第47倭 理想郷に聳え立つウパスクマ=エ=テメン=アンキ
美しき建物立ち並ぶ都にあると言う塔へ…
大型万能船を斜面に沿って滑らしていくと…街…ではなく…都…一つのクニ…が観えてきた。遠目にも美しい建造物が確認できる。
「あ、あれが…」
「そう!ガンダーラ!その都…タクシャシラー!前と全然変わっていないわ♪」
建物を見て一言呟いたヤチホコにミチヒメが応えた。
「…なんていうか…ステキなとこ…♪」
「…確かにここは…この…モシリ全体が…ペケㇾ=キロㇽに覆われているわね…!」
「ミヅチもかんじるよ…ここ…スゴイ!」
スセリ、キクリ、ミヅチもそれぞれ観じるまま述べた。
「アビ♪アタイのそばにおいで♡…ほぉら♡」
そう言ってマニィはアビヒコに抱きついて観させると…アビヒコの眼にも建造物自体から氣力や霊力を観じられた。
「こ、これって…この建物たち…生きて…いる…?」
その様を見たアビヒコが驚きながらそう言った。
「アタイのとぉーい親戚みたいなモノよん♡」
無機物であり被造物である建物にマニィの様に生命を吹き込む…。
「それって…そんなのって…」
「そぉーよん♡エカンナイ=ストゥ=シ=パセ=カムイの御業よん♡」
「…この故にここのウタラはチカラを持たずとも…」
「ポロ=コタンが…モシリ全体が…」
「そぉーよん♡ ウェンイレンカを防ぐムテキの結界を自動的につくってるのよん♡」
ここガンダーラは古の覚者の教えを伝え護り、その様に生きようとするモノ住まう地である。
この世界でも我々の世界程ではないが、国や土地、食料や資源を求めての諍いや争いは少なからずあるが、ここガンダーラ…特にその都たるここタクシャシラーはその様な事とは無縁である。
その様なヲモヒ持ちしモノはそもそも入る事すら出来ないのである。
真理の探求、他者への愛、自己研鑽…そういう昇華されたヲモヒ抱くモノのみで構成されている。
この世界で一番天国、極楽と呼ばれる浄土に近いと言われている国…それがここガンダーラであり、それを最も顕しているこのが首都、タクシャシラーである。
覚者を模った像、神殿、広場、縁のある記念の地…様々な形で祀られていた。
ここを管理する王の依頼でもあったらしい。
「…この中に|《ウパスクマ=エ=テメ《天と地の基礎となる叡》ン=アンキが…?」
「道行く方に尋ね教えて頂きましょう」
オオトシは道を往来するモノに塔の事を聞いてみた。
「ああ、知っていますとも…もっとも最近では塔の中にすら入れぬ状態…ましてや天を目指し昇るモノなど…」
「我々はその為にこのガンダーラへ…タクシャシラーへ参りました。…塔の所在、お教え願えませんか?」
「…! え、ええもちろん。今はモシリの入り口から反対に外に伸びる細道をしばらく歩いたところに存在していますよ」
「…今は、とな?まるで塔が移動するような言いぶりであるな」
ウガヤは違和感を覚えた事をそのように尋ねた。
「…左様でございます。数回…何百の季節廻る頃に一度…塔は其の安住の場所を変えると聞き及んでおりますが…ここしばらく…私が生きてきた限りでは動いておりません」
「…何故場所を変えるのであろうか?」
更に湧いた疑問をウガヤは尋ねた。
「それは私どもには解りかねます…」
話によると定期的に世界各地へ出没しているらしい。
移動の際、何分の一かの蔵書の複写、そしてそれらを大切に保管する書物の間を遺していくとの事である。
「今から向かうのはそれらすべてそろっている本体なのですね♪」
ヤチホコは胸躍らせそう言った。
「…開門し中に入る事叶うならば…まさにその通りでございます」
ヤチホコ達は顔を見合わせ満面の笑みで応えた。
「アタシがモシリのチカラ…!」
「ミヅチはワッカのトゥム!」
「私がアペを司り…」
「ボクはレラと共に!」
「あ、僕が一応…ニスです♪」
「…すばらしい…全ての属性の使い手が一同に会されていらっしゃるとは…」
「皆のチカラで門を開き、それぞれに求めし答えを頂いて参ります…!」
「まぁ、そ~ゆ~事です♪」
「ご仁、お話有り難く頂戴いたした。では、皆、良いであるか?」
「ハイ!いざ、ウパスクマ=エ=テメン=アンキへ!」
ウガヤに倣って皆深々と頭を下げ礼をした後、塔へ向かって行った。
歩いていたらすぐ着くであろう、天まで聳える塔はすでに観えているのだから。
一同のその考えは少々甘かったことを痛感した…。
「…ヤレパチプで来れば良かったですね…」
到着時、ヤチホコの開口一番はそれであった。
「まっさかね…思った以上に巨大だったわ…」
「ミチヒメのおねーちゃんまえにきたのにおぼえてないの?」
「いや~あの刻は…ラーマさまとばびゅーんって…なんだっけ…なんかスゴイ乗り物で来たから…あははっ…」
「そーゆーとこホントテキトーだよね…」
「まーでもこうしてみんな無事に着いたよ!」
「で、あるな。多少当初より歩きし事など…全く以て無問題」
「その通りですね。さぁ日が暮れる前に伺いましょう」
一同が門の前に歩み寄ると…どこからともなく声が響いてきた。
(…旅のモノよ…求めしモノよ…開門したくばチカラを示すが良い…)
「…聴こえました…オオトシ兄…!」
「ええ…。では属性を持つ皆さん此方へ…」
五人門の前に並び立つ。
「各々チカラを籠めてトゥムを解放して下さい!」
言い終えると同時にオオトシは身体中から炎を吹き上げ例の紅蓮の状態へ変貌した。
「ミヅチも! はぁっ!」
ミヅチは掛け声と共に深い青みがかった氣力を纏う姿になった。
「アタシもいくわ!」
キクリは流砂を思わせる煌めく薄茶色の氣力を纏った。
「ボクも…やっ!」
スセリは一陣の旋風と共に緑にも青にも観える氣力を纏った。
「わわ!み、みんなすばやいですね…。では…僕も…ふぅ…はぁっ!」
ヤチホコは何度か披露した透明に輝く氣力を吹き上げる状態になった。
(すべてのチカラ集いしならば…門へ向けて放たれよ…)
「どれどれ…そぉれ!」
キクリが放つと…門の一部が輝きだした。
「ふぅ~ん…アソコに当てればいいのかしら?」
円形に輝きを示す個所に氣力を照射すると…キクリの氣力の色へ変化した。
「…どうやら正解ね…!みんなも!」
次々に照射していき、最後のヤチホコが照射するととある形を示していた。
「…これは…五芒の…星…!これが門の封印なのですね…!」
オオトシがそう言うと同時にヤチホコの氣力が最後の円形の光に重なると、五芒星を描くように強い光を放ち重く響く音と共に開門されていく…!
「…開きましたね…! やったです♪」
「…ボクたちけっこうスゴイかも…!」
(…あの刻なんでわたし、アソコを開けられたのかなぁ…?)
「ラーマさまのチカラで一時的に空白になった自然の盟主の座に結び付けてもらったトラ!」
「そうですわ。あの時アノ方に新たな四獣王たちがウカムレされてしまい…この地の盟主が空白となり…」
「容易に契り結ぶ事叶い…」
「契約可能故完全発動可能」
(…そっかぁ…ほんっとほとんど覚えてないのよねぇ…)
開門の光景を眺めながらミチヒメはそう思った。
「ご苦労!オオトシよ…」
「ええ…。皆さん…中へ入りましょう!」
門をくぐり中へ入ると、一瞬の違和感と共に眼前に顕れたのは巨大な書庫であった。
かなり高くまで棚があり、隙間なく様々な書物と思しきモノが納められている。
中央の机に座るモノが語りかけてきた。
「…おめでとう。久々の来客だ。」
少年の様な佇まいのかれがどうやら先の声の主の様である。
「…アナタが…この塔の…主…?」
キクリは少し怪訝そうに尋ねた。
「…いかにも。不服かね?」
「いえ、ただ思っていたよりずっと若かったから…」
「たしかにそ~よね~。塔主さまアビヒコくらいに観えるもん♪」
キクリの言にミチヒメはそう言って応えた。
「変わらんであるな。少しは生長したかと思えば」
「良いとこは変わらなくてい~のですよ♪」
「確かにその通りであるな。その真っすぐさ故に先の乱も乗り切れしであろうからな」
口調からウガヤより年長、オオクニと同年代と伺える。
「して塔主殿、我々が其々に得たいと欲す知識は…この膨大な書中より自力で見出さねばならぬのであろうか…?」
ウガヤは一同の頭に過ったことを尋ねた。
「…その為の故に私が存在しているのである」
塔主は少し微笑みながら応えた。
「知りたい事を我に伝えよ、さすれば目的の…“ウパㇲクマ=カㇺピソㇲ”を示さん」
「…では…ここ数回程季節廻る間にオロチたちが起こした事…それを後ろで糸引くモノ…その正体と…目的を教えてください!」
ヤチホコがそう塔主に問うと、うっすら光りを放ち応えた。
「…中央より右側四十番目の棚の上から五番目…“オロチ”と書かれたモノを手に取りてこちらに置いてみよ。」
「…上から…五段目って…かなーり高い所ですね…!」
言われたヤチホコが遥か上方を観ながらそう言った。
「ま~かせて♪スザク!」
ミチヒメはスザクのチカラで宙に舞い最上まで跳びあがり、五段目の棚から“オロチ”と背表紙に書かれたモノを取り出して降りてきた。
「…これが…オロチについて書かれた…ウパㇲクマ=カㇺピソㇲ…?」
表紙をめくると何やら説明が書いてあり、中央の繰り抜き部分に小さな木箱の様なモノがはまっていた。
「…その形式が一番なじむ…が、創られた主の言である」
木箱と同程度の硬さだが手触りがまるで違う。表面に何やら絵のついた紙が貼られていた。下方より覗き見ると…良く解らない金属が細かく並んでいるのが観えた。
「それをこちらに刺すと良い…さすれば壁面に望む事が映し出されるであろう…」
言われるままにすると…塔主の言う通り壁面に何やら外の景色とも思えるモノが窓の外を眺めるが如く映し出された。
「…オロチについて…」
「だ、誰!」
キクリは驚いて身体を一瞬身震いさせ声の方へ振り向く。
そこには…四角い大きく細長い木箱…があった。正面は細かな網に覆われていて中に円形の構造物が伺える。
「…あなたが…しゃべったの…?」
キクリはおそるおそる尋ねてみたが…返答はなかった。
「…オロチとは…古の根源たる真なる神威の手により造られ生み出された種族の一つ。緋徒を生み出す過程に出来た亜族に堕天せし魂宿りて変化したモノである…」
「…生み出された…モノ…?」
「堕天せし…ラマトゥ…?」
「解Ⅰ:創造主の手に依らず古の根源たる真なる神威のヲモヒより生まれしモノ…」
「解Ⅱ:カムイ以外の…地上と化したこの地に住まいしすべての存在の事…」
「…オロチ操りし黒幕とは如何や?」
ウガヤがそう問いかけると、しばしの沈黙の後再度語り始めた。
「…世を使い戯れし道化師の仕業なり…」
「…道化師…!」
「やはり彼のモノこそが…黒幕…!」
「しかし…一介の道化師にホンモノの主に付き従いし四柱の御使いを操るなんて出来る事なのでしょうか…?」
先の二人と違いヤチホコは素朴な疑問を投げかけてみた。
「…塔主殿、この…道化師…について…詳細をお教え頂けないでしょうか?」
ヤチホコに続きオオトシがその様に塔主に願い出た。
「…先に聞いておくが…正体知り得し後、如何様にするつもりであるか…?」
「…理由を…何故こんな事するのか…聞きたい!」
ミチヒメが塔主の問いに真っ先に応えた。
「…返答が不条理ならば?」
「…その刻は…みんなのカタキ、一矢報いて見せるわ!」
「一矢…?く、くくく…ふふふ…ふぁははは…!」
突如塔主は耐えかねた様に大笑いした。
「…ミチヒメ…今のそちではとても一矢すら報いれぬ…ここにいる全てのモノが束になった所で全く敵いはせん」
「…!あ!そ、それってあの御使い…さんたちと同じと言う事でしょうか…?」
「…少なくとも…この…ウパスクマ=エ=テメン=アンキを…ここ地上より至れる最上まで登頂出来ぬようでは勝負にすらならんと言っておこう…」
「…私は聖塔を登頂する資格があると聞き、王として歩む上で避けられぬ試練と伺い馳せ参じました」
その様に話すオオトシをしばし眺めた後納得行った様に塔主は語り始めた。
「…成程…罪と業無き故の…。面白き。ならば塔に入りし後も…今のそのラムのまま無事に還りし刻は更なるイタク授けんと誓おう」
「…解りました。聖塔へはどちらから行けば良いのでしょう?」
「…我が席の奥…柱にある扉より入るが良い」
「…メル=ストゥ=マェ放つ状態ならば自ずと扉は開かれる」
そう言われすぐさま炎を吹き上げながら変化する。そのまま扉へ歩み寄ると…扉はひとりでに開き中へ入れる様に観えた。
「…中へ入るとその筒が動き出す。そして…一つ世界を越え、天への入り口…“四天王天”へ辿り着く。そこで降りて上を目指すが良い」
「解りました…。では…みなさん…行って参ります…!」
皆に向け一礼しオオトシは扉をくぐり入って行った。
「オオトシさま頑張って!」
「オオトシ兄~ここでお待ちしてます~♪」
信じてはいるが心配そうなミチヒメと、全く心配せず無事の帰りを信じ切っているヤチホコを皮切りに、皆から言の葉を貰った後、オオトシは旅立っていった。
…塔を昇って行きましたねオオトシ…。
ここに置いてある…ウパㇲクマ=カㇺピソㇲ…伝承されし叡智の書はなにやら不思議な形でしたね…♪
エカンナイ=ストゥ(古の根源たる)=シ=パセ=カムイ(真なる神威)…主と共に創造をされた神さまの事でしょうか…(^-^;?
用語説明ですm(__)m
ペケㇾ=キロㇽ:清い、きれいな+(より大きな)チカラ→「聖なるチカラ」としました。
・エカンナイ=ストゥ:昔、もと+根元の→「古の根源たる」としました。
・シ=パセ=カムイ:偉大な+本当の+カムイ→「真なる神威」としました。
・ウパㇲクマ=カㇺピソㇲ:伝承、言い伝え、教え+本、書、(紙+層)→「伝承されし叡智の書」としました。
・エィアム:大切にする、守る、しまう→「保管する」としました。




