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第54倭 ポㇰナ=シリへの先導者

それぞれの夜を過ごし朝を迎え…

 一行はそれぞれの夜を()ごし朝を(むか)純陀(チュンダ)の店に集まった。


「おお~はやいなぁやみんなぁ、クンナノイペ(朝ごはん)まだか? ならウチで食べてくと良いべさ」


 その言の葉に甘えて皆で頂く事にする。食べながらまず口を開いたのはオオトシであった。


「みなさん昨日は取り乱してしまいましてすみません。…もう大丈夫です。(おのれ)(みが)き直し再度挑戦(ちょうせん)いたします!」


「…さすがオオトシ兄ですね♪」


「ホント! ヤチならまだまだへこんでいると思うな♪」


(…確かにその通りですが、オオトシ兄の消沈(しょうちん)ぶりも並ではありませんでしたのに…これはもしや…!)


 ヤチホコはそう考えが(いた)った瞬間つい意図(いと)せずミチヒメの方に顔を向けてしまった。

 ミチヒメは頭を一本指で()きながら困り笑いを浮かべていた。


(…! これは…そーなのでしょうかどーなのでしょうか…!)


 ミチヒメは朝食どころではなくなったヤチホコの真横に音も無く(あらわ)れ耳元で(ささや)いた。


(…それは…まだだよ♪ ヤチホコくんと…おんなじコト…だけ♪)


(…そ、そーなのですね…な、何ででしょうか、そう聞いたら僕凄くラム=シリネ(安心する)しちゃいました…?)


「ふふ♪ ありがと♡」


 ミチヒメはヤチホコの(ほお)(くちびる)を軽く押し当て席に戻る。


(…ま~もうちょっちだけ踏み込んじゃったかカモだけど…そこはナイショね♪)


 少しだけ気になるそぶりを見せるオオトシにも軽く頬に唇を押し当てる。

 一連のミチヒメの行動を()て一瞬動揺(どうよう)しかけたスセリだが、ミチヒメは悪気なくその様に()()うモノであると思い出し(エシカルン)、気を取り直して食事を再開した。

 ミチヒメはそんなスセリに対しても目配(めくば)せしている。


(…そーなのよね、イレンカ(ヲモヒ)に素直なダケだよね、ボクとちがって…)


「だいじょ~ぶ! きっとなれるよ♪ 没問題(メイウェンティ)!」


 拇指(ぼし)を立て目配せして笑みを浮かべながらミチヒメはスセリにそう(こた)えた。


「ええ? ボクイレンカイタク(言の葉)にしちゃってたかな?」


「…別に何もしゃべっていないと思うわ」


「なんにもきこえていないよ~」


「何にもきこえていませんよ?」


 ミチヒメは皆の言の葉に一瞬後ろを振り向きヲモヒ(めぐ)らせた。


(あちゃ…あぶないあぶない…)


「? ミチヒメ…?」


 不思議がるヤチホコに対してミチヒメは弁明(べんめい)めいて応えた。


「あ、ううん? なんでもないよ♪ 何となく言ったことがパシッと当たっちゃったカンジかな?」


「え、あ、そーなの? なんかボクが思ったコトにピッタリだったからビックリして…」


「にゃっはっは♪ 今日はカンが()えているよ~ね♪」


「そーみたいだね♪」


 素直にそう返すスセリに心の中で胸を撫で下ろし、安易な発言には少しだけ気をつけようと思うミチヒメであった。


「あ、みんな! ここに来ていたのか!」


 店の扉を開けて顕れたのはアビヒコとマニィであった。


「アレ? ウガヤ兄は一緒じゃなかったのですか?」


「ウガヤさまは先に都に戻られるって。僕はマニィの言ったことについて純陀さんに聞こうと思って…」


「待っていたわ! クンナノイペ(朝食)すませたらすぐ来てほしいの!」


 キクリはアビヒコが言い終える前にそう話しかけてきた。


「え? ぼくを? マニィ、それってもしかして…?」


 マニィは笑みを浮かべて(うなず)いた。


「まーまずしっかり食べて! それからすぐこっちきてね!」


 キクリはそう言うと一足先に工房の方へ向かって行った。


「…アノタㇰ(玉っこ)さ言ってた事さ観れるんだべな」


「純陀さんどういうことです?」


「おお、キクリの玉っ子の能力なんだけんど…オマエさんのチカラと…オマエさんがいるって言われたべさ!」


「…ぼくが…ですか?」


「ないだってケゥエ(身体)から抜け出てさラム()ラマトゥ(たましい)のみさならねぇと使えないって玉っ子に言われているべさ!」


「…! なるほど…! それはたしかにぼくの得意なことだ」


 アビヒコは純陀の説明を聞いて納得してそう応えた。


「んだべか! したっけ後でよろしく頼むべさ~!」


「はい! これが…マニィの言っていた…コト…?」


「そーよん♡ そしてこの先とっても大切な事になるわ♡」


「とても大切…?」


 全員食事を済ませ工房へ向かった。そこには一人の小さな男の子(ポンヲノコ)と…ゆっくり明滅を()り返す宝の玉(イコロ=タㇰ)が置いてあった。その横にもこれも小さな…


「…なに? アタシはこの子みたいにノカン=クル(子供)じゃないわよ…!」


(…そうだった…、キクリちゃんぼくより小さく観えるけど…)


 アビヒコは少しごまかす様に笑みを浮かべて言った。


「あ、なんだ、ア=オマプ(可愛い)ポイシオン=イノカ(人形)が二体置いてあると思ったら片方はキクリちゃんだったんだね♪」


「…まぁア=オマプに(めん)じて間違えたコトは許してあげるわ♪」


 どうやら少し(うれ)しかった様である。


「…これが…例のイコロ=タㇰ…?」


「そ! で、アビヒコ、アンタのチカラが必要なの。…ケゥエからラマトゥだけ抜けれるって聞いたケド…ホント?」


「ああ、出来るよ。なってみたらいいの?」


「…お願いするわ!」


「わかった」


「…マニィ…の洗礼を受けられた方ですね…そのチカラを解放した上でトゥカㇷ゚=ケゥエ=(幽体)ヤィカㇻ()してみて下さい…」


 玉はアビヒコに向かってその様に(かた)()けてきた。


「…本当…マニィみたいにラムがあるんだね!」


「そうよん♡でもきっとアタイたちはちょっと特別だと思うわん♡」


 確かに純陀の店に来るまで(ラム)(そな)えし無生物と(おぼ)しき存在は…やはり純陀が造ったであろう父より油田さがしの際に借りたあの子しか思い浮かばなかった。


(…とうさんとは全く違うケド…やはり純陀さんは…スゴイな…!)


「…トゥカㇷ゚=ケゥエ(幽体)、と言うんだねあの状態。」


「左様でございます…。その状態で私に触れてみて下さい…」


 マニィのチカラで例の銀色の状態になってから幽体化する。

 その状態でそっと玉に触れると…アビヒコはすぅっと玉に吸い込まれてしまった。


「あ、アビヒコ!」


「…。…。…。解。具現化(ぐげんか)…実行します…。」


 玉は様々な色に明滅(めいめつ)を繰り返した後、何かを衝撃(しょうげき)と共に放出して明滅をやめた。


「成功…完了です。」


「…何が成功したの?」


 キクリは玉に(たず)ねた。


「トゥカㇷ゚=ケゥエの具現化です…。これでポㇰナ=シリ(幽世:かくりよ)干渉可能(かんしょうかのう)です…」


「…アビヒコどこにいるのかな? ぜんっぜん見当たらな…あぁ!」


 ミチヒメはそう言いながら気配を察知した瞬間(おどろ)いて思わず声を上げた。


「み、みんな! ココ! ココよ!」


 そう言って指差しながらミチヒメはしゃがみこんだ。


「あ、え? ええ~!」


「…まぁ…確かに具現化しているわね…」


イイヨマプカ(めんこい~)ぁ~♪」


「ホント♪ さっきとうって変わって♪」


「これならコッパラ(胸元)にしまっておけるね♪」


「な…なにエパタイ(おバカ)なこと言ってるんだ!」


 赤面(せきめん)しながらそう言ったのは…(てのひら)に乗れる程の小さなナニカであった。


「現在のヌプル(霊力)トゥム(氣力)総量(そうりょう)で具現化可能な大きさの限界です…」


 髪は(みずら)に結い厚司織(あつしおり)羽織(はお)り帯を()下履(したば)きを着用し(エムㇲ)の代わりに少し長めの針を腰に帯びた姿…それがアビヒコの幽体が具現化したモノらしい。


「…確かに小さいな…。だけど…これは…今までと全ての観え方がまるで違う! 聴こえ方も!」


「そ~なの? それって一体どんなカンジなのかな?」


 ミチヒメはしゃがみこんだままアビヒコと思しきモノに尋ねた。


「ものすごく広く遠くまで観じとれる…!ここにいてガンダーラから…ポロ=モシリ(大国)雒陽(ルゥォヤァン)くらいまで!」


「そ、それはすごいですね! 僕でしたらトゥムを全解放してもせいぜい技の届く範囲がアリキキノ(精一杯)ですのに!」


「イコロ=タㇰ…さん…? このまま念じたらポン=イトゥン(小さきア)ナㇷ゚=モシリ(リの世界)の場所を探れるのかな?」


「可能です。索地(さくち)のみでしたらさらに広範囲(こうはんい)(さぐ)れます」


「アビヒコ!」


「うん、やってみる!」


 キクリの声に応えアビヒコは全霊力を解放して小さきアリの世界の場所を探り始めた。感覚を世界へ向け無限大に拡散していく…。


「…アトゥィ()の向こう…ポン=モシリ(小さな島)…! とらえた!」


 (しばら)くして何かを感じた瞬間アビヒコはそう叫んだ。


「そこってどこ! ここから行けるの? いけるのなら早く!」


エウコポ=モシリ(双子の島)…テルナテとティドレのエチュㇷ゚カ()…ハル…ハルマヘラ…!」


「そこね! そこにお兄ちゃんが…!」


 キクリは小さなアビヒコを手ですくい上げて叫んだ。


「…ポㇰナ=シリ(幽世:かくりよ)に通ずるチカラ持ちえしモノのみ向かう事可能です…」


 玉がキクリに対しそう助言してきた。


「アタシにそれ、出来る?」


「純粋に一つのトゥムを持ちえしモノのみ可能です…」


「アタシは?」


「キクリ…貴女(あなた)は不可能です…この中で可能なモノは…」


「ちょっと! アタシダメなの? モシリ()のトゥムかなり(きわ)めてるつもりだけど?」


「キクリには他の属性(ぞくせい)のトゥムも眠っています…」


「…え?」


「ミヅチもそう。オオトシ、ミチヒメも…。可能なのは…ヤチホコと…スセリです。彼らは一属性のトゥムのみ内包しています…」


「ぼ、僕とスセリちゃん…なのですね…!」


 予想外の選択に戸惑(とまど)いながらもヤチホコはそう応えた。


左様(さよう)でございます…。我が主の為お力添(ちからぞ)え下さい…」


「もちろん良いですが…僕らはアビヒコの様にトゥカㇷ゚=ケゥエ(幽体)になんてなれませんよ…?」


「それはきっと大丈夫。ぼくが…手伝えるから」


「小さな…アビヒコ? そんな事も出来るのですか?」


「属性のトゥムを一時的にあずかることで…ぼくとつながってアㇻケ=トゥカㇷ゚(半幽)=ケゥエ=ヤィカ(体化)ㇻさせられる…はず」


「アビヒコ…その通りでございます…。五属性、五組までが現状の限界ですが可能です…」


「きっとコレをするのに…複数属性があるとムズカシすぎてとてもムリなんじゃないかな?」


「…(おっしゃ)る通りでございます…」


「なるほどですね…。あ、では、さっそく向かいましょうかね!」


 状況を把握(はあく)できたらしくヤチホコはその様に話してきた。


「その前に注意しておくけど…ぼくが属性のチカラあずかるから…ごく基本的なトゥムしか使えなくなる…それを忘れないでほしいんだ! それから…この気配から…今のぼくのように大きさの変化も必要で、カンタンに言えば本来よりものすごく弱くなるからムリしないでね!」


「アマム兄探しに行くだけですので…大丈夫です♪」


「ソーだよね! チカラが封じられると言うコトは、ボク、より技をみがきやすいと思う!」


「…このどこまでもな前向きさは尊敬に(あたい)しますね…!」


 オオトシは本気でそう思った。


(…ヤチホコくんは…ムリやムチャしないけど…そもそも深くも考えていないのですよオオトシさま…)


 指一本で頭を掻きながらミチヒメは苦笑いを浮かべていた。


「それで…行く刻はどの様な道順で行くのでしょうか?」


「…ニサㇷ゚=パィエ(瞬時に旅)カィ=ソィ(する門)から行くことは出来ないでしょうか?」


「あ、さすがオオトシ兄♪ 早速試しに行ってみましょう!」


 一行は瞬時に旅する(ニサㇷ゚=パィエカィ)(=ソィ)のある森の奥へ行ってみる事にした。


瞬時に旅する(ニサㇷ゚=パィエカィ)(=ソィ)から行けるのでしょうか…?


用語説明ですm(__)m

トゥカㇷ゚=ケゥエ:幽霊の+身体→「幽体」としました。

トゥカㇷ゚=ケゥエ=ヤィカㇻ:幽霊の+身体+自分の姿を変える→「幽体化」としました。

ポㇰナ=シリ:下側の+世界→(あの世、地獄の意)→「幽世」としました。

ニサㇷ゚=パィエカィ=ソィ:急に+旅する+門→「瞬時に旅する門」としました。

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