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第28倭 ミカヅチが目指す先に坐すラム=エトク=モノ=カタ=ルーガル

倭奴のどこかのモシリを目指すミカヅチです…

(…あの方に…何としてもお会いしてこれを献上いたしますわ…)


 皆と別れたミカヅチは独りひたすら南下し…()奴国(ナ・ラ)のとあるモシリ(クニ)を目指していた…。


下伽耶(アラカヤ)は…もう謝るウタラ()すらおりませんが…あのモシリは…皆様の住まうチセ()等の損壊についてもイアシンケ(償いをする)しないとなりませんわ…)


 トゥケチャロマプ(両刃の剣)に乗ってアトゥイ() を渡っていく。

 かなりの速度である。対岸へオヤン(上陸する)すると剣から降りてシリ(大地) に立つ。


「…たしか…この辺りだったはずですわ…」


 ミカヅチが記憶をたどり歩を進めていくとアイヌクル(人影) が観えてきた。


(…やはりワタシの接近…お気付きになられましたわね…)


 腕を組み悠然と立ちはだかるは…イトムコカヌ=モシリ(神託啓示の国)シ=サンガ(特ニ浄キ)=コロ=クル(神威誘ザ梛)()()のタカヒコであった。


「…お出迎えありがたく存じますわ。こちらから探す手間が省けましたわ…。」


「…先のロルンペ(戦い)では…おれのイヤイコォッカ(不甲斐なさ)をみせる結果となり…ウタラ()にも多大な被害を出させてしまった…。すべてはそなたのいでたちに惑わされし事も含めひとえにおれの未熟(みじゅく)さ故。…しかるに…本日は何用であるか?…如何(いか)なソナタであろうとも単身で我がモシリ(クニ)攻め入るとは思い(がた)いが…?」


「…お伝えしようとも(にわか)には信じて頂けぬと思いますわ…。ですので…ワタシが是が非にも献上(けんじょう)差し上げたくなりますよう…ラマトゥ(たましい)()さぶる素晴らしき…ラム=エトク(勇敢さ)下さりませ!」


 そう言うとミカヅチはトゥム(氣力)ヌプル(霊力)イラムノ=エトゥッカ(同時発動)させメル=ストゥ=マェ(輝く根源の力) (まと)いし例の状態へと変貌(へんぼう)した。


「…凄まじくも素晴らしいな…!我がモシリコ=コラゥキ(攻撃しに来た)した(トキ)は真なるチカラ隠したままであったか…つくづく己の未熟さに腹が立つ」


「…この…チカラは…ワタシのモノではありませぬ…さるお方から(たまわ)りしモノ…言いますれば…アン=カムイニス(広き夜空)に浮かびトカプチュプ(太陽)の光を受け優しくメレメル(輝く)するクンネチュプ()の如くですわ…。そうは言いましてもメレメルしているのもまた事実ですわ…。アナタさまも等しくメレメル出来なくば…一合でアン=カムイニスにてメレメルする事になりますわ…。覚悟のほどはよろしくて?」


「かまわん。…先に…礼を言っておこう…。先のロルンペのおかげで…ソナタと…共に同じノチウ()メレメル=ケ(瞬く)するニス()を眺める事叶ったなり!むん!」


 そう言うとタカヒコはトゥムを全開放しはじめた。見る間に大きさも強さも()り上げられていく。


「…素晴らしいですわ…。トゥムは明らかにワタシを上回っておりますわ。ですが…そのままではみずからノチウとなりて天に昇るようなものですわ…」


「数多のヤオヨロズ(精霊神)よ!ラムハプル=ヌプル(感応道交)し給え!シンナカムイ(変成神威)させ給え!」


 その(じゅ)と共にタカヒコの背後に無数のヌプル=ケゥエ(霊体)が浮かび上がり、次々にトゥレン=カムイ(憑依守護神)(ごと)くタカヒコに宿(やど)っていき、その度にヌプルが湧き出てくる。

 (またた)く間に全身を(おお)いつくし際限なく拡散しながら吹き上がる。


「…我が(わざ)我が為すに非ず(わ な  あら)カムイ=エウン(顕現)ラム=エトク=モノ(猛宗像)=カタ=ルーガル(之大王)!」


 拡散放出(かくさんほうしゅつ)されていたヌプルが急速にタカヒコに集束(しゅうそく)していき等身大(とうしんだい)まで圧縮された瞬間(しゅんかん)トゥムとウカムレ(融合)していく。

 全身を覆うモシリ=ハイヨクペ(大地の鎧)と化したメル=ストゥ=マェ(輝く根源の力)(まと)いしモノとなった。


「…(タケ)りしも…禅定抱(ぜんじょういだ)(ましま)大王(オオキミ)さま…素晴らしいですわ…!よくぞここまで自力で練り上げられましたわ!」


「おれ(ひと)りでは(かな)わぬ事。精霊神(ヤオヨロズ)と化したウタラ達の協力によりヌプル賜る事によって()せるモノ。故に我が業、我が為すに非ず、だ!」


「そのイレンカ(お気持ち)と…そのお姿(すがた)こそ…(きわ)みに至る道へ歩みし証拠ですわ!…さぁ…その状態でございましたらワタシにも不服などございませんわ…いざ!参りますわ!」


「おう!」


 ミカヅチはチカラを込めてトゥケチャロマプ(両刃の剣)()(はら)う。音を()()りにして見えざる刃が空を切り()きながらすさまじい速度でタカヒコに(おそ)()かる。

 タカヒコは身体がうしろ向きになるほど大きく振りかぶって強烈(きょうれつ)掌底(しょうてい)を打ち出す。

 その衝撃(しょうげき)超高圧縮(ちょうこうあっしゅく)された空気が砲弾(ほうだん)()してミカヅチの(やいば)衝突(しょうとつ)すると大きな破裂音(はれつおん)と共に対消滅(ついしょうめつ)してしまった。


(かた)めし(くう)(はな)ち我が刃を打ち消すとは…流石(さすが)ですわ!…では…これならいかがなさりますかしら?…いやぁ~!猛御雷(タケリシミカヅチ)!!」


 ミカヅチは持てるトゥムを全開放しトゥケチャロマプに全て伝わらせ上空(じょうくう)跳躍(ちょうやく)しそこから全力の打ち下ろしの斬撃(ざんげき)(はな)った!


「今のおれには…(ただ)のトゥムは…効かぬ!」


 タカヒコは身動きせず仁王立(におうだ)ちに(かま)えたまま(おのれ)身体(ケゥエ)で受け止めた。


「…確かに…ホンモノですわ…!それでしたら…次は…真なるチカラで…参りますわ!」


 そう言うとミカヅチは(ツルギ)を天にかざし裂帛(れっぱく)気合(きあい)を放ち(さけ)ぶ!


「いやぁぁぁっ!ニスラム(曇天)に住まうカンナカムイ(雷ノ神)に申します!その大いなるチカラわが剣にお授けくださいませ!」


 轟音(ごうおん)と共にミカヅチの剣めがけすさまじいカムイ=イメル(稲妻:いなずま)が落ちてくる!それを己のメル=ストゥ=マェとウカムレ=エトゥッカ(融合発動)した!


「…参りますわ…! 神之如威力(カムイ=アン=マェ) !猛御雷(タケリシミカヅチ)ッ!!!」


 先程(さきほど)以上のはるか上空へ跳躍しカムイ=イメル(ほとばし)る剣を大上段から全力で振り下ろしてきた!


モシリ=コシムプ(大地の精霊)よ! すべてを(さえぎ)ヤイキッカラ=チャシ(防楯:ぼうじゅん)(あらわ)(たま)え! 神之如威力(カムイ=アン=マェ)! パセ=メトト(ヲヲヤ)ゥス=カムイ(マツミ)!」


 タカヒコが両腕(りょううで)(かざ)(とな)えると両前腕(ぜんわん)に巨大な岩の(たて)出現(しゅつげん)した。およそ剣でどうにか出来るモノでは無い様に()える。


「それがただのチス()でしたらアマム()(ごと)()り取りましてよ!」


 ミカヅチは躊躇(ちゅうちょ)せず全力で剣を振り下ろした。

 凄まじい衝突音と共に周囲へとオレプンぺ(津波)の様に衝撃波(しょうげきは)が放出され木も岩もすべて吹き飛んでしまった。


「…凄まじき剣撃(けんげき)…!斯様(かよう)剣筋(けんすじ)祖父(エカシ)スサノヲ以来…!」


 (おどろ)称賛(しょうさん)しながらもタカヒコはほぼ無傷で受け止め(しの)いでいた。


「ほ、ほほ…この技でその程度しか傷を負わぬのでしたら…今のワタシにアナタさまを倒す(すべ)はございませんわ…」


 そう言ってミカヅチはゆっくりと剣を下ろした。


「…では…降参すると言うのであるな?」


「ほほ、そうでございますわ…参りましたわ…」


(…まだまだ余力有りと観えるが…何かの(さく)か…?)


 タカヒコは警戒しながら様子を伺う。


(…今回のこのモノ…ミカヅチにはウェンイレンカ(悪想念)はまったく(かん)じぬ…むしろ此度(こたび)尋常(じんじょう)(ため)し合いであった…)


「…ワタシに勝ったのですから…プマコレ(報酬を渡す)として…このチカラ…お受け取り下さいませ…」


 そう言うとミカヅチは己の持てる全メル=ストゥ=マェを両手に凝縮(ぎょうしゅく)させていき…稲妻(いなずま)を纏う光球に変貌した。


「…これを…アスコレアニ(両手で抱え持つ)してくださいまし…」


 言われるままに両手を差し出す。すると微笑みながら光球をゆっくりとタカヒコの両手に乗せた。

 触れた途端衝撃(とたんしょうげき)が身体を(つらぬ)く!


「ぬぐぉ!」


 身体は仰け反(の ぞ)り手はあらぬ方に曲がり傍目(はため)にはミカヅチに両上肢(りょうじょうし)をへし折られているかの(ごと)()えたであろう…。


テクパ=(究極)ラムハプル(付与)=ヌプル(霊呪)!ワタシの全てお受け取り下さいまし!」


 そっとミカヅチは光球から手を離す。(みずら)がほどけ精悍(せいかん)さと|(けわ)しさの表立(おもてだ)った顔立ちが(おだ)やかさと(あい)らしさを(かも)し出し、次いでその中性的(ちゅうせいてき)で細くしなやかな肢体(したい)はそのままに女性的な丸みを()びていく。

 力無く座り込んだその(さま)はまさしくヒメと呼ぶにふさわしいモノであった。


「これで…ワタシにはもうウタラ並のトゥムやヌプルしかございません。…今の状態でアナタさまを拝見いたしますと…いかに私がウタラ達に絶望を与え続けてきた存在なのかハッキリと(わか)りますわ…!さぁ…モシリをウェンテ(滅ぼす)したウェンプリ=ペ(罪人)…一思いに消し去ってくださいまし!」


 そう言うと…ミカヅチ…今はもうミカツヒメに戻った彼女は目を閉じ両手を広げて天を(あお)ぎ横たわった。

 迷いも恐れも後悔も一切観じず、()すべき事を為した刻の様な晴れやかな表情と(たたず)まいであった。


(…キンラ=ピリカ=レカ(う、美しい)…。こやつ…真にメノコであったか…。年の頃はおれとさほど変わらぬ…これは…)


 タカヒコはミカツヒメに歩み寄り片膝をつくと優しくそっと(ほお)を撫でる。


「…おれの…負けだ…。オマエは…スゴイ奴だ。そして…キンラ=ピリカ=レカ…」


 先のムカツヒメ以来のエサムペルイルイ胸の高鳴りをタカヒコは感じた。オラムコテしてしまった事が表情にもありありと出ているだろうと思いながらも、そんな己の醜態がどうでも良くなる程のピリカメノコであった。


「…ワタシをエラマス(お気に召す)されましたのなら…どうぞお望みのまま…お好きにしてくださると良いですわ…」


 目を開きタカヒコを見つめそう言うと再び目を閉じた。

 タカヒコはアドレナリン多量分泌(たりょうぶんぴ)により顔面紅潮(がんめんこうちょう)心拍数(しんぱくすう)血圧上昇(けつあつじょうしょう)上肢振戦(じょうししんせん)手掌発汗(しゅしょうはっかん)自律神経(じりつしんけい)交感神経(こうかんしんけい)優位状態(ゆういじょうたい)(てい)し…引きずられるようにラム()イレンカ(ヲモヒ)眼前(がんぜん)無抵抗(むていこう)ピリカメノコ(美しき乙女)をイレンカのまま好きにしたい衝動(しょうどう)(とら)われそうになった。


「…もう…イッケウェ(目的)は果たしましたわ…後はこの身がどうなろうとも…その果てにイノトゥ(生命)果てるとしても一向に構いませんわ…さぁ…」


 今の彼女はタカヒコのイレンカひとつでどうとでもなる存在である。

 だが、タカヒコはラム=アサム(心の奥底)より()き上がる(はげ)しい衝動に必死で(あらが)っていた。


「…オマエ…いや…ソナタが…エラムルスイ(この手に欲しい)でたまらぬ…しかし…今は(ちぎ)る事かなわぬ…」


何故(なにゆえ)?ワタシはお望みのままにと申し上げてらっしゃいますのに…!」


「イレンカ通じ合い…ウコサムペ=ピリカ(慈しみあい)なくして…ウ=ウェラマス(愛し合う)する事なかれ」


「…それは一体…?」


()しくも…ソナタに敗れし刻…傷ついたケゥエ(身体) をトゥサレ(癒す)する為…ムカツヒメ様の元へ(うかが)った際に…その…テクニマゥポ(手当療法)テム=パ=テムパ(手技療法)…などの(さい)(たまわ)ったイタク(言の葉)だ」


「…そんな事…ワタシはすでにアナタさまのモノですわ。どう(あつか)おうとご自由にして下さると良いですわ」


 その言の葉を聞いてタカヒコはマク=ケ=サム=ア《意を決する》な表情で言う。


「…では…自由にさせてもらう…むん!」


 タカヒコは気合と共に先の光球を引き裂いていく…!

 元の一割ほどの小さな光球を手にしコッパラ(胸元)に…ラマトゥ(たましい)にかざす。

 すると何の抵抗もなくすぅっと身体に入っていった。

 残りの殆どを…再度両の手を(かざ)しイレンカ集中して光球と化す。

 そのままミカツヒメのコッパラ~その奥のラマトゥへと挿入していく。


「ナ、何故この様な…あぁ…入ってきますわ…ワタシの奥…ラマトゥまで…」


 戸惑いと抵抗はあれど挿入(そうにゅう)されしその光球に宿るチカラをミカツヒメは受け入れて己の奥深く…ラマトゥに刻み付けた。

 全身が一瞬メレメル(輝き)し、先のミカヅチの(トキ)同様生気溢(せいきあふ)れる状態となった。


「…こ、これは…変成男子(へんじょうなんし) せずともトゥムが…御せますわ…?」


「そなたが研鑽(けんさん)の果てに手にしたチカラ。(ぎょ)せぬ道理はなかろう」


 おかしな事をとばかりに笑みを浮かべながらタカヒコは言った。


「しかし…あの…復讐(ふくしゅう)(ちか)った刻以来…ヲノコになりませんとチカラを(ふる)えませんでしたわ…」


「それも…(おの)がイレンカでつくった(しば)りであろう」


「ワタシの…イレンカで…?」


「あぁ!そなたのチカラ…一部もらった故…そこに宿りしイレンカも一緒に受け取った故…委細承知(いさいしょうち)した…!」


「…!」


 はからずもミカツヒメは知られたくない()まわしき過去を知られてしまい、恥辱(ちじょく)絶望感(ぜつぼうかん)により力無く項垂(うなだ)れてしまった。


「…そう…ですわ…ワタシ…メノコとしての価値などないのですわ…」


「その様な事は決してない!」


 強い口調でミカツヒメの言葉を(さえぎ)るようにタカヒコは言った。


「そなたは素晴らしいピリカメノコだ!その上…おれ自身のみではかなわない位に強い…!剣を(たずさ)えたパセ=トゥスクル(大日霊女)さまの如く…!おれは…そんな強さと美しさを(あわ)せ持つソナタに…ソナタを…オラムコテ(惚れこんで)してしまった。だから…所有や支配ではなく…ウ=ウェラマス(愛し合う)する為にしたい…。そなたのそのラム()、イレンカ…癒やす(トゥサレ)事出来る刻まで待つ故…共に歩んでゆかぬか?おれのヒメとして!」


 その言の葉(イタク)聞いた瞬間…ミカツヒメの両目から止めどなく(なみだ)(あふ)れ出た。タカヒコはそっと近寄(ちかよ)り…少し()れくさそうに肩に手をかけ優しく抱き()せた。


「ワタシは…アナタさまのモシリ滅ぼしものですわ…それでもこのような事が許されてよろしいのでしょうかしら…?」


「かまわぬ、と言えばウソになるな。良きイレンカ抱けずにウェンイレンカぶつけるモノも多くいるだろう。…すべて受け入れて…受け止めた上で生きていくんだ…!死するよりも辛き中それでも前に歩め!…おれは常にソナタの(かたわ)らで支えていく!」


「タカヒコさま…。これは…もう…“かしこまりましたわ、(おお)せのままに”としかお返しのしようがありませんわ」


 泣き笑いでそう伝えるミカツヒメは正に神がかり的な美しさ(キンラ=ピリカ=レカ)であった。

 たまらなくなり反射的(はんしゃてき)に身体を引き寄せ優しく見つめる。ミカツヒメは優しく微笑んでそっと目を伏せた。


(ひとつずつ…ウカムレ(重ねあって)していこう…我が…ヒメよ…ソナタのウェンプリ()…イレンカ…苦しみも…共に受け止めていこう…)


「…やぁっと…ニクネ=カムイ(修羅)()け、真なるアスラ…ラマットゥム=ペ(生命生氣)ケレ=カムイ(の善神)境涯(きょうがい)へ上がって来たのう、待ち焦がれていたぞぃ…」


 口唇重ね合う(チャプス=ウカムレ)寸前で完全に無防備(むぼうび)だった二人は、不意(ふい)()かれ(おどろ)きの拍子(ひょうし)に飛び退()いてしまった。

 声のした方に視線を移すと…何とそれはミカヅチの両刃の剣(トゥケチャロマプ)であった。


「ワシがフツノミタマ…ミカヅチのラムと境涯が修羅(ニクネ=カムイ)から上がれるまで自神(おのれ)(ふう)をかけ(ただ)の剣と化しておったのじゃ」


「お、御師匠(おししょう)さま!いなくなられたのではなかったのですね!」


「ミカヅチ…お主にかけていた封…ワシがそばにいなくては(はじ)かれてしまうからのう…それ位あの刻のお主の悪想念(ウェンイレンカ)は強烈じゃった…。元々…オウペカ=コイキ(正しく怒り戦う)=カムイ(闘神)のイレンカじゃったとしても…(とら)われ支配されてしまっては…ニクネ=カムイ(修羅)と成り果ててしまうんじゃ…きちんと戻ってこれるか心配で離れられんイレンカもあったわい…」


皆伝(かいでん)際賜(さいたまわ)りし剣とばかり思いこんでおりましたわ…」


「あの刻使いし剣は修業したあの山にあるチス()()しておるわい。アレは実はワシのウサレイエ=ラマトゥ(分御魂:ワケミタマ)…故に今のお主であれば…持てるチカラを何倍にもしてくれるであろう♪」


 そこまで話すと剣の形が(くず)れゆっくりと人型になっていく…。


「本当に…。…おひさしゅうございますわ」


「うむ。良きモノとも出逢いて何よりじゃ♪…タカヒコ…いや…ワシのひ孫(サンミッポ)モノ=カタ=ルーガル(宗像之王)よ、ミカヅチことミカツヒメ…頼んだぞよ!」


「…え?あ!フツノミタマ…さま…そうか!祖父(エカシ)…スサノヲさまの…!」


「いかにも。あの刻のヘカチ(ワッパ)が立派になりよってからに…」


 話しによると幼少の頃に一度会っていると言う。

 母タギリと…父と…スサノ王と…生まれたばかりの妹のミチヒメと共に。


「…あ!た、確かに!ミチヒメが生まれし刻に!」


「そーじゃ。素晴らしきヒメが生まれたと聞き足を運んだのじゃ」


 ミチヒメは…確かに幼少の頃より類稀(たぐいまれ)なるチカラを発していた。

 誰からかヌプルを受け取るとその強さに応じ己の中に眠る莫大(ばくだい)なトゥムを使うことが出来た。

 その強さは正に真なるカムイと呼ばれるモノが持つそれであった。


(…あの頃から…モノが(ちが)っていたよな…)


「…忌憚(きたん)なく言わせて頂きますと…今のタカヒコさまは…あるいは…ミチヒメさんよりも上手(うわて)ですわ♪」


 ミカツヒメが微笑みながらそう言った。


「彼女はまわりにヌプルの使い手がいなければただのマッカチ(少女)ですわ。しかも限界を超えた…先のアナタさまのような状態は百数えるほどしかケゥエ(からだ)()えられませんわ。それでも驚くべき強さでございましたのも事実」


アリキキノ(一生懸命)研鑽(けんさん)()てにこそ真の強さはあるのじゃ。宗像之王(モノ=カタ=ルーガル)よ…今のそなたの様にじゃ♪」


 そのイタク(言の葉)を聞きペンラムコトロ(胸中)(つか)えがすぅっと取れた気がした…。


「努々コヤイラム(忘れる)せぬ様胸中(ペンラムコトロ)に刻み、更なる高みを目指します。我が業を為してくれるヤオヨロズと共に!」


「それでこそ我がひ孫(サンミッポ)じゃ!どれ…ちょいと待つのじゃ…」


 フツノミタマが手を(かざ)し集中する。しばらくするとオウセ(空中)にトゥケチャロマプが出現した。

 それは修業せし山に眠る本来のミカヅチの剣であった。


「…受け取るが良い。今のそなたのイレンカとチカラならば…必ずやラマトゥ宿りし剣となりて共に歩み大きな助けとなるであろう」


「これは…この剣と共に戦うソナタはおれより強いかもな!頼もしき限り…!」


 タカヒコのそのイタクにミカツヒメは一礼して微笑んで応える。


「…ゆとりが生まれた様ですわね。己がコトで手いっぱいのモノは他者を認め称賛(しょうさん)など出来ませんわ♪ ますますステキなヲノコとなられてうれしゅうございますわ♪」


 そう言われたタカヒコは少し照れくさそうにしながらもどこか(わだかま)りを払拭(ふっしょく)出来た晴れやかな顔つきになっていた。


「…さぁ…共に帰ろう我がモシリへ!」


「どれ…ワシも同行させてもらうかのう?」


「本当でございますか?…是が非にも足を運んで頂きましてご指導(しどう)の程よろしくお(たの)み申し上げますわ!」


「ホッホッホ♪ ぬしの剣技、更なる高みへと磨き甲斐がまだまだありそうじゃわい♪」


 二人と一神は足取りも軽やかにイトムコカヌ=モシリ(神託啓示の国) へ向かっていった。


11/27追記です。

本来の「アスラ・阿修羅」の意味で表現する為に改稿しましたm(__)m

もともと上記の通り…「生命生氣の善神」「正義と悪を正しく分ける神」「光明神」で最高神です♪


用語説明などです♪

仏教用語です

・感応道交(かんのうどうきょうと僕は読み方を習いました)衆生の機根と仏の応化が相互に通じて融合することをいいます。「最高の真理と自分がリンクしてつながる事」でいいと思います♪

この辺りから…ラムハプル=ヌプル(惜しまずすべての霊力を与えます)の単語を当てました。


その他の単語ですm(__)m

・テクパ:最高質のモノ、一番良いモノ=「シ=パセ(真に偉大で尊い)」=で、どちらも「究極」としました。

・カムイ=マェ:神之威力≠カムイ=マゥエ(神威之力)正確には…カムイ=ネノ=マェ「神威之如力」でしょう。「ネノ」は…~のように、~と同じに という意味です。

当初ミカヅチはカムイに至ったと思い込んでいた為に「神威之力」と言ったのでしょう。

・カムイ=エウン:顕現(神・あらわれる)元々かみさまなどの存在が顕れる事をいいますのでこのようにしました。

・イトムコカヌ:任せる、委任する、そして、指示を待つ、この意味と…単語の「音」から…「神託啓示」としました。代々のこのモシリの王さまは「シ=サンガ=コロ=クル:最高の神官たるべき立派なヒト=特ニ浄キ神威誘ザ梛」…モシリの(統一奴国の)大祭司もしくは最高神官を兼ねていたと思っていますので…史実でも名が残っていると僕は思っております♪

…巫女の男性版の名称は…ですよね♪

・パセ=メトトゥス=カムイ:偉大なる山之神→ヲヲヤマツミとさせていただきました。

・ニクネ=カムイ:鬼 より「修羅」を顕す言葉にしました。

・ラマットゥム=ペケレ=カムイ:ラマトゥ(たましいでもあり、「命」も顕します)+トゥム(氣力)+ペケレ=カムイ(善い神)→「生命生氣の善神」…本来のアスラの意味としました。

・オウペカ=コイキ=カムイ:正しい+怒る、戦う+神→「正しく怒り戦う闘神」としました。

一説には娘の為に戦ったとも、そして戦いに固執するあまり正義が正義でなくなったとも言われています。僕は「善神たるアスラ」の意味で作中に出させてもらいますm(__)m

・ペンラムコトロ:胸の内、内面

・テム=パ=テムパ:手技療法 元々も“もみ療治”の意味です

・テクニマゥポ:手当療法 これも元々“手を当ててする治療法”の意味です

・ラム=エトク=モノ=カタ=ルーガル:猛宗像之大王:勇猛さの上に禅定抱き坐す大王(勇猛さ・静かに座す・上に・王)より、このように意訳しました。(ルーガルはシュメール語ですm(__)m)

チカラ解放後のこの名前が彼は実際何モノなのかのヒントですよね♪

この辺りは真説日本古代史と古代日本正史を総合して考えて比定しました。


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