第77倭 モシリ=ニン・ルガル(大地統べる女王)の娘
雒陽へ跳んだキクリは…?
「…まさか…あの…ニン・ルガル様がモシリ=ルーガル…とはね!」
難無く扉を開きルーガル=シ=チャシ内へ入り真なる玉座の間へと向かう。
「…これはこれは…その方等の中では…一番手であろうかの? 朕と肩並べし境涯へ至ったのは…!」
「…こんにちは伏犠さま。…たぶんそーね! だってアタシ…」
「ストゥ=モシリにてラマトゥより…ストゥより磨き上げてきたのであろう。で、なくばそのメレメルとチカラは出し得ぬであるから、の!」
伏犠の言う通り傍から観ると…以前と違いキクリもまた、眼前の二神同様何をせずとも自然に輝きを放つ状態であった。
「…ありがと! 確かにアタシ…頑張ったわ!」
「その佇まい観れば明白であろう…! エウンオピッタ=アンペケゥエ=マェをそれ程まで当然の如く使いこなすは…あのスサ=パセ=ルーガル以上やもしれぬ…!」
「父様より…? 残念だけどその父様に教わってきた身分よ。まだ…アノ背中は…遥か遠いわ!」
「…素直であり…己の有様を…外より正鵠を射抜き観れておる。…良い…女媧、このモノとの契約…儀を行い取り交わすが良い!」
「…かしこまりましたわあなた様…。さて…今はキクリや…タアン=ラマトゥにて良くぞそこまで練り上げましたね、本に喜ばしき事でありますわ」
「…ありがと…女媧…さま…、もしかして…どこかで…お逢いしたコト…あるかしら?」
「…ええ…もちろんですわ…。あなたのお兄様と共に、スサ=パセ=ルーガルさまに連れられて暫しの間このモシリにて暮らされていましてよ。その間に幾度もお会いましたし…一緒にイペも…ススしてあげた事もありましてよ♪ ほほほ…」
「…そーだったのね! ナンか小さい頃の事よく覚えていないから自信なかったケド、思い違いじゃなかったのね、良かったわ♪」
「その通りでございますわ…。して…それより…さらなるエカンナイは…エシカルンされてはいませんこと?」
「…修行中…断片的にだケド…観たわ…! ちょっと違うケドたぶん…アタシ…? が、この…モシリ…ウェンテしようとしていたわ…!」
「…それを…観られましたか…。して…如何様にイレンカ抱かれましたか…?」
「どーもこーもないわ! サイアクよアンなの! もしアレがホントにアタシのヤィコ=トゥィマなら…どー謝ってどー償えば良いかまるで見当がつかない程に申し訳なさすぎだわ!」
そのキクリの言の葉を聞き終えると感慨深い面持ちで目を潤ませながら女媧は応えた。
「…本に…あの刻と比ぶるに…生長いたしましたわ…今の貴女は…妾と契るに似つかわしゅうモノとお見受けいたしましたわ…。さぁ…此方について来て下さいまし…」
「…解ったわ!」
「…少々…飛びますわ…! しかとついて来て下さいまし!」
そう言うと女媧はふわりと宙に浮き、とある方角を向いたと思いきや視界から見失うほどの迅さで飛飛翔した!
「…やるわ! 流石ね!」
感心しながらもキクリも同様の迅さで追随していく…!
「…本に…カムイになりたてと思い難き素晴らしさ…流石は…シネペㇲ=サラの…片割れですわ…」
荒野が眼前に広がる。前方には湖と巨大な木が観えてきた。
「…あそこですわ…あそこに妾のシンノ=ケゥエが…」
「…本来の…ですって…?」
巨木の根元に降り立つと、女媧は大きな樹洞の中へと入っていった。
「…そっちね…!」
キクリが後をついて行くと…中にあの聖塔の様な扉が観えてきた。
「…此方へお入りなさいまし…」
「わかったわ!」
扉をくぐると玄室があり、中へ入り扉を閉めたとたん、二人を乗せ急降下していった。
「…落ちてるみたいだけど…平気なの?」
「…没問題ですわ…最奥部こそ目的の処ですわ…」
「アナタの…ケゥエが…モシリ=ルーガルとカンケイある…? …! アンタ! もしかして!」
そこまで言いかけたキクリの言の葉を聞いて笑みを浮かべながら女媧は応える。
「…まだ様々なチカラに慣れてらっしゃらないようですわね…その通りですわ…。カムイ=メㇾコㇳ遣えしならば瞭然ですわ…妾は…モシリ=ルーガルたる女媧本神より分かたれしカムイ…ですわ」
「こんな強力なモノは初めて観たから全くピント来なかったケド…ウサレイエ=ラマトゥ…なのね! アンタも…伏犠さまも…!」
「ほほほ…その通りでございますわ! 元々妾達二神でラムハプル=モシリ=コロ=クルとそれを統治するカムイの役割を担いてモシリを治めてきたのですわ…」
「おかげでこのモシリより動く事叶いませぬが…このモシリは…盤石の平和を築けしと自負しておりますわ…例えエカンナイのウェンルイ=ウェンテ=キムンペが出たとしても…!」
「…アタシの…ヤィコ=トゥィマって…そんなオソロシイモノだったの…?」
「…正確には…あなたともう一柱…分かたれしモノ混ざり合いし存在の事…ですわ」
「…分かたれしもう一柱のアタシって…! そ、それってもしかして!」
「左様でございますわ…。今あなたの脳裏に描かれし存在こそが分かたれし半身ですわ…」
「…それもあってなのね…! こんなにも…探し求めちゃうのって! なんかわかった気がするわ! ありがと!」
「よろしゅうございましてよ….。さぁ…これこそ妾の本神…モシリ=ニン・ルガルの…女媧でございますわ…!」
眼前には視界を覆いつくされそうな大きさで横たわるナニカがいる!
「な、ナニよコレ! とてつもない大きさだわ! そしてこのトゥム…ヌプルの大きさ…おーよそ理解の範疇を超えているわ! これがラムハプル=モシリ=コロ=クル…その…ニン・ルガル!」
「妾達は…このモシリすべてを支え…担うモノなのでございますわ…。すべてのチカラは妾達を通しモシリよりすべてのモノへ行き渡りますわ…。それゆえ…本来は…自我を…レンカクス=ラムを持つ事など許されませんでしたわ…エカンナイの…ウェンルイ=モシリ=ヤㇲケ=シルトゥまでは…。あれ以降…我々ラムハプル=モシリ=コロ=クルの中にもレンカクス=ラム持ちしモノが顕われ…妾たちの様に“良かれ”の元行動を起こすモノと…封輪火斬殿の様にあえて静観するモノ…それこそ多様な振る舞いをするようになりましたわ…。そんな折…妾の次代となるモノとしてカムイトゥスを取り計らいてタアン=ラマトゥに降りて参られたのが…そなたのヤィコ=トゥィマ…|シネペㇲ=サㇻの…狐狗狸之女神…そなたでしたの…。しかし…とある邪魔モノに仕組まれ…そそのかされ…善し悪し知らぬうちに…染められてしまい…おびただしい数のイノトゥ奪い去り…果てには己のチカラ暴走させられてしまい…誰も手の付けられない状態を先の封輪火斬殿が…治めて下さりましたの…」
「…その後…カリ・ラマトゥの果てに生まれてきたのが…」
「その通りでございますわ…アトゥイとモシリに分かたれていらしたのですわ。ふたつに分かたれしは…今際の際のあの子の采配だと思っておりますわ…。最後に色々と悟り悔いてからあの子…逝きましたから…」
「…ちゃんとはエシカルンできてないケド…キットそうだわ…! こんなコトした為に…アタシ達アンな目に遭ったのね…!」
「そう…すべては因と果によるモノ…でございますわ」
穏やかにうなずいて女媧は応えた。
「…ウェンプリ=アシンケならナニしたかヤィコレしてシセイペレしたい処だわ!」
「そここそが…カリ・ラマトゥにてタアン=ラマトゥ顕ること自体が行と言われる所以ですわ…。願い、誓いたてしとも…そのすべてをコヤイラムして喪ってくるのですわ…。それゆえに誓願破れることも数多でございますわ…。すべてのモノはタアン=ラマトゥの生終えし刻に己が課せられし事を知ると聞きますわ…。キクリや…そなたは言わば一度生を終えし身…それ故に欠片なれど垣間観る事になられたのですわ…」
「…観れて良かったって…言ってみせるわ!」
女媧は優しい笑みを浮かべ横たわる巨大なモノへ近づいて行った。
二つの存在が触れた瞬間、今まで目の前にいた女媧の姿が消え、横たわりし大地統べる女王が動き出し始め、頭を持ち上げてその目を見開き語り掛けてきた。
「…良くぞこの険しき道を歩みここまで参られましたわ…そなたのラム…イレンカ…良くわかりましたわ…没問題ですわ…契約の儀をいたしますのでこちらに手を翳して下さいまし…」
キクリが言われた通りにすると…翳した手から凄まじいナニカが入ってくる!
「あぁっ! くぅっ! ナ、ナニコレ! も、ものスゴイわ…!」
「…完了いたしましたわ…これにてモシリのトゥムを…自神の限界を超えて揮う事叶いますわ…。如何様に…何を成すべきかは…よくよくイレンカ廻らされて下さいまし…」
そこまで言うと“大地統べる女王”たる巨大な女媧は、再び両の眼を閉じ頭を垂れて動かなくなり…代わりに先程の神威の一柱たる女媧娘々が顕れた。
「さぁこれで望まれし目的…果たせましたわね…。一度イヅモへと戻られると良いですわ…」
「…わかったわ! ありがと! ナニか…トンデモないチカラ遣えるよーになったみたいだから…ホントに気を付けるわ!」
「…我が娘フゥガァウリィ=ニュシェンのシセイペレの一柱、キクリや…悩みありし刻は…この女媧…いつでもご助力いたしましてよ…」
「…わかったわ! よくヤィコレしておくわ!」
「…最後に…一度…いいえ…良く顔を観せて下さいまし…」
女媧は何か言いかけたが言い直してキクリの顔に優しく手を添えた。
「…もうひとりの…母様…色々とありがと! また…遊びに来るわ!」
「…恩に切りますわ…! キクリや…そのイタク、ラム=アサムに大切に刻んでおきますわ…いつでもいらして下さいね…」
キクリも己の胸中にその言の葉を大切に抱えイヅモへと帰還して行った。
キクリの前世も垣間見えましたね…。
用語説明です~(^-^;
・シンノ=ケゥエ:真実の+身体:そのままです。
・ウェンルイ=ウェンテ=キムンペ:激しい+破壊する+けもの→「苛烈なる破滅を呼ぶ獣」としました。
・フゥガァウリィ=ニュシェン:狐+狗+狸+女神→そのまんま「狐狗狸之女神」です。
これら山の獣統べる神威…女神です。日本語で読むとまんまですよね(笑)
・ニン・ルガル:女王、王の妻。「ニンガル」でも女王ですので…
どちらかにまとめようかなと思っています。(シュメール語です)25/0930 「ニン・ルガル」に統一しますm(__)m




