第90倭 イワン=コカナ=アン目指すモノと堕とされしモノ
ミケヒコが社に入った後…
「…行っちゃいましたね…!」
「思ったより抵抗なく入っていけるのね~!」
「ミケヒコさんはすでにカムイになられていましたし簡単に観えたかもしれませんわね…。本来でしたらキクリの様にカムイになる為に詣でますので入るのも一苦労なのですわ」
クシナダはそうミチヒメに伝えた。
「そっか…! ここの社も…あの塔といっしょで…!」
「ええ。最低限自力でメル=ストゥ=マェを纏えませんと実体を持っては入れませんわ」
「じゃぁ…今のわたしじゃ入れないのね…」
「おそらくミチヒメさんなりの時期に同様の試練が降りかかってくると思いますわ…。それはヤチホコを始め他の皆様も同様ですわ…。そのモノの境涯と業…今までの振る舞いとイレンカの積み重ねによりて自ずと道が開かれて参りますわ…」
「…ふるまいと…イレンカの積み重ね…」
「ウパスクマ=エ=テメン=アンキへ挑まなくても刻至ればミケヒコさんの様に…積み上げられしモノ満ちたりてイレンカ至りし刻はアマムの様に…ですわ…!」
「そ~ゆ~ことね! じゃぁわたしとヤチホコくんは…いつもの通り自分を信じてすすめばイイのね♪」
「その通りでございますわ♪ イレンカのまま…あるがまま…その状態でラム至りし刻に…ですわ♪」
「ガマンしても取り繕ってもダメなのですね! ラム=アサムから自然とイレンカわく刻こそ…なのですね…!」
「ヤチホコ…その通りでございますわ♪ ごく身近なモノから…果てはモシリ全てまでイレンカ至りて救いたい、守りたいとなり得し刻…シ=パセ=カムイ…そしてそれすら超え得る存在へのクス=ル開かれますわ…!」
「シ=パセ=カムイの…先があるのですね!」
「それはさすがにイレンカ廻りませんでした…!」
「母様たちの…さらに先や上が…あるワケね!」
「さようですキクリ。そしてそここそが…」
「ボクらが目指す真の場所だ!」
「さすがはアタクシの愛するアマムですわ♪ すでに見据えておりましたわね♪」
「ああ。境涯による優位性を検証する内に発見した。カムイの上に広がる多様な境涯の存在を。大別ではワン。しかしその中も細分化されている」
「一つ違うと全然違うのに…いっぱいあるのですね…!」
「ああ。話によく出るイウェンテㇷ゚=ルーガル…波旬の居城が今のボクたちが足を運べる最上位、アヌン=ヤィカㇻ=ピリカ=アン。ここアイヌ=モシリとの間にイネ=ルーガル=アン、レワン=レ・アン、アペヌィ・アン、ラム=シリネ=アン、アシクネ=コヤィカラ=アンとある」
「かなり遠いのですね…あ、そう言えば…アマム兄のいたあそこの…ポン=ケゥエポロ=クル・モシリにいたヴァイシュラヴァナさんは…イネ=ルーガル=アンの…エマカㇲのクベーラさまだったのでしょうか…?」
「ああ。アンに住まうカムイにも寿命があり、身罷りし刻は同族より次代が選ばれ任に就くと聞く。だが彼は…おそらく寿命出来た訳ではない」
「…ほかに何か理由あってんことでしょうか…?」
「あのモシリのニン・ルガル…メイシュ…アメノオハバリの様に罪障の因縁から堕ちる場合が多い」
「ええ! あのメイシュさまが罪障で!?」
「ヤィコ=トゥィマのだ。今良きモノでも前は違う場合もある」
「…そうでした…僕もどうやらヤィコ=トゥィマでモシリを大変な目に遭わせた上で…カムイ=モシリの様な処からこのモシリへみんなを堕としめる原因となったらしいですからね…」
「…らしくもない。大なり小なり生きとし生けるモノ皆すべて罪を造る。故にヤィコ=トゥィマの業の清算も兼ねてこのモシリに来る。没問題だ」
「…アマム兄…もしかして…慰めて…励ましてくれたのですね!」
「罪の大きさに悩むより己を磨いた方がよほど有益だ」
「ありがとうございます♪」
アマムは僅かに照れたような表情を一瞬だけ観せたが、すぐさま気を取り直して言の葉を続けた。
「ヴァイシュラヴァナは…元々ウパスクマ=エ=テメン=アンキと在りし日の楽園…リクン・カントの門番クベーラであった。
ある刻訪れたポン=ナーガに入園の許可を請われ、その懇願ぶりを憐れんで通し起きた事により現在ボク達全てのモノがストゥ=ウェンプリをそのラマトゥに抱く。これを悔いて千の季節廻る間行を積んだことをマハブラフマーに認められ送られたのがヴァイシュラヴァナの名とプシュパカと言うヴィマーナ。これをサムドラ・マンタナの際に得たカムイイコロと共に守護していたが、アㇰであるラーヴァナより奪われ悪用された為遂に堕天の憂き目に遭った。その後は知っての通りだ」
「ラーヴァナって前にミチヒメが戦ったという…に、シ=パセ=カムイが負けたのですか?」
「アイツは特殊で、誓願立てて行いし修行によりどんなカムイにも負けないセレマクを得た。その為どんなに境涯高かろうとカムイである限り勝てない。未だ至らぬモノ達は願いから除外されていた為、彼のモシリのカムイ達より打倒ラーヴァナのイノンノイタク受けたラーマは、ウタラとして降りてきた」
「カムイ以下の存在を…大分侮っていたのですね…!」
「当然だ。ウタラであれば通常トゥムすら遣えない」
「確かにそうですね…! あ、あと…僕たちの抱くストゥ=ウェンプリって一体どのような事なのでしょうか…?」
「…それこそボク達の希望ともいえるレンカクス=ラムだ。祖神達がポン=ナーガにより食したのがラムアン・ヌム。これにより我々はレンカクス=ラムを得た。ただしその為後に楽園から追放される事にもなった」
「リクン・カント…さっきのお話では…出てきていませんね?」
「ああ。ウパスクマではその名の通りこのモシリと塔の上、イネ=ルーガル=アンの狭間のモシリと聞く」
「はざま…では塔からイネ=ルーガル=アンに向かう間にあるのでしょうか?」
「正確な位置は現在は不明だ。エカンナイにはこのモシリより往来可能だったと聞く」
「…僕たちがヤィコ=トゥィマでひどい事をしたのは…そのリクン・カントでかもしれませんね…」
「創世のカムイであったのがシンノならば。しかし…現在もこうしてモシリは存在する、それが事実だ」
「…ありがとうございます…」
「ああ。没問題だ。しかし…クベーラからヴァイシュラヴァナか。己の失態を痛感した為の研鑽による変貌だろうが、相手が悪かった」
「ですね…。あのモシリでもかなり強かったのですが…」
「ああ。しかしあそこで磨かれこちらに戻りし刻は…再度カムイに至りおそらくその名に相応しき存在となる」
「頼もしいですね♪ しかし…シ=パセ=カムイでも…堕とされてしまったり…さらに修行させられたりするのですね…!」
「ああ。シ=パセ=カムイと言えど所詮イワン=コカナ=アンの内の存在。故に迷いもあり過ちも犯し下の境涯へ堕とされる事もある。それ以下のボクやシンノ=パセ、アメは知っての通り更に下のモシリへシセイペレさせられた訳だ。ヴァイシュラヴァナとて例外ではない」
「みなさん…何らかのウェンプリがあってあそこに堕とされていたのですか?」
「ああ。だから九千九度もシセイペレさせられた」
そう言ってアマムは社を見据え…更に続けた。
「…ボクはそれで救われ、己を磨く機会を得られた。だからあのモシリに行った事は感謝しかない」
(…素晴らしき生長を遂げて見事還ったであるな我が誇るべき息子アマムよ…!)
社よりその場にいる全員の心の内に声が届いた。
「と、父さん…! はい、アマム…無事帰還しました…!」
(うむ…! 良くぞ九千九度の行…成し遂げた! さらにはカムイに至れしその気勢…われの元まで届くほどである…!)
「多謝…! もう二度と諦めない…己に負けません…!」
(うむ! で、あろうとわれも信じておる…! ふっふ…。どうやらそろそろ更なる生長を求むるモノがこちらに辿り着きそうであるな。みな…ミケヒコが無事継承叶う様…イノミ捧げ待つが良い…)
そこまで言うとスサノヲの言の葉と気配は途絶えた…。
「ミケヒコの無事をイノミしてですね…!」
「ああ。待とう」
皆は社を見据えてミケヒコの無事の帰還を祈った。
とうとう試練が始まるようですね…!
用語説明ですm(__)m
(すみません後で掲載しておきます…m(__)m)




