第76倭 目覚めしシンノ=レンカイネ(真理の源泉)
奥の玄室へ入ったキクリは…
(…ここね…ここで…過ごすのね…。外の…鏡写しだわ…! なっナニ!? トゥカㇷ゚=ケゥエを維持…できない…! くずれ…消えていく…!)
キクリは傍目にはその姿を消してしまったかの様に観えた…。
(…トゥカㇷ゚=ケゥエが無くなって…ラマトゥだけでも…ラムは…イレンカは…なくならないのね…。しかしこれじゃナンにも出来やしないわ…。外なるチカラ…ここではアタシのチカラ封じられているから…観じやすいはずだわ…!)
キクリはそうヲモヒ廻らせて外の氣力…霊力を発しようと試みた…が、目も耳も姿さえもない状態でどうしたらいいのか見当もつかなかった…。
(…そうか…そうね…。今までは…ケゥエの仕組みに完全に依存していたんだわ…! ここにラムがあるってコトは…フミの大元はここにあるってコト…あとは…どこを使って観じれば良いか…そーゆーコトね…!)
キクリは手始めに自分自身を観じようと試みた。
最初全く解らなかったが…しばらくして徐々に観えてきた。
(…どーやら…丸いのね…今のアタシ。これが…ラマトゥの…形…。きっとこの中にすべてのチカラのストゥとなる…シンノ=レンカイネが存在するはずだわ! じゃないと今こーして己を観じる事なんて出来るワケないもの!)
キクリはさらに己を探ってみた。何も観えない…。次の日も…その次の日も探ってみたが観えない…。
(なかなかに手ごわいわ…! でも…あきらめないわ!)
それから幾日も刻は流れていくが未だ内なる真理の源泉を観じられなかった。
それでもキクリはあきらめなかった。
(…だってミヅチの処に戻ってヤイ=コ=ルイェしてあげたいし…アタシもお兄ちゃんにエオ=ポㇰナ=カリしたいもの!)
来る日も来る日も…明るく日の差し込む昼も日が暮れ闇覆いし夜かもわからない中であきらめずに挑戦し続けたが…一向に観じられなかった…。
(…ナ、ナンで? アタシのヲモヒ違い? それとも…観じ方がそもそもマチガってるの?)
キクリは流石に焦燥の念を隠せなかった。
朧気に観えたと思うそれ自体がマチガイであったかもしれない…そんなヲモヒも湧き上がってきた。
(…ダメだわ…! このままではイレンカ敗れて…ゼッタイ観じられない…どーする? どーしたらイイの?)
(…己を…外より眺めるのだキクリよ…)
(…父様? 自分を…外…から…?)
(…! あの…アンナと一緒に探知していた刻の…アレ!)
キクリは今まで違い観ようとするヲモヒを捨てた。
(…自分から観ようとイレンカ抱くのではなく…コチラに訴えてくるモノを…受け止める…アノ…カンジ!)
すぅっと自身の前に情景が浮かび上がり…観えてきたそれは…まさに傍からキクリを眺めた景色!
(…コレね! このフミ…浮かんでくるわ! アタシの中の…小さな希望の…ゴォトㇻ! ゴォトㇻの形、しているわ! これが…アタシの…シンノ=レンカイネ! 観えたわ!)
キクリは今度はその様に意識を持ち、そのまま外にあるすべてを受け入れようとした。
すると…今度は情報や景色などではなく…もっと明確に権能自体が注ぎ込まれてきた。
(…! き、来たわ! これが…外なる…モシリに遍く息づくトゥム…ヌプル…ニタィ=カント=オピッタ=ルウェのカムイ=ヘセ…!)
加速度的に急激に入り込んでくるそれは…まさしくこの世界の生誕より息づくモノであった!
(…! こ、これはさっきのヤチホコ達が言ってたコト…? コレは…? アタシ…? お兄ちゃん…? ナニ…コレ…? これ…これって…! あぁ! ああああああぁ~! お兄ちゃ~ん! は、ナ、ナニ!? アンタ達…い、イヤー! やめてー! お兄ちゃーん! …あ、あぁ…! …。…。ア、アタシ…まだ…生きてる…でも…もう…ダメ…かも…お兄ちゃんの分も…頑張るつもりだったけど…あぁ…なんで…こんなコトを…するの…? アタシ…こんなコト…したくも…されたくも…ない…!)
(…ならば…己がチカラで…打ち破るが良い! 立ち上がられよ! そなたにはその…チカラが…今は己が掌中にあるであろう!)
(…アタシの掌のナカに…チカラ…全くナンにも出来ない…出来なかったアタシに…?)
(…我が業は我が為すに非ず! ニタィ=カント=オピッタ=ルウェに遍くカムイ=マェなり!)
(…ニタィ=カント=オピッタ=ルウェに…遍く…? …。…。…! そう…だったわ…! アタシ…ついさっき…やっとそこまで…出来たんだったわ! これはヤィコ=トゥィマのオハィンカㇻ=トゥカㇷ゚…! アタシがこの手で…あるべき処へ還してあげるわ!)
そうキクリが強くヲモヒ発した瞬間、キクリの魂の中の真理の源泉に向かって森羅万象の神威息吹が注ぎ込まれ一つに練り上げられていく…!
(アタシがコィキするのは…何の為? 復讐…? 仕返し…? 違うわ! アタシ自身の弱さとウェウェクさを…アタシが超えて行く為だわ!)
その瞬間キクリの魂の中の種を模った真理の源泉が見る見るうちに芽吹き葉を開き花を咲かせた!
(…観える…観じる…ワカる…今…アタシは…モシリと…一つ! アタシの業は…アタシが為すに…非ず!)
強烈な光を放ち身体が形成されて行く! 同時にあの陰惨な情景世界も光にのみこまれる様に消え去ってしまった!
(…そうなの…ね…。父様が…助けて…刻を…アタシの…ラムとイレンカを…救って下さったのね…!)
完全に実体化したその姿で歩き出す。事も無げに自室から出てくるかの如く結界から抜け出てきた。
「…父様…ありがと! アタシ…アノ刻にあのままだったら…きっとラム…ウェンテしていたわ! ゼッタイ耐えきれなかった…本当にありがと! そして…もう…ペンラムコトロにラゥコタㇷ゚しても…トゥイマ=ウエペケレとして存在しても…大丈夫! アタシの不用意さ、ウェウェクさから引き起こした出来事だったとラム=アサムからイレンカ抱けるわ…! それは…お兄ちゃんも…!」
「…うむ…! 素晴らしくエニㇲテなイレンカ、見事なり! 立派に…真に強くなったな…キクリよ…」
「アタシなら…超えられるって…そう…父様は最初から信じてくれていたんでしょ? ありがと…! 今までの事も…すべて意味があったのも分かったわ! アノ刻の事件さえも!」
「…オピッタ=ルウェ須らくラマトゥの錬磨の為の故に存在するなり。イレンカそこに至りしならば…恐るる事など…」
「…何一つないわ! ね♪」
「ふっふ…左様である、我が誇るべき愛娘キクリよ…♪」
「ありがと♪ いくら言っても伝えても足りないわ! アタシ…父様のメノコ=ポとして現世に来れて本当に良かったわ! これからは…これからも! 父様に…ヤィコ=トゥィマでアンナだったアタシが…アタシでも…! メノコ=ポで良かったとイレンカ抱いてもらえるよーに頑張るわ!」
そこまで聞いたスサノヲの両目から熱いモノが一筋頬を伝い流れ落ちた。
「…感…無量とは…斯様な刻に使うイタクで…あろう…」
「…父様…♪」
キクリはしっかりとスサノヲを抱きしめた。とても大きくて手が回りきらない立派な体躯を一所懸命抱きしめたら…反対に優しく抱えあげられてしまった。
「あ、父様…キクリ、もうとっくにオトナなの…!」
「…故に…カッケマッとして…抱きかかえたつもりであったが…シホンの刻のイレンカに戻りしであったか? はっはは!」
「…そうだったの? でも…父様にされると…やはりソッチに戻っちゃうよーだわ♪ せっかくだし、シホンとして扱ってもらっても…いい?」
「無論である! 子は親から観れば…いつまでも子であるからな♪ よしよし…父様が連れて行って進ぜよう…!」
「父様ありがと♪ 手放しで甘えられる存在って…すっごくステキだわ! うれしい♪」
「左様か、左様であるか♪ これから先…さらなる試練もあろう…。今の内 存分に甘えるが良い…!」
「はーい♪ 父様シ・エラマス♪」
「父親冥利であるな♪」
「本当? うれしいわ♪」
キクリは幸せそうなヲモヒを満面に浮かべスサノヲに抱かれたまま根源の国との境となる社の扉まで連れてきてもらった。
「…あまり抱いてなど出来ぬであったからな…われもピリカであった、礼を言う…」
「ナニ言ってるの! アタシこそ…本当に久々にラム=アサムからラムシリネしたわ! 父様…ありがと♪」
そう伝えてキクリはスサノヲの頬に唇を押し当てた。
「…アマムにも…よろしくと伝え願う!」
「解ったわ! お兄ちゃんはまだコヤイラム…?」
「いずれアマムもすべてをエシカルンするであろう…その刻は…今度はキクリ…そなたが助けの手を差し伸べられよ…!」
「…わかったわ! まーかせて♪」
「うむ? キクリにしては珍しきイタクであるな…ミチヒメの…であるか…」
「うつっちゃったみたいね♪ アタシあの娘に負けないくらい明るく生きてみせるわ♪」
「うむ! 必ずやそうなるであろう! われは確信の元に見守ろう!」
「…ありがと♪ アタシたちの生きざま…ずっと観ていてね!」
「無論である! 今のそなたであろうとも真に困窮せし刻は…この父も馳せ参じよう! 故に何恐るる事無くイレンカのまま進むが良い!」
「はい! そーするわ! それ聞いたらもう何にも恐くないわ!」
「うむ…然らば…無理は構わぬが…無茶は無知ゆえの振る舞い。努々忘るる事なき様に!」
「はい! じゃぁ…行ってくるわ!」
「うむ!」
キクリは砂処之神殿を後にしてイヅモの神殿へと戻ろうとヲモヒ廻らせた。
今のキクリには時間や空間的距離は問題ではなく、念じると同時に瞬時に跳んでいった。
「…ただいま! 今還ったわ! みんなは? それとあれからどれくらい刻が流れたかしら?」
「…き、きぃちゃん!? そ、そのすがた…もしかして…いまのきいちゃんって…オトナなの?」
「…そーよ♪ 実はミヅチ、アナタよりずっと年長だったの♪」
「そーなんだね♪ どーりでずぅっとおおきいおねーちゃんなカンジするとおもった♪ おかえりなさい♪」
そう言ってミヅチは飛びついてきた。キクリは小さなミヅチをしっかりと受け止めて抱き上げた。
「はは…ただいま♪ ちゃんと抱けるし…ホラ! こーしてアタマも撫でてあげられるわ♪」
「わーいわーい♪ ありがとうきぃちゃん♪」
「うん♪ それでねミヅチ…アタシが旅立ってから…今ってどのくらいなのかわかる?」
「えーと…さんかいトカㇷ゚チュㇷ゚=カムイさまがではいりしたよ?」
「…参…! それだけ…なの?」
「うん…ミヅチさびしかったけど…かあさまとがんばったよ!」
「そう…偉いわ! よく頑張ったわ♪」
ミヅチを“優しく抱きしめて頭を撫で”ながら幽世との刻の流れの違いに驚いていた。どうやら何十倍も違う様である。
(…塔の上…アンはさらに違っていたわね…確か向こうで千の昼と夜廻りしがこちらの一廻りだとか…)
「…みんなは?」
どうやらこの間にヒメとアンナに頼み探知してもらったらしく、先に見つけていた大凬統べる王の元へヤチホコとスセリは向かい、ミケヒコ、ヒメはオオトシ、ミチヒメ、アビヒコ、ウガヤと共に封輪火斬へ詣でる為ローマとパルティアの戦場へと赴いたそうである。
「…ミヅチは? 今までナニカしていたの?」
ミヅチは少しだけ沈んだ面持ちで話し始める。
「…ミヅチ、いまはただのウタラだから…またさいしょっからってヤマタさまのところにかよってるんだ♪」
「偉いわ! アナタまだ小さいから…今からでもぜんっぜん遅くないわ! 頑張って!」
「ありがとー♪ きぃちゃんはきっとそういってくれるっておもったよ♪ ミヅチがんばるよ!」
「…その意気よ! 楽しみにしてるわ! アタシは…アタシも…モシリ=ルーガルさまの元へ…行ってくるわ!」
それを聞いて驚いてミヅチが応える。
「ええ~っひとりでー? だれかかえってくるまでまったほーが…わわっ!」
「…こっちでは三回だケド…アタシはねミヅチ…もっとずっと永い刻修行してきたの! だから…大丈夫! 待っているといいわ!」
そう言うとキクリは瞬時にイヅモの瞬時に旅する門へ跳んでいき、大国・漢の都雒陽へと向かっていった。
「まえよりもさらにずぅっとげんきだね、きぃちゃん♪」
ミヅチは依然と隔絶した振る舞いのキクリを観てそうヲモヒ抱き見送った。
…どうやら壁を超えた…ようですね…♪
用語説明ですm(__)m
・エオ=ポㇰナ=カリ:(~の)首に抱きついて)グルグルぶら下がる
→「首に抱き着き枝垂れる」としました。
・ゴォトㇻ:buddha-gotra(ブッダ=ゴートラ:仏の種子)より、「種」としました。
※すべての衆生に本来的そなわり、それを以て仏陀の悟りに至る可能性を秘めている、その証です♪
=シンノ=レンカイネ(真理の源泉)と僕は表記しております♪
・ニタィ=カント=オピッタ=ルウェ:森、林の+天、宇宙+すべての+様子、事
→「森羅万象」としました。
・ヤィコ=トゥィマ:前世。直訳は「自分の過去」ですので→「過ぎ去りし日々」としました。
・オハィンカㇻ=トゥカㇷ゚:幻、幻覚+幽霊→「現世にヲモヒ遺し亡霊」としました。
・ウェンテ:壊す、破壊する、滅ぼす、より。
・シ=エラマス:本当の、最も+好き→「大好き(キクリの場合は“ダイスキ”)」としました。
※「大好き」がありませんでしたので造っちゃいました♪




