第40倭 知られざるシ=カラ=クル
いよいよクスターナへ。
嬉しそうにそう言いながらミチヒメが見やる先には…はっきりとクスターナが見えてきた。
ポロ=モシリ以外で唯一アットゥスカラペがありそれを繰るアットゥス=トゥスクルのいるところでもある。
それと先の話に出ていたイコロ=タㇰ…我々の言う軟玉…ネフライトであるが…、ここクスターナでしか取れないモノの内、特に羊脂、羊脂白と言われる色のモノは最高級で“玉”と言えばこれを指し示していた。
この…イコロ=タㇰ…希少価値もさることながらトゥム、ヌプルの増幅効果も非常に高く、ミチヒメが言うのはまさに前述の羊脂、羊脂白の事であった。
ここ“王子に授乳せし大地”にももちろん加工出来る職人は存在するが、調べ聞き整えしモノや、創造の理修めしモノが加工、錬成を行うと…その増幅率は跳ねあがり、考え難い能力を持つ事もあると言う。
「良いモノがあったら…イヅモへもっていこっ♪」
スセリがその様に言うとキクリがイタクを続けた。
「…そーね! 母様なら…きっといいモノ錬成してくれると思うわ…!」
「クシナダさまはそんなことも出来るのかい?」
「僕も何度か錬成されたモノを観た事ありますが…あれは…トゥムやヌプルに疎くてもはっきりわかるようなものでしたね…!」
「へぇ~そ~なのね~♪ そっちもね、きっといいコトあると思うわ♪ よぉっしみんな! 行きましょっ♪」
ミチヒメはそうウオ=フムセ=エチュゥしてヤレパチプから飛び降り勢い良くモシリ…規模で言えば大きめのコタン…に向かっていった。
ヤレパチプをモシリの外に泊め中へ入ると、思った以上の賑わいであった。
イホクシが開かれており、チ=クスルの両脇にサラㇺぺ=ウシやイトム=ウシが立ち並ぶ。
「凄い数ですね! この中のどこにそんなすごいイコロ=タㇰを扱う処が…?」
そう言いながら見回すと…どこの店の軒先にもイコロ=タㇰと思しきモノが並んでいる!
「あぁ! アレですね! すごいです…どこのお店にも売っていますね!」
「ホント! キレイ…♪」
ヤチホコとスセリは眺めてその様に話したが、キクリは不満げに言う。
「う~ん…確かにキレイだけど…アタシの目的にはこれでは足りないわ…!」
そう言うキクリの両肩に例によって何の気配も観じさせずに背後からぽんっと手が置かれた。
「そのと~りよキクリちゃん! ここに並ぶモノもステキなんだけど…わたし達が行くべきは…あっちよ!」
ミチヒメがそう言って指差すは…大通りから外れたさびれた路地であった。
「ナルホド! かくれた名店ってワケね…!」
キクリは納得して真っ先に歩み始めた。
「…この路地の奥にあるお店の主こそ…ここで採掘されたイコロ=タㇰの殆どを鑑定、錬成されている方なのよ♪」
「ミチヒメよく知っていますね!」
感心するヤチホコにミチヒメは応える。
「前に来た刻にね…一人でパイェ=カイするわたしの為に…一番上質なイコロ=タㇰを錬成してセレマク=コルェしてくださったの…」
「…そうだったんだ…。でも…ミチヒメ今はそのセレマクつけていないの? 全然見た事ないけど…?」
アビヒコが不思議そうにそう尋ねた。
「うん…。あの…パイェ=カイの刻…ラーマさまとチカラを合わせて…ウブ=イキネイペカ放つトキに…砕けっちゃったの…。あの子が…きっとあの子がチカラ貸してくれたからあの刻出来たんだ…。最後に…そう言っていたから…。」
「…え? あの子…? セレマク…喋っていたの…?」
キクリが驚いて尋ねた。
「…うん。このあいだのルースさんのあの子みたいに…生きているようだったの。だから…お別れの刻は…ちょっち…んにゃすごく…悲しかったんだよね…」
ミチヒメは最後の戦いまで一緒だったセレマクをエシカルンし、少しだけ瞳を潤ませていた。
「…生きて…いたのでしょうねその子は…。そしてミチヒメ、あなたへのイレンカを以てイノトゥを賭して助けてくれたのでしょう…。イノトゥ…ラマトゥ宿りしエイワンケㇷ゚ を造りだせる…それはまさにシ=カラ=クルの御業でしょうね…。我が母クシナダとはまた違い、創造の業に優れしモノなのでしょう…その様に伺えます」
オオトシがそう感心しながらイタクをつなげた。
「ありがとうございますオオトシさま…。そ~よね…あの子…ホントに生きていたんだよね…きっと…」
「大切な存在だったのね…。その辛さ…少しはワカるわ…。アタシの目的もまさに…その為だから…! でも…そんなスゴい事出来る方なら…超チパ=チパだわ…!」
ミチヒメに寄り添うように言った後…力強くアスケウコム作りキクリはそう言った。
「…どうやらあそこの様であるな…。なにやら一風変わったトゥムを観じる…」
ウガヤがトゥムをいち早くエカㇺケして少し先の建物を指差しその様に言った。
“魂を籠める”…現在の我々にもそういう表現はあるが…彼らの世界ではまさにそうであり、トゥム、ヌプル行使えしモノが強きイレンカの元にチカラ籠めて造ると…本来持ち得し性能を大きく超えたモノが生まれるらしい…。生きた道具などはまさにその最たるモノであろう。
一同が扉の前まで来ると…中から何やらエウパゥレする声が聞こえてきた…。
「ひっど~い! こんなハンパに造るなんてぇ~!」
「そったらこと言ったってもうこれ以上材料ないっしょや!」
「こ、これってもしかして…さっきのお話に出ました、生きた…?」
聞き耳を立てたヤチホコがそう言う。
「…どうやらそのようですね…」
「…頃合いみて挨拶し中へ入れてもらうとしよう」
オオトシとウガヤがそれぞれその様に言い、しばししてウガヤが扉を叩き尋ねた。
「…取り込み中すまぬ…店を拝見したく存ずるが良いであろうか?」
「お! ホラお客さんだべ!ちょいと待ってな!」
「ぶ~! まだお話終わってなぁ~い! アタイの手足はぁ~?」
文句を言われながら立派なひげを蓄えた…エカシ…?が扉を開けた。
「へいへい いらっしゃい~…。お、お~!お前さんは…!」
「純陀チャチャお久しぶり! あいっかわらずね~♪」
「やっぱミチヒメだべか! あの頃さよりはちっとばかしメノコっぽぐなったんでないかい♪」
「もう季節がひと廻りする以上になるからね♪ どう? より一層ステキになったでしょ♪」
そう言いながら得意げに胸を張ってみせる。
「…ここさぁまっだぐ生長して無いべや!」
そう言いながらなだらかながらもつつましやかに傾斜をつくるエウコポヌプカを撫でまわす。
「むー! ぜっさん生長中ですよ~だ!」
ミチヒメはそっと手を払って腕組みしながらそう言う。
「なにするこのエパタイチャチャ!」
アビヒコが向きになって声を荒げて言う。
「はっはっは! ヘカチよお前さんはミチヒメの事がエラマスなのかい?」
「な! 何をエパタイな…」
「もっちのろん! だってわたしのア=オマプなアㇰですからね~♪」
純陀と呼ばれたエカシはアビヒコを見やり、少し同情めいてミチヒメに言う。
「…そいつぁちぃとばかしかわいそうなんで無いかい?」
「え? どーして? いっつもイ=オマプしてるけど?」
「むぅ…たいぎぃからもういいべや…」
純陀は苦笑いしながらアビヒコの肩を軽くたたいた。
アビヒコは少し…いやかなり落胆している様であったが、当のミチヒメは全く勘付いていていないので…気を取り直し二人に尋ねた。
「それで…この純陀…さんに造ってもらったイコロ=タㇰって…どんな…子? だったの?」
ミチヒメと純陀は顔を見合わせ、少しだけ悲し気にしたが、すぐさまエシカルンするような表情で話し始めた。
「…あいつぁえらぐ陽気な奴だったさ…」
「うん、一緒にいるといつも元気をもらっていたのよ…♪」
二人はそれぞれに思い出しながらそう言った。
「お師匠たちと違って…さわれるし…いつも一緒にくっついて寝ていたな~」
そういうミチヒメのレクトゥンペを見てアビヒコが言う。
「あ…今しているレクトゥンペってもしかして…」
「ん…。そう…。あの子の…イリチのカケラ。あの刻…これだけきれいな玉になっていたから…形見と思って下げていたの」
そういってコッパラから出したそれは、小さいながらも透き通るような美しい乳白色の玉であった。
それを見た瞬間純陀が真剣な顔でミチヒメに言う。
「…ちょっとそれ貸してみ?」
純陀は玉を手に取り、深く呼吸してからじっくりと見つめる…。
するとその手から静かにトゥムが湧き出てきて玉に注がれていく…すると玉は柔らかにメレメルを示した。
それを観て喜びながら叫んだ。
「おい! ミチヒメ! こりゃ…もしかしたら…こいつぁ直るかもしんねぇ!」
「…え? え!? ええ!! ホ、ホントなの…? やったぁ!」
大きく頷きながら純陀は言う。
「お前さんが形見にと持ち帰ったこの玉こそ…イリチの中心核…言うなりゃトゥムの核となるとこだべさ! あと…ケゥエさなる材料がありゃ…」
「材料って? なにっ? 今すぐ集めてくるわ!」
ミチヒメ凄い勢いで捲くし立てた。
「おお…。ま、まんず、出来る限り真っ白くてきれぇな羊脂のヤツ、透き通るような羊脂白ならなお良いべさ。それがら…碧さふたつ…翠みっつ…黄よっつ…と最後に墨玉ひとつだな…。その他に純白の絹を一反。それで出来あが…」
そこまで話しかけた刻に横やりが入った。
「ちょっとちょっと~! アタイの材料は~ど~なってるのよぉ!」
奥から必死の叫び声が聞こえてきた。
声から先ほどのエウパゥレの一方と思われる。
「そうじゃったわい! こいつは羊脂のイコロ=タㇰ自体が足んなぐてな…ネトパはなんとが錬成したっけが…手足の分がなぐなってそこまでだったさ! よけりゃこの子の分も探してきてもらえるかい?」
一同快く了承し、イコロ=タㇰのフナラしに向かった。
ひょんなことから目的が増えましたが玉探しにいきます♪
用語説明ですm(__)m(「」は造語です)
・イホクシ:市場
・サラㇺぺ=ウシ:絹+場所→「絹の店」としました。
・イトム=ウシ:装飾品+場所→「装飾品の店」としました。
・カラカラ=クル:~を整える(作るの意も)+人→「調べ聞き整えしモノ」としました。
・シ=カラ=クル:本当の+作る・直す+人→「創造の理修めしモノ」としました。
・イコロ=タㇰ:宝+玉→「宝の玉」としました。(12/13修正ですm(__)m)
※「玉」は貴重な石、宝石、山(陸)で取れるモノ。
「珠」は海で取れるモノ(真珠など)。
「宝珠」は基本「如意宝珠」(意のままに願いをかなえる宝)を指すらしいので…それはもう少し別のと言いますか…これから出てきますと言う事で(笑)
・ウオ=フムセ=エチュゥ:気合籠めて掛け声かける
・エパタイチャチャ:おバカ+年長の男性→「くそじじい」としました(^-^;(笑)アビヒコそうとうお怒りのようでしたね…。
・レクトゥンペ:首飾り
・エウパゥレ:言い争う
・フナラ:探す




