴気で汚染された世界、と言う物は探したことが無かったが、これから探してみよう。
住人が必要だが大半は沼の中。またもホムンクルス大量作成の上、善人だけを復活、魂を入れて千年近く生きられるように加工。
惑星ソラリスになって液体酸素飲み続けて「ちが~~~うっ、また私の体じゃない~~~、どうして眠らせてくれないの~~~っ!」の地獄絵図にならないように調整。
家族単位、親子で一緒に排出。この状態なら瘴気が無くても生きられて、食わないでも死なない。
『おお、黄泉の国から魔族の戦士達が……』
また急遽、もののけ姫に出て来るモリシゲのモノマネして「帰って来た~、黄泉の国から猪の戦士達が帰って来た~~」と言わなければいけない状態に。
ホムンクルス同士なので、綺麗事ばかり言っても気付かない。
親の思い通りよくできた子で、子供の見本になるような「尊敬される父親」な~~んて物はこの世に存在しないが無理くり作成。
脳幹の上に新しい大脳皮質を乗せた、矛盾しまくりの思考回路の上に立って、コンビニの店長やら飲食の店長みたいに、自分の欲望丸出しの要求が、世間が要求しているスキルだとか勉強だと勘違い基地害しているのが親と言う存在。
これがホムンクルスだと、脳幹と言うホヤが連結したレベルの本能や感情的すぎる指示はなく、一体構造の思考回路から、矛盾なく指示が出て、その通り行動すれば良い。
明らかにアタマオカシイ、脳幹や古い大脳皮質の命令に、無理矢理すぎる理由付けしてキチゲ解放しないでもいい。
抑えがたい情動とやらの、無理矢理な命令に従わなくてもいい。
『もう大丈夫だ、父さんがいる』
『お父さん』
『これでもう安心だ、一緒に帰ろう』
『父ちゃん』
沼に嵌めた連中がどこかに帰って行く、予めこうなるように決まっていたのだろうか?
子供達に生殖能力が無いのが気になるが、いつか奇跡でも起こって、千年に一度や二度の出産行動も可能になるのかも知れない。
その方がいつもいつも性欲に振り回されないで済む、夫には家を建てさせて自分の巣作りに利用して托卵するATM奴隷ではなく、愛する家族に。
妻は家事専用の奴隷ではない、子供を産む機械でもない人生。
母親たちも出征していた父親と合流して、子供達も一緒に旅立って行く。
その姿を魔王も満足そうに見入っていた。
『ああ、子供達が旅立っていく、試練の道を超えて、新たなる新天地へと、おお、邪神よ……』
暖かい場所に建物の外側だけでも建設してやる、ドアとベッドの寝藁やシーツと布団は用意してくれ。
『もう一つ、瘴気で覆われた星が見つかった、そちらはまだ生きている魔族に』
まだ滅ぼしていなかった四天王や二十八部衆の支配地域にもゲートを開く。
人間世界の魔族領域で、滅ぼしていない場所にも逃げ込める場所を。
『人間世界に行っている者達にも、瘴気がある世界に旅立つように声をかけてやってくれ』
『おお、救世主よ……』
魔王はデカい体で器用に五体投地した。
リッチ連中には聞こえているだろうが、マリオ君からすると信じられない光景だろう。
被害者側とは言え、人類を殺し尽くして来た魔族が許され、新天地まで与えられて旅立っていく。
家族を奪われた元細菌研究所の連中には、許しがたい暴挙かも知れない。
あちらと合流すれば、一戦闘ぐらい覚悟しておくべきか?
沼の中から魔族が起き上り、億単位で渋滞せずに立って歩いて行く、経験値は減りはしなかったが、死骸兵として地獄の底で使役されていた連中が許されて地上世界へと帰って行く。
カルマ値が回復して行き、貧民街やスラムのクズを殺した数値だけが残る。
魔王と話していた場所からさらに後方、リッチ連中を待たせていた場所に向かう。
「これから俺は、魔王と共に始まりの時、聖石が落ちた場所へと行く。誰が投げ込んだ物かは分からないが、多分故意だろう」
聖石を撤去しようとすると、汚水ピットに殺虫剤ぶち込んだ基地害と戦う羽目になるかも知れない。
それは人知を超えた超越者だろうが、地下の汚水層やゴキブリまで認知できない存在かも知れない。
希望的観測過ぎるが、ゴキブリ如きが僅かな抵抗するのを、笑って見ているだけかもしれない。
「魔族を人間世界に送り、滅ぼそうとした者。家族を殺された諸君には耐えがたい行動かも知れない、が、始まりの事件を解決して、原初の聖石投下の事故までなかった事にすれば、魔族が侵入して以降の全てを無かった事に出来る」
リッチ連中でも理解できない出来事かも知れないが、王国の数々の滅亡すら無かった事に出来る。
観測者が少なく、今の住人はごく少数で、地上に魔族が生き残っていない現状なら可能。
「無くした故国を取り返そう、無くした家族を取り戻そう、俺なら時間を遡って原初の事故までなかった事に書き換えられるっ」
後は全員が理解できるかどうか、理解不能なら魔族は許されないし、理解できたのなら家族を取り戻すことも可能だろう。
「「「「「「「おおお~~~っ!!」」」」」」」
高レベルで知能も高くて理解できたのか、この場のノリだけなのか、信用があって信じてくれたのかは不明だが、賛同は得られた。
「故意に聖石を投下した者との闘いになる可能性もある。その場合この惑星は崩壊するでしょう。その前に皆さんには、一足早くこの場を離れ、現世、人間世界に帰還して頂きます」
「そんなっ、最後まで付き合わせて下さいっ」
そういうが「奴は四天王の中で最弱」なマリオ君を連れては行けない。騎士団長も即死するのでムリ。
リッチ連中にはこの後家族と再会できるシナリオがあると明記しておかないと「お供します」と死んだ目で言われるので死亡フラグ。
「祖国に帰って待っていて下さい、きっと家族と再会させてあげます」
「は、はい……」
苦渋の決断で帰ることに同意したリッチ連中。
こういった行為をすると、アルティメットまどかさんみたいに「現象」に書き換えられるのが普通だが、それもまた良いだろう。
これが因果の果てる場所、縁の起こりが始まった場所。
転移ゲート
分体を使って同行者全員を連れて転移、魔族が最初にやって来たゲートをこじ開けて、全員を現世へと戻す。
巨大ストーンゴーレムは通過できないので、そのまま魔王城跡に放棄。
「帰って来た、ここが現世か……」
「他の連中と別れた場所まで」
「始まりの場所」
今度こそ、この連中にとってはミッションコンプリーツ。魔王討伐は出来ていないが、数百回殺してから復活したので心は折れている。
「騒がしいようだが俺は一旦ここでお別れだ、皆さんは一旦サイケラス王国の王都に行って貰う、故郷が別にある人物は申し出て欲しい。俺は数十年前、ここにゲートが開く瞬間にまで戻る」
「「「「「「「ええっ?」」」」」」」
マリオ君はリタちゃんに会いにサイケラス王国に、騎士団長は聖国に行って貰った。
魔王城跡
こちらも転移すれば早いのだが、力技で巨大ストーンゴーレムが必要になるかも知れないので、現地に案内する気満々の魔王ユニットにスタックして機械化移動。
全長80メートル程の海魔の魔王にストーンゴ-レムを跨らせ、ネバーエンディングストーリーかムーの白鯨ぐらい移動。
『キューセイシュー、行くぞおおっ』
『おう』
体力が回復したのか、やたらやる気を出した魔王が全力全壊。
魔星の裏側にあると言う魔石、大聖石の有りかに向かう。
沼とホムンクルス生産はそのまま放置、億単位の住人が出て行けば自動的に閉じるだろう。
人間界に放置され、碌に食料も無かった棄民達も、人間に襲撃されるか沼入りして死滅させられる恐怖から逃れるために一旦新天地へと。
やがて、魔王の案内の元、聖石の場所へと辿り着いた。
「これ、デーモンコアじゃねえかよっ」
それは上空から投下されたにもかかわらず、地面に落下せず、まだ浮いていた。
巨大すぎるそれは、明らかに有害なチェレンコフ光に包まれ、膨大な光を照射し続けていて、魔界と瘴気を浄化し続けていた。
最初は未来の自分が犯人かと疑った、しかし魔族を滅ぼして人間世界を襲撃させる意味がない。
でも魔力を練り込んで、単結晶で取り出す手法は同じ、制作レシピは俺のと準拠している。
『まず、この有害な光をどうにかしないと』
土魔法で聖石を囲み、有害すぎる光をどうにかする。封印してしまうだけなら楽だが、この作業に意味はない、過去に戻ってこの因果を断って来なければならない。
『俺は過去に戻って、この聖石が落とされた日にまで戻る。この事故で事件自体を無かった事に変えて来る、そこで待っていてくれ』
『お供する、我もその瞬間を確認したい』
『いや、多分ムリだ、過去にもお前がいて、魔王城にいたかもしれないし、聖石が落ちたのを確認しに来たかも知れない、その場に二人の魔王が存在してはならない』
コイツには理解できないかも知れないが、時間変更、転移ゲートを開ける存在は俺だけ。
俺は分身体以外にも同時存在がいても、時間や空間から拒否されない。管理外の存在だからだ。
でも魔王は管理されている範囲の存在。
まず転移ゲートを開いて、魔界の過去への扉を開く。俺は越えられるかもしれないが、多分魔王は拒否される。
『開け過去への門、このデーモンコアが出現したその時へと』
大きさも俺とストーンゴーレムが通れる程度に、魔王を拒否する必要はないが、時間改変を許可されている存在ではない。
『おお、通過できぬ』
やはり魔王は通過拒否された。でも俺なら?
魔界、過去
天から光り輝くデーモンコアが落ちてくる、落下したが一度着底したぐらいで、全エネルギーを放出せず、その場に浮いていた。未来で見たのと同じ。
「よくぞ来た、小さな生き物よ」
来ちゃったよ超越者。
超越者からのお目こぼしとか、小さすぎて認識できないと言うオチは無かった模様。
早速検知されて、デーモンコアの出現阻止は、許されていない事項のようだ。
「魔族の破滅と、人類領域の破滅を無かった事にしたい」
素直に要求を伝えてみるが、相手の逆鱗に触れないようにしないといけない。
イデオン的な絶滅エンドだけは避けたい。
「それは叶わぬ夢だ、汚染されている魔族は滅びねばならない、人間もまた同じ」
「出来るだけ清潔にはした、魔族も今後清潔にしよう、それでも駄目か?」
「この世にはやってはならない罪がある、弱小な少数民族の滅亡。お前の世界ならエルフや獣人の滅亡だ。狩り過ぎて絶滅させると、それを実行した民族も抹消される」
エルフはまだ消えていない、しかし討ち減らされて滅亡の危機。
「地球でもホビットと呼ばれる人類は滅びた、ネアンデルタール人もデニソワ人も滅びた」
「彼らは遺伝の中に残って去った、地球人類もまた何度も滅ぼされて消えた」
頑張れ俺のプレゼン能力、神を目の前にしても要求を通して見せろ。
「猶予を頂きたいっ、魔族も悪人は消した、人類も悪人の目は摘んだ、今後サディストの自由にはさせないっ」
「ふむ、サディストこそが生物としての正しき姿、それを変えようと言うか?」
「はい、今後奴らの思い通りにはさせません」
「……良かろう、千年の猶予を与える、現状を変えて見せよ」
どうにかプレゼンが通った模様。でも千年しか無い。奴らからすると千年など瞬きでもするような時間なのだろう。
超越者は去った、俺が何でこの立ち位置にいられるかは聞けなかった。
まずは落ちて来たばかりのデーモンコアの回収。
「ハア~~~、ドッコイシュョ~~~、ユッコラシュオ~~~、ヤ~レン~ソ~ラン、ワッショイ、ハア~~、ドスコイ~~ドスコイ~~(ヘブライ語)」
有害すぎるデーモンコアから、せめてチェレンコフ光を奪う。
鉛で囲んでも金に変えて行くほどの放射線を囲んで消す。
次に沼に嵌めて回収、これで時空を定着できれば、無傷の魔族領域が発生する。
成果を確かめに、魔王がいる現代へと。
魔界、現代
『どうであった? キュウセイシュ?』
目の前にあったはずのデーモンコアは消えていた。過去に落下した時点から無かったはずだが、魔王はその存在を観測している。
『超越者から猶予を貰った、たった千年だが』
『千年?』
非常に短いが、人の人生の営みが数十回行える。
周囲はどうなった?
『おおっ』
『これは』
デーモンコアに除去されなかった者、浄化されて消えなかった者、食料が無くなって死ななかった者、この場にいられなくなって惨めに難民となって、棄民として人間領域に捨てられなかった者達が大量に現われ始めた。
『キューセイシューッ!』
魔王がしがみ付いて来て、魚臭い息を吐きだした。
俺達が破壊しなかった都市、破壊する必要が無かった都市が再生して行く。
四天王も二十八部衆も順次復活し、一部不整合はあったが「オーロラの彼方に」レベルで再生して、消防士だった親父さんまで死なないで、ショットガン持って再生。
魔星は再び命溢れる星になって行った。
『魔王、超越者から聞かされた、少数民族は殺し尽くしてはならない。数が少なく弱い生き物でも、奴らは超越者が仕組んだ罠だ、絶滅させられた時に聖石が落ちてくる。一緒に魔族全員も絶滅させられる』
『なんと? 弱き者も駆逐してはならぬと?』
思い当る節があるのか、弱者を絶滅させると魔族全体が亡ぶと認識させられた魔王。
転移ゲート、過去
ここを閉じればすべての因果が断てる。
人類領域に魔族は「来なかった」。国は滅びなかったし、人々も殺されずに済み、食料にされずに済んだ。
俺も召喚されずに済んだはずだし、召喚者全員も集まらなかったし、聖国に魔石が寄付されて召喚その物が行われなかった。
俺と言う存在も消えるのかも知れないし、やっぱりアルティメットまどかさんみたいに現象になるのかも知れない。
貰ったはずの千年の猶予を伝える人物がいないが、最後の望みとやらで伝わるかも知れない。
そのためにマリオ君やリタちゃんを救った。思いは伝わるはずだ。
「転移ゲート閉鎖、施錠、過去現在共に通行不可」
魔界との転移ゲートは閉じた。一瞬解放されたが、魔族は一人も「通行しなかった」。
誰も通らなかった事は観測された、この俺、特異点で変異の中心が観測をした。
全てがこの結論に向かって収束していくことだろう。
何もかも全てが光に包まれて消えて行った……
サイケラス王国王都
人々が帰って来た。ここに魔族被害はなかった。誰も殺されず、国も滅びなかった。
観測者もいなかったし、過去改変は成功した。ここに被害者の全てが戻って来て、リッチへと変貌していた家族と再会を果たした。
細菌研究所にいた連中も帰国を果たして、家族と再会できた。
「お前達っ!」
「貴方っ!」
「父さん」
もっと奥地で、魔族に統率されていた場所、魔国に帰ることもできず、立ち往生していた連中も、新天地へ向かえた連中も、この土地を捨てて移動。
元の住人を迎えて土地に定着して、並行世界として分岐もせず、全住民が帰って来た。
聖国や皇国では、兄が出征して死んで弟と結婚させられ、その子が産まれてしまっていたので、数世代経って定着できず拒否され、並行世界として分岐して行った。
でも一度接近してきた世界の事は感知できただろう。
魔族が来ず、誰も殺されなかった世界。度々送り込んだ軍事行動も達成できず、全てが殺されて食われなかった世界。
それらが近付いて来て、魔王が滅せられたか、魔界で事の起こりが消去されて、全てが無かった事に書き換えられたのが察せられたはず。
最早神の所業だが、世界の書き換えは完了した。
一度滅ぼされたはずの隣国で敵国が復活していたり、飢饉で滅んだ諸国が復活していたり、オーガスみたいなパッチワークの世界になっていたが、世界は革命されてアンシーはウテナ様を探す旅に出た。
世界は革命された。
疾病対策センター
「あ、魔王に勝ちました。魔界も救って人間界も救って、超越者にも会って千年猶予を貰えました」
「ついに…… 魔王にまで」
「魔界を救った? 人間界も……」
全てを無かった事には書き替えられなかったが、一度接近して来た世界によって、どのような事情があったかは全住民の知る所となった。
余りにも途方もない内容で、理解できない者の方が多かったが、奥地の国に帰国した者達や、復活した隣国を検知できた者は何が起こったのか認識できた。
家族と再会できた者、未だ帰国が敵わず家族とは再会していないが、生きている家族が故郷にいると多くの物が認識できた。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ウェ~~~~~~~~~~~~~イッ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
また急遽飲み会、帰国すれば家族に会えるのに飲み会に参加する勤務医までいて、歌って踊って戦勝パーティー。
「魔族どもも救ってやるとはどういうことですかあっ? あんな奴ら救う必要なんかないっ!」
絡み酒なのか、魔族を救ったのが許せないのか、何度「原初の事件の理由を断って来ないと奥地の国もサイケラス王国も救えなかった」「魔族滅亡のために落とされた聖石を消さないと、最初に開いた転移ゲートを開かなかったことにしてこないと、死んだ人の復活までは出来なかった」と言っても、普通の人類には理解不能だった。
「あんたが勇者だっ、救世主だっ、さあっ、飲んでくれっ!」
「勝ったっ、ついに魔族に勝った~~~~っ!」
超越者に千年猶予を貰っている状況と認識できる者は、勤務医の中にも少なかった。
このままでは少数民族を殺してしまう? 魔族も人類も共に抹殺。
小一時間宴会をしていると、俺抹殺の指示を受けた兵団が来ること来ること、その数五千人。
王宮から「丁重にご案内しろ」と言っても、貴族の親父が首をトントンとして「輸送中に殺して来い」と指示を出して、ニヤニヤ笑う奴らで一杯。
そんなもん不可能なのに、貴族子弟の第一騎士団が全滅。脳筋の隊長がいくら「引っ立て~~~いっ!」と言っても全員沼入り。
一人残らずゴミクズのレベル50程度のくせしやがって、レベル12億の大魔王を相手に出来ると思い込んでる奴で一杯。
そうこうしていると、いつもの三十路ビバンダム姫が自分で乗り込んできて、俺に事情聴取。
だから督戦隊として第三騎士団長連れて行って、後方から監督させて何が起こったか全部見せてるだろうがよ。
平民の言う事がそこまで信用できないか?
第三騎士団長王宮に放り込んで、督戦内容言わせてるだろうがよ。
「面白い」「続きが気になる」と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。
画面下に評価がありますので、評価して頂けるとポイントが入ります。
ランキングが上がる、感想を頂けるなど、とても励みになりますので、よろしくお願いします。




