第75倭 オタ=ソ=カムイチセ(砂処之神殿)へ
ヤチホコとスセリは皆の元へ還ってきました…。
「…戻ってきたわね! ほぉら! アタシの言ったトーリ!」
予想が当たったとばかりに得意げにキクリが口を切る。
「わ~! ヤチホコくんとスセリちゃん…げんきになってよかったね~♪」
ミヅチは純粋にうれしそうである。
「…え…? これってふたり…も、もしかして…!」
「何の事だ? そんな事よりもオレが契約するためにだな…!」
アビヒコは何かに勘付いて動揺し、ミケヒコはそんなことなどどうでもいい様な振る舞いである。
「…よくぞお戻りになられました…そして…きちんとイレンカ交わす事叶った様で何よりでございます…」
相変わらずすべてを見通しているかの如くの意見をヒメは述べた。
「が~ん! もしかしてもしかして~ヤチホコくん達の方が一足先に…!」
「…こればかりは丁度良い刻と言うモノがあります…。急くことなどありませんよミチヒメ」
「…オオトシさま♪」
己の権能を使えばわかるであろうに動揺が先だってすっかり忘れている様子のミチヒメと、先の経験からまた一つ生長し落ち着いて応対するオオトシをみて、安堵から笑みをこぼしながらヤチホコが応える。
「…みんなごめんです…! もう…大丈夫です♪」
「お決まりの様な立ち直り方ね…わかりやすすぎだわ!」
キクリはからかい半分にそう返した。
「え? ボクたち何か変わってるの?」
自覚なく不思議そうにスセリが尋ねる。
「…ええ、とーっても♪」
「ま~なんと言うか…観たらわかっちゃうよね~スセリちゃん♪」
こちらも冷やかし半分で困り笑いしながらのミチヒメである。
(どぉれっと~♪ …。…。…! あ、ありゃりゃ…? あらまぁ…イイヨマプカ…だったのね…♪ でも…そのイレンカはホンモノだったからこその…メレメル…よね♪ う~んふたりともステキ♪)
どうやらヤチホコから事の顛末を伺えた模様である…。
「…何でも良い。立ち直りさえすればな!」
ミケヒコはぶっきらぼうな言い回しだが案外一番心配してかもしれない…。
「ミケヒコの言う通りです! …コスムナタラさえしなければ…いえ、例え折れたとしても再度立ち直れれば…何事もいつかかなえられると今は私もそう思っております…!」
それこそ本当に試練で心折れた処から立ち直ったオオトシの言の葉を皆は頷きながらしっかりと噛みしめて聞いた。
「何はともあれ…良かったよ!」
「アビヒコ…ありがと! みんなもありがと!」
スセリは感謝を露わにそう応えた。
「それでは…今後の話ですが…」
オオトシは四属性の盟主の王を求める際の要点を話し始めた。
「アペヌイ=ルーガルは…パルティアとローマのモシリ間のロルンペを治めないと行き来できません…。刻はかかりますが我々もロルンペ終結に尽力いたしましょう…! アトゥイ=ルーガルは…一度八俣さまに聞いてみましょう。モシリ=ルーガルは…もう一度伏犠さまと女媧さまにお会いしてイタク賜りましょう。そして…レラ=ルーガルですが…これはもう一度ヒメに探知していただきましょう。そして…」
その後もキクリの現状をどうするか、どうやら権能を失ってしまったミヅチについて、現世に還ってきているというアマムの捜索、ローマのさらに向こうにあるというウガヤの求めし神威への道のある御使いたちの住まうモシリ…現状成すべき事、成せる事を一通り上げて皆の意見を求めた。
「スセリちゃんとミケヒコは…五つの属性の一柱ですので…刻はかかるかもしれませんが…住まう処のわかるアペヌイ=ルーガルさまの元へ伺えるようにするのが良いと思います」
ヤチホコがそう言い終えたころ丁度観えたようでヒメが語り掛けてきた。
「レラ=ルーガルは…先の処よりそれ程離れてはおりませぬ…。今一度詣でてイタク交わすのが良いと思われます…」
「…キクリちゃんの状態はどうしようか? 純陀さんにケゥエ造ってもらって乗り移るとか…」
アビヒコがそう発現すると少し残念そうにマニィが応えた。
「ケゥエ持って生まれてきた子は十回季節廻っちゃったらもう出来ないわん…♡」
「十回…。こちらの世のモノとなった後は…と言う事ですね…」
「オオトシさぁまさすがだわ♡ その通りよん♡」
その言の葉を聞いて落胆を露わにしていたキクリの頭に何モノかの声が聞こえてきた…。
(…我が愛しき娘キクリよ…そなたのケゥエの件…われが何とかしよう…われ住まいし処へ参るが良い…)
「…これは…父様!」
(…うむ。久しいであるな…。ミヅチ救う為…他者の為己を擲って助くそのイレンカ…見事であった…。斯様な正しきイレンカの持ち主ならば…必ずやわれの修めしカムイ=イノンノイタクの内、今そなたが欲するモノを修得出来るであろう…)
「…なんか、すごそうだわ! 父様…すぐに参りますわ!」
(うむ…では…アンナ…とやらのチカラを解き、トゥカㇷ゚=ケゥエ=ヤィカㇻしてこちらに参るが良い。トゥカㇷ゚=ケゥエになればわれの示す進むべき方角…自ずとわかるであろう…)
「…わかったわ! みんな! 父様がアタシの事何とかしてくれるみたいだわ…! アタシ行ってくるわ! アンナ…イノトゥつなぎとめてくれてありがとう…じゃぁ…行って…くるわ…!」
「…きぃちゃんきをつけてね…!」
「ありがとミヅチ♪ アンタこそ今はただのウタラっぽいみたいだし色々とケガしないよーに気を付けてほしいわ! じゃぁ…またね!」
「…うん! いってらっっしゃいきぃちゃん!」
ミヅチがそう応えるとキクリは子ぎつねの姿から解放されて幽体化した。霊力強きモノ以外には観えない状態である。
「キクリ…もしかしたら…父の業修めようとせん刻…大変な事に見舞われるかもしれません…。ラムを…イレンカをしかと保ち、成すべき事、成さんと欲すべき事を強く願いて乗り越えて下さい…!」
(…? わかったわオオ兄様。心配…ありがと! 今は…良くわからないケド…覚えて…ラム=アサムにきちんと刻んでおくわ!)
「此度の試練乗り越えし後…キクリ…ソナタは第一の輪、超えしモノとなられます…オオトシ殿のイタク抱き…歩を進め下さいまし」
(…わかったわ。…オオ兄様だけじゃなくってヒメちゃん…アンタも今のアタシ…観えるのね?)
「…もちろんでございます。ヌプル高きモノ、メル=ストゥ=マェ使えしモノならば観える筈でございます」
そこまで聞くとキクリはヤチホコの方へ振り向いて尋ねる。
(…ヤチホコ! アンタも今ならアタシのこと観えてるってこと?)
すると申し訳なさそうに残念そうにヤチホコは応える。
「ええとですね…闘う為のチカラは出来るようになったのですが…フミなチカラの方は…やっとキクリちゃんの声が聞こえるくらいでして…」
「キクリちゃんわたしちゃぁんと観えてるよ♪ ザンネンね~ヤチホコくん♪ ホントのキクリちゃんってば…すっごくティティちゃんがおっ…むぐむぐ…」
「ミチヒメ…余計な事は言うものではありませんよ…」
そう言いながらオオトシは前回と違い輝く根源の力を解放しているミチヒメの先を取りつつも優しく口をふさいだ。
(さっすがオオトシさま♪ 今のわたしの先をとれるなんて…♪)
(あっははは♪ アンタ達といると…ホントに楽しいわ♪ 必ず戻ってくるわ!)
どうやらかなり大笑いしながらそう応えていた様である。
「はい!」「ぼくは心配しないで待ってるよ♪」「頑張られて下さいませ」「キクリ、しっかりと励まれて下さい」「今度はソレをヤチホコくんにも魅せつけてあげてね♪」「ボクは観えも聞こえもしないケド、頑張ってねキクリちゃん!」「さらに強くなって来い!待ってるぞ!」
ヤチホコ達はそれぞれに言の葉をかけて見送る。
「きぃちゃ~ん! がんばって~!」
(…ミヅチ…。ケゥエ、大切にね…アタシのイノトゥ捧げたんだから、ね♪)
そう言ってキクリはミヅチの頭を撫でる仕草をした。
「…! き、きぃちゃん♪ わぁ! ありがとう~♪」
「ウ、ウソ! 触れ…た…?」
(…やはり素養備えしであるな…皆との別れ済ませし後参るが良い…そなたにとって先々まで助くチカラとなるであろう…)
(…わかったわ! じゃぁ…行くわ!)
そう言うとキクリはこの場を離れ旅立っていった…。
(…なーるほどね…確かにこの状態だと…父様の居場所カンタンにわかるわ! アッチね!)
キクリは砂処之神殿の奥へとすり抜ける様に入り込んでいく…。
(左様である…彼のポン=イトゥンナㇷ゚=モシリ同様でいて異なるポㇰナ=シリ…ストゥ=モシリなり…)
(そう…なのね…! 今向かうわ…!)
不可思議な空間に浮かぶ巨大な社…その奥に父スサノヲは鎮座して待っていた。
「良くぞ参った我が愛しき娘キクリよ…」
「…ホント、スッゴイ久しぶりね、父様♪」
キクリはいつもと違いまっすぐスサノヲに飛び込む様に抱きついた。
「…ここでは父様にさわれるのね♪」
「左様。同様の…トゥカㇷ゚=ケゥエ同士故…」
「アッチにいた刻…トゥカㇷ゚=ケゥエでは誰にも触れられなかったケド…最後ミヅチを撫でてあげようとシタ刻だけ不思議とさわれたの!」
その言の葉を聞いて優しく頷いてスサノヲは応える。
「うむ…。それこそがわれがキクリ、そなたへ授けんと欲する業…エウンオピッタ=アンペケゥエ=マェなり…!」
「エウンオピッタ…アンペケゥエ…マェ…?」
「正しくはその初手であるが…トゥカㇷ゚=ケゥエでは出し得ぬトゥムを…ヌプルを…外なるモシリより集め、メル=ストゥ=マェ…もしくはカムイ=マェを以てカムイ=エウンさせる…いわばトゥカㇷ゚=ケゥエをアスカンネ=ケゥエ…もしくはカムイ=ケゥエと化す正にカムイ=イノンノイタクと呼ぶに相応しき業…なり…!」
「…ソレ…すごいわ! 父様! すぐ教えてほしいわ!」
「うむ…。その為には…モシリに遍くトゥムとヌプルを…己がモノとして集めし事修めねばならぬ…!」
「…どーしたらいいの? やるわ!」
ヲモヒも露わに身を乗り出さんばかりにキクリが応えるのを観ながら少々躊躇いがちにスサノヲは応えた…。
「…一つ、良いであろうか?」
「なーに? もちろん構わないわ!」
大きく息をつき、努めて穏やかに諭すようにスサノヲは語り掛けた。
「モシリに遍くトゥム…ヌプルを…己がチカラと化す…それは即ちモシリに刻まれしトゥイマ=ウエペケレをも…断片的ではあるが知る事となる…。その為に…そなたには…勧め難きクス=ルである…」
「…アタシ…なんか…コヤイラムしたコトがある…の?」
「コヤイラム…ではない…。今のそなたのトゥイマ=ウエペケレには真に存在せぬ事…しかし…それを…取り戻す事なってしまうであろう…如何様に辛く苦しき事でさえも…」
スサノヲは口重く躊躇い露わにしながらも真摯にキクリに伝えた。
「…たとえ…どんな辛いコトであっても…アタシ、やるわ! だって…あの…みんなと…一緒にいたいの! そして…お兄ちゃんに逢ってきちんと触れたいの!」
スサノヲは目を閉じて暫しヲモヒ廻らせてからゆっくりと天を仰ぎ…優しくキクリを見つめて応えた。
「そうで…あったな…良かろう…。では…こちらに参られよ…」
社の裏手より小さな路地が伸びていた。一歩、また一歩徒歩進める毎に身体全体が重くなり動きが鈍っていく気がしていた。
「…気のせいでは…あらぬ…。此処では…己がトゥム…ヌプルを封じられてしまうのである…。現世における“エヤィホノッカ=シ=ケス=モシリ”と呼ばれし処と同様の結界である…」
「…エヤィ…ホノッカ…シ=ケス…モシリ…そのイタクを聞くとナゼかサパが…痛むわ…!」
その言の葉を受けヲモヒ廻らせし処在れどあえて応えずスサノヲは歩を進めた。
「…此処より先が…結界である…一度中へ入りし後は…外なるチカラ呼び込めぬ限り…身動き一つ出来なくなるでであろう…」
「…それはかなりキツイわね! でもアタシ…やるわ!」
それを聞いてスサノヲはゆっくり、そして優しくキクリを抱きしめた。
「誇るべきラㇺ=エトクな我が娘キクリよ…。コスムナタラせし刻は…この父を呼ぶが良い。イレンカ廻らせるだけで良い。さすれば直ちに行を中断し助けに参る…!」
「…コレって…やりなおし…きくの…?」
「…叶う、が…今の刻逃がすならば…次にいどむは暫し刻を待たねばならぬ…」
「しばしって…どれくらいなの?」
「…三十程季節廻りし後再び叶うなり…」
「…それって…この一回で出来ないと…ミヅチなんて今ウタラだから…チャチャになってしまうわ!」
「…ウタラならば左様であるな…」
「…ミヅチ今…アタシを助けるためにチカラのすべてを使い果たしてウタラになっちゃったの…!」
「左様で…あったな…」
スサノヲの歯切れの悪さに何かヲモヒ廻らせる処があったが構わず応えた。
「なんか少し引っかかるけど…まー良いわ! じゃぁ父様…行ってくるわ!」
「うむ…努々無理をせず…辛き刻は父を呼ぶのであるぞ!」
「解ったわ! じゃぁ!」
そういうと躊躇いもせずにキクリは結界の中へ入っていった…。
「幾重にも苦しみと難多きクス=ルであるが…願わくば選びしクス=ルがキクリのピリカに繋がらん事を…!」
スサノヲはキクリの後姿を、無事の還りを祈り神呪を唱え見送った…。
修行開始…です…!
用語説明ですm(__)m
・オタ=ソ=カムイチセ:砂の+処+神の+家→「砂処之神殿」としました。
※砂処が語源の説を踏襲しておりますm(__)m
・カムイ=イノンノイタク:神の+祈り、呪術(神呪)→「神威之眞呪」としました。
・ストゥ=モシリ:根、元の方+世界、大地→「根源の国」としました。(どこの事かわかりますね♪)
・エウンオピッタ=アンペケゥエ=マェ:出る+すべて+本当の+身体+威力
→「現一切色身三昧)」としました。
以前も出ましたが…本来のこれは三十四(あらゆるすべての意)に相手に応じ変化して具現化できる神通力の事です。ですので…「初手」です(^-^;
・トゥイマ=ウエペケレ:遠い+昔話、伝説→「往之出来事」としました。
・エヤィホノッカ=シ=ケス=モシリ:~を練習する+本当の+終わり+世界、地
→「修練並び終焉の地」としました。
・クス=ル:道(本来はチ=クス=ルもしくは”ル”で道です)




