表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/90

第37倭 ペケレ=レラ=エホラリでのコラムヌカラ

風の盟主の元へ…

 あくる朝、オオトシの元に全員集まり、レラ=ラムハプル=(風を統べる)モシリ=コロ=クル(自然の盟主)住処(すみか)へと向かった。ここより少し北東…ウェンクトロネ(断崖絶壁)の海岸線に沿って進んだ先にあるエカイ=チス(高い岩山)…その頂上付近に存在すると言う。

 頂上めざし山肌をヤレパチプ(大型万能船)で走りしばらく行くと大きめのポル(洞穴)が観えてきた。


「…さぁ…こちらです。それではスセリ、(わたくし)の後に付いて来て下さい」


「ハイ!」



 スセリはオオトシと一緒に洞穴(ポル)に入っていった。

 中は暗く湿り気(しめりけ)()びた冷たい風が少し()いている。

 二人で奥へ歩いていくと…進むごとに風が強くなる。

 そのまま風吹く方へ向かい歩いていくとうっすらと明るくなってきた。

 風はますます強くなる。プンカラ(つた)(おお)われた所を(くぐ)り抜けると辺りが開け光が差し込む空間が(あらわ)れた。

 どうやらチュプ=キャイ(日光)はすり鉢状につり上がったチス()天蓋(てんがい)(はる)上方(じょうほう)に大きく開いた穴から(もたら)されている様だ。見上げていて目が()れてくるとニス=オロ(青空)()えた。


「…ここはこのキム()の中心…ペケレ=レラ=エホラ(聖なる風住まう処)リ…。よくぞ(まい)られた。」


 割と流暢に風を統べる(レラ=ラムハプル=)自然の盟主(モシリ=コロ=クル)(おぼ)しきモノは(かた)りかけてきた。


「お久しぶりでございます、盟主」


「おお、オオトシ殿(どの)でしたか、久方(ひさかた)ぶりですな」


 軽く会釈(えしゃく)をしながらオオトシは話を続けた。


「今回はこのメノコ()…スセリが貴方(あなた)契約(けいやく)したいと(もう)()がありましたので参りました」


「そうでありまするか。どれ…」


 盟主(めいしゅ)()がスセリを見つめてメレメル=ケ(明滅)(はじ)めた…。

 しばらく見つめた後…一つため息をつき言いにくそうに話し始めた。


「…このメノコ…ちと(むずか)しいでありまするな…。…コラムヌカラ(試練)として七度(ななたび)…“スクス=トイ(明るく日の差し込む昼)”と“シリ=クンネ(日が暮れ闇覆いし夜)”を過ごす間…イレンカ(ヲモヒ)(ささ)げられれば(かな)いまする…」


 オオトシは(めずら)しく(おどろ)きを(あらわ)わに盟主に(こた)え、マク=ケ=サム=ア《意を決する》してスセリに尋ねた。


「七度…!…そんなにですか!…。…。…承知いたしました…。スセリ…あなたの試練(コラムヌカラ)…かなり大変でしょうが…覚悟(かくご)準備(じゅんび)はよろしいでしょうか…?」


「うん!大丈夫!ボク頑張る!」


 (やさ)しい()みで(うなず)いて盟主が言う。


「よろしい。では…(われ)に向かって全力でトゥム(氣力)放出(ほうしゅつ)してみなされ…」


 スセリが即座(そくざ)に言われた通りにすると…かざした手よりトゥムが見る間に吸い取られていく…!


「うあぁ!な、なに?チカラが…トゥムがゼンブ持っていかれる…!」


左様(さよう)でありまする。これを…”明るく日の差し込む昼(スクス=トイ)”と“日が暮れ闇覆いし夜(シリ=クンネ)”が七度(めぐ)りし間続け下され。さすればしかる後…アナタとの契り()わせるでありまする…」


「…スセリ…出来()る限り助力(じょりょく)いたしますので…頑張られて下さい…!」


「ハ…ハイ!」


 最初の二回廻る間は…()えと(かわ)きが(すご)かった。補給(ほきゅう)せねば見る間に骨と皮だけになる…そうイレンカ(よぎ)る程トゥムを吸い取られていた。変化が起きたのは三度目であった。

 今まで同様全力で放出したトゥムを吸い取られている(トキ)…ふと観えたナニカに手を差し出すと…不思議な事に今までと反対にスセリの方へトゥムが流れ込んでくる…!


「…あー!な、何か…ワカったかも!上げるだけじゃダメ…もらう、欲しがるだけはもっとダメ!…トゥムは…(めぐ)ってるんだ!場所によって…目的によって…そしてイレンカによって…!すがたや形を変えて…どこにでも…ある!…だから…出したトゥムは…シ=カリ=カリ(廻り廻って)して…戻ってくる!そこに…イレンカこめると…増えて強くなって戻してくれる…それをしてくれるのが盟主さん…そしてその刻のトゥムこそが…属性(ぞくせい)のチカラ宿(やど)ったトゥム!」


 そう言い終えた瞬間(しゅんかん)スセリから大量のトゥムが放出される。盟主はそれを(ことごと)く受け入れていく。そして…風のチカラ(まと)いしトゥムがスセリへ流れ込んでいく…大気を(ふる)わし吹きすさぶそれはまさにシンノ=レラ(真なる風)であった…!


「…すばらしいです!まさか…こんなにはやく自分のモノにしてしまいますなんて…!」


 感嘆(かんたん)と共にオオトシはスセリを称賛(しょうさん)した。


「…予定外の結果でありまするが…無事に契り交わされたでありまする…!」


 その盟主のイタク(言の葉)を聞いてスセリは驚いて尋ねる。


「予定外!? え…とっ…じゃぁボクはホントはどーゆー予定だったの?」


 これまた言いにくそうに盟主は応える…。


「…契約叶わず一度立ち帰るはずでありもうした…そうなる(わけ)もありまする(ゆえ)…。外より…アナタを(たす)くチカラ(はたら)きて流れ変わりしと観えまする…。そのモノと共に歩まれる限り…問題はないかと思われまする…。さぁ…行きなされ…」


「…まって!契約できなかったワケって!?できたのはダレのおかげなの?」


「…訳はお知りにならぬ方が賢明(けんめい)かと。誰か…は…アナタの一番近しいモノでありまする…それではこれにてさらばでありまする…」


 盟主はそうイタクを(のこ)し奥へと去っていってしまった…。


「無事に契約は叶いました…一旦皆の元へ戻りましょう」


「う、うん!」


 そのオオトシのイタクに、イレンカ巡らす所は大いにあれどスセリは言われた通り戻る事にした。


(契約は出来たし…イマはワカんないこと考えるよりも…ね♪)


 二人が出てこようする刻にすでに二つの視線を観じた。


「…でてきたわ!」


「あ、うまく行ったみたいだね!」


「え?本当ですか?…良かったです!」


 確信もって事を理解していたキクリ、見た瞬間観じ取ったミヅチ、二人に教えられてやっと安堵(あんど)するヤチホコ…これが今の彼らの修練(しゅうれん)の差である。


「みんなー!ヤチー!おまたせ~! 出来たよ!」


 皆が視界に入った瞬間スセリはそう叫んだ。

 スセリは皆に今までのあらましを伝えた。


「へぇ~。七つのって言われたのにですか…すごいですね!」


「うん。…でもね、それは…ヤチのおかげみたい!ずっと…サムペ=ノミ(心の中で祈る)していてくれたでしょ?…ありがとう!はやかったの…そのおかげみたい♪」


「僕はまだまだウェウェク=クル(未熟モノ)ですが…カムイノミ(祈り)は…イレンカ(ヲモヒ)は…やはり届くのですね♪」


 そのイタクを聞き、(ほお)紅潮(こうちょう)させながら満面(まんめん)の笑みでスセリは言う。


「あのね…ヤチのそばにいれば大丈夫って言われたよ…。だ、だから…これからも…よろしくね♪」


「え?…あ、は、はい!スセリちゃん!」


 ヤチホコはまったくもって良く解らなかったが…そう言う事なのだとしておくことにした。


(何はともあれ…これで準備出来ましたね…!)


 帰ってからは例によって盛大(せいだい)(うたげ)が待っていたようである…。


(スス湯浴み でもまた色々とありましたが…何とか無事に…です♪)


予定外との事でしたが…無事に契約できて良かったですねスセリ♪


用語説明ですm(__)m


・コラムヌカラ:力量・度胸を試す→「試練しれん」としました。

・ヤレパチプ:陸の+大きな船→「(陸も走れる)万能大型船」としました。

・ペケレ=レラ=エホラリ:清い+風+鎮座する、住む→「聖なる風住まう処」としました。

・メレメル=ケ:(星が)瞬く(またたく)→「明滅めいめつ」としました。

・スクス=トイ:真昼の明るい日差し→「明るく日の差し込む昼」としました。

・シリ=クンネ:シリ=クンネ:大地+黒い、夜、日が暮れる→「日が暮れ闇覆いし夜」としました。

・シ=カリ=カリ:ぐるぐる回る→「廻り廻って(めぐりめぐって)」としました。

・シンノ=レラ:そのまま 真の+風 で「真なる風」としました。

・ウェウェク=クル:(ぶどうが)熟していない+人→「未熟モノ」としました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ