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第71倭 イワン=アン=イウェンテㇷ゚=ルーガル(六天の魔統べし王)

戻ってきたヤチホコとスセリは…

「…左様でございましたか…。経験…イレンカ(ヲモヒ)…」


「ヒメちゃん何かわかる?」


「今言える事は…このまま()を進められて下さい…それだけです…」


「このまま…わかったよーなわからないよーな…?」


「…オオトシ兄とミケヒコの方は…?」


「…パルティアの向こう…インペリウム=ローマ(帝政ローマ)にあるウフィ=ヌプリ(燃える山)だと判明したのですが…この両モシリがロルンペ(いくさ)の最中で…今はこちら側からローマ側に行くのが難しいかと存じます…」


「そうなのですね…それはアペ()自然の(ラムハプル=モシリ)盟主(=コロ=クル)との契約(けいやく)は少してこずりそうですね…」


「…じゃぁ、他のことしてみたら?」


「他の…?」


「それでは…深追いは現状禁物(きんもつ)ですが…先日私も相見(あいまみ)えました…ジェスターの行方を追ってみましょう!」


 オオトシの言に即座に反応したモノが二人…ミチヒメとアビヒコでした。


「それはわたしも賛成(さんせい)! アイツはゼッタイ許せない!」


「ぼくも追いたい! わざわざぼくからとうさんかあさんをひきはなして苦しめた訳を知りたい!」


「…ヒメちゃん探れるかな?」


 スセリがそうヒメに尋ねますと…


「…何度か話に聞く処のイワン=アン=イウ(六天の魔)ェンテㇷ゚=ルーガル(統べし王)直属の道化師…デモニック=ジェスター…探ってみましょう…!」


 ヒメはアンナに手を(かざ)霊力(ヌプル)を注ぎ込んでいく…。


「…許容量上限確認いたしました…索知最大展開いたします…!」


 アンナは限界まで範囲を広げて索知し始めた。

 激しく明滅(めいめつ)を繰り返している。その度に輪状の光がアンナから放射され、飛んで行っては戻ってきている様に()える。

 しばらく繰り返していると反応が変化した。


「…。…! …!? …! …? …! 何度か確認しましたが…間違いありません…。彼のモノ…ジェスターの居場所は…ウパスクマ=エ=テメ(天と地の基礎となる叡)ン=アンキ(智の聖塔)の遥か上方…アヌン=ヤィカㇻ=(他化自)ピリカ=アン(在天)に…います…!」


「ええ! ゲルマニアにいたんじゃないの? アヌン=ヤィカㇻ=ピリカ=アン…イワン=コカナ=アン(六欲天)の…イッチバン上じゃない! あの…イワン=アン=イウ(六天の魔)ェンテㇷ゚=ルーガル(統べし王)のいるとこでしょ? 一体なんで?」


「イワン=コカナ=アンのモノなり…そう…でしたか…!」


「オオトシ兄? 何かわかりましたか?」


 ヤチホコの問いかけに大きく頷いてオオトシは応える。


「ええ…。ミチヒメ、ジェスターはイウェンテㇷ゚=ルー(魔を統べし王)ガルの手下…と名乗りましたよね?」


「あ、はい。先日オオトシさまと一緒に出くわした(トキ)に確かに…」


「イウェンテㇷ゚=ルーガルと言えば…波旬(ハジュン)さまの事に他ありません…。そして波旬(ハジュン)さま住まうのはイワン=コカナ=アンの最上…アヌン=ヤィカㇻ=《他化自》ピリカ=アン(在天)です。手下で道化師と言う事は…“宮廷道化師”と言う事でしょう。つまり…」


「じゃぁジェスターはイウェンテㇷ゚=ルーガルでもないのに…」


「イウェンテㇷ゚=ルーガル住まう処の道化師ですのでそうなると思います」


「…ソイツ、道化師の分際で最上のアン()にいるというのか! 巫山戯(ふざけ)てるのか!」


 黙って聞いていたミケヒコもあきれて口調強く言い捨てた。


「でも…と言う事はあの塔を…オオトシ兄の挑まれたイネ=シ=ルーガル=(四大王衆)アン()を大きく超えて昇らないとなりませんね…」


「逃げるジェスターの最後の行き先は、間違いなくそこでしょうから、必然的にそうなります。ですが反対に…そこまで追い詰められれば…逃げようもありません!」


 いつになく強い口調でオオトシが言う。


(…オオトシさま…怒ってる…怒ってくれているんだ…わたしの為に…うれしい♪)


 ミチヒメはうれしさのあまりオオトシに背中から抱きしめながら…


「ありがとうございます…自分のことのように…!」


「…ア=エィヤㇺぺ(大切な緋徒)非道(ひど)い事したモノとイレンカ(めぐ)らせれば…(おの)ずと怒りがこみ上げてしまいます…!」


(…オオトシ…さま…今のオレではコイツを怒らせては…)


(…最近柔らかさが出てきていましたので、少しヤィプニ(冗談)をなんて…イレンカ廻らせるだけにしておいてよかったです…!)


 ミケヒコとヤチホコはそれぞれオオトシのヲモヒに連動し、無意識に吹き上がったトゥムを観て、それぞれにヲモヒを廻らせた。


「みなさん…準備はよろしいでしょうか…? 用意ができましたならば…参りましょう、塔へ!」


「はい!」


 一行は、イヅモ西の神殿にある門より、天と地の基礎となる叡(ウパスクマ=エ=テメ)智の聖塔(ン=アンキ)()んでいった。


「…塔主殿…お聞きしたい事が…」


「…ジェスターの事…であろうか…?」


「はい…。やはり彼は…アヌン=ヤィカㇻ=ピリカ=アンに…?」


「左様。イウェンテㇷ゚=ルー(魔を統べし王)ガル直属故、常に(かたわ)らに控えておりながら、イレンカのままに地上へ(たわむ)れに来るのである…」


「たわむれって…遊びであんなコトを! 本来のまお~さまとその手下の皆さんってたしか…?」


「左様。ミチヒメ…そなたのイレンカの通りラマトゥの錬磨(れんま)試練(しれん)としてこそが存在意義なり」


「じゃぁジェスターは任務イハンじゃない!」


 勢いよく円卓をたたいてミチヒメは叫ぶように言った。


「宮廷道化師故…ある意味あやつは(ことわり)の外におる…。どの様に戯れど処罰なき存在なのである…」


「…ジェスターに対して僕らのイレンカ通すのは…もしかしてイウェンテㇷ゚=ルーガルさまの試練に打ち勝つより難しいのではないでしょうか…?」


「こらヤチ! なんてコトを!」


 (かん)じたまま素直に述べたヤチホコを、スセリが慌てて(たしな)めるのを聞き、納得して賛同した様な表情で塔主が応えた。


「…そうやもしれぬ…が、(おの)がイレンカのまま振る舞える代わり、自身がどの様な事をされても加護も守護も無き存在故…まさにそこが狙うべき処であろう」


「…じゃぁ、こっちからアイツに有効な攻撃を加えれば…」


「あやつは不死身ではないからな…」


「…しかし…境涯の劣る我々の攻撃では…! ヤチホコ…そして…!」


「左様。そのモノ等は境涯を超えて届くチカラ有しておる故、一矢…報いれる可能性は…ある…!」


「…わかりました…! 今上がれるモノですと…ヤチホコと…私でしょうから…必ずやイレンカ()めし一撃を刻んでまいりましょう…!」


(…ヤチホコ…が…?)


 ミケヒコはそう思ったが黙って話を聞いていた。


「…うむ…! 自力と見做(みな)されし状態でメル=ストゥ=マェ(輝く根源の力)(ふる)えしモノ三名以上(そろ)いし刻…その集団のすべてのモノ天に昇りし事叶うが…試してみぬか?」


「そうなのですか? では…メル=ストゥ=マェを纏えるモノはその状態へ!」


 ミチヒメ、アビヒコ、オオトシと変化していくのを観てヤチホコは少し悩んでいた。


(…ここでしない訳にはいきませんし…遣えないとは言っていませんし大丈夫です…よね?)


 遅ればせながらヤチホコも、己の権能を解放する為、『守護神封・解(セレマク=ピタッパ)』と唱え輝く根源の力(メル=ストゥ=マェ)を解放した。


「な、んだと…! しかもこれは…ニス()のメル=ストゥ=マェ…だと!」


 ミケヒコは信じられないとばかりに愕然とした。


(…()()モシリで身に着けてきてたから…ミケヒコ…知らなかったんだわ…)


 キクリはその様にヲモヒ廻らせながらも自分よりも一足先を歩んでいるヤチホコを見つめていた。


「ミヅチもはやくできるようにがんばろ~っと!」


(…どうやら皆知っていたのか…! …!!)


 ミケヒコは拳を握り締め、言の葉にならない悔しさを()みしめていた。


「…あ! スセリちゃんもこの前偶然ですが出来ましたよね? 条件に合うかわかりませんが試してみてください! はい、ラムハプル=ヌプル(付与霊呪)…!」


 ヤチホコはそう言いながら一定量の霊力(ヌプル)をスセリに渡した。


「わわ! よ、よし! これを…自分のトゥムと…! 観えた! 今! はあぁっ!」


 スセリの氣力(トゥム)とヤチホコより受け取った霊力が重なり合っていく…どうやら成功したようである。


「やりましたね♪ ではこの五人で試してみましょう!」


 ヤチホコ、オオトシがイネ=シ=ルーガル=(四大王衆)アン()へ向かう扉をくぐると反応があり何やら言の葉が聞こえてきた。


「…あと一名で全員通過可能です…」


「…わたしはど~かな~?」


 ミチヒメは反応がない。


「…ぼくは…?」


 アビヒコは…何やら迷い明滅しつつも反応しなかった。


「…二人がだめならボクはもっと…」


 そう言いながらスセリが扉を通過すると…なんとヤチホコ達と同様の反応が起きた!


「すっご~いスセリちゃん! 一体いつの間に~? ど~やったの~?」


「ほんとう! メル=ストゥ=マェ出来たことも驚きだけどそれが自力だってことにもっと驚いたよ!」


 ミチヒメとアビヒコは心底驚いてそれぞれ応えた。


「…わかんないケド…できたみたい…?」


 どうやら当の本人が一番驚いている様である。


「…それでは全員入られて下さい…準備がよろしければイネ=シ=ルーガル=アンへ参ります…」


 一行はヲモヒヲモヒながら全員そろって扉をくぐり中に入った。


 入った玄室ごと上昇していく。しばらくすると緩やかに減速してやがて停止した。

 扉がゆっくりと開いていき…目の前には今までとは全く違う世界が広がる…。


「…再びここに…来ました…!」


「…こんな感じなのですね…あ、確かにあそこから向こうは…フツーのモシリっぽくない雰囲気ありますね…!」


「…此度(こたび)は随分と大勢で参られたなオオトシよ!」


「これはイネ=シ=ルーガル(四大王)の皆様…カンナ=モシリ(天界)の警護お疲れ様です…」


 オオトシは四大王(イネ=シ=ルーガル)に対し(うやうや)しく言の葉を返した。


「うむ…。して…何名か…ここに来れると言う事は…資質ありと言う事であるな?」


「おっしゃる通りです。こちらのヤチホコ、スセリの両者が該当しました…!」


「…成程…資質だけであるならば更なる上手のモノもいるが…自力によるモノとの規定故であるな…」


「…ええ」


「かまへんで~♪ 自力でも他力でも…もってへんでも♪」


「…この声は…?」


「出たかあのお邪魔…ム、ムグ!」


(滅多な事を! クベーラの二の舞であるぞ!)


(…うぬぅ…! (かたじけな)き…!)


 どうやらこの巫山戯(ふざけ)た声の主は四大王よりも格上の様である…。


「みなはんせっかく来られはったし~ワイも顔出させてもらいまんねん♪ こんにちは~ジェスターどす♪」


「くっ! 出たな! ふざけたヤツめ!」


 アビヒコはジェスターをにらみながらそう言った。


「道化師っちゅうもんはフザケるのが仕事でっせ♪ せやけど今回はイウェンテㇷ゚=ルー(魔を統べし王)ガルさま直々にご用命授かったさかい…させてもらいますわ~♪」


 ジェスターがそう言って手に持つ杖を(ふる)うと石造りの立派な舞台が顕われた。


「イウェンテㇷ゚=ルーガルさまよりイタクあるさかいに~みなはんここで待っとぉくれやす~♪」


 それだけ言うと影を残し音もなくジェスターは消えてしまった…。


「ま、待って! ~!」


 ミチヒメが悔しがっていると先ほど用意された舞台に音もなくナニカが顕われた…!


「…余がイワン=アン=イウ(六天の魔)ェンテㇷ゚=ルーガル(統べし王)波旬なり…。地上より来たりしモノよ…いかような罪業持ち得しか…懺悔せよ!」


 その言の葉と共に…ヤチホコ達はそれぞれに強烈な映像を見せつけられた!

いきなり! ですね…!


用語説明ですm(__)m

・イワン=アン=イウェンテㇷ゚=ルーガル:六の+天+魔物+王

→「六天の魔統べし王」としました(既出かもです)

・アヌン=ヤィカㇻ=ピリカ=アン:他人+返信する、化ける+良い、好都合だ+天

→「他化自在天」としました(既出かもです)

・イワン=コカナ=アン:六の+欲しがる、ねだる+天→「六欲天」としました。

・ア=エィヤㇺぺ:大切にされるモノ(物も者も)→「大切な緋徒」としました。



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