第78倭 モシリ=カムイ=メノコ(大地の神威乙女)
無事に還ってきたキクリは…?
「ただいま! 還ったわ! ミヅチ…? 八俣様の処かしら?」
ミヅチが見当たらないので、キクリは八俣の館を訪ねてみた。
「…いやぁ! う、うわわ~ん!」
「…はは…ほらほら…単なる力だけでなく…己がトゥムを引き出すようにしないと…な!」
「ま、まいりましたぁ~! うわ~ん」
「…良し…今日はここまでだ…。良くやったな…そら!」
八俣は地面に突っ伏しているミヅチを抱えあげ立たせてあげた。
「…少しはトゥムを…観じられたか…?」
「…ううん…まだぜんぜんわかんないや…」
「…そうか…。己の中に誰もが…例えウタラでも元々持っている…シンノ=レンカイネ…そこより湧き出るトゥム…ヌプル…それを観じ、繋がり…引き出せたら…技量次第で上手く立ち回れるようになれる。明日も引き続き己のトゥムを探る錬からだ、お疲れ!」
「…ありがとうございましたぁ…」
「…終わったのね…お疲れ様ミヅチ♪」
キクリは労いと慈しみのヲモヒ籠めてそう話しかけた。
「きぃちゃん! きてくれたの? うれしいなぁ♪」
「えぇ♪ ハイこれ差し入れよ♪ 八俣さまも良ければどーぞ♪」
「おお! とうとう…なったな♪ 前に言ったと~り…かなりイイぜ♪ 約束どーりお披露目もかねてだな♪ じゃぁ遠慮なく…こりゃウマいな! ありがとな!」
ミヅチも夢中で頬張って堪能していた。それを横目にキクリは八俣にそっと話しかけた。
(…ミヅチ…トゥム…出せそうかしら?)
(…正直…大分難しいな…。ナーディが完全に断たれている…。オレが授けたトコロカムイがナーディを担っていたからな…ゼロから道を造り直すしか…ないだろうな。だがソイツは…一朝一夕で出来るモノでは…ない…)
(…そう…あの子…トゥムの強さと…属性の使い手であることが支えだったから…)
(本人はあまり気に病んだ素振りはないぜ? キクリ…お前を助けられたから…悔いはないんだろう。ノカンながら…大したヲノコだ…!)
(そう…そーよね! 一番大切なのは…確かにラムだわ! うん、ミヅチの大切なものは何も失われていない…そーゆーコトだわ!)
(オレ様もそ~思うぜ!)
(八俣さま…ありがと! 良いわ! アタシがこれからずっとミヅチを守るわ!)
(…それだけのモノを身に着けてきた様だな! 生半ではなかったろう…良くやり遂げたな!)
(そー言ってもらえると嬉しいわ、ありがと♪)
「ねぇ、れんもおわったし、さしいれもぜんぶたべたからかえろ~よ~!」
「はいはい…そーするわ! 八俣さま…ごきげんよう!」
そう言ってイヅモの神殿へと戻り、暫く二人で八俣の元へ通う日々を過ごしているとオオトシたちが還ってきた。
「…キクリちゃん…? やったね、身に着けてきたんだね!」
アビヒコがキクリの姿を観て…少ししてからエウンオピッタ=アンペケゥエ=マェを修得出来たのだと認識して喜びながら伝えた。
「…結構大変だったけどね…まーなんとかなったわ!」
「これは…! キクリ、お疲れさまでした…良く頑張りましたね…! 私たちも…私とミケヒコの契約、無事果たしてきました…!」
「えぇ? とゆーコトはローマへ行けたワケ? あるイミそっちのほーがすごいわ! 契約は…オオ兄様は当然よね。ミケヒコ…アンタは…アンタも…頑張ったわね!」
「ふん、こんな事造作もない!」
「…相変わらずね…。あ、アタシもモシリ=ニン=ルーガルさまと契約してきたわ♪」
「ええ~! はや過ぎ! キクリちゃんすっご~い♪」
心底驚いてミチヒメはそう応えた。
「どうやら今一番の高みにいるのがキクリの様ですね。その姿…チカラ…恐らくカムイの境涯に至れりと見受けました…!」
「流石ね、そのとーりだわ! もっともカムイじゃないとこのアタシの姿を形造るエウンオピッタ=アンペケゥエ=マェ出来ないから、ならないとダメだったんだわ!」
それを聞いて驚きと悔しさを露わにミケヒコが応える。
「…すぐ抜き返してやる! 待ってろ!」
「ええ♪ 楽しみにしてるわ♪」
ミケヒコはさらに悔しそうに何か言いかけたが横から構わずミチヒメが話し始めた。
「それよりもね、封輪火斬さまが…ミケヒコくんにナンか意味深なコト言ってたのよ…!」
「…意味深…アンタもヤィコ=トゥィマ…ででもナニかあったのかもね…!」
「ヤィコ…トゥィマ…だと…?」
「なぁるほど~それもきっとおいおいワカるかもね~」
「そーね…そう言えば…ヤチホコ達は?」
「え? ど~やらわたし達より先にレラ=ルーガルさま探しに行ったきりね…! きっとクスターナを拠点に探してると思うわ! あ! クスターナと言えば…キクリちゃんのお兄ちゃん来てるって! 」
キクリは目の色を変えて応えた。
「何ですって! 今から行くわ!」
「え、あ、待って! わたしたちも一緒に行くよ!」
「なんで? アタシだけでじゅーぶん…! ちょっとヒメ! アンタそれって…そしてそのケゥエ…! 今まで気づかなかったわ…!」
キクリは言いかけて目に入ったヒメを観て驚きと共にすべてを理解して応えた。
「…アンタ…それだけのヌプル持っていてそのラムの境涯…エウンオピッタ=アンペケゥエ=マェ…出来ないの?」
キクリの疑問に申し訳なさそうに、無念そうにヒメは応える。
「…ワラワはそのためには決定的にトゥムが足りませぬ…そして錬しようにも刻も足りませぬ…」
「…! ナニコレ! 不自然なくらいトゥムが少ないわ! これってまさか…!」
「そう…今のニ=イノカ…だいぶ老朽化しているから…純陀チャチャのチカラで新たなケゥエつくってもらお~ってね♪ マニィちゃんのよ~にね。きっとアマムさんもそのためにクスターナへ来たんだと思うの。チャチャからそぉ連絡があったのよ!」
「そーなの!? そっか…そーよね…! そしてその為のイコロ=タㇰ探すなら…!」
「そう♪ 一人でも多いほ~が良いでしょ♪」
「…確かにそーね。わかったわ、皆で行きましょ!」
「ミヅチもてつだうよ! イコロ=タㇰさがすのならできるとおもうよ!」
「…そーね。一緒に行きましょ♪ 意外にイイの見つけるかもしれないわ♪」
「がんばる!」
「…チカラなきウタラの如くの今のソイツに探せるのか?」
「ナニよ、アンタだってしょせんまだ緋徒じゃないの。ちょっとやそっとのトゥム如きで何言ってるんだか…」
やれやれと、溜息交じりにしかし馬鹿にするでもなく当たり前の事を何をと言う気持ちでキクリは応えた。
「…吐いたイタクは…戻せんぞ…!」
感情の高まりを露わにミケヒコが応えるとさらにもう一つ溜息をついて諭すようにキクリは応えた。
「…アンタ解ってないわ…! 境涯の違うアタシに対してアンタ何も出来ないのよ?」
「…それは…どうかな…?」
不敵にそう言うミケヒコにオオトシが横から応える。
「キクリ…ミケヒコのアペヌィのトゥムは…ヤチホコのそれに近いのです…!」
「…オオ兄様どーゆーこと?」
「境涯を超え…ヌプルなくともその性質も帯び…カムイにすら届くチカラとなるのです」
「ふぅん。じゃーまるっきり弱いモノいじめにはならないわね♪」
「…言ったな…! もう…オレは止まらんぞ!」
言の葉に合わせ氣力を噴き上げながらミケヒコは言う。
「ミケヒコ! 何を下らぬことで意固地になっているのです!」
「下らん? オレにはそれが一番重き事だ! それに…オレに意見押し通したくば…!」
「良いわ。…チカラ…示してあげるわ♪ 表出なさい。…お姉さんがキツーイお仕置きしてあ・げ・る・わ♪ あは♪」
決定的な一言であった…。
外に出る時点ですでに炎を噴き上げているミケヒコを前に、あくまでも冷静で絶対の自信と余裕を伺わせるキクリであった。
目が合うや否やミケヒコは爆炎を噴き上げ叫びながら斬りかかる!
「イレスカムイ=ペウプンチセ!」
「…シララ=チストゥマム…!」
キクリは渦巻いて襲い掛かる炎を分厚い岩壁を出現させ軽々と防ぐ。
「効かないわ。ムダよそんな攻…!」
ミケヒコは渦巻く炎を追随し、自身も飛び込んできてキクリに躊躇なく切りかかった!
「エシㇼタゥキ!」
鈍く鳴り響く金属音の後、折れた剣が宙に舞った。
観るとキクリは岩石を鎧の様に纏っている。
「モシリ=ハィヨクペ…! まだ…やる? ポン=シオン…♪」
折れた剣を見つめ茫然自失のミケヒコの首筋に手刀を当て圧倒的氣力を籠めた状態で少し嘲る様にキクリは言った…。
「…オ、オレの…負け…だ…。う、うぅ…くっそぉっ…!」
ミケヒコは悔しさの余り戦慄きながらもキクリに応えた。
「…ナニカに対して激しい怒りを抱ける…それ自体は良いコトよ! でも…それがただの執着や意地の内は…カムイにはなれないわ!」
「…負けは負け…好きにしろ…!」
悔しいながらも彼我の差を認めミケヒコはそう言った。
「じゃぁ…そーするわ…。アンタ…今のアタシ相手に良くやったわ! 褒めてあげるわ♪」
キクリはそう言いながらミケヒコに近づき、抱き寄せてから頭を撫でた。
ミケヒコは屈辱にまみれ暴れようとしながら叫ぶ。
「何をする! は、はなせ! な、何だこのエパタイなチカラは…!」
「…アンタ負けたんでしょ? 好きにしてイイって言ったとーりにしているだけだわ♪」
己が言の葉故違える事敵わず、歯を喰いしばりながらも耐えた。
しかし…不思議と嫌な感じはしなかった。
(こいつ…嫌がらせではなくラム=アサムからイレンカ抱き…言っている…のか…? そうか…緋徒との違い…か…ちくしょう…何だか…落ち着くじゃないか…)
「…もー良いわ。アタシのイレンカ…伝えたつもりだわ!」
「…悔しいが…伝わってきたぞ…! 褒めてくれた事…礼を言う…! オレは…まだまだだ…だが、絶対にあきらめはせん!」
「…その意気よ! 楽しみにしているわ♪ ガンバって!」
「…あ、ありが…とう…」
たどたどしいながらもミケヒコはキクリに対し礼を述べた。
(…! ミケヒコがきちんと礼を述べるなんて…驚きでございます! 彼我の差…そして抱きしイレンカの境涯の差…きちんと観じ取れた様で何よりでございます…!)
一連の流れを静観していたヒメは驚嘆してその様にヲモヒ廻らせ、キクリに対し深々と頭を下げた。
「今回はこの様な結末でしたが、先の封輪火斬さまの仰られた通りでしたら…私よりも秘めたるチカラ眠っていますので…チカラも技も…そしてそれを振るいしラムを…刻がかかろうとも焦らずに磨かれて下さい…!」
「…わかった…精進する…!」
オオトシがかけた言の葉に対しても真摯にミケヒコは応えた。
「しっかしキクリちゃんってばホントにカムイなんだね…! 今のわたしよりもずっと強いわ! …すごい…!」
ミチヒメはキクリの磨かれ方に敬服するようにそう言った。
「ありがと♪ アタシ…頑張ったわ♪」
「そしてそしてそしてなぁんと! コッチもすっごぉ~いのよね~♪ これがほんとのキクリちゃんかぁ♪ おっきすぎて手に余るぅ~♡」
ミチヒメは瞬時にキクリの後ろに回り込んで豊かに成熟した双丘を両の掌でわしづかみにして堪能する。
(…ミチヒメ…! この子のこの気配の無さと迅さは…ケゥエ=エイキの極みによるのね…! これって…おんなじく錬磨されてないと…たとえカムイであっても…一撃は免れないわ…恐るべしは…ミチヒメ…アンタだわ…!)
「…ちょっと…いつまで触ってるのかしら…? まーそのイレンカ…わかるけどね♪」
優しげにしながらも少しだけいたずらっぽく笑みを浮かべてミチヒメの胸元を観てキクリは言う。
「ぷぅ~! キクリちゃんのいじわるぅ~! 良いの! 大切なのは…きっと大きさじゃないと…思うも…んんっ…!!!」
そう言いながら横目にオオトシを観て視線を追うと…その先は…立派に実りし双丘の織り成す渓谷であった…。
「え~! もぉ~! よりによってオオトシさままで~!」
「え! あ…す、すみません…以前と比べその変貌っぷり思わずに目を奪われてしまいました…」
「ウッソー! オオ兄様今アタシのティティ観てたのー? ナンかオオ兄様も…随分と変わったわ! もちろんイイ意味でよ♪」
「面目ございません…それほどまでにキクリが…メノコとして素敵になられたのであるとイレンカ抱いていただければと思います…」
「…良いわ♪ 悪い気分じゃないもの♪」
そのやり取りを聞いて落ち着いたのかミチヒメも続ける。
「まぁ~コレに興味しめさないのは…アビヒコ位のモノよね♪」
「…呼んだ? あ、終わったんだね。ミケヒコはメル=ストゥ=マェまだだったわりに…善戦したの…かな?」
ミチヒメの言う通りアビヒコはまったく平常通りの反応で応える。
「…ちょっと…アタシのこのステキな姿に…ナニカ感想はないワケ? なんか…前よりもよそよそしいわ?」
「はぁ…。大きく…なったね…」
アビヒコは心底残念そうにため息をついてそう応えた。
「…それだけ? ちょっと…アンタなんかヘンじゃない?」
「…別にフツーだよ。キョーミないだけだよ…」
そっけなくアビヒコは応える
「それがヘンじゃない? って言ってるの! だってコレよコレ!」
そう言ってキクリはアビヒコの目の前で軽くゆすって魅せた。
「…はぁ…。うん、じゃぁぼく準備してくるね…」
アビヒコはそう言って神殿内へと入っていった…。
「…??? アイツ一体どーゆーことよ!」
「あ~…アビヒコ…一番好きなのって…香さんみたいな~カパㇻアミㇷ゚のよ~に…もごもご…(は、はや!)」
「ミチヒメ…それエシナだっていっつも言ってるじゃん!」
アビヒコは会話が耳に入るや否や瞬時に水の属性の輝く根源の力を纏い全力でミチヒメの口を塞いだ。
(…コイツも…迅い…! オレの観ていたモシリは…狭かった…! くそ! 負けんぞ…!)
「ふーん…。そーなのね…。まぁみんなそれぞれ何にエラマスのイレンカ抱いたって良いわよね。わかったわ…!」
そう言うとキクリは何か得心した様に頷きながら見慣れた小さな少女の姿に変化した。
「…こっちのほーが好みってワケね♪ ホレホレ♡」
キクリは衣を開けおよそ勾配など皆無に近いなだらかな平原に存在する微かな丘陵をアビヒコにみせてみた。
とたん耳まで紅潮して凝視したままのアビヒコの像が出来上がってしまった…。
「…そーなのね…。まーこれはこれで今は悪い気はしないわ♪」
「アッビヒッコく~ん♪ わたしのも…観る?」
ミチヒメはからかい気味に自分の衣を捲った。
「…!」
残念ながら瞬間的に交感神経優位になり血管収縮した状態での心拍数、血圧上昇による血流量増大にアビヒコの鼻粘膜は耐え切れなかった様である…。
「ありゃりゃ…ご、ごめん~! ちょっちイラムモッカしすぎちゃいました♪ ははは…」
指一本で頭を掻きながら困り笑いを浮かべてミチヒメはそう言った。
「…もう…良いよ…! 確かに損はしてないから…」
ミチヒメはアビヒコのその返しに少しだけ胸の奥に疼きを観じた。
「そろそろ…参りましょうか…クスターナへ…」
本来の目的を思い出させるように穏やかに諭すようにオオトシはそう言った。
「…! そ、そーだったわ! お兄ちゃんがいるんだったわ! みんな準備してもらっていいかしら?」
「もちのろん♪」「…もう出来てるよ」「ミヅチも~!」「キクリ、いつでも大丈夫ですよ」
「…オレ達も…いいぜ!」
「…じゃぁ行きましょ! クスターナへ…!」
一行はイヅモ西の瞬時に旅する門に向かいクスターナ王子に授乳せし大地へと跳んでいった。
お兄ちゃんことアマムがクスターナにいるようですね♪
用語説明です~m(__)m
・ナーディ:本来は「経絡」なのですが、体内を廻る力の通る道と言う意味より、「勁道」としました。
・ニ=イノカ:木+人形→「木彫りの人形」としました。
・シララ=チストゥマム:岩、大きな石+(岩+幹=岩壁)→「岩石壁」としました。
・ポン=シオン:幼児の意味より、場面から「ボーヤ」としました。
・カパㇻアミㇷ゚:薄い着物の事から、立体的な厚みの無さを指し示しました。
・エシㇼタゥキ:(えいっと)切る 叩き切る より、「喰らいやがれ」としました。




