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第70倭 テオロ=タィ=ワッカカン住まうレラ=ルーガルの元へ

テオロ=タィ=ワッカカンのカムイ=チセへ…

「…着きましたね♪ …しかし…毎回結構なトゥム(氣力)を使う気がしますね…」


「うん…。それはボクも思ってた。でもこんな遠くまですーぐ跳んでこれるから…つかうチカラもいっぱいいるのかな? そう思ってたんだ」


「きっとその通りですね♪ あ…ここは…クンネチュㇷ゚=(月の)カムイ=チセ(神殿)の横手…」


「みんながお参りに上る階段からは全く見えないトコだね」


「…あ! あれですね! あそこの造りかけのカムイ=チセ(神殿)…あれがきっとコンコン=ラㇷ゚=タ(羽毛と翼持ち)ンネ=カムイ(し蛇神)さまの棲み家(す か)ですね!」


「棲み家なのに(つく)りかけなんだ…?」


「きっとコンコン=ラㇷ゚=タ(羽毛と翼持ち)ンネ=カムイ(し蛇神)さまが棲み始めたので…そこを(まつ)る様に造りはじめたのでしょうね♪」


「そか、そーゆーコトか♪ うん! じゃぁヤチ、行こ!」


「あ、は、はい!」


 そう言うとすぐさまスセリはすごい勢いで走りはじめた。


(まだ完全に自分でメル=ストゥ=マェ(輝く根源の力)を使いこなせる訳ではありませんが…あのモシリでも…(レン)を重ねその身に何度もチカラを通したせいでしょうか…? 根本的な底上げを観じますね♪)


 ヤチホコがそうヲモヒ(めぐ)らせている内にもスセリはどんどん離れて行く…。


「とっとです! スセリちゃん待ってくださいです~!」


 ヤチホコは慌てて遥か前方を行くスセリを追いかけていきました。


「…これが…レラ=ルーガル(大凬統べる王)の棲み家…コンコン=ラㇷ゚=タンネ=カムイさまのカムイ=チセだね!」


「はぁ…はぁ…。そ、そ~だと思います…。ここからレラ()のトゥムをとっても強く観じます…!」


「そーだよね♪ なんかこう…ビンビンくる♪」


 二人は神殿を造っている方へ確認してみた。


「おぉ、そのとーりだべさ♪ ここテオタィワッㇰカン(湖の上の林さ在るトゴ)さに舞い降りたコッコラタカン(羽ど翼さある蛇神さん)さまの為さ造っているべさ~♪」


「(…か、かなりなまっていますね…)あ、あのテオロ=タィ=ワッ(湖の上方林に)カカン(在る地)のコンコン=ラㇷ゚=タンネ=カムイさまのことですよね?」


「んだ~♪ したからそ~言ってるべや♪」


 (トキ)の流れやヒトの移ろいと共に言の葉が転訛(てんか)されて行く事は良くある。

 もしかするとこの刻の言い方が(はる)か先の世に…“テオティワカン”と“ククルカン”に変化して言い伝えられたのかもしれない…。


「…では中へ入ってみましょう♪」


 二人は長く続く階段を登りきった(ところ)にある入り口を目指す。


「…これフツーに歩いたらすっごく疲れますよね…」


「そーだよね! トゥム解放しないとただのオシオキだよ!」


 一般民(ウタラ)でしたら一段ずつゆっくり上がらないとならない大きさで遥か上方まで続く階段を二人は飛ぶように駆け上がっていく。


 氣力(トゥム)…言の葉の通りすべてのモノが持っている権能(チカラ)である。

 (おおよ)そすべてのモノはこの世界で実体を(ともな)って存在する為には、物理的側面(ぶつりてきそくめん)を担う氣力と(れい)的、精神的側面を(にな)霊力(ヌプル)によって実体を維持(いじ)している。

 その為にどの様なモノでも…例えば石や水…木や草でもわずかながら内包(ないほう)している。

 (まれ)緋徒(フィト)と呼ばれ、常人と比べ並外れた氣力や霊力を持つ、もしくは行使できる状態で生まれてくるモノ達がいる。

 そのようなモノ達は、各地で(ルーガル)となったり、境涯(きょうがい)が至らなくても、当人のヲモヒにも関わらず、神威(カムイ)(あが)められて統治(とうち)する、させられる場合が多い。

 生来氣力と霊力を強く内包した上で、顕在化(けんざいか)していたオオトシが、若年ながらヤマトゥㇺ(天船降りし山森囲)=モシリ(む地の国)の王となっているのが好例と言えるであろう。

 古より受け継がれし伝承にはこうある。


 『遥かな神代 天の楽園住まいしは すべて神威之力(カムイ=マゥェ) 備えしモノなり』


 エカンナイ=ストゥ(古の根源たる)カムイ(神威)と呼ばれる、原初(げんしょ)の神々は、様々なチカラによって奇跡を行い、世界を造り、今の多様な生命の(いしずえ)を築き上げたという。

 ある刻…“苛烈な(ウェンルイ=)る世界(モシリ=ヤㇲ)の裂動(ケ=シルトゥ)”と伝えられている大災害が起きて、楽園と言えるべき世界が滅んでしまい…


 『始祖(しそ)二神(あやまち)(おか)し 地に()とされ 生まれしモノを緋徒(ヒト)と云ふ』


 過ちを犯し、楽園より堕とされた神々が、様々な存在へと宿っていき、今に至るらしい。

 この為、誰であっても、どの様な存在、種族からでも、先祖返りの様に、神威、それに準ずるチカラを持つ緋徒が生まれる事がある。

 王族や近しき血統(けっとう)から生まれてくる事が多い様だが、全く関係ない方々からも生まれてくることもあるらしい。

 そして多くはないが…今でも彼らの父スサノヲ、漢の伏犠(フゥシィ)たち…そして四柱(よんはしら)御使(みつか)いの様に、真なる神威(シ=パセ=カムイ)も存在している様だ。

 今回ヤチホコ達が会おうとしている、大凬統べる王(レラ=ルーガル)は、神威の中でも特に“自然の盟主”と呼ばれているモノ達である。彼らは他の神威と違ってこの世界の構成を担う存在である。

 この世界は(すべか)らくヲモヒによって成されている。例えば…「氣力を発する」とヲモヒ念じると…そのヲモヒに反応して身体の奥底に眠る“真理の源泉(シンノ=レンカイネ)”が呼応し、自動的にそのモノの錬に見合った氣力が許容範囲(きょようはんい)()き上がり発動する仕組みなのである。

 許容量は生来の差もあるが、(レン)を積み()り上げるほどに上がっていくという。


 さらに各属性の“自然の盟主”と契約すると、(モシリ)(ワッカ)(アペ)(レラ)、それぞれの世界にあまねく存在する莫大(ばくだい)な氣力を己の許容量を超えて行使可能となる。

 このように自然盟(ラムハプル)主四(=イネ・シ)大王(・ルーガル)を中心に、世界構成の自動維持機能とヲモヒと錬に応じた氣力の収束(しゅうそく)循環(じゅんかん)供給(きょうきゅう)を担っているのが自然の(ラムハプル=モシリ)盟主(=コロ=クル)である。

 ヲモヒを自然の盟主へ届ける役目を担っているのが、各地を統治している神威もしくは緋徒である。

 住まうモノ達の発する…特に敬虔(けいけん)な祈りと感謝のヲモヒを自然の盟主へ届ける。

 自然の盟主達はそれを“大いな(シ=パセ=ア)る真理(ンペ=ソネプ)”へ送る。

 すると送り届けたチカラは“世界構成力”へ変換されて戻ってくるので、それを使い世界を維持していく。

 その…住まう世界丸ごととも言える程の巨大な権能を公正に扱う為、元々は自由意思(レンカクス=ラム)を持っていなかったと伝えられているが…八俣(ヤマタ)こと鏡水顕導神(ヤィ=モ=トーヤ)をはじめ、何らかの理由で変化が起きている様である…。


「…このヌサ(祭壇)の向こう…!」


「…! あの扉ですね…!」


 一般民(ウタラ)からはただの石造りの彫刻でしかないその扉は、天と地の基礎と(ウパスクマ=エ=)なる叡智の聖塔(テメン=アンキ)や伏犠の城同様、一定以上の氣力(トゥム)を携えしモノが触れると…音もなく(なめ)らかに開かれて行く…。


「スセリちゃん、行ってみましょう!」


「うん!」


 二人が入ると再び音もなく扉は閉まり、玄室(げんしつ)ごと下降していくのを観じた。


「わ! これ下がってる!」


「本当ですね…ちょっとだけ気分が悪いですね…」


「もぅ~あいかわらずヤチってば、こーゆーのによわいよねー!」


「…ロクンテゥ(帆掛け舟)ヤレパチプ(大型万能船)は平気なのですが…」


「はい、手をにぎっていてあげるね♪」


「あ、ありがとうスセリちゃん…」


 ヤチホコは怖いのではなく気分が悪いのだと思ったが…スセリのやさしさ(ラムハプル)のヲモヒを(かん)じ、そのままにしておいた…。


「…! ヤチ、止まったよ!」


「降りてみましょう…!」


 二人が扉に近づくとまたもや音もなく開いた。

 観えてきたのは…地上に存在する神殿部分をはるかに超える広大な空間であった。


「…ひ、広~い♪」


「本当ですね♪ 上からは…チュㇷ゚キヤィ(日の光)レラ()が…入ってきているようですね♪」


 上方の空間は、ヤチホコが本気で飛び上がってもまだゆとりがあり、水平方向はさらに空間が広がっている。

 先ほど目にした、日光と風の通る穴の辺りは…どうやら神殿基底部(きていぶ)(おぼ)しき人工的な石造りになっている様である。


「…大分地下深い処の様ですね…。それでいてここまでチュㇷ゚キヤィとレラが…? あ、チュㇷ゚キヤィは…上手に鏡で増やし…レラは上以外にもあちこちにある穴から出入りしているのですね…!」


「すっごくラムシリネ(安心する)するねここ♪」


「本当ですね♪」


 二人は自然と日光がやさしく差し込んでいて草の茂る処へ寝転がった。


「…ようこそ…おいでくださりました…」


 思わず寝入ってしまっていた処に少し申し訳なさそうに誰かが話しかけてきた。


「あ、は、はい、あ! す、すみません…おじゃましてます…」


「…う…ん…。…。…! あ! ごめんなさい! ボクたちモコㇿ(眠る)しちゃったみたい…あんまり居心地よすぎちゃって…」


「…かまいませんよ…。ここに来れるだけで大したモノです…その上ここまでくつろげるは…よほどレラと仲良くできるのでしょう…」


 声の主はしなやかな長身に美しく長い髪をたなびかせ優しく語りかけてきた。


「…あなたが…レラ=ルーガル(大凬統べる王)…いえニンガル(女王)さまですか?」


「…いいえ…私は…エンシ(副王)ルーガル()は…この地にはおりませぬ故…留守の間を任されしモノでございます…」


「え、ええ! レラ=ルーガルさま…留守なのですか!」


「…はい…。ここまで来られたからにはご契約が目的ですよね…申し訳ございません…。我がルーガルなくば…仮の契約しか出来ませぬ…」


「…仮でもいい! ボクと…契約して下さい!」


「左様でございますか……。チカラが、必要なのでしょうね。承知いたしました、仮ではございますが契約の()()り行わせていただきま…!」


 副王は話しながらスセリを観て言の葉が詰まってしまった。


「…? どーか…したの…?」


「これは…この状態では…なぜこれで今レラのチカラが…」


「…やっぱボクって…ヘンなの? 前にナ・ラ(奴国)で契約した刻も…そこの盟主さまに…ホントはできるはずないって言われたの。 一体ボクの何が…?」


「…ございませぬ…本来トゥムを…ヌプルをその身に宿し湧き上がらせるための核となるモノが…今はスセリさま…あなた様には…すべての生きとし生けるモノが秘めるシンノ=レンカイネ(真理の源泉)が…。…。…ございま…せぬ…!」


「そっか…なぁんか足りないかなーって思ってたケド…シンノ=レンカイネって…イッチバン大切なモノ…だよね…?」


「…左様でございます…。どのような経緯かは解りかねますが…元々は…モシリ()ワッカ()アペ()も…そしてもちろんレラ()も…あなた様と共にありました…ですが今は…。しかしながら現状でレラのトゥムを行使可能なのもまた事実…。我がルーガルならば…()をお示し下さるやもしれませぬ…。是が否(ぜ ひ)にもお()い下さいませ…」


「…もともとは…すべてがボクと…?」


「…これ以上は…(かぎ)かかりて伝えることかないませぬが…左様でございます…()りし日…あなた様はその伴侶様(はんりょさま)と共にすべてを従えし存在でした…」


「伴侶…ヤィコ=トゥィマ(前世)での…?」


「左様でございます…それもいつしかわかる日が来ると思います…」


「そっか…。あ! そーいえばさっきのはなし方…ボクたちと会うの…はじめてじゃないんだね?」


「遥かエカンナイ(いにしえ)の…ヤィコ=トゥィマにて…お逢いしております…」


「うーん…エシカルン(思い出す)できないや…!」


「僕もお話しうかがっても全く何もエシカルン(思い出す)できませんでしたね…。あ、でもですね、それよりもですよスセリちゃん! エンシさま、その…ルーガルさまは今どこにいらっしゃるのでしょうか?」


「ルーガルは…一面オタ()のモシリを彷徨(さまよ)っている様です…」


 副王は目を閉じて位置を探るようにしながら(こた)えた。


オタ()オタ=ヌプカ=ケナス(砂丘続く平原)…どこのだろう? ボクたち知っているのは…」


「…ちょうど…そのモシリの様です…」


「すっごいぐーぜんだけど一体なんであそこに?」


「…あの方の行動は…それこそレラの如くでございまして…イレンカのままにケッシレカリ(放浪する)しております…」


「…でも…それなら今は最初で最後の好機かもしれませんね!」


「うん! ヤチ、行こう! オタ=ヌプカ=ケナスへ!」


「あ、はい!」


「この子をご一緒させてください…助けになるかと思います…」


「…これは…?」


「…レラのトゥム強き処を指し示す…コスカクアウトリ(コンドル)の幼生です…」


「…かぁわいい♪」


「確かにかわいいですね♪」


「この子は…イペ(食事)をするもワッカ=ク(水を飲む)も必要ありませんのでご安心ください…」


「…もしかして…イコロ=タㇰ(宝の玉)…なのでしょうか?」


「…よくご存じで、それこそルーガル御座(おわ)すオタ=ヌプカ=ケナス…その中のナムワッカ=シリ(泉湧きし地)に住まうシ=カラ=クル(創造の理修めしモノ)によるモノだと聞いております」


「やっぱり! あ、もしかしてルーガルさまは……?」


「新しいコスカクアウトリも、お願いしに行かれたのだと思います」


「も? ではほかに目的があるのでしょうか…?」


「それは解りかねます。先日も突然…」


「…スマヌが…ワレは…パイェ=カイ()に出ネばナラぬ…!」


「それだけ言われて旅立たれましたので…真意はわかりかねますが…もしかしましたら…あなた方と会える処へ行く…そういうことかもしれませぬ…」


「うん、わかった! さがしてみるよ! レラ=ルーガル(大凬統べる王)!」


「エンシさまありがとうございました! それでは行ってまいります!」


「…どうかお気を付けて…」


「はい! あそこなら…慣れています♪」


「さようですか…。それならば安心ですが…ルーガルとの契約自体…なかなかに手ごわいと聞きますので…」


「そーなんだね! でも大丈夫! 前ものりこえられたから!」


「…お二人にレラのご加護を…!」


 優しく、でも少しだけ心配そうな表情でうなずいた後副王が手をかざすと、ヤチホコ達は輝く風に包まれた。


「…これでレラが守ってくれます…お励み下さいませ…」


「あ、ありがとうございます!」


「ありがとう! じゃぁ行ってくる!」


 二人は心地よい(レラ)の吹く神殿を後に、いったん奴国(ナ・ラ)出雲(イヅモ)へ戻りヒメにあらましを伝えると…おもむろに広大な砂丘続く平原(オタ=ヌプカ=ケナス)から居場所を探り始めた。


「…この…強きレラのトゥム…これが…レラ=ルーガル…どうやらケッシレカリ=トー(彷徨える湖)の周囲をケッシレカリ(放浪する)されている様でございます…」


「ケッシレカリ=トーのそばでケッシレカリされている…?」


「なにかあるのかなそこに…?」


「解りませんが、行ってみましょう!」


「うん! ヒメちゃんありがとう!」


「あ、ではこのまま行ってまいります!」


 そう伝えると二人は王子に授乳せし大地(クスターナ)へと門より跳んでいった。


「せっかくだから純陀(チュンダ)さんのトコよってみよーよ?」


「あ、そうですね♪ この子のことも聞けるでしょうし♪」


 二人は宿の手配を済ませた後純陀の店へと向かいました。


「おーよく来たべさ! ん? それさどーしたんだべか? そいつぁレラ=ルーガルさまに…」


「そうです♪ 今はエンシさまだけでしたが…お借りしてきました!」


「レラ=ルーガルさま、ケッシレカリ=トーの近くをケッシレカリされてるみたいなの。探すのにこの子が助けになるって貸してくれたんだよ!」


「なぁ~るほど、たしかにコイツさあればおおよその場所さわかるべさ!」


「やはりそうなのですね♪ あ、ではこの子も近くに来ると…?」


「んだべさ♪ 合図さおくってくっからしっかり聞いたらイイべさ♪」


「わかりました!」


「ありがと! 気をつけておくね!」


「んだんだ。あ、あとはスセリちゃん…探したい緋徒がトゥムさ()めたほうがんまぐ行くべさ♪」


「わかった! ボクがしてみる!」


「おお! しっかりな~!」


 純陀の話を聞いた後二人は帆掛け舟(ロクンテゥ)にのってさまよえる湖(ケッシレカリ=トー)を目指す。


「…ケッシレカリ=トー…ですか…」


「いくつかパィカㇻ()カリ(廻る)するごとにシロロ(場所)が変わるって…」


「あ、はい、そこから…ケッシレカリ=トー(彷徨える湖)って呼ばれてる様です…」


「…レラ=ルーガルさまに逢えたら…なにかワカるかも!」


「そうですね! まずはさがしてみましょう!」


 その日二人は宿に戻って休息をとり、あくる朝出かけていった。


「じゃぁ、まずはトー(みずうみ)カン(上方)を! いまもこの地図のシロロにありますかね?」


「どうかなー? ヤチ、とにかく行ってみよ♪」


「あ、はい、そうですね♪」


 純陀にもらった地図の通りかはわからないが、ヤチホコは帆掛け舟(ロクンテゥ)に話しかけた。


ケッシレカリ=トー(彷徨える湖)カン(上方)へ!」


 低くうなりを上げた後、帆掛け舟(ロクンテゥ)はゆっくりと浮き上がり、湖上方を目指し走り始めた。


「…今のトコ純陀さんの地図と重なりますね♪」


「あ! イ=シカリ(大きく曲がる)するみたい…? さらに…エチュㇷ゚カ()? そしてもうすこしエマカㇲ()…?」


「…やっぱり位置が変わっているのですね…。これはフツーでは、この広大なオタ=ヌプカ=ケナスの中…見つけられずオハィンカㇻ()と言われる訳ですね!」


「そーだね! これはフツーに探すのはタイヘンすぎるよ!」


「…()えました! あれですね…あれがオハィンカㇻ()の…」


ケッシレカリ=トー(彷徨える湖)! そしてこの近くに…」


「はい! レラ=ルーガル(大凬統べる王)さまがきっと…!」


「よし行こ! ヤチ!」


「はい!」


 帆掛け舟(ロクンテゥ)を走らせ彷徨える湖の北側を探す。

 この湖は周囲の山々の雪解(ゆきど)け水より生じた河川が流れ込む末端湖(まったんこ)と呼ばれるモノである。

 その為に少しずつだが淡水(たんすい)のはずの湖水(こすい)が塩気を帯び…汽水(きすい)になると突然姿を消してしまうという。


「…もしかしたらこのモシリのカムイさまが、ワッカ()に困らないように動かしてくれているのかな…?」


「確かに結果的にそうなっていますよね。新たなシロロ(場所)ルㇽ(塩気)のないワッカを携えて…ルㇽヌ(塩気)帯びる過ぎるとケッシレカリして…このモシリにはなくてはならない大切なワッカ=ストゥ(水源)…それがこのケッシレカリ=トーですものね…!


「…も、もしかして…レラ=ルーガルさまって…」


「あ! そうか…そうでしたか…スセリちゃん、それはきっと正鵠を射(せいこく い)ていると思いますよ!」


「…みんなのために…大きなチカラを使う…」


シ=パセ=カムイ(真なる神威)の…見本ですね♪」


 その刻コンドル(コスカクアウトリ)の幼生が泣き出し、くちばしでとある方向を指し示すのでそちらを観てみると…。


「ヤチ! アィヌ=クㇽ(人影)! もしかして!」


「きっとそうですね! 行きましょう!」


「うん!」


 二人は砂上を彷徨う(ケッシレカリ)人影に近づいていった。


 それはものすごい長身で見上げるほどだが…ウガヤやカルマ王と違って細く引き締まった体つきであった。

 外套(ウㇽ)(まと)い、頭部には綿布(センカキ)を巻いている。


「はじめまして! ボクはスセリ!」


イラムカラプテ(こんにちは初めまして)! 僕はヤチホコといいます。もしかして…レラ=ルーガル(大凬統べる王)さまでしょうか?」


「…イカにも…。ワレはレラ=ルーガル…皆にはコンコン=ラㇷ゚=タ(羽毛と翼持ち)ンネ=カムイ(し蛇神)と呼ばれてイル…緋徒(フィト)…のノカン=クル(子ども)達ヨ…ナニ用でアロウか?」


「レラ=ルーガルさま…ボク、ボクと…契約してください!」


 大凬統べる王は、その言の葉を聞いてスセリをしばらく凝視(ぎょうし)すると…一息ついて語り始めた。


「ソナタ契約は現状(むずか)シイ…。モシ…スベテを喪うもチカラ欲す覚悟決マリシ刻…再びコノ地を訪レルが良イ…未ダ刻満ち足りてオラヌ故…」


「シンノ=レンカイネだけじゃなくって…まだ…ナニカが足りないの?」


「左様。覚悟のイレンカはアレド…経験スベキイレンカを、スベて得た後ニ、再び参るがヨイ…」


「わ、わかったよ! きっと…また来る!」


「…待ってイルゾ…」


 そういうとゆっくりと背を向けて羽毛と翼持ち(コンコン=ラㇷ゚=タ)し蛇神(ンネ=カムイ)は彼方へ去っていった。


「今は…ダメなのかぁ…」


「そうみたいですね…。経験すべきイレンカって…何でしょうね…?」


「んーわかんない! でもきっとまた!」


「…そうですね!」


「ヤチ、もどろっ!」


「はい!」


 二人はいったん奴国へ戻る事にした。

残念ながら契約ならず…でしたね。


用語説明ですm(__)m

・ラムハプル=イネ・シ・ルーガル:惜しまずすべてを与える+四人の+偉大な+王

→「自然盟主四大王」としました。

・ケッシレカリ:放浪する

・ケッシレカリ=トー:放浪する+湖→「彷徨える湖」としました。

・コスカクアウトリ:コンドル(ナワトル語でコスカティ:首輪+クァウトリ:猛禽類からだそうです)

・イ=シカリ:大きく+曲がる、まんまです。僕の住んでいたところが「石狩」で、この地名の由来が石狩川のアイヌ語…「イ=シカリ=ペッ」(大きく曲がりくねった川)でしたのでちょっと出してみました(^-^;


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