第60倭 完全なるウカムレとイレンカの自由さ
ルースへ帰ったアビヒコは…
「ただいま、とうさん、かあさん!」
「あらアビヒコお帰り♪ また逞しくなったね♪」
「ほうほう…確かにこりゃスゴイ! ミチヒメちゃん以外のメノコを連れてくるまでに…」
「もう~そこじゃないでしょ! えっと、確か…」
「マニィですの♡ よろしくですわん♡」
「…相変わらずあのおっさんイイ仕事してるな~!」
ルースのその言の葉を聞いてアビヒコは驚きと確信半々な面持ちで話す。
「やっぱり! とうさん純陀さん知ってたんだね?」
「ああ。この間のクンネ=スムを探したのも…純陀が造ったそのマニィちゃんのキョーダイの様なモノだからな」
アビヒコは納得した。ルースの行う発明と…方向性はまるで違うが同等に優れたモノを造りだす純陀の錬成を観て、優れたモノ同士何らかの交流があっても不思議はないと思っていたのである。
「アビヒコ…このマニィちゃんのチカラでオマエの中のクンネとレタㇻが一つに溶け合うと聞いたが…?」
「ああ! 見せてあげるよ。念のため外でね」
ヤチホコのそれとは違いアビヒコの変化は内面に沈み込みながら混ざり合うので外に衝撃はなかった。
「ほぉ~! コイツぁスゴイ! 完全に混じり合い…それでレタㇻ=カネか! 香、すまないがちょっと代わって観てもらえないか?」
「わかった! じゃぁ…」
そう言うと香は揺らめきながら別の存在へと変貌していく…。
「…お久しぶりです貴方、そして…アビヒコ…ああ! 素晴らしいです…良くここまで練り上げましたね! 私達のレタㇻとクンネが完全にウカムレしています。おそらくトゥムもそしてヌプルも…もしかしたらメル=ストゥ=マェでさえも使えるのではないでしょうか?」
「久しぶり…? (変身がかな? まぁいいや。)トゥム、ヌプルは自在、そう言えばメル=ストゥ=マェはスクナヒコナ以外で試していなかった…やってみるね!」
そう言うとアビヒコはマニィに後ろから抱きすくめられた後、力強く水の氣力を吹き上げ、霊力を重ね合わせていく…。
最大限に膨張した瞬間、アビヒコの中へと吸い込まれ、一瞬間を置いて今度は光り輝く水流が立ち昇り身体を覆う。
「これって…もしかして!」
「アビヒコちゃんおめでと♡ バッチリ出来ているわん♡」
(…これがあのオオトシさまや…ミチヒメの…)
「間違いない…メル=ストゥ=マェだ! なんてこったアビヒコ!」
ルースは驚きのあまり天を仰ぎながらそう叫ぶ。
アビヒコは自分の姿を観てナニカを観じ呟いた。
「…もしかして今のぼくに潜在するチカラの総量って…」
「そーよん♡ ヤチホコちゃんよりも今はアビヒコちゃんの方が大分上よん♡」
(…これなら…ミチヒメを護れるんじゃないか…?)
「うふ♡ まぁだ技が…ケゥエ=エイキが足りないわん♡」
「そうだよね。そこはさすがにすぐさまとはいかないもんね…!」
少し残念そうにしながらも納得した面持ちでアビヒコはそう応えた。
「どうだいかあさ…?…。…。…! 違う! いや…違わない…! 変身じゃなくって…二人だったんだ!」
驚きよりもうれしさを前面に香? は応える。
「今は…観えますものね。その通りです、普段あなたのお世話をしてくれている香は私の…」
「かあさんが二人いるなんてぼくはみんなの倍幸せなんだね!」
その言の葉を遮ってアビヒコは喜びを伝えた。それを観て嬉しそうにマニィも続ける。
「そーよんアビヒコちゃん♡ マニィも入れて三倍よん♡」
「うん! マニィ…本当にありがとう! おかげで様々なことが出来るように、分かるようになった!」
「アビヒコ…そう言っていただけるとわたくしもサンペ=シトゥリになります」
それを聞いて少し照れくさそうに、嬉しそうにアビヒコも応える。
「思えば話し方もぜんぜん違うもんね! かぁ…香の方はもっとくだけていると言うか…」
(…親しみやすいカンジでいーでしょ! 言い方言い方!)
今のアビヒコには鮮明に観える。霊体で香が出てきてそう言ったのだ。
「か、かあさん!? ああ! そ~か! ケゥエは一つしか…」
「訳あって香は私に宿っています。香は…香のケゥエは…」
「それはまた後日でいいんじゃないか?」
ルースがやや神妙な面持ちで言の葉を挟んできた。
「そうですね…。香は本当は…私の娘なのです…」
それを聞いたアビヒコは驚きからやや混乱気味に言の葉を返す。
「ええ? ええと…じゃぁかあさんはねーさん? それとも今のかあさんがおばあちゃん…?」
苦笑しながら香? が応える。
「そうですね…経緯を考慮しますと…わたくしがあなたの母で、香は姉と言う事になるのでしょうか…?」
「まーそーだな! 私とコイツの子供がアビヒコ、オマエ。香は名目上私の嫁となっているが…コイツの…ウサレイエ=ラマトゥというか、子供みたいなモノだから…オマエのねーちゃん…か! そんなワケでコイツが私の本当の嫁、香は普段日常を任せていてアビヒコを育ててくれたイレスハポ…か? まーだからあれだ! 良ーんだよ、アビヒコのそのイレンカ、私に気を使わんでもな」
ルースの突拍子もない言の葉に目を白黒させてアビヒコは狼狽する。
「はは。タアン=ラマトゥに生まれ来る存在は…それぞれに独立したモノなんだよ。だから…誰が誰にエラマスのイレンカ持とうともラマトゥ上は何も問題ないの。それで何か色々大変だろうと…イレンカ…ラムが幸せならイイだろ?」
「た、たしかに…。しかしとうさん…たま~にシ=パセ=カムイのよ~な事を言うよね? 今のぼくが観てもただのウタラなのに…?」
その言の葉を鼻で笑い飛ばす様にルースは応える。
「まーなんだ? ウタラか緋徒かカムイかなんてチカラの差くらいだろ? ラムが…境涯がついてこなきゃいくら強くってもな! そーゆーことだ!」
深くかみしめるようにアビヒコは反芻しながら言う。
「大切なのは…ラム…イレンカ…」
「そーよん♡ ホンキのそれが伴うモノにおよそ悪い事なんてないわ♡」
「…あらゆる事は…イレンカ如何によって…素晴らしい事にも低俗な事にもなり得ます…」
「イレンカ…しだい…」
「ですので…香にエラマスのイレンカ抱いたとしても全く問題ないと言う事ですよアビヒコ…♪」
「…そう、なんだね…。うん。なんか納得できた! ありがとう! ええと…?」
「そうですね…。“ラィラ”とお呼び下さい。あなたにとっての母は育ててくれた香の方でしょうから…」
「わかった。ありがとう…ラィラかあさん!」
それを聞くとラィラは笑みを浮かべアビヒコを抱きしめ、一礼と共に香へと戻っていった。
「…なんかはじめてケゥエから出ちゃった! おっすアビヒコ!」
「…かあさん相変わらずだね! でもあれはウタラには多分危険だと思うから気をつけてね」
「わかった! ごちゅーこくありがと♪」
香は優しい笑みを浮かべながらそう言った。
「さぁて、じゃぁ香ちゃんの領分をしますか♪ 何食べたいアビヒコ?」
アビヒコは食べたいモノを全部挙げて香に頼み心行くまで堪能した様である。
また一つ出来る様になり、そして一つ知り、イレンカの自由さを教わったようですね。
次から別章になります♪
用語説明ですm(__)m
・レタㇻ=カネ:白+金属→「白銀」としました。(本当はシロ=カニなんですが…(^-^;)
・サンペ=シトゥリ:気が晴れる→「晴れやかな気持ち」としました。
・イレスハポ:養母→「育ての(母)親」としました。




