第38倭 ナムワッカ=シリ=オタ=ル走り彼の地へ
ルースへ戻ってみんなと合流してみると…
昨晩の騒ぎをやり過ごし目覚めたヤチホコ達は、トゥスクル=モシリのヤマタイを再度経由して上伽耶よりルースへと向かった。
ルース宅へ到着するとすでにミチヒメたちは戻ってきていた。
「ヤチホコくんたち久しぶり~♪どう?そっちはうまくいった~?…あっ!…み、みんなもひっさしぶりだねっ!」
ミチヒメはヤチホコ達にそう話しかけ…後続のモノ達を見て一瞬狼狽しながらも続けて挨拶をした。
「…ここに来た僕たちは…全員大丈夫です!ミチヒメたちはどうでしたか?」
ヤチホコにそういわれミチヒメは少し面目無さそうに、場都合が悪そうにアビヒコ、ウガヤと目を合わせ…頭を一本指で掻いて困り笑いを浮かべながら話し始めた。
「わたしは…この子たちと…契約している状態だから属性は全部使えるのだケド…この子たちがモシリとの繋がりを失っていて…つまりはゴメン!できてません~!」
「ぼくは…ミチヒメ以上に特殊らしく…元々は全て出来るらしいけど…今は封がかかってふつうのトゥムだけになっているみたい…」
「…我も…現状属性の付与は出来ぬ様である…」
驚きだったが全員出来なかったらしい。
(ええ~!…あ、そうか、そうですよね…三人とも盟主さんと契約しなくても十分強いから…もしかしてだからかえって出来なかったのですかね…?)
ヤチホコは驚きながらも先の戦いをふり返りその様にイレンカ巡らせていた。
「…ウガヤ様久方ぶりでございます。属性は私達ですべてそろいますのでご安心ください。」
「…忝き…。我も何やら…ラマトゥのストゥで封じられてると言われてな…」
何でも出来そうなウガヤが、自力でヌプル使えず、盟主との契約も出来ないのは意外であった。
ミチヒメに至っては…“獣王究極発勁”で四属性纏ったり…ヤチホコと協力し全てを行使する五芒封印がエトゥッカ可能にも関わらず…契約は出来なかった様である…。
「特殊な権能の持ち主程盟主との契約はしにくいかもな」
横から顔を出したルースがその様に話しかけてきた。
「え?…ルースさん、それは一体どういうことなのでしょうか…?」
「ああ。本来なら反対だと思うが…ま~出来るヤツは自分でどうにかしろってことじゃないか?…平等なんだろうこのモシリは…はからずもな」
「でもそうだとしたら納得です♪三人とも出来過ぎですものね…」
珍しく少しだけ羨ましそうにヤチホコがそう言った。
「出来るモノには努力を課し、出来ないモノにゃ手を差し伸べるっていやぁ確かにお手本のようなカミサマだよな」
「とゆーことは…みんなより弱いボクがイチバンになれる可能性が…!」
「そ~なるな!今回のもそれじゃないかね?」
「ふふん♪頼もしくってイイね♪」
ミチヒメは嫌味などではなくラム=アサム嬉しそうに言った。
「本来ならば頑張ったなりに報われるべきだが…そうならない部分が時折見え隠れしているよな…」
ルースが何故か少し申し訳なさそうにそう呟いた。
「…ルースさん…?」
「…っと!いまのはナシナシ!ともかく、五属性揃ったならば…あの塔の扉は開けるが…どうする?」
「もちろん行きます!」
仕切り直して問いかけてきたルースに対しヤチホコは即座に応えた。
「…あそこはな…フツーのウタラは入れないんだ…。だから私達は…同行出来ん。行くなら…気をつけてな!…何があってもイレンカ…ラム…強く持ち続けるようにな!忘れるんじゃないぞ!」
「…父さん一体何言ってるの?ただ知らない事を調べるために行くだけなのに…?」
「…何か…危険な事が待ち受けているのであろうか?」
「いやいや…身の危険なんかは無いと思うが…カムイ住まう処だしな、何あるかわからないから気をつけてくれっていう事だ!」
「りょーかいで~す♪ルースさん気をつけて行ってきますね♪」
ヤレパチプを西へひたすら走らせる。
この…“ナムワッカ=シリ=オタ=ルをひた走るのがガンダーラへの最短らしい。
今回はさすがに距離がある為、途中で“泉湧きし地”に立ち寄り補給と休息をしていく予定である。
オタ=ヌプカ=ケナスの中に急に顕れる緑と水…それは偏にラムハプル=モシリ=コロ=クルによるものであった。
この地は…“アペ”と“レラ”の盟主のチカラが強すぎる為…モシリ大地が乾いてしまいオタ=ヌプカ=ケナスと化していた。
各属性の自然の盟主の権能が均等に発揮されている状態が、生きとし生けるモノ住まうに適したモシリとなる。
例えば…
“モシリ”のトゥム強ければニタイやハル=コル=モシリが広がる。
“ワッカ”の氣強き地はアトゥイやトー、ポロペッ=ナイ、そして泉湧く土地が形成される。
“アペ”のトゥム強き場合はウフイ=ヌプリ=シリが形成される。
“レラ”のトゥム強き場合は、サッ=ポロ=モシリが形成されると伝え聞く。
他にも上記の通り二つの属性強き場合の変化もあるらしい。
このモシリでは水の自然の盟主鎮座せし周辺のみ潤う。
そこにウタラが…緋徒が集まりてコタン規模のポン=モシリが形成されている。
それがこのオタ=アトゥイとも言うべきこの地での数少ない安息の場所…ナムワッカ=シリであった。
「…そう、このまんままっすぐ行けば着くよ!」
「そのようですね…!しかしこのチュプキ=オハインカラのなか…良く観えるものですね~!」
「なかなかフミも鋭くなってきたトラ♪」
「安心して任せていられるであるな」
ビャッコと青龍はそれぞれミチヒメを観て感心しながらその様に言った。
「到着数刻後接近」
玄武のイタクに頷きながらミチヒメが話す。
「…しっかしなつかしいね~♪ あの刻このチ=クスルでみんなに出会って…イッケウェがおんなじだったから…一緒に…けーこつけてもらいながらパイェ=カイして…ラーマさまたちとコィラムして…あれからもうゼンブの季節がいちどカリしたんだね…」
ミチヒメはエシカルンする様にそう言った。
エシカルン出来るウエペケレとなりつつあるようだ…。
「…ま~大変だったけど、ね。おかげでてこうして今は…みんなと一緒にこのチ=クスルをパイェ=カイ出来ているからねっ♪」
そう言いながらミチヒメはヤチホコとアビヒコめがけ エオ=レクト=サイネしてきた。
「わわ!ミ、ミチヒメ!」
「…まったくはしゃいじゃって…」
「ふふ♪なぁに~二人とも~うれしいクセにぃ~♪」
二人のイタクなどお構いなしに笑みを浮かべながらミチヒメはそう応えた。
「…ホントに良かったね、ミチヒメ!」
「…うん!ありがと~スセリちゃん~エラマス~♪」
スセリの反応する間も無くエオ=レクト=サイネしようとしたが…レラ=モイに阻まれて出来なかった。
「ふふん♪どう?ボクも少しはトゥム、練り上げてきたよ!」
「すごぉい~♪ ぶじ契約できたのね~♪」
ミチヒメそう言いながら自身もレラのトゥムを纏いスセリのトゥムを中和してウコ=ラィパした。
「うんうん♪やっぱりメノコはハプルでステキ♪」
スセリの顔に頬ずりしながらミチヒメは嬉しそうに言った。
「…くやしいけどまだまだミチヒメにはかなわないかぁ…」
少し落胆気味にそう言うスセリにミチヒメが応える。
「ん~、スセリちゃんがレラのトゥムをまとえたことは…わたしがすべてのトゥムを扱えるコトよりも…スゴいと思うよ!」
「そ、ソーなの?」
「うん!まちがいないない♪」
「良くわからないケド…ソーなんだね!ありがとっ!なんかとってもうれしい♪前の刻…ボク、何もできなかったから」
ミチヒメはさらにラムハプルのイレンカこめてヤイ=コ=ルイェして応えた。
「…誰しもかならず…意味と役割を持って生まれてくるんだって…!だからきっと…この先絶対スセリちゃんのチカラも必要になるよ…!」
「…うん!色々と…ガンバる!」
スセリはミチヒメのイタクを大切にラム=アサムから受け取ってそう応えた。
「さぁ…ナムワッカ=シリに着いたである…まずは宿を探し手続きをしておこうか」
そのウガヤの声に一同返事してヤレパチプを外に泊めポン=モシリへ入って行った。
一旦ナムワッカ=シリにて休息ですね(^-^;
用語説明ですm(__)m
・ナムワッカ=シリ=オタ=ル:湧き水、泉+大地→「泉湧きし地通る砂の道」としました。
・ナムワッカ=シリ:湧き水、泉+大地→「泉湧きし地」…(オアシスの意味)としました。
・オタ=ヌプカ=ケナス:砂+丘+平野、平地、原等…→「砂丘続く平原」で「砂漠」の意味としました。
・エオ=レクト=サイネ:なつっこい+首+巻いてくる、手繰ってくる→「親し気に首に抱きつく」としました。
・サッ=ポロ=モシリ:乾いた+大きな+大地の合成です。余談ですが「札幌」はサッ=ポロ=ペッ:乾いた大きな川(豊平川の古名です)からです♪
・ポロペッ=ナイ:(大きな)川+沢、筋(小さな川)→「河川」としました。
・ウフイ=ヌプリ=シリ:火山+土地→「火山地帯」としました。
・チュプキ=オハインカラ:日の光+幻覚→「日の光魅せし幻」(蜃気楼の意)としました。
・フミ:(視覚以外の)感覚、気配。
・エシカルン:思い出す の他に 「懐かしむ」の意味もあります♪
・レラ=モイ:風+淵、淀み、渦巻き→「風の渦」としました。