第33倭 ラムハプル=モシリ=コロ=クルとの契約
ルースに戻ってきた一行は…
「ただいま!…とうさんいる?」
扉を開けてアビヒコがそう尋ねると奥にいた香が応える。
「おかえり♪もう少しで帰ってくるよ!なんでも例の布を沢山作る為の打ち合わせだって!」
着々とパセ=コル=モシリの荒地を有効利用する計画も進んでいる様である。
「遠かったでしょ!これどーぞ♪」
香はヤチホコ達に何やら飲み物を持ってきた。
「わ、何でしょう?何か甘そうな香りがしますね♪いただきま~す♪」
ヤチホコがそう言って真っ先に手を付け…一気に飲み干した。
「う、うわ!ナニコレとてもおいしいです!」
皆も手に取り飲んでは驚く。
「ふふ、これも父さんの発明よ♪」
「ええ?そうなんだ?」
「甜菜 を煮詰めたモノと…酸味のある果実の汁、そして一つまみのおしおを足したモノよ♪」
「そ、それだけなのですか?…ケゥエに溶ける様に入っていきましたよ!」
「なんでもそれぞれの濃さが大事なんだって!とくにおしお!…思ったより入っているのよ♪でもそれが疲れたケゥエに素早く入っていくヒケツですって♪」
香の話から成分的には現在のスポーツドリンクや経口補水液と思われる。
修行しながら帰還してきた一行の身体にはまさに染み入るモノであっただろう。
感心しながら補給を終えた頃、丁度ルースが帰ってきた。
「いやいやいや、イイ感じでウマくいきそうだ!おぉ?みんな帰ってきたのか?…あぁ、そうか、まだだもんな」
「ただいまです!…ルースさんは僕らが何故帰って来たのかわかるのですね!」
香に差し出された例のモノを飲み干してルースは応える。
「あぁ。…ウパスクマ=エ=テメン=アンキには…今のキミたちでは入れないからな。…しかし我なながらコイツはウマイ♪」
お代わりを頼みながらルースは話をつづけた。
「五つのトゥムの話は聞いたろ?あれってただ五属性そろえるだけじゃダメなんだわ。モシリに根付いたラムハプル=モシリ=コロ=クルと契約したものじゃないとな!」
「…盟主との契約…でありまするか、ルース殿」
ウガヤが確認する様にルースに聞いた。
「あぁ。修行の最中各属性に目覚めるモノもいるが、それだけではあの…シ=パセ=カムイには程遠い。所詮は己だけのチカラでしかないからな。しかし盟主と契約できれば…この世界に満つるトゥムを…正確には己の力量に合わせて借りられるようになる訳だ!当然自分だけの刻とではケタが違ってくる。」
「そうか、その状態の強い五属性のトゥムがないとだめなんだね!」
アビヒコが膝頭を勢いよく叩き指差ししながらにこやかに言う。
「おお!アビヒコ大正解♪そうなんだよ!その強いトゥムをチカラに扉は開く様に造られてるってワケ♪ハイ、じゃぁキミたちのする事は…」
「モシリに根付く盟主との契約、であるな!」
ルースはウガヤの返答に頷きながら話を続ける。
「その通り!…ただこれは…まず最初の契約は自分の一番永く住んだ場所…一番縁深いモシリで行わないとならない。アビヒコ達はここで可能だが、ヤチホコくんとスセリちゃんは…」
「…一旦ナ・ラに戻らないとですね…!」
「そういう事になる。それもあって初代も説明を私にさせたんだろう。ここからならキミたちの帰りも速いし、アビヒコやミチヒメちゃんも…すぐ契約を試せるだろうからな!」
「伏犠さまはやはり真なる神威だけあってさすがですね…!」
「…あぁ。気付いたかもしれないがあの部屋の面々は…皆カムイだ」
「やっぱりね~!みんなフツ~じゃなかったもん!」
「ミチヒメならいい勝負できたかもしれませんね♪」
ミチヒメのイタクにその様に返答するヤチホコに苦笑してルースが応える。
「はは、さすがに敵わんだろう。境涯が違うからな。」
「境涯…ですか…?」
「んー、何だ、ラマトゥの鍛えられ方の差…とでも言ったら良いか?」
頭を掻きながらその様に応えるルースに対し反芻する様にヤチホコは尋ねる。
「身体でも霊体でもなく…たましいの…ですか?」
「ああ。シ=パセ=カムイは例外なく“天”の境涯に至っている。我々は通常“人”と言って良く知る緋徒やウタラのラムの状態だが、カンタンに言えばラマトゥも…ラムも…カムイになってるって事だ。で、それによって同じトゥムとヌプルでも…格が…質も強さもまるで変わるってコトだな。だからまぁ…たとえトゥムの総量で勝っていても格の違いで質も強さもあちらの方が数段上なのでよほどじゃない限り…」
「…かなわない…ってことね!」
身震いしながらミチヒメは言った。
「そんな方々がすごいっていうおとうさまって…伏犠さまに教えて頂きましたが…」
「あ?あそーか…ヤチホコくん達生まれる前だから知らないのか!…それはそれは名乗っていた通り凄まじかったもんだよ!…キムを削って平地にしたり…アトゥイに浮かぶポン=モシリを引き寄せてモシリを増やしたり…」
「えええ!それではおとぎ話のまんまではないですか!」
「すごいのは力業ではなく、キムンカムイ モシリカムイ等とうまく話をつけて好意的に実現したところだよな!あれは…あのウマさは真似出来ん」
そのルースのイタクに半分呆れ、半分不思議そうにアビヒコが言う。
「…まねも何もとうさんは…ただの…」
「あー!まーそうだったな!…ただのウタラが出来る方法も…あるにはあるけどな…!」
「もしかして…ムカツヒメさま…おかあさまが出来ると言われている…」
「ヤチホコくん大正解!…まぁ…それこそカムイになるより難しいかもしれないけどな…」
「…そうなのですか…?」
「ああ…何せ出来るのは…さっきの境涯で言えば…“天”の上の上の上…だからな!」
「…それはちょっとやそっとではムリっぽ…む、むぐぐ…!」
「そのイタクは口に出しちゃだめよ!…あきらめなければきっとなんとかなるなる~♪のイレンカでいかないと!…ね♪」
瞬時にヤチホコの口を塞いで真摯な眼差しで…最後は微笑みながらミチヒメはそう言った。
「…そ、そうでしたねミチヒメ…果てしなく遠くではありますが」
「…私が知りえる限り為し得たのは確かにヤチホコくんとスセリちゃんのハポだけだ」
「そ、そうなのですね…おかあさま…確かにウタラとしては考えられない事が多すぎますものね…」
「うん、それはボクもそう思う…!」
「実はな…“空”のトゥム使えしカムイに対し、ヤチホコくんのハポと同じことできる真のトゥスクル …日霊女が祈る刻…物凄いチカラが出るんだよ?…と言う訳でスセリちゃん頑張りたまえ!」
「え?ボ、ボクが…日霊女…なんか柄じゃないケド…?」
少しだけイラムモッカなイレンカでルースが言う。
「おお?…いーのかい?神威と日霊女は二人で一組なんだよ?…もちろん…契り交わし互いに高め合う仲でもあるのだが?」
そのイタクで何やら頭に浮かび上がるモノが観えるや否や脊髄反射的に叫ぶようにスセリは応えた。
「ボボボクが…頑張る!ほかの…とは…ダメー!」
「ははは!その意気だ!為せば成る!ワタシの好きなイタクだ!」
二人のやり取りを…聞いているこちらの方が恥ずかしくなると思いながらもその強いイレンカは嬉しいと…スセリ同様赤面しながらヤチホコはその様に思った。
「さぁ、これで大体わかったね?明日よりさっそく各自試してみたらいい!」
「ハイ!」
今日はヤチホコ達も泊めてもらい明日の朝、久々にナ・ラへ戻る事にした。
(そう言えばタカ兄のモシリ…どうなりましたかね…?)
帰る道すがら立ち寄っていこうとヤチホコは思った。
(このあと…近くのカムイワッカ湧くススウシに香さん交えてみんなで行ったりなんだり…色々とかなりドタバタで大変でした…。香さんにイク=レしたあとのススはキケンでした…)
あくる朝…例によってとても馨しい匂いがしてきた。
「…イ、イラムカラプテっ!今日もお、おいしそうですね♪」
「ヤチホコちゃん!早安!…昨日…何かとんでもないコトしちゃったかなー?ごめんねー全然覚えてなくって」
(…どうやら完全にコヤイラムしている様ですね…きっとその方が…いいと思います…アナサプでしたし…しかし…イホスキすると…)
ヤチホコは首を勢い良く左右に振り昨日のことを振り払う。
おかげでチャス=ナタラだが幾分後ろめたかった…。
(…ま、まぁ…すぎたコトですし…)
気を取り直して皆を起こしに行った。
クンナノイペをとり終え皆に挨拶をしスセリとナ・ラへとロクンテゥを走らせた。
昨日気になったのでタカヒコの治めるイトムコカヌ=モシリを経由して帰る事にした。
タカヒコのモシリを経由していくようですね。
てん菜を使うと優しい甘さになりますよね♪
温泉で何があったかは…ご想像にお任せいたします(笑)
用語説明ですm(__)m
・甜菜:ティエンチャイ(中国語)、てん菜。現在もてん菜糖という形に加工して売られていますね。
・早安:おはよう(中国語)
・イラムカラプテ(イ=ラム=カラプ=テ):こんにちは はじめまして(正式なあいさつ)
…ヤチホコ、気が動転していたようですね(笑)
・コヤイラム:忘れる 思い出せない
・イホスキ:酔う。(お酒二酔うのも、のりものに酔うのも)
・チャス=ナタラ:さっぱりしている すっきりしている きれいな




