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第4倭 カムイキリサム=コラムヌカラの章(其の壱)

今回からカムイキリサム=コラムヌカラ(神前比武=カムイの前で心と身体の強さを試す)です。

ちょっと予定よりも長くなりましたがご覧くださいませm(__)m

 宵闇の中皆が寝静まった頃、カムイ=チセ(神殿)に二人の人影が。


「…して…オオトシよ…此度挑むは…?」


 オオトシは静かに答える。


「はい、ヤチホコとスセリ、キクリとミヅチ、ミケヒコとポ=トゥスクル(童子巫女)たるヒメ、そしてミチヒメとアビヒコです」


「ふぅむ…此度は豊作である、な。」


「はい、オウナムチ(意宇国貴)様…いえ…シ=モシリ=コロ=ク(統一奴国王)ル様。…私も楽しみでございます。」


「ほほう…左様であるか!…最後の試練…かわりにそなたがしても良いであるが?」


「いずれ…今はまだお任せいたします…。」


「良い…。実はわしも楽しみでうずいておるのでな…♪」


「きっと…良きカムイキリサム(神前)コラムヌカラ(比武)となりましょう…!」


「うむ…!」


 明くる朝…モシリはカムイノミ(神への豊穣奉納祭)の装いとなりにわかに活気づいていた。


「ふわぁ~綺麗ですねぇ~♪」


「ホント~♪ねぇヤチ!あっちのあのお店いきたぁい!」


「良いですね~♪…あ…気持ちは分かりますがスセリちゃん…僕達はカムイキリサム(神前)=コラムヌカラ(比武)に出ますから…」


「すこぉしだけ~ね♪」


 ヤチホコは仕方ないなと言う表情で答えた。


「…まだ少し時間がありますのでそれまでの間ですよ…」


「わぁ~やったぁ!ありがとうヤチ♪」


 ヤチホコたちはコラムヌ()カラ=()ミンタラ()(比武を行う広場)の周りに出ている出店を回って歩くことにした。


 様々な店を眺めては、各地より持ち寄られた珍しいモノを食べ、イノミ(祭り)を十分に堪能した頃、大きな銅鐸をたたく大きな音が鳴り響いた。


「…時間だよスセリちゃん!行きましょう!」


「…もっとみたかったなぁ…」


「あとはカムイキリサム=コラムヌカラの後でもきっと見れますよ♪」


「…そうだね!よぉっし、ヤチ、行こっ♪」


「あ、はい…!(良かったです…何とか間に合いますね…)」



「…それではこれより今度(こたび)のカムイキリサム=コラムヌカラをはじめる!この神前(カムイキリサム)比武(=コラムヌカラ)においては…己と…己の対のモノの持つ聖なる力のみで挑まれよ!故…ミチヒメのイネ=キムンペ=ルーガ(四獣王)ルやアビヒコのカムイ=カミヤシ=ア(神魔同)スケウク=アリキキパ(時励起)、ヒメのヤオヨロズ=イキリ=(精霊神召集)イノミ()は今回は使わずに挑まれよ!」


 オ・ウ=ナ=ムチ(意宇国貴)でもあり、シ=モシリ(統一)=コロ=クル(奴国王)たるオオクニがそう宣言して開催となった。


「がぁ~ん!それじゃわたしアビヒコから貰えるヌプル(霊力)なりの基本のトゥム(氣力)しか使えないじゃなぁ~い!」


「はっは…ミチヒメよ…そのため協力や工夫もこの神前比武の大事なところとなるのである…上手く立ち回られよ…!」


 笑いながらオオクニはそうミチヒメに伝えた。


 カムイノミの中で行われる、この「カムイキリサム(神前)=コラムヌカラ(比武)」は、武を見せ競うだけでなく、各々のラム()の強さを示す度胸試しの意味も含まれている。


 参加するモノは、年は15より下で、ヒメとヒコ…男女対でないとならない。

 多くは将来夫婦となるモノ同士で出るようであるが、兄妹や同僚、主従等関係は問わないらしい。

 もっともこの時代でもトゥムやヌプルを使えるモノ…いわゆる緋徒(ヒト)は珍しい存在であり、その超常的とも言える力から境涯(きょうがい)至らずとも「カムイ」と崇められることも少なくなかった。

 先のオオクニの「豊作」はそのくらい珍しき存在故であった。


「…それではこのおれ…()()ミ=ノカ=タ=クル(神衣纏いし彫像師)のタカヒコがトゥム(氣力)の練を見極めさせてもらう!最初は…ミケヒコ、ミケヒメの組!おれと立ち合え!」


 そう言うや見る間にタカヒコはトゥムを吹き上げていく。


「あ、相変わらずですねタカ兄…!ラム=エトク=モノ(勇猛さの上に禅)=カタ=ルーガル(定抱き坐す王)と言われるだけのことはありますね…!」


「ホント!…あれは…ボクたちの攻撃…簡単には通らなさそーだね!」


 ヤチホコとスセリは吹き上がるトゥムを観てそう言った。


「…フッ!その勇猛さ(ラム=エトク)…真なるや否やオレの一撃で試してくれるわ!ウフイタウキ(火炎斬り)!」


 叫び声と共に炎をまとわせた剣で地面をえぐり下から斬り上げるようにタカヒコに襲いかかる!


 タカヒコは微動だにせず仁王立ちでその斬撃を受けた。


「…属性(ぞくせい)付与(ふよ)出来るか…!合格だ!次…アビヒコ、ミチヒメ!」


 平然と受けられた上で()められ、何事もなかったように次の組を呼ぶタカヒコに驚愕(きょうがく)しながらも悔しさで歯がみしながらミケヒコは場を去った。


「…うちはわたしがさせてもらいまぁ~す♪…アビヒコ!」


「ああ!ラムハプル=ヌプル(付与霊呪)!ミチヒメ受け取って!ぼくのヌプル(霊力)!」


 そう呪を唱えるとアビヒコからミチヒメへヌプルが注がれていく。


「なに?メノコが撃つだと?巫山戯(ふざけ)ているのか?エパタイ(おバカ)か?」


 ミケヒコのその言葉を聞いてミチヒメは少しだけむっとして言った。


「なぁによぅ~しっつれいね~!…見てなさい!はぁ!ケゥエ チ(通氣)コトゥイエ(発勁)!」


 素早く突進しタカヒコの眼前で激しく震脚と言う特殊な踏み込みを行い重心を再加速させ、そこにありったけのトゥムを込めてねじり込むように同側の拳を放った。


 重量物が衝突する時の身体を揺さぶるような重低音が鳴り響いた!


「…見事だミチヒメ…!限られたトゥムを技で上手く高めて放ったモノだ…!合格!」


 感心したようにタカヒコは言った。


「お褒めいただきこーえーです♪…ユポ(タカ兄)…わたし全力だったケド大丈夫…?」


「これミチヒメ…今はサンガ(審神者)であるぞ?…案ずるでない。この程度ならば今のおれは微塵(みじん)も傷つかぬ!」


 タカヒコがそう言うと安心と驚きと尊敬を込めてミチヒメは言った。


「それまたすごぉい!ユプ=ニスパケ(にいさま)…あれから…すごく練り上げたんだね…!」


「…お前の(ユポ)だからな。このくらいは出来ぬとな…!良し…次!」


 呼ばれて出てきたのはキクリとミズチであった。


「アタシたちね!…アタシ達は…二人ともやるわ!」


「わ~いミズチもきぃちゃんといっしょにする~!…おもいきりしちゃっていいの?」


「かまわん。持てるトゥムの総てを見せるが良い!」


 タカヒコは平然とそう言い放った。


「…タカヒコ…あの子が八俣さまより一柱賜ったミズチです…」


「オオトシ殿…!?…左様でしたか…。ならば相手に不足無し!こちらも全力を持って応じよう!」


 そう言うとタカヒコのトゥムが岩のように変質していき全身を覆い尽くしていった。


「…おんなじ属性ね…!なら全力で…チストゥマム(岩壁)イクスペ()!」


 キクリが叫ぶと足元から岩壁がせり上がり、そこから柱状に突出した岩が次々とタカヒコめがけて飛んでいく。


 雷鳴の如き音が響き渡り辺りに砂塵が舞う。


「…すさまじいな…!おれでなければ大変な事になっていたぞ!」


「…!傷一つ…ついてない…?」


「キクリ…お前の言った通りだ!同じ属性故…その力吸収させてもらったぞ…!」


 岩柱が衝突する度に、大地のトゥムを即座に吸収したらしい。

 故にただの岩がぶつかるだけの状態になった様である。

 通常のウタラ()ならそれでもケガするが…彼等の様にトゥムで身体強化できるモノ達に岩を投擲された程度で傷つくモノはいない。それくらい強度に差が付くのである。


「つぎは…ミズチがいっくよ~!ワッカナイ(流れる水の)=ルイ=ト(竜神の如く)コロカムイ(激しいさま)!」


 見る間に水の壁が湧き上がり何体モノ水龍と化して上空に舞い上がり、それらが一斉に滝のように牙を剥き襲いかかる!


「むう!よしこい!」


 凄まじい衝突音が連続的に鳴り響いた。


「…今日一番の強さであった!素晴らしき技なり…合格!」


「やったぁ~♪きぃちゃんみてくれた?」


「…ええ!素晴らしい技だったわ!」


「へへへ♪」


「…次はいよいよボクたちの蕃だね!」


「怖くはありませんが…身体が軽く震えて胸が高鳴りますね!」


「…どうする?二人とも…する?」


「う~ん…スセリちゃんで駄目なら僕は確実に不合格だと思いますので…まずスセリちゃん挑んでみて下さい!」



「わかったよ♪全力で一撃はなってくる!」



「お願いします!頑張ってねスセリちゃん!」


「…うん!」


 そこでタカヒコの声が。


「…最後!ヤチホコとスセリ…!」


「…ボクがする…!」


「…では参るがよい!」


「またメノコか?つくづくふざけやがっ…!」


 螺旋を描きポンペウプンチセの如き風を拳に纏わせた一撃をスセリは放った。


「やぁぁ~! レラ=モイ(旋風)=コトゥイエ(螺旋勁)ぇっ!」


 先のミチヒメとはまた違い…勢い良く拳と反対の足を踏みこませて身体を捻りその回転力を直進力へと上肢から拳で変換させさらに肘から先をねじり込むように目標物を穿つ…現在で言うならばコ-クスクリューブロウか…。

 違いはトゥムと呼ばれる力を拳を中心に小型の竜巻のように纏わせているところであろう。

 そして各動作も可視化はされにくいがトゥムにより身体強化と加速がなされている様であり、通常では考え難い速度でその所作を行っていた。


 地割れや崖崩れの刻…最初に聞こえる乾いた亀裂音が鳴り響いた。


「…この鎧を打ち抜くか…打への力の集まり具合は…一番だ!むろん合格!」


「や、やりましたねスセリちゃん…!さすがです♪」


「えへ♪やったよボク♪…まぁヤチが…力使ったら間違いなく合格だと思うケド…ね!」

 …



(…わたくしの愛すべき…ヤチホコや…今はまだ貴方は…有事の際しかその力を使ってはなりません…その内なるトゥムに身体がついて来れず…そこで起きてしまうのが…)


「ヤチ?ヤチ~!」


「あ、は、はい…!そ、そうですね…。まぁ今回はスセリちゃんがばっちり決めてくれましたので…これで良いです♪」


 ムカツヒメに言われたことを思い出していて上の空になっていたヤチホコははっとして我に返りスセリにそう伝えた。


「うん、ま、まぁそ、そ~ねぇ~。…よし!次いこ次!」


 合格したので余計なことを考えるのはやめにした様である。

このなろうサイト自体の仕様で横幅がこれ以上取れなく、3倭までの戯曲形式は書きにくいし読みにくいので普通に戻します(^_^;)

そこに時間かけるよりも、校正も後回しにしても本文をアップしたほうが良いかなと思いました(^_^;)


用語解説

カムイキリサム=コラムヌカラ:神の前で度胸を試す=神前比武(意訳)

コラムヌカラ=ミンタラ     :度胸試しを行う場=比武台(意訳)

カムイノミ             :神への豊穣奉納祭 カムイ=神 イノミ=祭


12/7追記と改変ですm(__)m

ミ=ノカ=タ=クル:衣服を着る+彫刻の像+ほる+者→「神衣纏いし彫像師」としました。

※「宗像」の由来が「身の形」にある所から…音と意味の近いこの語を比定しましたm(__)m


ラム=エトク=モノ=カタ=ルーガル:勇猛さ+静かに座る+上に+王(これはシュメール語です)

→「勇猛さの上に禅定抱き坐す王」としました。

タカヒコはサンガでもありミ=ノカ=タ=クルでもあります♪


サンガ:審神者、神殿最高神官=コトシロヌシ。女性ならパセ=トゥスクル(偉大な巫女)

※サンガ、シャングーは濁点があるのでおわかりかもですが、

アイヌ語ではなくシュメール語です(^_^;)


トゥム=氣力        :物理的な力

ヌプル=霊力        :精神的な力

ラムハプル~        :~を惜しまず人に与える(=優しいの意味もあります)


コタン=コロ=クル     :村長(コタン(村)を持つモノ)

モシリ=コロ=クル     :国王(mosir kor …クニ、土地、島を持つにkur(大人の人、男)を加えた造語です)

オ・ウ=ナ=ムチ      :オ・ウ=ナ:意宇国、ムチ:貴人(古代において、ラ・マ・ヤ・ナはすべてクニを表す説を踏襲しています。そこから行くとこれも称号名になるのですが(^_^;))

※つめて「オウナムチ」と表記しますm(__)m(25’6/13)

ポ=トゥスクル       :幼き巫女…童子巫女


エパタイ          :本来の意味は、愚か者、バカヤロウとかなり辛辣なのですが…和人が聞きますと何やら可愛らしい響きに聞こえますので…「おバカ♪」という意味にさせていただいておりますm(__)m


ワッカナイ         :水の流れる沢、筋=川

ルイ            :激しい 強い

トコロカムイ        :龍 沼の主

ラム=エトク        :勇猛な、勇者

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