第73倭 トゥカㇷ゚=ケゥエでの絶望からの帰還
なんとか還ってきましたが…。
「…手ひどくやられたな…。ジェスターか…?」
「塔主さまご存じで?」
「試練の時決まってしゃしゃり出てくる」
「そうでしたか…。塔主さま、キクリのあの状態、何とかならないでしょうか…?」
「…他者へケゥエを…己はトゥカㇷ゚=ケゥエと化したか…。何らかの代替措置を取らねば…カリ・ラマトゥしてしまうであろう…」
「…一時的にアンナに取り込まれて下さい…今のキクリならできるはずです…」
その声を聞いてキクリを見やると…オオトシは慌てて声を上げた。
「…エコㇿラムが…ありません! このままでは輪へ…急ぎませんと!」
「…強制融合いたします! キクリを内包…! …。…。…。完了しました。成功です。具現化します…」
アンナがそう言うと、そこには小さな小さな四尾の金色の子ぎつねが顕われた。
「…キクリ?」
「…きぃちゃん! きぃちゃんだね!」
「ここは…一体…今まで何を…? うん? な、なんかケゥエが…」
アビヒコはおずおずと鏡を差し出してキクリを映した…。
「…☆※△◇〇! こ、コレ…アタシ…!?」
キクリは子ぎつねと化した己の姿を目の当たりにして言の葉を失った。
(…どうやら先ほどの事は覚えていないようですね…)
キクリが忘れている事に対しオオトシは不思議と何らかの安堵感を覚えた。
「イイヨマプカ…であると思われます…♪」
以外にもアンナが少しうれしそうに言った。
「ぼくのスクナヒコナよりはだいぶ大きい…すごいね!」
アビヒコは純粋にスクナヒコナの刻の自分との比較から氣力の差を観じキクリを褒めた。
「…あんまりオトゥワシのイタクになっていないわ…!」
「…う、うん…はっ! み、みんな? ジェスターは?」
ミチヒメは前回の五芒封印の刻よりは早めに目覚めてそう言った。
「…今ここは塔の中です…おかげで戻ってこられました…大丈夫です、ありがとうございました…」
オオトシは限りなく優しさと慈しみを籠めてそう応えた。
「…そう、そっか…で、またわたし…だったから運んでくれたのですね♪ オオトシさま♪」
(…うん? あ! 運んでくれたのは…!)
そのころころと様変わりする表情を観て微笑みながらオオトシがささやく。
「…お礼でしたら運んでくれたアビヒコへ行ってあげてくださいね…」
「アッビヒッコくん♪ ううん…、ホントにありがとう…」
ミチヒメは起き上がってゆっくりとアビヒコを抱きしめた。
「え、あ、う、うん! みんななんとか還ってこれてよかったよ…」
その言の葉に辺りを見渡すと…観たところ無傷と思しきミヅチ、疲労困憊のヒメ、輪は廻っていないようだが全く動かず生気のないヤチホコとスセリ、意識はあるがらしくなく蹲っているミケヒコ…、オオトシとアビヒコは問題なさそうに観える…あと…。
「…! キクリちゃんは?」
「…アタシなら…ここよ…!」
卓上の小さな子ぎつねがそう応えた。
「え? ええ? イイヨマプカぁ~♡」
そう言いながらミチヒメはキクリを抱きしめた。
「ちょ、ちょっと苦しいわ! アンタ、少しは加減しなさい!」
「ご、ごっめ~ん! うれしいのとあんまりにイイヨマプカだったもんでちょっちはしゃいじゃいました~♪」
微笑んで舌を出し目配せしながらミチヒメはそう応えた。
「アッチは寝かせておくとして…ミケヒコ、あなたは…大丈夫?」
触れようとしたミチヒメの手を払いのけてミケヒコは言う。
「うるさい! オレに触れるな! ケガするぞ!」
(…みんな…オレに触れたり…オレがイレンカ廻らせたせいで…!)
ミチヒメはミケヒコから観ずるイレンカより察し、優しく応えた…。
「…わたしたちは…だいじょ~ぶよ♪ わたしもアペヌイのトゥムつかえるんだから♪」
「…! …。そうか…アノ刻まわりにいたモノ達は…」
「うん、そうよ♪ あなたが…フツーのウタラの中で暮らしていたのなら…チカラを制御できないうちは…きっとタイヘンだったでしょうね」
ミチヒメは感情が高まり炎の氣力により熱くなっているミケヒコを同様の氣力を纏って優しく抱きしめて微笑みながら言った。
「…ねっ♪」
「…私も炎の使い手です。私を含めここにいるみなさんでしたらあなたが本気でチカラ揮われても大丈夫でしょう」
「…オオトシ…さま…。しかしオレは…このチカラの為に何人ものウタラを…そして緋徒も…あれが真ならば…自分の…母さえも…!」
そう言の葉を吐露するミケヒコの前にふらつきながらもヒメが来て応える。
「では…ミケヒコ…皆の衆に直接シンノ=イレンカを聞いて下さいまし…」
ヒメがそう言うとミケヒコの周囲に精霊神達が集まってきた…。
(…もう、過ぎしことでございます…)
(…あなた様は…為すべきことある故大きなチカラ備えて降りて参られたのです…)
(…確かに痛かった…苦しかった…輪を廻りし刻…とてもとても痛かった…でも…今はケゥエから離れ…ヤオヨロズとしてモシリと一つとなりて…何も痛くないし苦しくもない…大丈夫だよ…)
精霊神達は苦しさの元となる身体から離れ得られし安楽を伝えてきた…。
「…み、みんな…す、すまない…そして…ラ、ラム心…ラマトゥから、っれ、礼を言う…有難う…!」
両の眼よりとめどなく熱いモノを流しながら嗚咽交じりで真摯に伝えるミケヒコの言の葉を聞いて精霊神達は微笑みながら去っていった…。
「…オレは…みんなの為にも…その分も…ルーガルとして…精進せねば…ならぬ!」
「…うん…だったらあなたも…アペヌイ=ルーガルとのけ~やく、目指さないとだね♪」
「アペヌイの…ラムハプル=モシリ=コロ=クルの…ルーガル…か…!」
「アペヌイ=イフリート=ルーガル…名を…封輪火斬…もしくは封輪火斬と言う…」
「…ここ、タクシャシラーより遥かエチュㇷ゚ポㇰの…ウフィ=ブプリのどれかの中だったな…!」
「左様。現地でモンジベッロと呼ばれておるウフィ=ヌプリである。ローマのハドリアヌス=ルーガルとイタク交わせれば問題なく足を運べるだろう」
「…アタシも…マダだって言われてたけど…モシリ=ルーガルと契約したいわ…! アイツをこの手で…アタシのチカラできっちり倒して見せるわ!」
そう応えるキクリに不思議そうな顔でアビヒコが尋ねる。
「…さっきものすごいアペヌイのカムイ=マェで倒してたけど…あれってキクリちゃんのチカラじゃないの?」
「…アペヌイ…? なにソレ? アタシが…アペヌイ…それもカムイ=マェを…?」
キクリはまるで覚えていないかの如く不思議そうに応えてきたのでアビヒコはあらましを説明した。
「…そう…そして…ミヅチ…アンタが助けてくれたのね…ありがと! でも…今はアタシの中にアペヌイのトゥムなんて…まったく観じえないわ…?」
教えてもらっても己の中に炎の氣力など一切観じず不思議そうにキクリは応えた。
「…確かに…父はワッカ、レラ、母クシナダもワッカです…すると私の様に生来…ヤィコ=トゥィマより持ち得しチカラなのかもしれませんね…」
「オオ兄様…それってアタシのヤィコ=トゥィマに何か原因があるってこと?」
オオトシは頷いて応えた。
「恐らくはそうでしょうね…。それも今後の課題の一つとなるでしょう」
「ヤィコ=トゥィマの…チカラね…」
キクリは何やらヲモヒ廻らせながら頷いた。
「ハイそこふたり! らしくないよヤチホコくん、スセリちゃんも! もぉ~そろそろ元気になってもイイと思うけどな~?」
すでに目を覚ましながらもふさぎ込んでいる二人に対しミチヒメがそう話しかけた。
「…さすがに…堪えました…。ウソかホントかわかりませんし…オハィンカㇻかもしれませんが…何と言いますか…ものすごく実感がありまして…」
「ボクも…あの…ザンコクな行動…イノトゥを大切にしないヒドイ存在…アレが…ボクだって…確信持てちゃって…」
二人は項垂れたままそれぞれに応え再び消沈している。
「…ヤチホコ…スセリ…あなたたちの落胆と動揺…私は少しはわかります…。先だって試練受けし刻…私は…私のせいで…すべてのモシリが滅ぶさまを体験させられました…。恐らくあれは私がしてしまった…過ちなのでしょう…。あなたたちが見せられたモノは…ジェスターの造ったただのオハィンカㇻかもしれません…ですがもし違う世で己がしたことと確信持てる事でありましたら…受け入れ、認め、超えるべきものであるのでしょう…私自身も先の試練をその様にとらえています…」
「…オオトシ兄も…モシリを…オピッタ=ウェンテさせたの…ですか…?」
「…ええ…そう…です…。だからこそ…良きルーガルたらんと努め励んでいるつもりです…!」
「そうなのですね…。…。…。」
「あんなコトしたかもしれないボクらでも…?」
「…罪を…償えるの…でしょう…か…?」
「それが出来るからこそ…こうして再び生を受けていると…私はそう思っています。タアン=ラマトゥ生くるは…ラマトゥの錬磨…そして己のイワン=ラマトゥ=ストゥ=エイノンノイタクの為の故…私はその様に観じております…」
オオトシの言の葉に頷きながらミチヒメが続けて尋ねる。
「…そんなに…ヒドかったの…? ヤチホコくん…良かったら聞かせてくれないかな…?」
ヤチホコは少し躊躇いながらも…ゆっくりと頷いて応えた。
「ミチヒメ…話しても…僕を…僕たちを…嫌わないで欲しいです…」
「…もちろん! わたし、エラマスだよ、ヤチホコくんもスセリちゃんも…!」
その言の葉を聞いて少しだけ安堵の表情でヤチホコが応える。
「…ありがとうございます…では…お話いたします…」
ヤチホコは観せられた内、己の理解が及ぶ限りのすべてを語り始めた。
その話はあまりにも荒唐無稽で、皆驚きながらも聞き入っていた…。
「…何と言う事でしょうか…。すべては創造主よりゆだねられたあなた方の…!」
「…はい…。アレが真実でしたらそうなります…」
「…そして…背いて…」
「…うん。そのはずなんだケド…どうしてボクたち今こうしていられるのかな…?」
「…信じられないわ…ヤチホコ…アンタが…だったなんて…!」
キクリは驚きを隠せずそう言の葉を漏らした。
「…ミヅチは…ちょっとワカる…だってヤチホコ、いっつもあせらないし、みんなにやさしい! それはきっとみんなを…だからじゃないのかなぁ?」
「そうだね、ぼくもそう思う。きっと…すべての自分に縁あるモノに…オマㇷ゚のイレンカを持つ…そういう事じゃないのかな?」
「そ~ね~。もし今のお話のような存在だったら…あせりもなくゆったりしていながらニスのメル=ストゥ=マェまで身に着けちゃったのも納得よ! これって実はスッゴイことだもん!」
「…くやしいが…オレにもまだ出来ない事を…しかもニスのトゥムで…出来ている…! その才がヤィコ=トゥィマで培いしモノならば…納得できるぞ…!」
ミケヒコは四大王衆天イネ=シ=ルーガル=アンに昇る際に観た刻は愕然としていたが、出来ている事、優れている事は素直に認める様である。
「…ワラワは…存じておりました…。ワラワ達は…それぞれに大いなる使命の元タアン=ラマトゥに生を受け顕われしモノでございます…。イワン=ラマトゥ=ストゥ=エイノンノイタクもその中に含まれしではありまするが…真に成すべき事は…それを遥かに超越せし事でございます…」
「ヒメ…それはまさにムカツヒメさまの仰られる事と同様です…! 一体…どのような事なのでしょうか?」
驚いて聞いてくるオオトシに少し申し訳なさそうにヒメが応える。
「…今は…鍵かかりし故に…これ以上申し上げられませぬ…」
「刻…至らず…の様ですね…。まずは今…出来る事をしていく事が肝要であり…それらの果て図らずも真の目的に紡がれていく…そういう事…なのでしょうか…?」
「その通りでございます…」
「ボクらがここでホントのこと知って苦しむのも…」
「…運命の因と果により歩むべきクス=ルでございます…」
「…ヒメちゃん…あなたは一体何モノなの? なんでそんなことわかっちゃうの? さっきもウブ=イキネイペカまでしちゃうし!」
「ミチヒメ…それも刻来れば解る事でございます。あなたとワラワは…特別な間柄なのです…それこそ二人で一人と言える程の…」
「え…! な、なんかそれってちょっちアレなカンジのカンケ~でしょ~か…?」
ちょっと驚き、なぜか少しだけ頬を染めながらミチヒメは尋ねた。
「そうではございませぬ…! しかしある意味それ以上とも言えます…」
「そ、それ以上…!」
「いずれ解ります…」
ミチヒメはその言の葉を受け何やらめくるめく妄想を廻らせている様に観える…。
「…ヤチホコ、スセリ…辛いでしょうがそれもまた一つの大きな試練なのです…。何卒…己に負けぬ様に…」
ヒメはそれだけ伝えると…ミケヒコの肩にもたれかかり沈黙した。
「…落ち着くまで二人でどこかに行かれるのもいいでしょう」
気を取り直してオオトシはヤチホコ達にそう伝えた。
「そ~ね! パミールのビビ・ファティマカムイワッカでゆっくりしたらどうかしら?」
オオトシに賛同してミチヒメも提案してきた。
「…落ち着いたら…一度イヅモへ来るといいわ。さっきヒメが言ってたこと…アンナで観てみるから…!」
「ミヅチは…ふたりがげんきになるのをノミ祈るしておくよ~!」
キクリとミヅチも彼らなりに気遣って言の葉をかける。
「とりあえず無事還ってこれたんだし、二人でゆっくりするといいよ」
「オレの先を行ってるんだ、必ずイレンカ強く持ち直して戻ってこい!」
アビヒコとミケヒコもそれぞれにヲモヒを伝えた。
「…みんなありがとうございます…言われたとおり少し二人でゆっくりしてみます…」
「きっと…元気になる! まだすこし時間かかるケド…」
「かまいません…私達で可能な限りの事はしておきます。二人は落ち着いた後に…」
「みんなでイヅモで待ってるゾ…♪」
精一杯明るく振る舞おうとしてミチヒメはそう言った。
「ハイ…! ありがとうございます…!」
そこまで二人に伝えると…一同瞬時に旅する門よりイヅモへと跳んでいった…。
「…いっちゃったね…。ヤチ、どうする…?」
「…いわれた通りビビ・ファティマ=カムイワッカへ行ってみましょうかね?」
「…うん。あそこならイレンカを、ラムをゆっくり整理できるとボクも思う…」
「では…行きましょうスセリちゃん」
「うん…」
二人は帆掛け舟でパミールにあるビビ・ファティマ温泉へ向かった。
「…はじめてナ・ラを出た刻も…この舟で…二人だったよね…」
「はい…アノ刻は…こんな事を知らされるなんて…タカㇻにも思っていませんでした…」
「僕たちがまさか…」
「ボクまだ信じられない…あんなヒドいコトもしていたなんて…」
「そうですよね…今の僕らなら絶対にしない事ですよね…。それだけでも…ヤィコ=トゥィマより…良いのでしょうかね…?」
「…そーか、そーだね! きっと前より、今のボクたちのほーが良い! うん、そう決めた!」
「決めたって…スセリちゃん…。…? …! あぁ、そうですか…そう言う事…でしたか…。確かにスセリちゃんの…“決めた”は、大事ですね…! 良きにつけ悪しきにつけ…イレンカの強さはすべての事象に影響を及ぼしますものね!」
「うん…! だからボク、ウェンイレンカ…やめにしたの! たとえアレがホントでも…もう過ぎたコトだし今はどーにもできないもん! それなら…今できるコトガンバろって、そう思ったの♪」
「本当にその通りですね! スセリちゃん賢いですね♪」
「ホント? へへ…そーゆーコトでほめられるのあんまりないからうれしい♪」
(…本当に、たまにものすごく鋭く的確な事…言うんですよねスセリちゃん…)
「ねぇ、ヤイ=コ=ルイェして…♪」
「あ、はい! スセリちゃんとっても偉いです~」
「えへへ♪ ヤチ…ありがと♪」
「しかし僕達…ヤィコ=トゥィマでも…」
「うん…妹と背…ヒメとヒコ…だったんだね…!」
「これも…さっきのヒメちゃんの言い方でしたら…因による縁…なのでしょうね…!」
「ボクもそー思うよ! だって…ボク…ヤチのコト…イタクに出来ないくらいに…とってもエラマスだから…♡」
「…スセリちゃん…♡」
「…カムイワッカついたよ…いっしょに入ろ♪」
「あ、は、はい…♪」
「いっぱいいっぱい…くっついて…はなさないようにぎゅってしてね♪」
「はい…♪」
二人は身体をきれいに洗い流して湯に浸かりしっかりと抱きってみた。
「気持ちいい…♪ …なんか…たしかに…この感触…このイレンカ…はじめてじゃないよーな気がする…?」
「そ~ですね♪ ものすごくエカㇷ゚な様な…ずっとこうしていたい様な…こうする事が当たり前の様な…そんな気がします…」
「…ヤチ…」
スセリはそっと目を閉じてゆっくりと顔を近づけてきた。
一瞬躊躇ったがヤチホコも同様に目を閉じて優しく唇を重ね合わせた。
脳裏に何か映像が走る…同時に様々な感情…ヲモヒが込み上げてくる…。
(どうしてスセリちゃんとはダメって思ていたのでしょう…スセリちゃんこそ…こうすべき相手…そうイレンカ抱けるナニカを今…観じました…!)
「あ…あぁ! ヤチ!」
「あぁ! ス、スセリちゃん!」
二人で同時に声を漏らし、同じ事を同時に観じた様であった。
その瞬間ヤチホコ達は光に包まれたかと思うと見る見るうちに輝きを増していき…二人共光と同化してしまったかの様に観じた瞬間…その場から消え去ってしまった…。
消えた二人は…?
用語説明ですm(__)m
・シンノ=イレンカ:真実の+ヲモヒ→そのまま「真実のヲモヒ」としました。
・封輪火斬:強大なる権能を自ら封じ込め、破邪の炎もって総てを断ち切るモノ(アペ=ルーガル火焔統べる王)
・オピッタ=ウェンテ:すべて+破壊する→「破滅」としました。




