第87倭 ヤィコ=トゥィマ超えて顕現せしモノ
朝食をとりながらオオトシがミケヒコに話しかける。
「…さあ、クンナノィペを済ませましたら…ミケヒコ、まずはヌプルを遣う錬を…そしてそれが出来ましたら…トゥムと同時に放ち練り上げ…ウカムレ=エトゥッカさせてメル=ストゥ=マゥェを発する錬を致しましょう…!」
「…望む処…! ご指導…ヒメも…よろしく頼む…!」
「…お任せ下さいませ…ミケヒコ…よもや斯様に迅くあなたがメル=ストゥ=マゥェ得んとする処へ至れるとは…ワラワの想定を大きく超えし事象でございます…!」
「…良き仲間…良き経験…それ故であろうな!」
「…そしてヒメさんが今の状態になり得し事…その為の探索の刻に観えざるモノたちと語り合えし事により…刻至れりかと思います」
「…ワラワの…状態…?」
「なんか…ミケヒコくん、自分がヌプルを使いこなしたらヒメちゃんのお役目を取り上げてしまうかもって心配していたのよ~!」
ミチヒメも横からそう付け加えた。
「…それはオレの杞憂であったと…今はわかった! むしろヒメ…お前のチカラなしに…オレは高みに至れぬとラム=アサムより出ずるイレンカにて観じ…それで避けていた処があった…!」
「ワラワのチカラ無しには至れませぬと?」
「ああ…恐らく間違いない! ナゼかではわからぬが…な!」
「お役に立てる事…ピリカとのイレンカ抱きます…!今のワラワならば…必ずやご期待に応えられると思います…それも偏に…ミケヒコ…ミチヒメ…そしてキクリ…そなたらがこのケゥエの素となるイコロ=タㇰ達を見つけ出して来て下さった事に他なりませぬ…!」
「きっと今ココで見つけられたコトにもイミがあって…だから見つけられたんだと思うよ♪」
「…ミチヒメ…感謝いたします…実は先日のミケヒコの状態…以前でしたら一度でトゥサレ叶いませぬ、そしてワラワの消耗も著しきと存じます…。それを斯様に負担無き状態で儀を取り計らえし事…もはや別なる緋徒となり得たと言えます…本に有難うございます…」
「それはホント良かったね~♪ ま~でもお礼はミケヒコくんに…かな♪」
「…オレは…オレの方こそ…ヒメのケゥエとなるタㇰ探す事のおかげで…ヌプル=インカラがはじめて開く事叶った…これは何にもかえがたき収穫だ!」
「ホ~ント、ミケヒコくんモノすっごく生長したね♪ かなり…ステキになったゾ♡」
ミチヒメは微笑みながら目配せしてそう言った。
「…くっ! ま、またオレにわからぬ技を…! これもいつか…見極めてみせる…」
頬を紅潮させながらそれに気づきもせずミケヒコは応えた…。
(…技じゃないんですけど…もう…♪)
「…では…外の広い処にてはじめましょう…!」
全員で温泉より少し離れた開けた処へ向かった。
「…ではミケヒコ…まずヌプル=インカラ…開いてみて下さい…!」
「…ああ!」
ミケヒコはその場に座し、氣力を鎮め穏やかに集中し始めた…。先の如く精霊神の囁きが聞こえてくる…。
「…よろしいです…。そのまま己の内に眠るヌプルに集中してみて下さい…」
言われた通りにすると…ある…! ミケヒコは自身の内なる霊力を今度は明確に観じられた。
「…そこに向かってヤオヨロズよりチカラ賜り取り込んで下さい…」
(…ごおうごお~はじめはオイラがチカラかす~♪)
俄かにミケヒコの周囲が熱を帯び始めた。
(るるりるら~わたしはそれをつよくする~♪)
(ささらさら~ボクがチカラをしぼりこむ~♪)
(ずずんずん~ワレがそなたを守りぬく~♪)
(…! 主として作用するモノ以外のかかわりあって初めてチカラ出ずるのか…! 己の属性にかかわりなく…そして…単にトゥムを振るう刻も気づかぬうちに作用して…いたのだな!)
「…そこまで観えれば十分にヌプルが己に取り込めていますので…トゥムを高め…今自然に湧き上がってきているヌプルと混ぜ合わせる様に練り上げてみて下さい…」
「この湧き上がるヌプルに…トゥムを混ぜ合わせ…練り上げる…」
一瞬輝きかけたが…すぐに収まってしまった…。
「…どうやらトゥムに対しヌプルが足りなさすぎるようですね…」
「…ヒメさん…ミケヒコのトゥムの大きさに合わせてラムハプル=ヌプルしてみて下さい…!」
「かしこまりました…かなりトゥムは練り上がっています…これでは確かにミケヒコが出せるヌプルでは全く以て足りのうございます…。ワラワの御しきれるうちの…半分ほどをお与えいたします…ラムハプル=ヌプル…!」
ヒメより莫大な霊力がミケヒコへと流れ込んでいく…。
「それを受け取り己のトゥムと合わせ練り上げてみて下さい!」
(…合わせ…練り上げる…!)
それを観るや否やオオトシは瞬時に叫ぶように言った。
「これは! 皆さん下がってください!」
見る間に爆炎が吹き上がり凝縮される様に渦巻きながらミケヒコの胸中に集まっていき…さながら小さな天に輝く日之神威の如き灼熱を放ち始めた…!
「…あ、あつい…! なんて熱量なの…!」
ミチヒメも思わず青龍の権能で防ぐ。
「あ、すごいです♪ これってバッチリメル=ストゥ…」
「ヤチのエパタイ! はなれないでどースルの!」
スセリに手を引かれ慌ててその場から離れる。
「ヒメちゃんコッチ!」
ミチヒメもヒメを連れて距離をとる。
「…これは…まさに…イレス=カムイ…!」
オオトシは自身と同質でありながら遥かに激しい権能を前に思わずそう呟いた。
「…う…うぉぉおおぁあ!」
辺り一面灼熱の爆風が吹き荒れる! その中心に燃えさかる炎が一つ…ミケヒコであった…。
「…! 纏い切れていません! あれではミケヒコ自身が己の発するアペヌィのメル=ストゥ=マゥェに焼き尽くされてしまいます!」
(ずずんずん~…アペヌィが…強すぎて…守り…切れ…)
観ると大地の精霊神が消滅しかかっている…!
「ミチヒメは玄武を! アビヒコ! アリキキノワッカトゥムを!」
「わかりました! 玄武! ミケヒコを守るヤオヨロズと化して!」
「了解…!」
「マニィ!」「はいですわん♡」
「…トコロカムイ!」
アビヒコは大きな水龍を召喚しミケヒコを包み込んだ。
「…ワラワのヌプルを閉じれば治まりませぬか…?」
「いけません! 今閉じてしまえばミケヒコはアペヌィに飲み込まれ消失してしまいます!」
(…これは…オレは一体…どうなった…? アイツらは…? ヒメ…?)
水龍の造りし結界の中でミケヒコはそうヲモヒ廻らせていた…。
(…ミケヒコ…あたしのア=オマプ=ポ…ミケヌイリヒコ! しっかりしなさ~い! アペヌィに…激情に飲み込まれず、認めて共に歩みなさ~い!)
(…は、母上…? 飲み込まれず…? オレは…オレの中のアペヌィ…キンナ=イレンカに…? 内なるオレに…飲み込まれている…?)
(さようです! あなたのヤィコ=トゥィマ…一切を燃やし尽くすカムイ…その業にのまれないで! 今のあなたには…守るべきモノ…共に歩める仲間がいるでしょう…?)
(…セレマクする…ヒメ…を…。そう…ヒメを…ウタラを…一切を…この…オピッタ・ウェンテ=アラフレにて…守りぬく為に…オレはチカラを欲した…! そしてともにある仲間と…一緒に…更なる高みを目指す為…! そうだ…ただピㇼオして…ウェンテするだけ…そんなのは…まっぴらごめんだ! |シ=アペヌイ=ルーガル《大焔統べる王》の如く…己を強く律し…他者を慈しみ…生きとし生けるモノの平和をセレマクる為にこそ…チカラは…有る! アペヌィよ…我は一切のモノとモシリの為の故に…チカラを欲す! 我欲の為ならず! 一切の安寧の為!)
激しく光を放ちしばしの沈黙の後…水龍はゆっくりと離れて霧散し…後には灼熱の岩塊が顕われた…!
「…ダ、ダメだったの…?」
ミチヒメが絶望しかかった刻…眼前の灼熱の岩塊から声が聞こえてきた…!
「…心配かけたな…! みんな大丈夫か? オレは…大丈夫だ!」
その言の葉と共に溶岩が剥がれ落ちナニカが顕われた!
髪と思しきモノが頭上に向かって激しく燃えさかり…手首足首にも炎を纏いしその姿は…まさに炎の化身であった…!
「これは…! あの最中に…超えましたね! 更なるラムの生長を果たし…イレス=カムイへと…境涯諸共昇り詰めましたね!」
オオトシは興奮と感動を露わにしてそう述べた。
「…オオトシさま…アビヒコ…ヒメ…そしてミチヒメ…ありがとう…。オレのこのチカラは…みんなのおかげであり…みんなを含む一切の安寧を守る為のチカラだ…!」
「…まさしくシンノ・ルーガルと言うべきイレンカ…素晴らしいです…!」
「ふぇ~…。ミケヒコすごすぎです…! はじめてメル=ストゥ=マゥェ出せたと思ったら…それ…キクリちゃんと一緒の…!」
「ホ~ント♪ メル=ストゥ=マゥェじゃなくって…カムイ=マェだわ! すっご~い♪ もひとつすっごいのは…ミケヒコくん…いま…あつくない…!」
「…ああ…アペヌィのチカラはこの内に…今は必要ないからな!」
「…本に…そこまで…そしてタアン=ラマトゥではとうとう御する事叶いました…! おめでとうございます…ミケヒコ…いえ…ホアカリさま…!」
「…ホアカリ…? それは我がヒムカ=モシリに伝わる祖王なるカムイの名…」
「左様でございます…。ヒムカのルーガルとならんモノカムイに至れし刻…イレス=カムイホアカリの称号とチカラを授けられし…そう伝え聞いております…」
「…そうか…確かに…緋徒ではないな…今のオレは…! だがこれで…緋徒もウタラも傷つけずに済む…!」
(…良くぞ乗り越えましたね…我がア=オマプ=ポよ…今ではホアカリさまの称号を受け継げるようになったミケヒコ…)
(…母上…! あなたさまのおかげである…ありがとう…!)
(…素晴らしい事です…良き意味で予見を違え…いえ、超えました♪ もぅ~すっごくステキですよミケヒコ♪)
(…照れくさいが…嬉しい…! ありがとう…!)
(一度あたしのおとーさん…スサノヲさまに…そして再度封輪火斬さまにお逢い下さい…まずはイヅモで待っております…)
「祖父…スサノヲさまに…?」
「え~っと…ミケヒコ…じゃなかったホアカリ…さま? 今ってだれかとイタク交わしていました~?」
「…ミチヒメ…ミケヒコでかまわん…。実際…ケゥエ=エイキはそなたの方が優れているからな…! そうだ、母上と…。イヅモへ参りスサノヲさまと見えよ…そうイタク賜ったのだ…」
「…成程ですね…父スサノヲでしたら…更なるクㇲ=ルを示して下さるでしょう…!」
「…みんな本当にありがとう! オレはヒメとイヅモに行ってくる!」
「あ、イヅモでしたらぼくらもご一緒いたします♪ キクリちゃんや…ろ…アマム兄たちがそうなったのかも気になりますからね!」
「そーだね、ボクもソーしたいな!」
「うんうん♪ じゃぁ~みんなでイヅモへ…行くよ!」
「おう!」
「あ、あら~ミケヒコく~ん♪ ズイブン調子よく応えてくれるわね~♪」
「当然だ! ラムのまま…イレンカのままに…だからな♪」
「とぉってもイイね♪ すっごくステキよ♪」
ミチヒメはミケヒコを慈しみを籠めて優しく抱きしめた。
「…この程度のエイキなら避けられるが…そなたのイレンカの顕われ故…受けたぞ…!」
自身の頬が紅潮している事には相変わらず気づかずにミケヒコはそう応えた。
「や~ん♪ なんかラムもさっすがカムイね♪」
「…なに、まだまだ道半ばであろう? これからも…ご指導、ご鞭撻のほどよろしく頼む!」
「うん♪ まぁ~かせて♪」
(…ヤチホコではなく…ミケヒコに先んずまれましたか…! 私も…次に塔へ挑戦する刻こそ…!)
オオトシはミケヒコの覚醒を目の当たりにして静かに心を燃やしていた…!
その後最後の湯浴みを堪能してビビ・ファティマの宿に泊まり、あくる朝クスターナへ戻っていった…。
「おお! んまぐいったみたいだべさ♪ ミケヒコ…またなんまら生長したべさ♪」
「…純陀エカシ…ありがとう。皆の…ヒメの…おかげだ! すべてはみんなの助力あっての事…努々コヤイラムせぬようこれから先も精進する!」
「けっぱれや♪ この先さある…シ・パセ・カムイさ目指してなぁ!」
「…ああ、もちろんだ! イネ=シ=ルーガル=キロルを徹し、この身をカムイエウンケゥエとなりし刻こそ…天を裂き地を割る…シンノ=マゥエ揮えし存在となるからな!」
「んだな! 封輪火斬さまと契約できたっしょ、したっけけっぱりゃぁイネ=シ=ルーガル=キロルまんで高めたトゥムさ遣えるよ~になるべさぁ♪」
「…その為には…よりヤオヨロズの声に耳を傾け…このケゥエに封輪火斬を呼び込めないとならないからな!」
「きっとなんとかなるべさ♪」
「…ああ! チカラを尽くしてくれた純陀エカシの為にも…何より我がモシリ…そしてみんなをセレマクする為…極めてみせる…!」
純陀は満足げにうなずきイヅモへと向かっていくミケヒコ達を見送った。
「いつでも遊びさ来ると良いべさ~♪」
…超えましたね♪
用語説明ですm(__)m
・イレス=カムイ
・トコロカムイ:沼の主(龍や魚など)より。
・イネ=シ=ルーガル=キロル:四の+偉大な+王+大きなチカラ より。




