第92倭 帰還せしカムイとパィエカイ=クル達
ミケヒコは無事に還ってきているようです…
「…ここで…こっちで…こう、こうだ…!」
ミケヒコは根源の国の社を後に元の世界へと還っていった。
「…あ! 戻ってきましたね!」
一番最初にヤチホコが戻ってきたミケヒコを見つけてそう言った。
「…待たせたな…! 今無事に還ってきたぞ! こちらでは…どのくらい刻が経ったか?」
「行ったのが…クンナノで…今は観ての通りシロヌマンです♪」
「…! それしか…経っていないのか…!」
「あ、でもきっとミケヒコは…何回もスクス=トイとシリクンネを過ごしてきたのですよね?」
ヤチホコは自身の経験を思い出し、そして目の前のヲノコを観ながらそう応えた。
「…そうだ。かなりの刻を過ごしたと観じたが…?」
「そうでしょうね♪ だってほら! 前よりも背が伸びています♪」
ヤチホコは微笑んでそう応えた。言われて辺りを見回したミケヒコは…視線の高さが変わった事に気づいた。
「無事還ってきたね~おかえり~♪ って、ミケヒコくんすっごいコトになってないソレ?」
ひょっこり顕れざまにミケヒコを見て変貌ぶりに驚いたミチヒメはその様に伝えた。
「あ! ホント! ボクのずっとはるか先みたいだね!」
スセリもそう言って驚きを伝えた。
「…確かに…だわ! やったじゃない、おめでと♪」
キクリもそう言の葉をつなげた。
「これでカムイ三柱。今なら他のモノ共々イネ=ルーガル=アンへ行ける」
アマムもミケヒコの成長を目の当たりにして感心するも、信じていたから当然のこととして現状を伝えた。
「そう言えば…この間はメル=ストゥ=マゥェ遣えしモノ三名以上で全員通って良いと言われてイネ=ルーガル=アンへ昇りましたね…。そのあとはご存じの通りでしたが…」
「それも変。カムイ三柱はエカンナイからのイレンカ。覆るはずがない」
「…あの刻は何でよかったのでしょうね…?」
「…アンに住まうどなたかにとっては都合が良かったのでしょうね…」
二人の会話にオオトシがその様に応えた。
「哥哥、それではカンナ=モシリにボクらを阻むモノがいると?」
「…おそらくはそうだと思います…」
「む~! わたしたちの行く手を阻むのなら…こ~よ♪」
ミチヒメは冗談めいて軽く拳を突き上げ応えた。
「…オマエなら本当にどんなカムイにもソレを喰らわしそうだな!」
ミケヒコも納得したようにそう応えた。
「あら、それって…ほめてくれているんだよね? ミケヒコくん…いやさホアカリさま~?」
「ああ、もちろん。力量にかかわらずイレンカ貫き通す為突き進むその姿は…見習うべきピリカさだとオレは思う!」
「え? あ…♪ そ、そう? なんかまっすぐに褒められると少し照れくさいケド…とっても嬉しい♪」
ミチヒメは少し頬を染めて応えた。
「…で哥哥、さっきの続きだが、カムイ三柱と共に再度塔へ挑むか?」
オオトシは少し笑みを浮かべ軽く武者震いしながら応えた。
「…もちろんです…! あの雪辱…絶対に晴らしてみせましょう!」
「さすがは哥哥。ボクが認める数少ないモノの一人だけはある」
「あ、アマム兄もオオトシ兄の事は認めているのですね!」
「ああ。若き刻よりルーガルとしてモシリを治め、早い段階でメル=ストゥ=マゥェを使いこなしたのは流石だ。今の見掛け上の遅れも…おそらく次の試練で逆転される」
「そうなのですね! さすがオオトシ兄ですね♪ あ、アマム兄、僕はどうですか?」
「オマエはもう少しイレンカ廻らせて動くと良い。短絡で無策すぎる」
「あ、あはは…さすがはろーしさまお厳しいご指摘ですね…」
「そ~よ~ヤチホコくん、動くまえにイレンカ廻らせないとね♪」
少し上長ぶってミチヒメがそう応えるとすかさず…
「オマエもだミチヒメ。二人そろって無策すぎ。今のイタクも叱って欲しいとしか思えない」
「あちゃ…ホントきびしいですねアマムさん…。ハイ、少しでも今よりイレンカ廻らせます…」
珍しくミチヒメが小さく観えたのが何やら可笑しかった様であり笑い声が上がった。良く観ると意外にもアマムまで笑わされてしまっていた。
「オマエのその皆のラムをつかむ処は…もはやチカラと言って良いモノだ。そこだけは称賛に値するカムイの資質だ」
「あは♪ アマムさんにほめられました♪ やったね♪」
「他すべては前言に変わりなくヤチホコ同様精進が必要だ」
「はぁい…そっちも頑張りまぁす!」
(…哥哥もイレンカ寄せる訳だ…)
そうアマムはヲモヒ廻らし伏せていた眼を上げると…視線の先には…こちらを見据えて微笑んでいるミチヒメがあった。
(…! ま、まさか…! だとすると…シンノ・モシリルガルとして適格か…)
「…ミチヒメに少なからずイレンカ寄せるモノは…誰であれそのペンラムコトロが観える…らしいですよ…♪」
その言の葉に驚いて振り向くと…オオトシであった。
「哥哥…。なるほど。ある意味最高の組み合わせな訳だ。あのミチヒメがこのチカラ携えるとなると…ゆくゆくはすべての緋徒とウタラを掌握せしめるモノとなる…!」
「恐らくそうなるでしょうね…。私など及びもしないほど上手に無理なく皆をピリカへと導いてゆく事でしょう…!」
「素晴らしい。しかし如何にエカシがスサノヲとは言え、ここまで才あるモノ達が集結してカムイ=トゥスされるモノか?」
「…恐らくは…意図されての事かと…思います…。何らかの…もっと大きな使命が…我々にはあるのかもしれません…」
「イワン=ルを超えるよりさらに大きな使命、か」
「…恐らく…としか今はまだ言えませんが…」
「現状は見当もつかないが、自身を高め続けることは賛成だ」
「私もです…。どのような事が待ち受けていようとも乗り超えられるシンノ=マゥエを…この手でつかんでみせます…!」
意を決しいつもと違いはっきりと断言するオオトシの言の葉に真剣な表情でアマムも頷いた。
「…これからどうします? アイツ…追います? それとも…もう一度塔へ…ですか?」
「とくに絶対がないのでしたら…ここで一息ついたりとか…ダメですかね?」
オオトシのヲモヒに引きずられるように気合を込めて尋ねたミチヒメとは対照的なヤチホコの意見であった。
「…ふたりともそれぞれにあなたたちらしい意見ですね…。皆は何か他にしたいことなどおありでしょうか?」
オオトシが尋ねると先ほどのヤチホコが即座に応える。
「あ、はい! 実は前に訪れたポン=イトゥンナㇷ゚=モシリへまた遊びに行ってみたいなぁと思ってまして…」
「彼のモシリにですか…成る程ですね…。あそこへ我々が訪れる場合、属性は制限されトゥムの大きさも大きく抑えられる為、過ごすだけでも良い錬になりますね…それに加え…」
「あ、はい! メイシュ…アメさんたちに久々に会いたいかな…なぜかそう思いました…」
「それではその小さきかけらを瞬時に旅する門に持っていきお話を伺ってみましょう」
「あ! この…“ポ”を持って…門へ…なるほど…ですね…!」
「ええ…。門へもって行く事によりそのかけらはチカラを発揮するはずです」
「え、あそこのみんなとお話しするならボクも行く!」
スセリも横から応えてきた。
「ボクも行く。何となくシンノ=パセが気になる」
「ではみんなで門へ行きお話してみましょう♪」
ヤチホコ達はすぐ近くの西の門へと向かった。
「では中に入る前に…メル=ストゥ=マゥェを解放してください…」
オオトシに言われたとおりにヤチホコは輝く根源のチカラを解放した。
「…よろしいです。それではそのチカラをポに籠めてください…」
手に持つポ…念波器のかけらにヤチホコは己の権能を籠めていく…するとぼんやり光り出した。
「このまま中へ入りましょう…!」
「はい…!」
一同中へ入っていくと…鈍く低い振動音と共にポは反応し揺らめく光を発しだした。
「…そのメルを壁に当ててみて下さい…」
言われたとおりにすると何やら像が映し出されてきた…。
「あちらにある…イレンカ=ウコテㇲカㇻを通し断片的に得られるノカです。声はすでに届くと思いますので…ヤチホコ、話しかけてみてください…」
言われたとおりにヤチホコは話しかけてみた…。
「こ、こんにちは…! ポン=イトゥンナㇷ゚=モシリのみなさま…イワンケノ オカィ? 以前お世話になりましたヤチホコです…!」
(…あ! あら~! ちょっと待ってて! 今代わるから~!)
その場の全員に聞こえる声が流れてきた。声の主は例の…気取られずに近寄られてまさぐられるシゥニン・チャであろう。
(…ヤチホコくんお久しぶり♪ 元気だった~? こっちはさぁ…)
変わったとたん途切れなく話し出したのは…キクリとはまた違う…その名の通り猫の耳を持つ少女、チャぺ・キサㇻであった。
(…で、…なの! も~ホント大変で…)
「…わかりました…! め…アメさんと…ゼ…シンノ=パセさんは…こちらに来られているのですね…!」
(…きっとそうだと思うよ~! あ、じゃ~アタシはこれで新しい女王ちゃんシゴキに行ってくる~! ヤチホコくんまたね~♪)
その言の葉を最後に声は途切れ、ポの放つ光も収まった…。
「…アメ…さん…こちらのどこへこられてるのでしょう…?」
首をかしげるヤチホコの横で以外にも興奮を露わにアマムも言の葉を発する。
「…シンノ=パセ! オマエもすでにこちらに来てるのか…!」
「…伺う前に連絡してみて良かったですね…。まさかアマム同様こちらに出てきているとは思いませんでした…」
「カムイエウンケゥエを得ていたら当然の結果だった。理を超える事が出来るからだ」
「理を…超える…?」
「ああ。ボクやミケヒコはカムイとなり大きなチカラを得たとは言えこれは理の中の話。定められた通りにしかチカラを行使出来ない。だが、カムイエウンケゥエを得たモノはその枷であり…檻とも言える理を無視してチカラを揮える。言わばデタラメなチカラを持つ」
「な…なるほどですね! あ! では…僕たちも…!」
「ああ。最終的にカムイエウンケゥエとなり境涯を高めシ=パセ=カムイとなりおそらくはじめて目的を果たす事叶う事になる」
「…ちょっとエサムペルイルイしますね…♪」
「ヤチホコ、オマエとミチヒメは…すでにカムイエウンケゥエを得られるだけの大きさのトゥムを内包している。ヌプルと境涯が…ラムが追い付けばすぐにでも成れる」
「…そうなのですね…ヌプル…そしてラムの錬磨…境涯…僕たちが一番遅れている気がしますね…」
「恐らくその遅滞にも意味がある。今は己のイレンカのまま進めば良い」
「…そうします…! ではヒメちゃんにお願いしてアメさんを探してもらうことにしますね!」
「ああ。イレンカのまま動く内に恐らく自然と機会を得る事になる。特にオマエ達はそうだ」
「なぁ~るほど♪ じゃぁ…わたしたちのイレンカが…モシリすべてを救っちゃうってことね♪」
「ミチヒメそれは大げさすぎではありませんかね…?」
さすがのヤチホコも少し何か思ったようにミチヒメに尋ねた。
「そ~かしら? わたし、目の前の困ってる方をみ~んなぜ~んぶ助けちゃえばモシリって救えちゃう気がしたわよ?」
「…目の前み~んな…ぜ~んぶ…。ああ! なるほどですね♪ そうすれば良いのですね♪ なぁんだ~考え込まなくても良かったのですね♪」
「すべては良かれとのイレンカのまま…ですよね? アマムさん♪」
「ああ。上出来な結論だ。善因善果だからな」
「あ…! それでしたら良い事ばかりしていたはずの二人は…どうなるのでしょうか?」
「ウタラやボク達と大差無い姿でこちらにエウンするはずだ」
アマムの言の葉にヤチホコ達は満足げに納得し再会を楽しみに思い描いていた。
アメたちもこちらのモシリへどうやら出てきているようですね…。
用語説明ですm(__)m
・クンナノ:朝。
・シロヌマン:夕暮れ
・イレンカ=ウコテㇲカㇻ:ヲモヒ+連絡し合う→「念波器」としました(59倭)
・善因善果:よい行い(善行)は必ずよい結果をもたらすという意味です。




