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第68倭 イタク受け戻りしモノ達

任務を終えてイヅモに向かうミチヒメたちは…

「なるほどね、大変だったようだけどうまくいって良かったね」


「ま~ちょっちイキナリの飛び入りには驚いたけどね~♪」


「あいかわらず神出鬼没(しんしゅつきぼつ)なんだね…」


 アビヒコは少しだけ不思議なヲモヒ(いだ)きながら(こた)えた。


「もしかしてわたしたちみたいに…ニサㇷ゚=パィエ(瞬時に旅)カィ=ソィ(する門)、つかえるのかな~?」


「でもそれならウガヤさまが使えなかったのがヘンだと思う」


「う~ん…そ~よね…オオトシさま何かご存じです?」


「詳しくはわかりませんが聞きし処によりますと、昔深手を負ったらしいのですがその代わりに何らかのチカラを得たと伺っております」


「そっか…やっぱフツーじゃないんだねおかーさんも…」


「タギリさまのヌプル(霊力)はそれこそパセ=トゥスクル(大日霊女)さまに並ぶほどであると前回のカムイノミ(神への豊穣奉納祭)の際に私は観じました」


「そんなに…スゴイねタギリさま…!」


「普段わたしヌプルさっぱりだからピンと来ないケド…オオトシさまとのアレをエシカルン(思い出す)したらなっとくよね~!」


 ミチヒメは神前(カムイキリサム)比武(コラムヌカラ)の後の神への豊穣奉納祭(カムイノミ)を思い返しながらそう言った。


「さぁ、まずはみなさんに今回の出来事と塔主さまのイタク(言の葉)を伝え今後の方針を話し合いましょう」


「は~い♪ じゃ~アビヒコ、ルースから跳んでいくよ♪」


「ウガヤさまやぼくらのいない間のことは…伏犠さまから班勇(バン・ィヨン)さんにまかせてあるみたいだしね。準備はもう出来てるよ」


「よぉっし!じゃ~行くよ!」


 そう言ってミチヒメはアビヒコとオオトシの手を引きルースにある瞬時に旅(ニサㇷ゚=パィエ)する門(カィ=ソィ)へと向かった。


「よいしょっとっ! つっきまっしたぁ~♪ あら、アビヒコ大丈夫?」


「うん…ヤチホコほどじゃないけどぼくもあんまり得意じゃないみたい…」


「そっか…。オオトシさまは?」


(わたくし)は問題ありません。大丈夫です」


「なんだろ~? ダメなヒトとへ~きなヒトの差って…? ニガテなのは…ヤチホコくんを筆頭に…アビヒコ、ミヅチちゃんだったよね~。あとは…ケゥエ(身体)がちょっちトクベツだからかヒメちゃんもあんまり好きそ~ではなかったね…?」


 ミチヒメの言にオオトシは少し思案廻らせる。


「…ヒメはともかく、ヲノコの方が小さき(トキ)は弱いのかもしれませんね…」


「あ! それってそ~かも! 思えばヒメちゃんのぞいてみんなヲノコだもんね…!」


「…たしかにウタラを観ても…熱を出して寝こむのはヲノコの方が多いと…ラィラかあさんも言ってたね…!」


 現在の我々(われわれ)の生物学的観点(かんてん)からも生命体として基本となり完全なのは女性形である。

 必要に応じ突然変異的に生まれるのが男性形である。

 ヒトの場合だと、胎児期(たいじき)に男性になるY染色体をもつ個体は多量の性ホルモン(主にテストステロンと言うステロイドホルモン)を()び、(すで)形成(けいせい)された組織や器官を(つく)り変えて男性形になる。

 このテストステロンは女性ホルモンのエストロゲンと違い免疫系(めんえきけい)に対し抑制性(よくせいせい)の働きをする。

 胎児期、そして思春期のテストステロンシャワーと呼ばれる多量分泌(ぶんぴ)による免疫抑制とその作用により脳をはじめ体内構造を半ば無理やり変化させた(ため)、平均寿命が短く感染症、がんの罹患率も高くストレスに弱いと考えられている。

 故に特に幼少時、男子は女子に比べ病気になりやすく子育ても苦労する事が多いのである。

 生命体として不完全となる危険性を(かえり)みず性差を創出(そうしゅつ)したのは気候や環境の変化に対応可能な遺伝的多様性(いでんてきたようせい)獲得(かくとく)の為である。

 平和で(おだ)やかな気候と環境に生息(せいそく)している限り必要の無い事だったのである。

 彼等の世界においても元々性差は無く、苛烈なる世(ウェンルイ=モシリ=)界の裂動(ヤㇲケ=シルトゥ)、そしてそれ以前にも何らかの要因により必要に迫られ生まれたモノと現在の結果より推測できる。


「…もしかしますと…遥かなエカンナイ(いにしえ)に…レンカクス=ラム(自由意思)手に入れし刻に生まれたのかもしれません…。元々はメノコとヲノコの差など必要なかったのではとも考えられます…!」


「なるほど~!さっすがオオトシさまね♪ でも…わたしは…ヲノコとの差…イマならあってよかったかなって…そうイレンカ抱ける…」


 下伽耶(アラカヤ)滅亡の際、己の無力さと共にメノコである事の辛さを痛感してから季節が二回程(めぐ)りし間に…ミチヒメはその様なヲモヒを持ち得た様である。


「…(わたくし)も…貴女(あなた)出逢(であ)い、関わりを持てた事にイレンカ廻らせれば…ヲノコで良かったとのイレンカ抱く事叶います…!」


「マニィはメノコっぽくて良かったわん♡ アビヒコちゃんに気に入ってもらえたし♡」


 アビヒコはその言の葉を聞き照れくさそうにしながらミチヒメとマニィを見つめ、更に誰かをヲモヒ描きながら応えた。


(…! わたしとマニイちゃんと…そう…自分のラム()に正直になれるよ~になったのね♪)


 ミチヒメはアビヒコのヲモヒを観じ取り微笑ましくもほんの少しだけ寂しいヲモヒが込み上げてきた。


「ま~オオトシさまはもちろん、アビヒコもせっかくヲノコだし…わたしや…自分より弱い存在を(まも)れるくらいになってね…♪」


「あ、う、うん! かなり(レン)つまないとだと思うけど…きっとなってみせるよ…!」


「あらん♪ アビヒコちゃん今でもかな~りイイ線いってると思うわん♡」


「え? マニィちゃんそ~なの? そ~言えばあのスクナヒコナはメル=ストゥ=マェ(輝く根源の力)使えていたもんね!」


「そぉよん♡ アレをいつものレタラ=カネ(白銀:しろがね)の状態でしたトキは…けっこうスゴイわん♡」


「…確かにマニィの言う通りの様ですね…! 恐らく単純なチカラの総量は(わたくし)と大差ない様に観えます…!」


 オオトシは全身の間隔を広げアビヒコを探りそう応えた。


「さすがオオトシさま。チカラを解放してないのにわかるんですね…!」


「後ほど折を見てキチンと観させて頂きますが…マニィのワッカ()トゥム(氣力)とあなたのヌプル(霊力)ウカムレ=エトゥッカ(融合発動)させたならばと(こう)ずれば…です…!」


「そっか…ポン=イトゥン(小さきアリ)ナㇷ゚=モシリ(の世界)へ行ったコトもかなりの錬となったのね♪ すごいすごい♪」


「あ、うん…! あの間中ずっとヤチホコ達とモシリをつなぐチカラ出し続けていたからね…フツーならあんなにながい刻をつないでおくことなんて出来ないけど…スクナヒコナは疲れないから…たぶん何十の昼と夜廻る間していたからかもね」


「そのおかげで今のアビヒコちゃんは階梯が変わっちゃうくらいに磨かれていると思うわん♡」


「…ガンバったね…えらいゾ♪」


 ミチヒメはそう言って優しく抱きし(ヤイ=コ)めて頭を撫で(=ルイェ)た。


「あ、ありがとう…♪ でも、ミチヒメもなんとなく…そしてオオトシさまははっきりとこの間よりも練り上がっているのを観じるよ…!」


「そ~なのよね~♪ ビャッコの見立てではアノ刻のわたしとイイ勝負だって!」


「え! そ、それはすごいね…!」


「でもってオオトシさまはわたしのよ~に刻の制限ないから…」


「…長びけば…か!」


「ま~わたしだって今より先にイってみせるつもりよ…!」


「互いに認め合える存在が多いほど己も高めやすいと思います…ですからアビヒコの生長も私はとてもうれしく思います…」


「アビヒコちゃんはふたりからキホンを学ぶと良いわん♡ 持ってるチカラを上手に使ってキチンとイレンカの通り発揮させるヤリ方をね♡」


「…うまくつかい…イレンカの通りに…」


「マニィの言う通りですね。武は、突き詰めればまさにそう言う事だと思います。発したチカラを如何(いか)に己の目的に沿って行使できるか…それが技であると思います」


「そのとぉ~りだトラ! オオトシ、ヤッパオマエは良くわかってるトラ♪」


(シカリ)大歳殿(オオトシドノハ)武神髄(ブノシンズイノ)一端(イッタンヲ)掌握(テニシテイマス)…!」


「え~わたしそんなほめられ方したことないよ~?」


「オマエはサパ(アタマ)でワカンなくてもケゥエが勝手に動くトラ♪」


「そうよねぇ♪ ミチヒメちゃんはなぜだか出来ちゃうモノね♪」


「好対照であると我は観ずる。(ことわり)(かい)し己に(あらわ)すオオトシ殿と、イレンカのままケゥエで観じ取り顕せるミチヒメ…互いの(おさ)め方身に着けし刻、カムイ=エイキ(神威之武)の域に達するであろう…!」


「それって…それが…あのアチャポやムカツヒメさまの…」


至神威(カムイノブニ)之武(イタルコトデス)…!」


「そうか…あの二人の武はカムイの領域なんだね…! どおりで…前の“主”と戦った刻も…あんなのフツー数手くらいしか続かないはずだよね…! もしかしてぼくも技がそこまでいけば…」


「今のそなたがカムイ=エイキまで練り上がればこの二人超えし事叶うなり…秘めたるチカラかなりのモノである…!」


「ま~ナンだ? ミチヒメ、オマエがすべてを使えるよ~になったらハナシは別トラ♪」


「そうなった刻は個の持つトゥムではどうにもなりませんわ…!」


「そしてそれは…カムイや…イウェンテㇷ゚(魔を統)=ルーガル(べし王)に対しても同様である…!」


「そのために必要なのが塔主さまが言っていたっていう…」


自然盟主(ラムハプル=イネ)四大王(・シ・ルーガル)之探索(ノタンサク)行為也(コウイノコトデス)…!」


「そして…イウェンテㇷ゚(魔を統)=ルーガル(べし王)にさえ通用するなら…」


「…当然あのジェスターにも通じる訳ですね…!」


「そう言うコトトラ♪」


「じゃ~さっそくワカるお~さまのトコは行ってみて、どこにいるかわからないお~さま…アビヒコ! あなたのスクナヒコナの出番ね♪」


「うん! あの状態で探せないモノは無いと思うからね」


「よぉっし! じゃぁ急いでキクリちゃん達のトコへ!」


「ええ!」「うん!」「ですわん♡」


 一行は門を出てイヅモのキクリたちの処へ向かって行った。


「…と、ま~こんなコトもあって…、で、塔主さまのおはなしだと…」


 ミチヒメはアヨーディヤーでの出来事から今までをキクリ達に伝えた。


「タギリ姉はホントにいつでもタギリ姉ですね…♪」


 呆れて笑いながらヤチホコは応えた。


「ま~ね~、でもなんだかんだあったけど…何と言ってもラーマさまにあえてホントに良かった♪」


「うん、ホント♪ それに…良かったねスザクと玄武♪」


 スセリは大きく頷いて心底良かったとのヲモヒで応える。


「スセリちゃんありがとう♪ おかげでとっても幸せですわ♪」


至上(コノウエナク)幸福現在(イマシアワセナノデス)…♡」


(…このふたりの艶姿(あですがた)…観てみたかったです…う、うわわ!)


 そこまでヲモヒ廻らせかけたヤチホコに対してミチヒメとその肩に乗る子猫の様なモノよりえも言われる重圧を観じすぐさま話題を切り替えた。


「ウ、ウガヤ兄もこの上なく…ですよね♪ うまくいくと良いですね♪」


「どちらにせよパルティア・ローマ間を通り抜けないとなりませんので、(わたくし)は道すがら合流するかもしれません」


アペ()のお~さまってどんなカンジかしらね~? モシリ(大地)のお~さまは…キクリちゃん残念だけど…」


「…かまわないわ! キット時来ればアタシは叶うと思うし! それより行方のワカラないワッカ()レラ()ルーガル(王さま)ね…! さっそくだけどアビヒコ…頼むわ…!」


 アビヒコはキクリに言われて頷いて応える。


「ああ。マニィ、アンナ、ぼくをスクナヒコナへ!」


「わかったわ♡」


 まずマニィの権能(チカラ)白銀(レタラ=カネ)状態に変貌(へんぼう)する。


「よし。次、アンナよろしく!」


「了解しました…。…。…。…残念ながら現在は出来かねるようです…」


 予想外の返答に驚いてアビヒコが尋ね返す。


「ええ? もしかしてぼくでも…あんまりひんぱんにすると危ないのかな…?」


(おお)せの通りです。アビヒコ、あなたも一廻りクンネチュㇷ゚(闇に浮かぶ月)が移ろうまで出来ません…無理に致しますと…」


「…輪を…廻っちゃうんだね…」


「左様でございます…」


「え~じゃ~ど~やって探したらいいかな~?」


「…アタシがしてみるわ…! この中ではきっと探すの一番得手だと思うし!」


「そうですね! キクリちゃんがアンナを使えばわかるかもですね♪」


 ヤチホコの言に頷いて徐にキクリがアンナに霊力(ヌプル)を注ぎ、まずはこの中で一番未熟(ウェウェク)であるスセリの為に風の王から探り始めた…。


「…どうですキクリちゃん…? わかりそうですか…?」


「…もう少しで観えそうなのに…!」


 ヤチホコの問いに悔しそうにキクリはそう応える。


「…他に索知が…キクリちゃん以上に出来る方って…いますかね?」


 ヤチホコの問いかけにぽつりとスセリが応える。


「…ヒムカ=モシリ(日向のクニ)の…ヒメちゃんはどーかな?」


「それよ! あの子確かヌプルはすごかったわ…!」


「ではヒムカに出向き迎えに行ってきますね!」


「…頼んだわ! アタシも出来る限り挑戦してみるわ!」


「キクリちゃん…ボクの為にありがとう…!」


 神妙(しんみょう)な面持ちで感謝をつたえるスセリに対し、少し照れくさそうにキクリは返す。


「…まぁ、できないことあるのも悔しいじゃない、だからよ! 気にしなくていいわ…!」


「ありがとう…♪」


「では行って参ります!ヒムカへ!」


 ヤチホコ達は帆掛け舟(ロクンテゥ)を走らせ瞬時に旅(ニサㇷ゚=パィエ)する門(カィ=ソィ)より日向(ヒムカ)へ跳んでいった。

ヒメのいる日向へ…!


用語説明ですm(__)m

・カムイ=エイキ:神の+使う、~の振る舞いをする→「神威之武」としました。

・クンネチュㇷ゚:黒+月で「月」を顕すところより、「闇に浮かぶ月」としました。

・探知→「索知」にしました。

「索知」はどうやら中国語で「すべてを知る」らしいですので、すべてを知ろうと調べ探る事について用いました。

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