第84倭 キンナライオチ・シㇰラマトゥの巫女
ミヅチを背に塔を目指すキクリは…
「…塔は…あっちね…!」
キクリはミヅチを乗せて軽やかに飛翔していく。
扉の入り口に立ち塔主に開門を申し出るとゆっくりと扉が開いていく。
「…入りたまえ…」
奥に座す塔主を観てキクリは声をかける。
「…久しぶりね…お変わりなさそーだわ!」
「こんにちは♪」
「…良く参られた…が、瞬時に旅する門からならばここに直接跳んでこれたであろうに…?」
「…! ウカツだったわ! そーだったわ…」
「はは♪ ちょっとおさんぽたのしんできちゃったね♪」
愕然として項垂れるキクリにミヅチはそう伝える。
「…そう…そーだわ♪ ミヅチのお守りでお散歩してきた…そーゆーコトにしておいてくれるかしら?」
「フッ…ではその様に記録に留めておこう…」
珍しく塔主から素直な笑みがこぼれた。よほど面白かったと観える。
「…問題ないわよね…?」
「…もちろんである…フフッ…」
「キット…タイクツしてる塔主様への贈り物だったのだわ♪」
「…我も久しく斯様に素直に楽しむイレンカ抱くことなき故…キクリよ…嫌味ではなくラム=アサムから感謝を述べよう…」
「…良かったわ♪ 本題だけど…ミヅチの…シリクンネ・ルーガルの…クンネチュㇷ゚=カムイのチカラについて教えて欲しいの…!」
「…すべてを映し己がモノとして還すチカラなり…」
「…それが…ニスに浮かぶクンネチュㇷ゚=カムイのチカラなの…?」
「いかにも。エカンナイ=ストゥの…シリクンネ・ルーガル…いや…イウェンテㇷ゚=ルーガルと言うべきか…限りなくイウェンテㇷ゚に近しきカムイの有したチカラなり…」
「限りなくイウェンテㇷ゚に近い…?」
「エカンナイ=ストゥ・シカントコㇿカムイ造りし原初のトカㇷ゚チュㇷ゚=カムイとウトゥディンギル・パセトゥスクルがスクス=トイを治め…原初のクンネチュㇷ゚=カムイがシリクンネを治めていた…。その名の通り…トカㇷ゚チュㇷ゚=カムイのチカラをその身に受け…シリクンネのモシリをラムハプル=メレメルするモノであった…」
「…それって…そのチカラって…」
「左様…すべてのモノを映し出しカムイ=エウンする…ヘレメレ=カネのチカラなり…」
「…ヘレメレ=カネ…」
「実はアンに浮かぶチュㇷ゚の内…クンネチュㇷ゚は自らミケしてはおらぬのだ…」
「…! そーだったの?あれだけ|ミケしているのに…!」
「あのクンネチュㇷ゚こそ…トカㇷ゚チュㇷ゚のチカラを優しく還す巨大なヘレメレ=カネなり…!」
「それでヘレメレ=カネがクンネチュㇷ゚=カムイのチカラって言われるのね!」
「左様。そしてそのチカラ有するモノは…映し出されしすべてのチカラを己がモノの如く遣えるモノなり…!」
「…そんなコト出来たら…ホントにムテキだわ!」
「ただし…各々の境涯に依るべく候…そう説かれておる…」
「ウェウェクなウチは…ホンモノに劣るってコトかしら?」
「左様。恐らくは大きく劣る…が、極めし刻は…トカㇷ゚チュㇷ゚に合わせし刻のヘレメレ=カネと同等となるであろう…」
「とゆーコトは…ヘレメレ=カネの大きさなりだけどホンモノみたいにミケする…自分の持つチカラなりだけどその範囲なら完璧にマネ出来るってコトね!」
「流石はキクリ…カムイに至っただけはある…まさしくその通りである…!」
「…ありがと! ナンかわかった気がするわ! それでイマ、普段のミヅチからは…トゥムを観じないし…自ら発するのは性質上トクイじゃないのね…!」
「まさしく…! あくまで他者のチカラを借りねば真なるチカラ発揮できぬはミチヒメと同様なり…」
「ミチヒメ…! じゃぁあの子の周りの四獣のよーな存在がいたら…イレンカのままチカラ揮うコト叶うのね!」
「左様である。その辺りは上手く工夫するが良い…」
「…今純陀エカシに造ってもらっているヘレメレ=カネは…そうなれるかしら?」
再び笑みを浮かべて塔主が応える。
「フッフ…己が目で確かめるが良い…♪」
「…そーゆーコトね♪ わかったわ、ありがと♪」
「またいつでも参るが良い…」
今度は塔の瞬時に旅する門よりクスターナの森へと戻っていき、すぐさま純陀の店へと向かっていった。
「…今戻ったわ! ミヅチのコト…そのチカラのコト…良くわかっ…!」
「い~とこに還ってきたべさ! キクリちゃん、チカラさ出してもらってもいいかい?」
慌てて駆け寄りながら純陀が話しかけてきた。店内の奥には…。
「…! わかったわ! 刻がないのね!」
「んだべさ! ちぃとばかし間に合わなくってな、もうこのケゥエさ入ってらんねぇとこだったさ!」
「ヒメをトゥカㇷ゚=ケゥエ=ヤィカㇻさせて…保っておけばいいのね…!」
「んだ! 頼んださ!」
「わかったわ…!」
キクリは己の中の二つの権能…氣力と霊力を練り上げ合わせ発動させた。
「…同じトゥムとヌプルのウカムレ=エトゥッカですが…トゥムアスヌとメレメルの仕方がまるで違います…!」
オオトシは解放するキクリを観て驚きながらそう言った。
「…まーねー。いちおーコレ…カムイ=マェだから!」
「…カムイ=マェ…! メル=ストゥ=マゥェとは…明らかに境涯による格の差を…観じられます…!」
「オオ兄様はキットすぐだと思うわ! コレ…境涯が下のモノには…差なんてそんなにはっきりと観じたりできないもの!」
「そうでしたか…。では私が至らぬは…何かまだ足りぬモノ、もしくはこのままですべきことがある、そういう訳なのでしょうね…」
「…それもキットこれからの経験で得られると思うわ!」
オオトシはキクリの言の葉を噛みしめて大きく頷いた。
「…じゃあヒメ…イイかしら? はじめるわ…!」
「…お手を…煩わせます…」
「…もームリしてしゃべらなくていいわ! わかってるから!」
「…はい…」
ヒメはそこまで応えるとゆっくりと目を閉じて横になった。
「エウンオピッタ=アンペケゥエ=マェ! かりそめのケゥエよりいでて顕われよ! ヒメのトゥカㇷ゚=ケゥエ!」
その呪と共に法衣纏いし彫像からナニカが浮かび上がり、徐々に形を成して人形ではない生身の少女の姿を織り成した。
「…良いわ…! そのままトナリのアマソトキに…」
ヒメの…生あるモノなので幽体は…言われるままにゆっくりと床に就いた。
「大してビックリしたさ! わしゃにもハッキリと観えるべさ!」
「私も…ヌプル=インカラ遣わずとも観えます…これはエウンされています…!」
「…さわれもするわ! これがエウンオピッタ=アンペケゥエ=マェによるエウンだわ! これはアタシがチカラ注ぐ限り…このまま動く事も出来るわ♪」
「ないだってまったぐもってなんまらスゴイべや!」
「本当に…素晴らしいですね…!」
「…あのミ=ノカ=タより離れ行動できるとは…ワラワもいまだ道半ばと言う事に他なりませぬ…!」
「…アタシもそーだから! この姿もね♪ いっつもエウンしてるだけで…ホラ♪」
その言の葉を後にキクリの姿がすぅっと消えてしまった。
ヒメは視線を変えず傍から観ると何もない空間に目を向けて応える。
「…成程…本にトゥカㇷ゚=ケゥエをエウンしているのですね…!」
「そうよ! ホントはかなーりタイヘンらしいんだケド…父様の元での修行のおかげで…アタシは当たり前のコトとして出来るよーになったわ!」
「…そのチカラ求める道程…ワラワも歩んでも良いやもしれませぬ…!」
「カムイになるならね!」
ヒメと純陀は顔を見合わせた。
「…本に険しきクスル良くぞ歩まれました…」
「…アタシは…お兄ちゃんに触れてもらいたかったから!」
「…キクリ…ワレは…未だ其方の事エシカルン叶わぬが…ラマトゥのアサムより何らかのイレンカ抱きし事は間違いないと観じている…」
「…うん、良いわ、今はそれでも…! 今のアタシに一からシ=エラマスのイレンカ抱いてもらったっていーわ♪」
「…確かにヲノコであるならばイレンカ抱かぬ訳の無いメノコであると…キクリ、其方の事…今でさえその様に観ずるである…!」
「ありがと! とっても嬉しいわ♪ お兄ちゃん少し待ってて! ヒメが終わったら…!」
「…ああ、ここまで来ているんだ、いくらでも待つさ…」
「…! 今の話し方…!」
「…どうかしたか? 変わった事したつもりはないであるが?」
「…いいわ! 待ってて! 純陀エカシ?」
「おお! ふたつのタㇰ…そしてこのシホン=タㇰ…トゥム、ヌプル…そしてそれらの間を取り持つマニィ…アワセテマザリテスガタヲシメセ!」
純陀の呪によって三つの玉は重なり合う様に一つに溶け合っていく…。
「…ここさ…属性なしのトゥムを…」
「…モシリのチカラ混ぜないトゥム…ちょ、ちょっと待って…。…。…。…! で、できないわ…! あまりに属性と重なりすぎていて…!」
「…まず己のチカラ観じ…それをモシリへと還す様にゆっくりと降ろす…。そしてそのまま静かにチカラを練り上げよ…!」
「…! お兄ちゃんわかったわ! モシリのチカラよ…還れ…! …。…。…アタシの内なるトゥムよ…目覚めなさい…!」
いつもの黄金色の氣力と違い白い光を放って氣力が練り上げられていく…。
「おお~! それだべさ! それさあらん限りコイツに注いでもらえないかい?」
「…わかったわ…! やっ!」
キクリは言われた通り一つに溶け合った玉へトゥムをすべて注ぎ込んだ。
「…ヒメちゃん今っしょ! コッチさくるとイイべさ!」
「…かしこまりました…」
ゆっくりと体を起こした後ヒメは純陀の元に歩み寄った。
「…ヒメちゃんこのまんまでもキレ~だね♪」
「んだなぁ…だけどもさ、このまんまじゃキクリちゃんさいねっとカリ・ラマトゥしちゃうべさ!」
「そっかぁ…それはこまるね! ミヅチ…ヒメちゃんにもアタマなでてもらいたいもん♪」
「…左様でございますか…それならばしばしお待ちくださいませ…」
「…うん!」
「…よしゃ! チカラさじゅ~ぶん入ったっしょ! キクリちゃん今さ! ヒメちゃんこの中さ入れて欲しいべさ!」
「わかったわ! いったんエウンを解くわ…。…。…良いわ…! ミケヌイリヒメよ…イコロ=タㇰにイコ=アフンし、アシリノ=スクㇷ゚を得んと欲し給へ!」
「…ワラワは…このイコロ=タㇰに宿りて生を紡がんとせん事ここに欲し願います…! アシリノ=スクㇷ゚!」
「さぁ~シホン=タㇰや~今だべさ! ヒメちゃんとオマエたちさつなぐべさ~!」
霊力あるモノ達が観るならば…ヒメが融合した玉の中へと吸い込まれる様に入っていき、中の赤子状の玉が脈打って頷いた瞬間、湧き出る様に光り輝く何かが放出されるのが観えたであろう。
「…イレンカイダキシケゥエニアワセエウンシココニキタレ!」
純陀の呪と同時に足元から音もなく滑らかに実体を伴った肢体が形成されていく。
我々の言の葉で言うならば…つま先…下腿…大腿…臀部…下腹部…腹部から胸部…大、小胸筋上に脂肪組織と乳腺により微かに形成される対を成す丘陵…そして顔面頭蓋と脳頭蓋による頭蓋骨に表情筋と皮膚、粘膜が重なりて存在する頭部…。先の赤子状の玉は心臓付近に収まった様に観えた。
「…とても…キレーだわ…」
「ほんとほんと♪ ヒメちゃん…? とってもア=オマプでピリカ~♪」
「まさしくドゥムニントゥスクルを名乗るに相応しきキンラ=ピリカ=レカと言えますね…!」
「…はっ! ヲノコ共…! アッチ向くと良いわ! お兄ちゃんもよ!」
「…確かにポンメノコとは言え…失礼でした…」
「…そーだわ! しかもヒメ、今まだイイもイヤも言えない状態だから…今観るのはナシだわ!」
「純陀エカシはそのまま少しだけ目を閉じてくれれば良いわ♪」
そう言うとキクリは法衣纏いし彫像の法衣をそっとヒメにかぶせた。
「…。…。…! 良いべさ♪ これでちゃんと出来たっしょ♪」
純陀はゆっくり手を放し椅子に腰かけた。
ミケヒコの探し出した玉から形成された頭部、ミチヒメの見つけた玉とそれと対となる赤子の玉により形成された肢体は…ミケヒコの玉の透き通るような白さとミチヒメのみつけた羊脂白玉のうっすら黄色味がかった滑らかな白が溶けあい、色白な緋徒の肌そのモノの美しい艶やかさを醸し出していた。
法衣纏いし彫像の頃よりも繊細で美しい長い睫毛を携えた瞳が開かれるのを一同静かに待っていた…。
ゆっくりと瞼が開き始め瞳が顕われ始める…。
それは…かがやく虹の瞳と呼べる様な…様々な色が入り混じり深みある輝きと、複雑に織り成す模様を携えたモノであった。
「…こ、これは…この様なメレメル抱きしシㇰラマトゥは…はじめて拝見します…!」
「髪も…眼も…スッゴク良いんじゃない♪ とってもステキな色合いだわ♪」
日の光を思わせる髪の色はミケヒコ同様でいて彼とは違いとても長い直毛で、瞳は外なる空よりこの世界を眺めた刻の様な輝きを持ち、まさに玉の様な滑らかさで透き通るような…本当に少し透き通って観える肌、なだらかな双丘を筆頭にタナー段階Ⅱ程度と思しき体つきも含めそのすべてが命ある生身の少女である事を顕していた…。
(…キンラ=ピリカ=レカね…アビヒコならまたタイヘンなコトになっちゃうわ…♪)
キクリはどこかの艶やかで美しい少女の様に頭を一本指で掻きながらそう思った…。
「…これは…? …これが…ワラワの…ケゥエ…?」
無事に成功した喜びを満面に携えて純陀が応える。
「…まぎれもなくヒメちゃんのケゥエだべさ♪ やったべさ♪」
そっと手を明りに翳して眺める。
人形とは違い緋徒の温もりを観じる色合いである。
「…ピリカ…そして…ハプルな為か温もりも観じる様でございます…。…! こ、これは! 本にケゥエが温もりを発している気がいたします…?」
「…ホラ! アタシと同じくらいだわ! ヒメのケゥエ…温かいわ♪」
そっと抱きしめてきたキクリ…その肌の温もりを観じ…自身の肌も同様である事も観じ取った。
「マニィたちと一緒で生きてるって言って間違いないっしょ♪」
「観た目には最早わかりません…。今のヒメは…素晴らしくキンラ=ピリカ=レカで…ア=オマプなポンメノコにしか観えません…」
オオトシに言われまんざらでもないのか…ヒメは法衣を横に置いて自分で隅々まで眺めて確認している…。
「…! ヒメ…これ纏った方が良いわ! 良く開けるアタシがいうのもヘンだけどね♪」
「…くすっ…そうでございますね…ですが…仰せの通りに致しておこうかと思います…♪」
「わぁ~♪ ヒメちゃんわらえるよ~になったんだね~♪」
「…ワレもイレンカ動かされしキンラ=ピリカ=レカと応えておこう…」
「…笑みも…そのしぐさも…とてもすてきだと思います…♪」
笑みを浮かべその様にキクリに応え、皆の言の葉を聞き、少し伏し目がちに恥じらいの表情を魅せてヒメは法衣を纏った。
「ないだって…たまげたなや…自分で錬成しとって変だけんど…ビックリだべさ! イレンカもラムも…それに合わせたしぐさも表情も…自然な緋徒としての温かみが生まれているべさ!」
「…先程のアマムの助言…それによるキクリの純粋なトゥム…ミケヒコとミチヒメのイレンカ…きっとそれらがヒメのラムに…イレンカに…ラムハプルなイノトゥのアペを灯したのでしょう」
オオトシはそう応え微笑みながらヒメの頭を優しく撫でた。
ヒメはその大きく暖かな手の温もりを心地よく観じ堪能した。
まさに身も心も生まれ変わったヒメです♪
用語説明ですm(__)m
・キンナライオチ・シㇰラマトゥ:輝く+虹+目+たましい→「かがやく虹の瞳」としました。
・エカンナイ=ストゥ・シカントコロカムイ:いにしえ+根、大元の+宇宙の最高神
→「古ノ根源タル創世之神」(いにしえのこんげんたるそうせいのかみ)としました。
・ラムハプル=メレメル:優しい+光り輝く→「優しく輝き照らす」としました。
・カムイ=マェ:神の+威力→「神威之力」としました。
※カムイの境涯でウカムレ=エトゥッカするとこうなります。
・シホン=タㇰ:赤子+玉→「子っこ(純陀はなまっている為)」としました。本来なら「乳児玉」か。
・イコ=アフン:危ない処へ思い切って入る より。
・アシリノ=スクㇷ゚:新たな+生きる、生活→「新たなる生」としました。
・ドゥムニントゥスクル:王女(シュメール語)+巫女(アイヌ語)→「姫之巫女」としました。
・キンラ=ピリカ=レカ:神がかりになる、激しい感情+良い、美しい、上質だ+美しいと思う
→「神がかり的な美しさ」もしくは「艶やかで美しい」としました。
※緋徒:フィト:古語の発音。神と同等の人に対する敬称。カムイの類義語の意味でした!
…知らずに使わされていましたが…発音も本来に合わせ「フィト」に変更しますm(__)m




