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第34倭 覚悟決めしピリカメノコ

タカヒコ治めしイトムコカヌ=モシリへ…

「…おお、よく来たな、(トキ)が許すならゆっくりしていくが良い」


「ありがとタカ兄!…モシリ(クニ)の方は大分いいの?」


 スセリはお礼を述べその様に(たず)ねた。

 タカヒコはそれに対し力強く応えた。


「…ああ!強力な助っ人(すけっと)も来て順調(じゅんちょう)復興(ふっこう)している」


「…助っ人…ですか…?」


 ヤチホコがそう尋ねると少し照れくさそうに笑いながら応える。


「はは…そろそろ戻って来ると思うが…」


 タカヒコがそう言い終えた直後遠くから声が聞こえてきた。


「タカヒコさま~ただいま戻りましたわ~!」


 声と共に(あらわ)れたのは…アミプ()が透けるほど汗をかいたミカヅチであった。


「これで倒壊(とうかい)したチセ()粗方(あらかた)立て直せましたわ♪」


 晴れやかな表情でそう言いながらタカヒコにコテムサイネ(手を広げて抱きつく) してきた。


「え?え?…タカ兄…ミカヅチ…ヲノコとヲノコ…あれれ?ホントはメノコでしたっけ…?」


 まったく理解できていないヤチホコはその状況に(おどろ)戸惑(とまど)っていた。


「…ヤチってばホンット…この手のコトはニブいね!前にきいたでショ!ミカヅチはメノコよ!…でもまさかタカ兄がミカヅチ…さんと…ボクちょっとびっくり♪」


 スセリはヤチホコに(あき)れ、そしてタカヒコに驚いてその様に言った。


 タカヒコは頭を()きながら少し場都合(ばつごう)が悪そうに照れながら話しだした。


「最初…また()めてきたのかと思いきや…単騎(たんき)で…しかも尋常(じんじょう)(ため)し合いを申し出てきて、な。…結局(けっきょく)罪滅(つみほろ)ぼしの為…おれにチカラを(ゆず)った上でイノトゥを()たれようとしていてな。何と言うか…このメノコもまた何モノかの犠牲者だと分かり…」


「うんうん!で、良く()たらとってもピリカメノコだったと♪」


 少しだけイラムモッカ(からかい半分)イレンカ(ヲモヒ)でにやけながらスセリは相槌(あいづち)を返した。

 そのイタク(言の葉)に少し顔を赤らめながらタカヒコが応える。


「…まぁ…そういう事だ。見上げたイレンカであったしな。ひとかけらのみチカラを貰い後は返した故…ほぼ以前のままの強さだ」


「…良くその選択が出来ましたね…さすがです!」


 ヤチホコは感心してそう言った。


「ああ…あの刻に…負けたおかげでおれも同じ高みに上がれ…先の試し合いの中で…生い立ち、過去、(じゅ)を受けし事…それらを聞き、知りし事により…ウォラムコテ(愛おしい)イレンカ湧いてきてな…トゥムアスヌ(優れたる強さ)エオリパック(尊敬する)できるし…そばにいてもらう事にした」


「そうだったんだね!…ミカヅチさん…よかったね♪」


 スセリは過去はどうあれ今の状況をラム=アサム(心の底)から祝福(しゅくふく)した。

 むしろ(おの)(あやま)(おか)ししモシリにてその身をもって(つぐな)える覚悟(かくご)純粋(じゅんすい)(すご)いと思った。


(…おんなじ刻…ボクに出来るかな…)


 その様にスセリがイレンカ巡らせていると…するするとミカヅチの(みずら)が落ちてきて、アミプを羽織(はお)りなおすとそこには立派なヒメが(あらわ)れた。


「ヤチホコさん、スセリさん、ワタシのシンノ=レ(真名)は…ミカツヒメでございます。今後ともこのモシリに…ア=エラマス(ステキ)トゥムアスヌ(チカラ強き)このお方に()くして(まい)りますので…よろしくですわ」


 ミカヅチ…ミカツヒメが恭しく手をつき頭を下げその様に言うと…ヤチホコはその()()いも(ふく)め…髪を下ろし(つや)やかなアミプを(まと)いミカツヒメとなったモノに見惚(みと)れてしまった。


「…キンラ=ピリカ=レカ(艶やかで美しい)ですね…ミカヅ…いえミカツヒメさん…♪」


「お()めにあずかり有り(がた)(ぞん)じますわヤチホコさん♪」


 そう言ってミカツヒメは微笑(ほほえ)んだ。そこに以前の禍々(まがまが)しさは微塵(みじん)(かん)じられなかった…。


「二人とも…すごくいいフンイキだけど…もしかして…」


 スセリがそう尋ねるとタカヒコは少しだけ表情に(かげ)りを見せたがすぐにとりなして(こた)える。


「…残念ながら…まだだ。その、せっかくなので大事にとっていると言うか…おれがきちんとこのモシリを支えるルーガル()となれるまで…ミカツヒメがラム=アサムより信頼(しんらい)できる存在となった(あかつき)にと…思っていてな」


「…不器用(ぶきよう)ですがほんにお優しいお方ですわ…ほほ♡それも本当でございますが…ワタシが過去を乗り()えられるのをお待ち下さっているのですわ」


 ミカツヒメは…以前戦いの最中(さなか)語った様に…自分のモシリをトゥム(氣力)を使えし野党集団に(ほろ)ぼされ、両親をはじめアルステッカ(皆殺しにする)されるのを見せつけられながら自身も凌辱(りょうじょく)され…命からがら逃げのびし後、復讐(ふくしゅう)の為異常(いじょう)修練(しゅうれん)()む中で出会いしフツノミタマよりすべての剣技(けんぎ)(さず)かり目的を()たしたが…この経験(けいけん)(つら)さを(いま)(ぬぐ)いきれず…ヲノコより求められし刻…今もまだ当時のことが眼前(がんぜん)()かび上がりとても()えきれなく抵抗感(ていこうかん)がある事…しかしそれがタカヒコのおかげで少しずつ(やわ)らいできていることをヤチホコ達に(つつ)(かく)さずに伝えた。


「…そう、そうだったの…」


 スセリは涙ながらにミカツヒメに抱きついた。


「よく…イノトゥ(いのち)をここまでつむいでこれたね…ボクならとても…耐えられなかったと思う…。タカ兄に出会えて…仲良くなれてホントによかったね…!」


「スセリさん…ありがとうございます…。ですが…ワタシの犯した罪は…消える事はありませんわ…でも、だからこそ…このモシリでウタラ(ひとびと)の為…このお方の為…全力を注ぎこんでゆきますわ!」


「…きっと…みんなにもミカツヒメさんのイレンカ…通じますよ!」


 ヤチホコはにこやかな笑顔でそう伝えた。そしてコヤイラム(忘れる)していた本題を話し始めた。


「…成る程…|ラムハプル=モシリ(自然の)=コロ=クル(盟主)契約(けいやく)せしモノを、か…」


 タカヒコは確かに今のチカラ()る為修業(しゅぎょう)一環(いっかん)ですでに契約完了していた。


「…確かに…おれは出来る…しかし…今のモシリを…ミカツヒメをおいては…」


 熟考(じゅくこう)(なや)んだ末…そう伝えてきたタカヒコにとても無理強(むりじ)いは出来なかった。

 モシリの状態も…ミカツヒメも…とても良くなって来ている今が一番肝心(かんじん)な刻である事はヤチホコ達も良く(わか)っていた。


「そうです…よね…でもそれでいいと思います♪契約者(けいやくしゃ)のあては…他にもいますからね♪」


「すまないがそう言ってくれると有り難い。このモシリ落ち着きし刻…助力(じょりょく)()しまぬからな!」


「ハイ、ありがとうございます…!…では…」


 立ち上がろうとしたヤチホコは(そで)(つま)まれて止められた。


「…あせらずとも…少しは持て()しをさせて下さりは(いた)しませぬのでしょうか?」


 ミカツヒメがそう言うや(いな)や大皿に乗った料理が大量に出てきた。


「これから丁度皆とオヌマン=イペ(夕食)でしたのよ…是非にお召し下さりませ♪」


「うわ~!ありがとうございます♪思えば急ぐ必要はありませんでしたね♪」


 ヤチホコはそう言いながら座りなおして祈りをささげ頂くことにした。


「ミカツヒメさんありがと♪エンリョなくボクもいただくね♪」


 二人は皆と共に料理を囲み目いっぱい食べた。


「…こ、これはちょっと…う、動けません…」


「ボクも美味しくってついつい…」


 二人を見て微笑みながらミカツヒメが立ち上がった。


「…さあ!お腹も満たされたでしょうし…そろそろ披露(ひろう)させていただきますわ」


 そう言うと前に歩み出てアン()(あお)ぎ…華麗(かれい)に舞い始めた…。

 ゆるやかで繊細(せんさい)に…のびやかで大胆に…アミプが(はだ)けようと構わず(はげ)しく力強く。

 それは観るモノすべてを釘付けにするような独特なチカラを発するモノであった。

 (あら)わになったピリカ=トット(美しい乳房部)、しなやかな脚線美(きゃくせんび)に皆目を(うば)われた。


(ふわぁ…なんて…アスカンネ=ピリカ(品格あるきれいさ) なのでしょう…タギリ姉ともまた違って…さらに力強くもあり…何とキンラ=ピリカ=レカ(艶やかで美しい)なのでしょう…)


 ヤチホコは(ほお)紅潮(こうちょう)させて見惚れてしまった。

 ナニカを(かん)じ横を見ると…タカヒコもヤチホコ同様に顔面(がんめん)紅潮状態で見惚れていた…。


ラム=エトク(勇猛で屈強)なタカ兄も…この(まい)の前ではひとたまりもありませんね…♪)


 (またた)く間に夜も()けてゆき…気付くと皆その場で気分よく眠ってしまっていた…。


「…ゆるりとお休みくださいませ…明くる日もまたカムイ=ノカン=クル(神の子)たらんと共にイワンケノ(元気に)アリキキノ(精を出す)(かな)(たま)へ…」


 ミカツヒメはアンを仰ぎその様にイノンノイタク(祈りの言葉)を唱えて祈願(きがん)するとトゥムを解放して皆を包むほどの巨大な天蓋(てんがい)()っていく…。


「…これで寒いこともないでしょう。では皆様良き夢を…」


 ミカツヒメはそう言い終えると静かに自分のチセ()へ帰っていった。


 あくる朝、気分よくヤチホコが目覚めるとすでに皆の姿はなく見回しても残っているのは(となり)寝息(ねいき)を立てるスセリだけであった…。


(昨日あれだけはしゃぎましたのに…皆さん元気ですね…♪)


 ヤチホコも心なしかいつもよりケゥエ(身体)が軽くより元気に動けるように観じられた。


(…昨日の舞には…このような効果もあったのですね…!)


 エシカルン(思い出す)するとまた頬が上気(じょうき)して赤みを()びるのを感じる。


(キンラ=ピリカ=レカで…イワンケノになる…すごいですね…)


 もう初めてあった頃のミカヅチはいないのだとヤチホコはあらためて観じたのであった。


(…ウタラと打ち解けるのも時間の問題でしょうね…♪)


 タカヒコとミカツヒメに挨拶(あいさつ)をしてイトムコカヌ=モシリ(神託啓示の国)を後にしてヤチホコ達は…ムカツヒメのいるトゥスクル=モシリのヤマタイ(港ありし都)へと向かっていった。

贖罪(しょくざい:つみをつぐなう)をする為に覚悟を決めてあえてこのモシリに残るのはすごいですね♪

自分の辛い経験も乗り越えられると良いですね♪


用語説明です~m(__)m

・ウォラムコテ:(男女が)愛し合う(古い表現)ここから少し奥ゆかしく「愛おしい」としました。

・トゥムアスヌ:力強い そのままです♪

・シンノ=レ:真の 名 で「真名まな」としました。

・ラム=エトク:勇敢さ 勇者 勇猛さ ここらあたりから「勇猛で屈強」としました。

・イワンケノ=アリキキノ:元気で+精一杯→「元気に精を出す」としました。

・ヤマタイ:陸の 船着き場 ある 所→「港のある集落」→「港ありし都」としました。

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