第74倭 垣間観るナニカとラム=トゥマム(心の抱擁)
跳んでいった先は…?
(…こ、ここは…? 何か観た事ある様な…処です…)
そうヲモヒ抱きながら目を凝らすと…何やら情景が浮かび上がってきた…。あの揺らめく炎が二つ、そして屋内とは思いがたいほど高い天井の神殿とも言える様な空間が再び観えてきた。今度は明らかに前回と違う存在がいる事が伺える。その中のひときわ強く氣力を放つ存在が向かいくる二神に向け諭すように言い放つ。
「トカㇷ゚チュㇷ゚=カムイたるスサ=パセ=ルーガルよ、ウトゥ=ディンギル=パセ=トゥスクルよ、如何にうぬらがワッカ、レラ、アペ、モシリと四つの属性揃えようとも…最後のニス揃う事は叶わぬ。ニス無きウブ=イキネイペカでは我を封ずる事は敵わぬ!」
(…た、確かに、今のままでは奴をどうにも出来ぬ…!)
スサの偉大なる王と呼ばれし存在はそう思って唇の端をかみしめた。
「“主”に刃向かった酬い、イワン=ルをカリ=ラマトゥして思い知るが良い!」
いつか見た夢で、“他化”と呼ばれていた強きモノがなにやら術式を発動させてとどめを刺そうとした正にその刻…! 不意に空間がゆがみ場面が切り替わる。
「ぅうわぁああ!!」
「いゃぁああ!!」
「…はぁっはぁっ…。ス…ㇲ…楓ちゃん、大丈夫?」
「…う、うん…! もしかして…ャ…竜輝もおんなじ夢…見たの…?」
「ど、どうやらそうみたいですね…でも…何でしょう…本当に…夢…でしたのでしょうか…?」
「なんかモノすごぉく長い…色んな経験をさせられたような…夢…そして直前に観たアレ…!」
「…太陽神と言う事だから…きっとスサノヲの事だと思います…そして…その…巫女…夢じゃなければ僕の仮説の通り…陰陽の陽が太陽神で男性、陰が神を支え奉る巫女で女性…!」
「それに対してなんて言うか…魔王の様な存在が対峙していたわ!」
「確か…イワン=ル…って…これはアイヌ語で…六の…道…六道! と言う事はあれが…天魔波旬!」
「天魔って…波旬って確か最上に住まう魔王だよね?」
「あ、はいそうです! しかしなぜ…? 魔王は確か皆の試練の為の役割を担う神様だったはずです…それが同じく神たるスサノヲ達と…?」
そこまで話した刻部屋のドアが開き誰かが入ってきた…。
「あ、母さ…ん…? …? …! ち、違います! あ、あなたは…!」
「二人とも…こちらへ来るのは今はまだ早いの…あたしのチカラで…向こうへ還してあげるわ…」
「あ、あたし!? その言い方って…! 私のお母さんは…ううん、ボクのおかあさまは…!」
そこまで言いナニカに気付きかけた二人を優しく抱きしめながら母…は応える。
「…そうよ、あたしよりもずぅっとステキなあの方があなたたちの本当の…そしてあたしのおかーさまでもあるわ…♪」
「…なんかだんだん思い…いえ、エシカルンしてきました…! 僕は…竜輝…ではなく…。そしてあなたは…!」
そこまで言うと優しく微笑みながら頷く。
「…だいぶラムもイレンカも強く揺るがなくなったのね…♪ でも、ここに来たと言う事は…心の底からのシ=ヤィピㇻを味わい…立ち直ろうと、立ち上がろうとした…そ~ゆ~ことね…!」
母では無いが良く知る処の彼女はすべてを正確に見抜き応えてきた。
「あ、は、はい! そこで…ふたりで…温泉…カムイワッカで…肌と…唇と…イレンカとラムを重ね合わせた瞬間に…ここに戻ってきていました…!」
「君たちが観たモノは…おそらくヤィコ=トゥィマにあった…本当の事…でも…今の君たちのイレンカとラムには関係ないモノとも言えるわ…。でも、そこで培われた罪障は背負ってるの…だからそのためにタアン=ラマトゥで今回みたいなタイヘンな事も起こるの…逃げてもいい…打ち負かされてもいいの…でも…今の自分のほかに…今までの自分も…認めて愛してあげて欲しいの…! その自分に対しシ=エラマスなイレンカを持ったまま…止まっても休んでも…歩んでいってほしい…!」
「…ありがとうございます…! 今言われた通り逃げたり打ち負かされたり…すでにしてきていますが…きっとこの後の僕…僕たちは前よりももっと強くなれるはずです♪ ですので…大丈夫です♪」
「…なぜかこちらと違いあちらでは私…ボクの方が後を追いかける形だけど…大丈夫♪ それに…どんだけ仲良かったかも観せられちゃった…し…♪」
そこまで言うと楓と呼ばれていた少女は頬を赤らめてうつむいてしまった。
「ふふ♪ ふたりならきっと大丈夫ね♪ さぁ、刻がもうあまりありません…おにいさまから頂いた…トゥムのすべてを使い発動させます!」
そこまで言うと…俄かに彼女は輝き出し、みるみる存在力が高まってゆく…!
「えぇ? それって…メル=ストゥ=マェではなくて…もしかして…!」
「そ~よぉ~♡ アッチのあたしはまだ出来ないはずなので…エシナね♪ じゃぁ…いくわよ…! 最後に…あなたたちノカン=クルにこんな重大な事を背負わせてごめんなさいね…」
「…問題ありません♪ もともと僕たちのまいた種のようですからね…!」
明るく応える竜輝と呼ばれていた少年を母の代わりをしていた彼女が優しく抱き寄せて唇を重ねる。
「ウ=ウェラマスのイレンカであなたをエラマスです…我々すべての父なる神威であった緋徒…♡ 凡そすべてのモノは我々を生み出し造りたもうたあなたに惹かれてしまうのです…♪」
そう言うともう一度きつく抱きしめて唇を重ね直してきた…。
(そ、そうなのです…ね…でもそこまでいろんな方から慕われてもいないような気もしますが…)
「それはまだまだまったく目覚め切っていないもの♪ だから…もっとラム=アサムからイレンカ湧き上がらせるほどのイイヲノコを目指して…ね♪」
笑みを浮かべ目配せしながらゆっくりと離れた。
横にはなぜか懐かしさを感じる嫉妬の嵐を纏った少女が…。
「はぁぅわぁ! あ、でもなんかエカㇷ゚ですねそのカン…ぐはぁっ!」
「…もぉ! …お姉もワザとでしょイマの!」
楓と呼ばれし少女がそう言うと母代わりの彼女が頭を一本指で掻きながら困り笑いを浮かべて応える。
「いや~実はね~も~いちど二人ともお互いに強くイレンカ抱いて…しないと扉を開けなかったのでちょっち焚きつけてみました~♪」
「え? え、じゃぁいまさっきのイタクって…?」
少年はあからさまに残念そうな表情をして尋ねる。
「ううん! 大丈夫よ…そこは…本当だから…ね♡」
頭をなでて顎に手をかけもう一度唇を…重ねる前に少女に阻まれた。
「そんなに気軽にひょいひょいしないで! ボ、ボクは…すっごく勇気いるんだから…!」
よく熟れた桜の実の様に赤く染めた顔を見せて少女はそう応えた。
(あ、か、かわいいです…♪)
少年は思わず少女を抱きしめると、自然と吸い寄せられるように唇を重ね合わせた…。
(え? あ、い、いきな…っ♪)
感情も思考も追いつかないままながらも少女はその状況を好意的に受け入れた。
「じゃぁ…またいつかね! ふふっ♪ あっちのあたしとも…仲良くしてね♡ じゃぁ今度こそ…カムイ=マェ! イワン=ル=カリ=ラマトゥ! 元の刻へ…お還りなさい…!」
「…ありがとうございます…! こっちにもまたこんどちゃんと…!」
「お姉のぶんもボクが…いろいろガンバるからー!」
「その明るさですべてを乗り切っちゃって♪ チパ=チパしているわ…♪」
そこまで言うと二人は…先ほどいた部屋がみるみる遠ざかり…瞬時に渦巻くナニカに包まれて跳んでいくのを観じた…。
(…しかし…刻の流れ…でしょうか…まるで別人の様に色々な事が出来ていましたね…♪ うん…こ、ここ…は…? 暖かい…そして…ハプル…? あ…!)
そこまでヲモヒ廻らせて目を開けると…そこはビビ・ファティマ温泉であった…。
柔らかな感触は密着しているスセリのつつましやかな双丘であった。
(…これなら寒くありませんし…目が覚めるまでそっとしておきましょう…♪)
ヤチホコはそう思って姿勢を変えスセリを抱き直して肩まで浸かり空を見上げた。
「…もうシリクンネですね…ノチゥがメレメルしていてきれいですね…♪」
「う…ん…はっ! こ、ここは…? …? あ…ヤチ…♪」
「イラム=カラプテ♪ スセリちゃん♪ 無事に還ってきたようですね♪」
「そーみたいだね…♪ これじゃ…ただモコロしていただけみたいだね…♪」
「そうですね♪ でもさっきの…あのモシリ…こことは全く違う…イタクも違う処…でもやはり僕とスセリちゃんは一緒で…きっとイラムマカカしていたのでしょうね♪」
「ヤィコ=トゥィマも…タアン=ラマトゥも…そして…アレはきっと…サスィシㇼ=ラマトゥ…? も…ずっとずっと…良いコトもつらいコトも…ダメなコトも…いっしょに…してこーね!」
「はい♪ 出来ればこれからは皆さんの為になるステキな事を一緒にしていきましょう♪」
「うん♪ あ、あとね…あ、あのね…、ヤィコ=トゥィマで…シてたでしょ…アレ…ホントの意味でウ=ウェラマスのイレンカで…ノミとして…まねっこだけでも…イレンカとしてしてみたいな…って…」
頬だけではなく顔のすべてを紅潮させきりながらも真剣なヲモヒでスセリはヤチホコに伝えた。
「スセリちゃん…♪ わかりました…! 僕も今ならイレンカのままスセリちゃんへウ=ウェラマスのイレンカを伝えられると思います…! では…カムイワッカの中央にあるチス=イクスペを使いましょう♪ じゃぁ…」
そう言うとヤチホコは左側から柱を回り始めた。
「うん…♪」
スセリは反対に右側から回り始める。
二人が出会った刻、ヤチホコはスセリをしっかりと見つめる。
(…スセリちゃん…肌…きれいです…なだらかでつつましやかなエウコポヌプカも…ポンユㇰのようなしなやかに伸びた足も…♡)
ヤチホコはそのヲモヒを籠めて言の葉を告げる。
「あぁなんてウォラムコテなメノコでしょう♪」
“愛し合う”のヲモヒ籠めて真剣に言ったつもりだが…そのせいで効果覿面すぎた様である…。
「ひぇっ!? あ、あ…♪ あぁ…なんてウォラムコテなヲノコなの…♡」
(…ス、スセリちゃん…そこまでイレンカ露わにしてくれると本当にうれしいですね…♪)
ヤチホコは“優しく抱きしめて頭を撫でる”して唇を重ね合わせた。
「…僕のケゥエには…余っている処があります…」
「ボ、ボクのケゥエには…た、足りないところが…ある…?」
スセリは言いながらもよくわかっていないようで自分の身体を見回している。
「…きっと…ココだと…思います…それでは僕の余っている処を…」
「私の足りない処と…」
「重ね合わせてみましょう…!」
二人で同時にそう言って向き合って抱き合い…そっと重ねてみた。
何故だかは解らないがいつもと違って触れ合う処へ意識が集中してしまい、そしてとても恥ずかしい様ないけないような…しかしそれこそすべき事と観じる様な複雑なヲモヒが溢れて来ていた。
「こ、これで…イイの…かな…? なんでかな? スゴく…うれしいケド…恥ずかしいな…♪」
その言の葉を聞いたヤチホコは心の底から何らかの今までにも幾度か観じた衝動と呼ぶべき感情が湧き上がってきた…。
「…エラマス…です…スセリちゃん…♡」
「ボクも…とってもエラマス…だよ…♡」
今度は儀式的にではなく互いのヲモヒを伝え合うように唇を重ね合わせた。
「…何でしょう…とても…ラムシリネしてながら…とても気持ちいいです…♡」
「…ボクも…ラムシリネする…とっても…ピリカ…♡」
二人から優しい光が溢れ出して包まれて行く…。
「ス、スセリちゃん…?」
観るとスセリの頬を一筋の滴が伝う。
「なんでかな…今…とっても嬉しいのボク…♪」
その言の葉を聞いた直後ヤチホコはたまらなく愛おしくなりスセリをしっかり抱きしめ、もう一度唇を重ね合わせた。
「とってもエラマスです…スセリちゃん…今までも…これからもずっと…です♪」
「…ありがとうヤチ…。ボクも…今までも…これからもずっとずっととってもエラマスだよ!」
そこまで言うと二人は唇を重ね直し幸せの中微睡に誘われて行った…。
(…はて…ここは…? 昨日は色んな処へ跳び回った様な…? あ、温かいですね…♪ あ! そうでした…ここは…!)
「…うん…あっ! どーりであったかいワケだね♪ へへ♪ イラム=カラプテ♪ ヤチ♪」
「イラム=カラプテスセリちゃん♪ 昨日は…とても気持ちよかったですね♪」
「うん♪ なんでかな? そう言われるとすこぉしダケ恥ずかしいな…♪」
「わかる範囲で正しく契りをしたんですから恥ずかしがることはないと思いますよ♪」
「良くワカンないケド…アレでよかったのかな…?」
スセリはそう言ってとある言の葉を思い出していた…。
(そ~なのよ! もぉビックリな痛さだったわ…! アレはイタク間違えたらタイヘンよ! あ、ヤチホコくんには…エシナね♡)
(…ゼンゼン痛くなかったケド…? 何かチガったのかな? ちゃんと重ねてくっつけてみたけど…?)
先輩の言の葉との相違を不思議がりながらも胸中に幸せなヲモヒが溢れた事を思い出して…
(でもきっととってもピリカだったから…イイよね♪)
そう結論付けた様である…。
「さぁスセリちゃん、クンナノィペにいきましょ♪ 僕もうとってもおなかが…」
苦笑しながらヤチホコの頭を軽く撫でて衣を纏い温泉横の茶屋へと向かっていった。
「…あのさ…ボクたち…契り…結べたよね…?」
食べながらスセリはヤチホコに尋ねた。
「あ…きっとそうだと思います…。余計な処と…足りない処を…イレンカ籠めて重ね合わせる…そう聞いていますから♪」
「そっか…へへ♪ これからもよろしくねヤチ♪」
「あ、はい…♪ 昨日知らされた事はとても衝撃的で辛くて認めがたい事でしたが…昨日の…契り…でとてもラムシリネ出来ましたので…頑張れる気がしています♪」
「そーだね♪ あのおかげでボクもぉ~ツラさコヤイラムしちゃったよー♪」
「…さすがはスセリちゃんです♪」
「へへ~♪ ワカらないコトはなやむより進むのがボクだからね♪」
(…そうです…。アレがもしもヤィコ=トゥィマでの事実だとしても…アノ刻に戻ってやり直せるのでもなければいくら悩んで考えても何も出来る事はありませんからね…スセリちゃんのこういう処は本当に流石だと思います…♪)
「そ~ですね♪ ではさっそくイヅモに戻り…出来る事からしましょう! みんなと一緒に!」
「うん! まずボクは…レラ=ルーガルにもう一度逢いに行ってみる…だね!」
「はい! 今どこにいらっしゃるかヒメちゃんとアンナに聞いてみましょう!」
「うん♪ ヤチ、行こ♪」
「あ、はいです♪」
いつもの様に手を繋いだつもりの二人だが…自然と指を絡めしっかりと握りあっていた…。
“契り”は日本書紀を参考に…です♪
用語説明ですm(__)m
・ウトゥ=ディンギル=パセ=トゥスクル:太陽+神(を顕す語)+偉大な+巫女→「太陽神之大日霊女」としました。
※ウトゥ、ディンギルはシュメール語です。
後の語は以前に紹介済みなのとアイヌ語でそのままのモノです♪
…今度用語辞典のコーナーにまとめますね(^-^;




