表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/115

第57倭 ヤマタイにてイタク告げるパセ=トゥスクル

 上陸後何度か日が(めぐ)りし後…一行は帆掛け舟(ロクンテゥ)を海に浮かべハルマヘラを後にした。


「…キクリちゃん…そちらで()れた通りだったよ…」


「ええ…わかったわ…! お兄ちゃんは姿を変えて…モノスゴく修行を積んでいたのね! 負けてられないわ!」


 キクリは様々なヲモヒを内包した面持(おもも)ちで決意新たにしていた。


「…そうだね…あのトゥム(氣力)ヌプル(霊力)の使いこなしっぷりは…オオトシさまを超えるモノがあったからね…!」


 スクナヒコナと変化したアビヒコも今までの出来事を振り返り(こた)えた。



「何故かアタシのこと覚えていないみたいだったケド…きっと逢えばエシカルン(思い出す)するに決まっているわ!」


「ぼくもそう思うよ。そしてそれはもう近い…彼は…アマムさんはもうじき九千九度(くせんくたび)のはずだから」


「イイわ! とっても! こっちに来たらアタシとアンナだけでもきっとどこにいるかわかるはずだわ!」


「そうだね。もしもの(トキ)はまたぼくも手伝うからラム=シリネ(安心する)して」


「そーね、その刻は…お願いするわ!」


「まかせて!」


 今回の旅でアビヒコもさらに色々学び自信をつけてきたようである。


「…ところでアビヒコ達…スワンナの門からじゃなく…何でワザワザアトゥィ()から帰ってくるワケ?」


「ここからちょうど潮がナ・ラ(奴国)へ流れていて…数度日が廻るほどで着くと伝えたら…それならのんびりロクンテゥでパイェ=カイ()するって…」


「相変わらずののんびり屋さんねヤチホコ…」


 アビヒコの返答に対し皮肉と好意半々にキクリが応えた。


「そこがきっとヤチホコの良い所なのかもしれないな…あせりすぎず、頑張り、出来なくてもあきらめず、自分の方が劣っていても相手をほめれど決してねたまず…」


「確かにそーよね! その辺りは…見習うトコあるわ!」


「ぼくもそう思う。今回も、アマムさんのおかげだけどメル=ストゥ=マェ(輝く根源の力)まで身につけてきちゃったし…」


「負けてられないわ! 帰ってきたらヤチホコつかまえてコツを問いたださないとだわ!」


「はは、そーだね♪ 今までぜんぜん出来なかったからこそうまく教えてくれるだろうね!」


「そー思うわ! 楽しみだわ♪ …しかしナニこの二人…自分たちがしたかったのにこのモコロ(眠り)っぷりってどーなの?」


「…外のキクリちゃんたちにはせいぜい数回スクス=トイ(明るく日の差し込む昼)シリ=クンネ(日が暮れ闇覆いし夜)が廻った程度だろうけど…実はぼくらは数十以上の昼と夜の間あそこで暮らして修行していたんだよ」


「そーなの!? そっか…ポㇰナ=シリ(幽世:かくりよ)…刻の流れもぜんぜん違うのね…!」


「うん。と言うことは…」


「父様住まうトコと同じ…そーゆーことね!」


「そう。スサノヲさま住まうストゥ=モシリ(根源の国)もきっと…」


「そーね! え? 待って…、と、言うことは…父様…もしかして…」


「…そうかもしれないね…。少なくてもケゥエ(身体)はないのかも」


「ケド…いつも(あらわ)れるアレは…間違いなく実の存在あるケゥエ。一体…?」


「スサノヲさまのことだからきっとぼくらの知らない呪法(じゅほう)を使われているのかもね」


「そーね。父様は大概(たいがい)なんでもアリだからあり得るわ!」


 微笑(ほほえ)みながら賛同(さんどう)するように(うなず)いた後スクナヒコナのアビヒコはキクリに言う。


「…じゃぁしばらくそちらに着くまであまりに無防備(むぼうび)な二人を守る結界に専念するから…」


「わかったわ! ナ・ラで待ってるわ! …ありがと!」


「うん…じゃぁナ・ラで!」


 スクナヒコナに守られながらの(おだ)やかな航海を終え、ヤチホコ達を乗せた帆掛け舟(ロクンテゥ)は上陸した後ナ・ラと反対方向へ進んでいた。向かう先は“トゥスクル=モシリ(巫女の治めし国)”にあるヤマタイ(港ありし都)であった。


「…なんででしょうか、何となくパセ=トゥスクル(大日霊女おおひるめ)さま…おかあさまに会ってご報告した方が良い気がしまして…」


「イイと思うよ♪ ひさびさだし♪」


「ぼくもそれが良いと思う。キクリちゃんには言っておくし、ヤマタイの門からすぐ跳べるだろうしね」


「あ、そ~ですよね♪」


(実際何て便利なのでしょう♪)


 ヤチホコのヲモヒ顕すかのような心地良い風の中、帆掛け舟をヤマタイ(港ありし都)へと進めた。

 その間にキクリに対しスクナヒコナに念話で説明してもらっておいた。


「…おかえりなさいヤチホコ、スセリ。…あなたは…アビヒコなのですね。…かわいらしくも…頼もしきチカラ備えられておりますね…」


(…相変わらず会った瞬間全部わかっちゃいますねおかあさまは♪)


 ヤチホコは驚きながらも関心の面持ちで大日霊女(パセ=トゥスクル)たるムカツヒメの言の葉を聞いていた。


「で、ですね、ムカツヒメさまそのモシリで…」


 小さきア(ポン=イトゥン)リの世界(ナㇷ゚=モシリ)での出来事をムカツヒメに伝えると(しばら)く思案を廻らせ言の葉(イタク)(つむ)ぎ始めた。


「…アメ(メイシュ)シンノ=パセ(壮絶重屯)ヴァイシュラヴァナ(毘沙門天)…そして…マタ=チロンヌㇷ゚(冬狐)ことアマム…彼等は近いうち…こちらに来られる事でしょう…」


「そうなのですか♪ あ、確かにめ…アメさんはすでに緋徒(ヒト)? になっていましたしね♪ でもあの…モシリを愛するニン=ルーガル(女王)たるアメさんが…?」


「…緋徒に…。それなのに…留まられているのですか…」


「ニン=ルーガルとしての責任感と言いますか…ムカツヒメさまの様にウタラ(臣民)全ての母…のイレンカ(ヲモヒ)だからかなと思いました♪」


(…アメ…随分変わられましたね…あのお方と共に戦いし頃に比べ…)


 ムカツヒメは穏やかな表情で感慨深(かんがいぶか)そうにしていた。


「おかあさま…何か観じられましたか?」


「ええ…。各々が課せられし試練(しれん)に向き合い其々(それぞれ)に必死に立ち向かう(さま)に…その素晴らしさに…。それはあなた方も同様でございますよ…ヤチホコ、スセリ、そして今はスクナヒコナ…」


 ムカツヒメのその言の葉に(うれ)しさを隠せず少し上ずった声でヤチホコは話を続けた。


「あの、それでですね、ムカツヒメさま…」


「愛すべき我が子ヤチホコや…母と呼んで構いませんよ…♪」


「…おかあさま…僕、頑張れましたか…?」


「…ええ、とても♪ 今まで成し得なかった事を二つも身に着けて来られたではありませんか♪」


「あ、あは♪ ええと…それでは…その…あのですね…」


「ふふ、ヤチホコや…さぁおいでなさい…」


 ヤチホコはその言の葉を聞いた途端晴れやかな表情になりムカツヒメの元へ歩み寄った。

 ムカツヒメはヤチホコを優しく抱きしめ(ヤイ=コ)て頭を撫でた(=ルイェ)


「…大変頑張られましたね…とても良く…出来ました…」


(…あぁ…嬉しいです…おかあさまに()められるのは本当に嬉しいです…♪)


 ヤチホコの頬を感極(かんきわ)まったヲモヒを顕すかの如く一筋の(しずく)が伝う。

 ムカツヒメはそれをそっと指ですくい唇を押し当てて優しく語り掛けた。


「これから先も…道は険しさを増すばかりです…。今でしたら…まだ…サスィシㇼ=ラマトゥ(来世)へ持ち越す事も叶います…」


「…きっと本当に大変なのでしょうね…この先は…。でも…僕、決めたんです。何があっても…進んでみせますと!」


「頼もしきイタク(言の葉)でございますね。そのイレンカ(うしな)わない限り…たとえどんな困難に()い打ちのめされようとも、辛くて逃げ出してしまおうとも…必ずや目的の場所へ辿り着く事叶うでしょう…。再度申し上げます。ラム(こころ)折れぬ限り叶わなきイノンノイタク(祈り)はございません」


「…はい! これからも頑張ります♪ これでも少し強くなりましたから♪」


 そう応えてヤチホコは抱きしめてくれているムカツヒメをそのまま抱え上げた。


「ほら♪ そして…トゥムとヌプル…ウカムレ=エトゥッカ(融合発動)出来る様になりました! 観ていて下さいね…ふぅ…はぁあ…!」


「お、お待ちなさいヤチホコ…ここではなく外で…!」


(そう言えば…(ニス)のトゥムで行うのははじめてでしたね…)


「マズい! ぼくはさっきまでの結界でもうあんまりチカラが…!」


 スクナヒコナのアビヒコは焦燥感(しょうそうかん)(あら)わにしていた。


「おかあさま! ボクにヌプルを! レラ()よ! モィ(渦巻く)して 守りの盾と成れ!」


 ムカツヒメは即座に世界に(あまね)くヌプルをスセリへ集束させ注ぎ込んだ。


「あわせて…ねりあげて…で、できるカモ!」


 光り輝く等身大の竜巻(ペウプンチセ)がヤチホコを覆う。当の本人はチカラの解放へ集中しきっていてまったく気付いていない。


「…観えた! このカンジ! ここにトゥムを…やぁぁー! レラよ! カタ()ポㇰ()もふさいで!」


 その言の葉で球状に変化した竜巻から閃光が(ほとばし)る!


「と、止まれー!」


 巨大な重量物の落下時同様の地響(じひび)きが起きた。


「ど、どうですムカツヒ…ったぁ!」


「こぉのエッパタ~イ(お~バカぁ)! カムイ=チセ(神殿)プスチャカ(ふっとんじゃう)しちゃうトコだったよ!」


「あたたた…あ、痛くないですね、衝撃(しょうげき)はありますが…あ! そ、そ~でした…と言いますか…そうだったのですね…」


「ミチヒメちゃんやオオトシ兄見てればわかりそーなモノだよ! もぅ~」


「たいてい外で、でしたので…すみません…。…。…! ス、スセリちゃん! その僕のメル=ストゥ=マェ、ど~やって封じたのです?」


 自分の迂闊(うかつ)さに消沈(しょうちん)した以上に(おどろ)いてヤチホコはスセリに(たず)ねた。


「そばにおかあさまいたから何とかなったケド…ボク一人じゃホントアブなかった!」


「ああ! おかあさまからヌプルを…で合わせて…すごいですね♪」


「イチかバチかでできて良かったよ…。もぅ…」


「…スセリ…先ほどは素晴らしきチカラの使い方でしたね」


「うん! これのキホンとしてポタラ=メル=アカム(破邪光子輪)を…ヤチからヌプルもらってそれをボクのトゥムとあわせてアカム()にして放つ技を…きっとアマム兄から教えてもらってきたんだよ! でもジブンでメル=ストゥ=マェにするのは…できてホント良かったー!」


マタ=チロンヌㇷ゚(冬狐)さんは確かにアマムです…。大分修練を積まれている様ですね!」


「うん! ろーし…アマム兄は…これをイレンカのまんま使いこなしていたよ!」


「そ~です! 技だけ見てもものすごい練り上がり方でしたね!」


「技のみでも…。そうでしたか、それは本当に努力されたのでしょう…!」


「ミチヒメも自分の得意技をおかあさまのケゥエ=エイキ(身体操作)で放てるようになっていてですね…(ニス)のトゥム解放していても僕ふっとばされてしまいました…」


「皆それぞれ相当に錬を積まれている様で素晴らしいです。良く頑張られましたね」


 ムカツヒメはそう言いながら二人を優しく抱きしめた。


(ヤチホコ…今世の貴方は自然体で(すこ)やかにそこまで習得されたのですね…)


「次にウパスクマ=エ=(天と地の基礎と)テメン=アンキ(なる叡智の聖塔)へ向かいし刻は…オオトシの他…ヤチホコ、あなたも(いど)む事叶うでしょう。…もしかしたら…スセリ、貴女(あなた)も。」


「え? ボクも? ジブンでできたワケじゃないしホントまぐれだと思うケド…?」


「今はまだそうでしょう。無自覚(むじかく)で出せし(おの)が御しきれぬチカラでしょう…。それが己がモノになり得れば…です」


「一回できたし、それがいっつも出来たらイイってコトだよね?」


「ええ、その通りでございます。頑張られて下さいね♪」


「うん! ボク頑張る!」


 ムカツヒメに向かって言う事でスセリは(おのれ)の中で習得せんと試みる事を誓った。


「…ではムカツヒメさま…この辺りで僕らはナ・ラのイヅモへ戻ります」


「はい、オオクニさまにもよろしくお伝えくださいませ。…今回一番の手柄はアビヒコ、あなたでしたね。そのチカラ有りません事には…ポㇰナ=シリ(幽世:かくりよ)に行く事すら叶いませんでしたからね」


「そう言ってもらえたらとても嬉しい…です! 良い経験になったと思うし」


「僕も…緋徒の…ウタラ()のイレンカのチカラを…何となくですがそのスゴさの一端を観じられた気がします」


「ソーだね! みんなの姿…あれもイレンカによるんでしょ?」


「拝見しておりませんがポㇰナ=シリと言うことからも恐らくそうなのでしょう」


「ろーし…アマム兄もまんまチロンヌㇷ゚(きつね)だったし! サㇻ(しっぽ)も九本もあってとっても大きな…」


 そこまでスセリが話した刻、ムカツヒメは急に表情を変え言の葉をさえぎった。


チロンヌㇷ゚()…そして九尾…まさかと思いますが毛の色はいかがでしたか…?」


レタンノ(まっしろ)でキレーだったよ♪」


レタㇻ()…。左様でございますか…」


(再び出()い重なりし刻…タアン=ラマトゥ(今世)はどの様になるのでしょうか…)


 ムカツヒメは神妙(しんみょう)な面持ちで幾重(いくえ)にもヲモヒ(めぐ)らせている様に観えた。


「…おかあさま…ボク何かいけないコト言った?」


 その言の葉にムカツヒメは我に返り(ヤィヌパ)、努めて穏やかに応える。


「そんなことはありませんよ、ただ少しだけ考え事をしてしまっただけですよ」


「そっか。ならいいんだ。おかあさまはきっといっぱい考えるコトあると思うし♪」


「ありがとうスセリ。…せっかくですから一晩休まれてからでもよろしいのですよ?」


「そー言われると弱いケド、キクリちゃん待ってるし、ボク、行ってくるね!」


「…それでは旅の無事を祈っておきますね」


「夜、さびしかったら…門で跳んできてもいい?」


「いつでも歓迎いたしますよ愛しき我が子スセリや…」


 満足げで晴れやかな表情で頷いてスセリはヤチホコとスクナヒコナと共に瞬時に旅(ニサㇷ゚=パィ)する門(エカィ=ソィ)よりイヅモへ跳んでいった。


(…移動はこれでほぼ自在となりましたね、本当に大きくなりました…。次なる試練…耐え(がた)き事に直面せし刻もどうか(あきら)めず歩めます様…この世全て(つかさど)りし(ことわり)に対しお祈り申し上げます…)


 ムカツヒメは三人を見送った後神殿(カムイ=チセ)にて大いな(シ=パセ=ア)る真理(ンペ=ソネプ)へと彼らの無事を真摯に祈願した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ