第55倭 ニサㇷ゚=パィエカィ=ソィ使い彼の地へ
今度は全員で勝負しながら…。
「あ、今度は全員で競ってみますか?」
ヤチホコがそう言うとミチヒメは満面の笑みで応える。
「ふっふ~ん♪ ヤッチホコくん、わたしたちに勝てるつもりかな~?」
「…やってみなきゃわかりませんよ♪」
「やる気バッチリね♪ その意気その意気♪」
「ミチヒメとオオトシ兄に僕らの誰かが勝てば…」
「うん、良~わよそれで♪ それが出来たらヤチホコくん達の勝ちね!」
ヤチホコ達は全員集まって何やら相談している。
「…でですね…と、こうして…で、もしもの為に…」
「…たしかに…イイわね♪」
「ボクも良いと思う♪」
「ええとミヅチはぜんりょくでワッカを…」
「そうです、それをキクリちゃんが…」
「まかせて! ついでにあっちのジャマもしてあげるわ♪」
「はい! では…いきましょうか!」
「ええ!」「うん!」「ああ!」「ミヅチもがんばるよ~!」
ヤチホコに対しキクリ、スセリ、アビヒコ、ミヅチもそれぞれ返事を返した。
「とっても面白そうだわん♡」
「…ミチヒメびっくりするだろうなぁ~♪」
「…全能力推進力へ変換…。…。…。完了しました…」
「…よ~いは、い~かな~?」
「あ、大丈夫です!」
頃合いかと尋ねてきたミチヒメに対しヤチホコが応えた。それを聞いてミチヒメが合図をする。
「じゃぁいくわよ♪ よ~い、ハイ!」
ミチヒメの掛け声で勢いよく飛び出したのは…ヤチホコだけであった。後の面々はそれぞれ何やら行っている。氣力を全解放したヤチホコが先陣を切る。少し遅れてオオトシとミチヒメが続く。
「…さすがはニスのトゥム。全てのチカラの底上げのされ方が中々に素晴らしいですね! 」
「たしかにすご~い! と感心してたら離されちゃうわね! みんな、全力でお願い!」
「まかせるトラ!」
獣王達と共にまずミチヒメが全力の姿に変貌した。
「では私も…!」
続いてオオトシも灼熱を身に纏う姿に。
すぐさまヤチホコに追いつき置き去りにしていく。
(うわ~! さっすがです! 僕だけではまだまだ敵いませんね…!)
「そーはいかないわ!」
ミチヒメ達の行く手を土の壁が幾重にもせり上がり阻もうとする。
「…はぁ!」
苦も無くミチヒメは土の壁を打ち抜いていく。
オオトシに至っては身に纏いし紅蓮の膜により瞬時に溶かし通過していく。
「~! まだまだよ!」
今度は岩壁とその奥に岩石巨人を造り上げた。
「きぃちゃん! モシリ=セセㇰを!」
「わかったわ!」
ミヅチの放出した水が瞬く間に蒸気と化し、同時に巻き起こしたスセリの風に乗り勢い良く上昇していく。
「ニスクㇽ出来たわ! ヤチホコ!」
「はい! いきます…! いやぁ!」
ヤチホコの叫びと同時に上空の雲から一筋落雷が生じ、なんとヤチホコ自身がまともに受けてしまった!
「! ヤ、ヤチホコくん!!」
驚いてミチヒメ達が止まろうとすると雷が今度は自分たちの方めがけて飛んで来る。
「…え!?」
一瞬呆気にとられた隙にその雷は遥か前方まで突き進んでいく…?
「あ…あぁ~! アレってヤチホコくん!」
「な、なんと!まさにニスの…チカラ! ミチヒメ!私も全力を出しますのであなたもスザクを前面に出して同調して下さい!」
「わかりました! アペヌィで統一して合わせます! スザク! よろしく!」
ミチヒメの声と共に身体を覆う衣の一部が翼に変わりみるみる紅に染まっていく。
「よろしいです。そのまま私の背に!」
ミチヒメはオオトシの背後から首に手を絡めしっかりつかまった。
「最大解放!そしてレラよ! ホㇿカモィて吹き飛ばし給え!」
オオトシは二人の開放した炎のチカラを逆巻く旋風により極限加速させた。
今で言うジェットエンジンの要領であろう。これにより音を置き去り大気を切り裂いて飛翔する。
凄まじい勢いでヤチホコとの差を詰めていき、とうとう並んで疾走、いや疾空とでも呼ぶ状態にて宙を駆け抜けていく。
(…カムイ=イメルの如き今の僕に追いつき追い越していくなんて! 元々の強さにまだまだ大きな開きがあるのですね…!)
追いついてきた二人を横目に観ながらヤチホコそう思った。
「いける! このまま抜いちゃうぞ~!」
そう言うとミチヒメはオオトシと合わせさらに氣力を高めた。
「ヤチ! ガンバレ!」
「あとおしするよ~!」
「二人のチカラで…再加速!」
キクリが見計らったようにヤチホコの背後に出現させた岩壁に、こちらめがけ放たれた水龍と竜巻が衝突した勢いでお尻をたたかれヤチホコははじけ飛んでいった!
「あたたた~! カムイ=フㇺを纏っていますので直接当たらないですけど衝撃でお尻がじんじんします~!」
目的の門が観えてきた。あと数瞬で着くであろう。
(こ、ここです! さぁ…出番ですよ~!)
「いっけ~! です!」
ヤチホコはいきなり門に向かってナニカを投げつけた。
「…感知! 全力加速致します!」
玉の声が全員の頭に鳴り響いたかと思った瞬間、乾いた小さな衝突音が微かに聞こえた気がした。
ヤチホコがナニカを投擲した際に速度が落ちたのを見逃さずミチヒメ達は抜き去って門へと辿り着いた。
「はぁっはぁっ…。やったね♪ わたしたちの…」
「と、ととと…。ちょっと待ってミチヒメ、残念ながらぼくたちの勝ちだよ!」
「! そ、その声はアビヒコ! ええ? 一体ど…ありゃりゃ…」
声の方を見やると…門の扉の彫刻に挟まって小さな足がばたつくさまが伺えた。
「あ! さっきヤチホコくんが投げたのってまさか…!」
やっとのことで頭を抜いたそのモノがミチヒメに応える。
「そうさ! どうやらこの姿…ケガもしないしオナカも減らないみたいなので、ね♪」
「これは素晴らしい…見事にしてやられましたね…!」
しばらくして全員がやっと追いついてきた。
「…どーやらうまくいったようね♪」
「でも最後のアレまで使ってやっと…ホントギリギリだったね!」
「はいですキクリちゃん! そのとおりですスセリちゃん♪ 残念ながらあの状態でもまだ二人にはかないませんでしたが…勝負は僕らの勝ちです♪」
「いや~よく考えたよね♪ ヤチホコくんすごいすごい♪ 負けちゃったし…なんでもゆ~こと聞いてあげても良いよ♡」
心底感心してミチヒメはそう言った。
「えっあ、あっ! …いやぁ…みんなのチカラのおかげですから…♡」
「約束だし良~のよ♪ また…見せてあげよっか♪」
「え、あ、あ、あのですね…」
目のやり場に困りながらしどろもどろにヤチホコは応えた。
「やれやれトラ…」「うーん、中々学べませんね…」「已む無し、であろうか」「前回同様…無着衣状態…」
「素敵な…ご褒美だと私も思いますよミチヒメ…」
獣王達に続いて滅多にない困り笑いを浮かべたオオトシがそう言った。
「へ? え? あ、あぁ~! はいそ~です♪ さぁ…どうぞ♡」
例の如くすっかり忘れていたミチヒメだったが、うっかりな自分に気付き開き直り勝者への褒美とばかりに両手を後ろに回して伏し目がちにその場に立ち尽くした。
その姿に見惚れて立ち尽くすモノが三人程…。
「も、もう…イイ、かな…?」
ミチヒメは三人に話しかけてみた。
「す、すみません! 私まで我を忘れてしましまして…あまりの美しさに見惚れてしまいました」
「オオトシさまにそう言っていただけるなんて…わたしもうれしいです♪」
素直に己のヲモヒを伝えたオオトシに対しミチヒメは同じく素直に嬉しさを伝えた。
「僕もです…。でもなんかミチヒメ…前よりも何と言いますか、さらにこうカッケマッぽいカンジが…? その寸法的なコトじゃなくてですね」
「ヤチホコくんさいごはヨケーな一言よ! でも、そ~なのかな? ふふ、ありがと♪」
「アビヒコ…今はちっちゃなヒコだから…スクナヒコかな? ど、ど~だったかな?」
「…とてもキレーだったよ…まぶしいくらいに」
「ありがとう♪ アビヒコのそのイレンカも…うれしい♡」
ミチヒメはそう言って小さなアビヒコ…スクナヒコ…に軽く唇の尖端を押し当てた。
柔らかな感触に顔も身体も丸ごと包まれたような、得も言われぬ心地良い感触を全身で享受した。
「ミチヒメ、なんか、いつもと違うカンジ…?」
「え? ふふっ、このイレンカのほ~がアビヒコうれしいかな~って思って♪」
スクナヒコはカリンパニの実の様に真っ赤に染まってしまった。
「さぁ、それではそろそろ本題に入りましょう。ニサㇷ゚=パィエカィ=ソィさん、ココより行き来可能な所をお教え願えないでしょうか?」
(…お応えいたします…ウパスクマ=エ=テメン=アンキの中…ここクスターナ…雒陽…自由都市ルース…ナ・ラ…イヅモ…アイヌモシリ…スワンナ・ドゥウィパ…その南端にある門からのみ行けるマナド…それから…)
「マナド! スワンナ・ドゥウィパからはまだかなりあるけど、マナドからなら目的のハルマヘラまでは近いよ! まずウタラが住めるエウコポ=モシリの、エマカㇲ、テルナテへ向かって…そこから渡れば…すぐだ!」
「では…僕らのロクンテゥを持ってきて行きましょう!」
「そ~ね! 目的の…モシリって言うんだからアトゥィ渡っていくんでしょうからね!」
「そうだね。ヤレパチプまではいらないだろうし、キミたちので十分だと思う」
スクナヒコは感覚を飛ばし現地を観て確かめながらそう言った。
「あ、では…ちょっとルースへ跳んで楽浪郡まで行ってきます♪」
「さっそく出番だね♪」
「…そ~言えばアビヒコ、ずぅっとその姿だけど疲れたりしないのかな?」
ミチヒメは己の変身を鑑みてアビヒコにそう尋ねた。
「うん。なんか…まったく疲れたりオナカ空いた感じはしないね。…具現化したけど、もともとトゥカㇷ゚=ケゥエ…だからなのかな?」
「…左様でございます。故に睡眠も食事も必要ない上、物理的な攻撃を受け付けません。」
「な~るほど! それであのイキオイで投げつけてへ~きだったのね♪」
ミチヒメは納得してそう応えた。
「投げた僕もかなりエサムペルイルイものでしたが…アビヒコを信じて思い切りいきました♪」
「大丈夫とわかっていてもかなり怖かったけどね!」
一同ひとしきり笑い、ヤチホコとスセリはロクンテゥをとりに門よりルースへ、そして楽浪郡へと向かって行った。
「…こ~して実際に観ても…フシギよね~!」
「カムイホッパイコロ故の…凡そ図り得ぬ力が作用しているのでしょうね…」
所は変わりここは万事屋ルース。
「へえ~! そんな所へ向かうのかぁ! かなり興味深い話だが…残念ながら我々は行けなさそうだな…」
「そーねぇ…。しっかしちっちゃなアビヒコは見てみたいわね♪」
「ケゥエ=ポンてイイヨマプカよ♪」
「何と言っても掌に乗るくらいですからね♪」
微笑み頷きながらルースは応える。
「何はともあれ、またきっと成すべき事や超えるべき試練があると思う。心して行って来るようにな!」
「はい♪ じゃぁこれ! 香ちゃん特製のごはん♪ みんなでどーぞ♪」
「わあ♪ やったです♪ 香さんありがとうございます♪」
「ふふ♪ 気をつけて頑張ってきてね!」
「はい!」「うん! ボクさらに技をみがいて来るね!」
二人は万事屋ルースを後に瞬時に旅する門へ向かって行った。
「…まさか…ここの下にあったとは…ですね…!」
「うん…。この間はぜんっぜんわからなかった!」
神殿にある隠し扉より地下に降りていく。
帆を畳んだ帆掛け舟を持ち込める程の広さの石造りの道の突きあたりに…例の門があった。
「…では、戻りましょう!」
「うん!」
二人は帆掛け舟を縦にして陣に入り内側の仕掛けのにある王子に授乳せし大地と書いてある所を押し込む。瞬く間に帆掛け舟と二人は消えていく。
「…ホントすぐ! それもなれるとちょっと気分いいかも♪」
「ほ、本当ですかスセリちゃん…僕は…ちょっとおっかないですよ…」
「なぁーんだヤチ、だらしない♪」
(スセリちゃんが揺れに強すぎる気もしますが…)
そう思いながら玄室を通り門の扉から出る。
「…戻って来たわね!」
「おかえり~」
「あ、ただいまです! ミチヒメとオオトシ兄は?」
「二人は先にポロ=モシリの都…雒陽にいるウガヤ様の所へ行ったわ。なんか別の仕事があるって!」
尋ねるヤチホコにキクリはその様に応えた。
「そ~ですか…」
「もぅ~なぁにさびしそうにしてるのヤチったら!」
あからさまに落胆するヤチホコに対し少しだけ思うところありながらスセリは応えた。
「あ、いえ、大丈夫…です! …スセリちゃんがいますしね♪」
「え!? う、うん! ソーだよ! あんまりさびしかったらボクが…」
「…ボクが…な~にスセリちゃん?」
ミヅチのその問いにスセリは言の葉を詰まらせた。
(エパタイ! そう言うのはノカン=クルは聞かなくて良いの!)
(え? きぃちゃんなんできいちゃダメなの?)
(ダメったらダメよ! わかったわね?)
(う、うん…)
「やっぱりなんでもないよ!」
「そ、そう…ならいいんんだ」
スセリはヤチホコと目を合わせて安堵の表情を浮かべた。
「ヤチ、ボクが…アタマラィエしてあげる♪」
「え、それならミヅチもしてほしい~♪」
「うん♪ よしよし♪」
(あ、アブなかった…何言おうとしていたんだろうボク…)
スセリは自身がミチヒメへの嫉妬からとってしまった行動とは全く気付いていなかった。
「…スクナヒコ…一旦元に戻ってこれ食べませんか? 香さん特製のごはんです♪」
「え! ちょっとまって…。…。…。解!」
横たわるアビヒコの身体に何かが入ったかの様に観えた後マニィによる変身も解けいつものアビヒコに戻った。
「…しっかり食べたあと、ぼくらはスワンナ・ドゥウィパへ向かおう!」
「その間アタシ達…どこで待っていればいいかしら?」
「一旦ナ・ラに戻っていても良いですよ♪」
「ソーだね! ボクたちもどれくらいでもどれるかぜんぜんわからないし」
「ただその間…キクリちゃんのこのイコロ=タㇰ宝の玉…は貸してもらうね?」
「もちろん構わないわ。…もしかして…アタシのイコロ=タㇰ…アナタを通じてアビヒコ達の様子…解る?」
「可能でございます。ただし変化した術者のケゥエにイノトゥ繋ぎ留めておく為に離さずにお使い下さい…」
玉は明滅を繰り返しながらキクリの問いにその様に応えた。
「…と言うコトは…アビヒコ! 帰りはウチに寄ってから…ね♪」
「…了解。ちなみにキミはケゥエからどのくらいはなれても平気なの?」
「おおよそ十~二十歩く程度かと…同じトゥㇺプの中でしたら大丈夫です」
「わかったわ! アナタのケゥエきちんとアマソㇳキに寝かせておくからラム=シリネして!」
「頼んだよ。これで気がねなく行ってこれる」
「ええ♪ …そーいえば…いつまでもイコロ=タㇰじゃ呼びにくいわね…」
「そ~だね! なにかいいのないかなぁ?」
「マニィは自分で名乗っていたけど…」
そのアビヒコの言の葉を聞いてキクリは宝の玉に尋ねた。
「…アナタ、希望の名前ある?」
「私の希望は…マニィ=ナマス=アンナ=イコロ=タㇰとお呼び頂ければと思います…」
「…長いですね…」
「ボク…おぼえられないなぁ…」
「…じゃぁ…変化したぼくは…スクナヒコ=ナマス=アンナ=イコロ=タㇰ…?」
アビヒコの素朴な疑問に対しキクリが応える。
「長い! 長すぎるわ! スクナヒコ=ナでいいわ!」
「あ、それ良いですね♪」
「スクナヒコナ♪ イイヨマプカぁ~♪」
「それならボクでもダイジョーブ♪ よろしくスクナヒコナ♪」
「イイヨマプカで良いと思うわん♡」
「わかったよ。それで良いや。ちなみにキミは…結局何て呼んだらいいのかな?」
「私は…そうですね…マニィとの区別を図りまして…アンナ、そうお呼び頂ければと思います…」
「…わかったわ! アンナ、お兄ちゃんさがしよろしく頼んだわ!」
「…実際に行くのはぼくらだよ…」
「そ、そーだったわ! よろしくねアビヒコ…いえスクナヒコナ!」
「ああ、まーまかせて!」
「マニィもアビヒコちゃんの変化をアンナちゃんと一緒に保っておくわん♡」
「よろしくね!」
「…では一旦ナ・ラのエチュㇷ゚ポㇰ西…イヅモへ!」
イヅモで準備したらいよいよですね♪
用語説明ですm(__)m
・モシリ=セセㇰ:大地+熱い、温まる→「地熱」としました。
・スワンナ・ドゥウィパ:古代サンスクリット語で「黄金の島」です。
・エウコポ=モシリ:双子+島、大地、土地→「双子の島」としました。
・カムイホッパイコロ:神の+残して去る+宝→「神威之遺産」(かむいのいさん)としました。




